ErogameScape -エロゲー批評空間-

MGNさんのないしょのティンティンたいむの長文感想

ユーザー
MGN
ゲーム
ないしょのティンティンたいむ
ブランド
BLUE GALE
得点
78
参照数
179

一言コメント

鋼丸氏の過渡期のCGが印象的な佳作。ミドルプライスの抜きゲー枠ながら、その辺のラノベがぶっ飛ぶくらいのテキスト量に驚いた。まともにプレイしても2~3日ではとても終わらないくらいの内容量だった。女性主人公(CV:桜川未央)声ありの後天的ふたなり設定であるほか、登場人物も多彩であり、TS作品風味の不思議な世界観だった。2005年作品ながら、設定・世界観の独自性でオンリーワンの輝きを持っている作品に思えた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

女性主人公・亜依(C:V桜川未央)が、体力増強・頭脳強化が効能である液体薬を誤飲(ひと口で良いところを全部飲んでしまった)してしまった結果、男性器が生えてしまった(体は女性のまま)、ところから物語がスタート。
主人公宅には毎朝幼なじみ・理奈(CV:楠鈴音)が起こしに来たり、学園に行けば部活の後輩・千菜美(CV:寧々)が過激に抱きついて来たり、何かニュースはないかといつもカメラを持って虎視眈々と特ダネを狙う新聞部の雅恵(CV:吉川華生)が居たりと、本作は実はTSゲーなんじゃないのかと思えてしまうような設定に心をつかまれた。
しかも、理奈・千菜美ともレズっ気まるだしであり、怪しげな薬を作った沙紀(CV:KOHIRO)のマッドケミストぶりもあり、材料としてはTS作品に限りなく近いところに心躍らせてしまった。

ふたなりになった主人公は、一回勃起してしまうと精液を排出するまで男性器が立ったままになってしまうという難儀な体質であり、そのたびに理奈に処理してもらったり、自分で処理したりしている。
ところが、主人公は真面目で乙女チックな性格であり、自分に生えている男性器に興味津々どころか嫌悪する有様であり、沙紀が中和剤を作るまでの2週間をどうやって乗り切るか(周囲にバレないようにするか)にアタマを悩ませるのだった。

本作は、女性主人公・亜依の「自分は女の子でいたい」という強い気持ちとは裏腹に、レズっ気のある理奈や千菜美が主人公の性処理のために近づいてくるところが特異であった。
仮に本作がTS作品だった場合は性別が女から男に変わってしまうため、逆に理奈や千菜美は近づかないように思える。しかし主人公は「ふたなり」であり、姿かたちは女のままであるためにレズが成立すると言うのか、理奈や千菜美の存在意義が発生するあたりにひきつけられた。

攻略キャラとしては、実は理奈ひとりとなるが、千菜美以外の沙紀・雅恵ともHシーンがあるほか、ハーレムルートが存在する。
「中和剤を飲めば元の女に戻る」という前提のもとに、元に戻るエンドはあるものの、戻らないエンドに複数の分岐があるなど7つもエンディングがある。
なお、何周かしたのちに最初からプレイするとピンク髪の瑠璃というキャラが登場するルートがある。この瑠璃は新聞部の雅恵の妹という強引な設定があるほか、沙紀の力を借りて学校内では悪を倒す『魔法少女ルリ』に変身するなどさらに強引な設定があって目が点になってしまった(一応、パッケージ裏には紹介がある)。
この瑠璃のCVは意表を突いてかわしまりのであり、活動初期のかわしまりのの受けキャラっぷりを味わうことが出来るという点で貴重かもしれない。
活動期間が2週間もあるほか、選択肢がかなりの数になるため、行き当たりばったりでプレイするよりは攻略サイトを参考にしたほうが時間は節約出来る。

本作はテキスト量がかなり多く、ラノベ数本分はある。
とても2~3日では全クリア出来ない。そのため、途中で投げ出してしまう人もいるかもしれない。今たどっているルートがどんな結末になるのかを見届けたいという意志がないと全クリアは難しいかもしれない。
BLUE GALEにかつて本作のような長い萌え抜きゲーが、鋼丸氏の原画で存在した、という事実が貴重に思えた。





・立ち絵+CG    15点/20点 ※CG:70個、Hシーン回想:50コマ
・設定(システム、作品世界観) 17点/20点
・シナリオ      17点/20点
・音楽        14点/20点
・声優        15点/20点
●合計78点