この作品はもっと評価されるべきである。声を大にして、そう言いたい。非常にもったいない。
この作品との出会いは「埋もれている名作エロゲランキング」だった。第10位にランキングしていて興味を持った。
プレイしてみたところ非常にギャグ性が高く、また良質なラブコメディーに仕上がっていた。
ひと昔前のアドベンチャーゲームのような構成になっており、小さなエピソードの積み重ねがヒロインの好感度に加点されて攻略ルートが決まるようになっている。
セーブデータを駆使して選択肢を変更すれば難しい点は何もなく、ちょっと時間があれば問題なくクリア出来る。
個別ルートのうち、アンドロイドのハリエットのルートにはしてやられた。
非常に人間味あふれる主人公がアンドロイドに恋をして一緒になる未来を選択する点には、過去作品の「To Heart」マルチルートや、古くは手塚治虫作品を思い出さずにはいられなかった。
現代の科学力では人間よりも先に壊れてしまうであろうアンドロイドとどのように付き合って行くのか、修理は誰がするのかなど幾多の問題を抱えながらも、見切り発車的に進み始めてしまうストーリーの結末のキーワードが『農業』であるとは、想像もつかなかった。
科学によって生み出されたハリエットが、科学を必要としない農業を自分の「趣味」として「燃料源」として自給自足の道を選んで行くストーリー展開は、もはやエロゲの範ちゅうを超えていると思える。海原エレナのどこか人間らしくない演技も素晴らしかった。
(注・ハリエットはアンドロイドながら、野菜を自分の燃料源とすることが出来る)
それから、おまけシナリオとして登場する猫耳のお姫様・ディーチのアフターストーリーでは、別のストーリーで張るだけ張られた伏線がちゃんとひと通り回収されており、恐れ入った。
このタイムマシンネタの使い方、主人公・健助が近所のマッドサイエンティスト・らぐな博士(本名:名倉源内)と友達になるエピソードなどはある意味で「バックトゥザフューチャー」のパロディにもなっており、このストーリーの爽快さが秀逸だった。
この「らぐな☆彡サイエンス」という作品がそれほど売れずに大した評価を残せなかった理由を推測したのが下記である。
1.主題歌が無く、宣伝用フィルムも特に用意しておらず、OHPに体験版くらいしか用意されていない
2.らぐな博士、校長、定食屋のオヤジ、光太朗などのセリフが多い重要な男性キャラにボイスがない
3.製作者側に「面白いゲームを作った」という自覚がない、要するにあまり派手に売る気がない
「らぐな☆彡サイエンス」はフルプライスながら小ぶりのパッケージであり、この点でもほかのエロゲよりも控えめである。自身がないことのあらわれだったのかもしれない。
実にもったいない限りである。