シナリオが世界観を表現し切れていなかった。
GODSという不治の病が蔓延して人口が減少し、治療するにはその病を発症しない特殊なクローンであるラブレプリカを犠牲にして臓器移植するしかない世界での話。モテるためだけにバンドを組んで練習を始めた主人公達だがある日事件が起こる。
公式サイトの5ページ(Prev ● ● ● ● ● Nextの部分をクリック)に亘るストーリー紹介は世界観を含めた体験版部分を要約したものだが淡々と書かれていて今一ゲームの雰囲気が伝わってこないため興味があるなら必ず体験版をプレイする事を強く推奨する。特にエリザベスの件で拒否反応を示す場合は体験版以降でもっと厳しい選択を迫られるのでプレイは厳しい。要素が皆無ではないが間違ってもキャラ萌えゲーではないので絵買いの人やキャラの魅力でシナリオを回す話が好きな人には向かない。体験版をプレイすると鬱ゲーと誤解しがちだが部分部分でそうなる場面はあるものの実際はシリアスが大部分を占める。一応ギャグは存在するがシリアスな場面で無理に挟んだりして大半は滑っているため折角の盛り上がりを台無しにして寧ろ不快にすら感じる。一部ルートは解説が冗長で読んでいてうんざりするかも知れない。
選択肢はそれ程多くはないが「不治の病GODS」と「人権がなく臓器移植のために殺されるラブレプリカ」を軸に『生きるとは何か』を問いかけているため個別ルートに入った後も重大な決断を迫る場面では選択肢が出て選択次第では言いようのない気持ちになるバッドEDも用意されている。またその選択によって別のヒロインのルートに分岐する事もある。但し中にはシナリオライターの都合で強引に途中EDにしたのではないかと思われるものも存在するため全てを回収しようとすると面倒かも知れない。バッドEDは基本的に淡泊であっさりしているがルートによってはそれに至る展開で声優の迫真の演技を聴く事も出来るので全て見る事を推奨する。グランドEDは存在するが核心に迫る話は各ヒロインのルートに散らばって説明されているためどれをトゥルーEDと解釈するかはプレイする人次第。ED曲は5分超と長くイベント絵とスタッフロールだけで特別な演出はないのに一切スキップ出来ないため非常に苛々する。
解像度は1280×720で通常のフルスクリーンと仮想フルスクリーン(解像度を変えない)の双方を選べるが通常のフルスクリーンの場合起動毎に毎回確認ダイアログが2回出てOKを押さないとゲームが起動出来ない致命的な欠点がある。タイトルに至るまでのメーカーロゴや諸表示を一切飛ばせないため双方が合わさるとプレイ可能になるまで非常に時間がかかる。絵柄は若干濃いめで可愛い絵柄を期待する人には厳しいかも知れない。また話の性質上エロは必要最小限(全員合わせても16枠だが場面自体は使い回しでこれより多い)で逝った時の精液量が異常に多い事もあり合わない人には徹底的に合わないかも知れない。
ゲームエンジンはSiglusで、Vista発売以降に登場したマシン(C2D以降)なら問題なくプレイ出来ると思われる。一部ちょこまかと動き回る立ち絵があるが負荷がかかるような演出は殆どない。文字は大きくて読み易くフォントをHGゴシックE等の太めの文字に変えれば更に視認性が上がる。スキップは超高速(50~60㎳位)だが一部サブヒロインのルートに入り辛いため選択肢ジャンプが出来ないのは残念(前の選択肢には戻れる)。また声の音量にばらつきがあるため個別できちんと調整した方が良い。若干の誤字があり、意図的な演出かも知れないが台詞が文章の一部を飛ばして録られているものもある。
この世界の人口減少とGODSという不治の病は極めて深刻な状況なのに物語の舞台が非常に狭く登場人物も少ないためどうしても世界規模の問題と捉えにくい。人里離れた小さな農村で起きた奇病と言われても納得してしまう程。世界観に説得力を持たせるのなら地の文で簡素に触れて終わりではなく一般の人間をシナリオでも映像でもきちんと描写するべきだった。