がっかりゲーの筆頭、予想の範疇を超えられなかった作品
タイトルのとおりです。科学ADVシリーズの最新作ですが、予想の範疇を超えていない感じでした。個人的な所感としてはオカルティックナイン以上ロボティクスノーツ以下といったところです。
評価できるポイントはいとうかなこさんが歌う主題歌とキャラクターデザイン。特に後者は、発売前の時点ではこのシリーズにマッチしているのか不安を抱いていたのですが、実際のところピッタリだったと思います。中華料理屋のモモのCGが一番好き。
※※※以下ネタバレ※※※
まず特筆すべきはその短さ。ボイスを全く聞かない人なら10時間かからずにグランドエンディングまで到達できてしまう。発売前のインタビューで「今作は縦の長さではなく横の幅、エンディング数を増やす方を重視した」といったことを志倉千代丸氏が仰っていたのを見たときから嫌な予感はしていたが、それが現実となった形。ボリュームに関しては多いほうが良いのか少ないほうが良いのか様々な意見があるだろうが、今回に関しては短すぎた。ゲームの世界に浸る間もなくエンディングを迎えてしまう。他のシリーズ作品にあったようなカタルシスがなく、盛り上がりに欠ける印象を受けた。
その短さに付随した種々の疑問点や課題も無視できない。そもそも今作では「キャラクターごとのルート」が存在しない。今までの科学ADVシリーズで言う共通ルートの延長線上に全てのエンディングが存在する。そのためか、各キャラクターの掘り下げが甘い(ある意味似た構造のロボノではその点はきちんと出来ていたように思える)。バイクの修理屋やサイバーポリスのセンターじゃない2人(名前忘れた)等なぜ出したのか分からないキャラが多数存在している。ウインドもなんなら必要ないだろう。またノンノ等登場の必然性があるキャラであっても、「彼ら彼女らがどういったキャラなのか」を構成する要素がほとんど開示されない。それもゲームに入り込めない一因だったと言える。
今作肝入りのギミックだった「セーブ&ロード」(以下S&L)も蓋を開けてみれば「こんなものか」という印象。序盤からポロンが「アノニマス君」に語りかけるシーンはあるものの本格的に第三の壁を超えてくるのが終盤近くであり、その方法も「よくあるメタをテーマにしたゲーム」と似たりよったりであるため、肩透かしを食らった気分。あとこれは完全に自分が悪いのだが、発売前の時点では「ポロンが作ったセーブデータをプレイヤーもロード出来る、またその逆も可能である」という仕様だと思い込んでいたが(少なくとも終盤までは)そういう訳ではなかった。
S&L関連で言えばその使いにくさ、ストレスの溜まりやすさもウィークポイントとして挙げられる。プレイヤーがS&Lをポロンに提案しそれが受理されるポイントがゲーム内でかなり短いことがあるため、「ここがS&Lを使うべきポイントだ!」とプレイヤーが理解しても、台詞1つ分の違いでポロンに怒られることが多々あった。次の台詞でS&Lを使えば普通に受理されるのに、そのたった1つ前の台詞で使っただけでポロンに理不尽に怒られるという……。その怒り方もこちらの神経を逆撫でするようなものが多くやる気を削がれた。これは声優さんの演技が上手いことも原因の一つだと思う。
それからもう一つの肝入りのギミックであった「マンガトリガー」。こちらも良し悪しであったと言える。斬新な演出で見ている分には面白かったのだが、初見時は台詞を読み終わって少ししないと次のコマへ送ることができないため冗長さが増してしまったように思う。
シナリオ全体を見ても、細かいところが色々と気になってしまう。モモが着ぐるみを着てた理由とか。物語序盤で脱いでそれ以降は一度も着なかった……。かわいかったのになぁ。ウインドが時計修理の際道具を落としたのも伏線かと思っていたが、全然そんなことはなかった。それから「神をハッキング」って結局そういうことなのね……。悪い意味で予想と違って残念。DDoS攻撃はそもそも「ハッキング」と言えるのだろうか。また、隕石を破壊するくだりや2周目でアスマを仲間にするのもご都合主義が過ぎるように思えてしまった。あと何かの伏線として重要な意味を持つと思っていた、モモが口ずさんでいた詩。かなり思わせぶりに出て来たが結局何だったんだろうか(これは元ネタとかがあるのを単に私が知らないだけかもしれない)。シナリオという面からは少しズレるかもしれないが、序盤でこれまた思わせぶりに出て来たポロンのアバター的なやつ(名前忘れた)とかウインドの嫁とかも結局シナリオに絡んでこなかった。本作はそういった「シナリオに絡んでいれば効果的だった要素」が非常に多い。開発段階ではもっと広がりを持ったシナリオだったのではないかと考えてしまう。
などなど色々書いてきたが、総評としては(メタ、世界シミュレータ等大掛かりなテーマを扱っているにも関わらず)小粒にまとまってしまった作品という感じであろうか。それぞれの要素は良かったのに全体で見ると今ひとつなままで終わった。また、意識的にSteins;Gateと被せている部分が多いように見受けられるが、その結果としてSteins;Gateとどうしても比較されてしまうこともこの作品の評価を下げる一因となった。科学ADVシリーズではない物としてロープライスで発売したものであれば70点くらいの評価をつけても良かったかもしれないが、科学ADVシリーズ新作としては40点ほどの評価が妥当なところだろう。
……カオヘ/シュタゲ/ロボノの一部メンバーの消息が分かったのは良かったけれど、出来ればカオチャメンバーの消息を知りたかった(ゲーム内で出て来たけれど見落としているだけかもしれない)。あとオカリン。