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MGNさんの恋愛×ロワイアルの長文感想

ユーザー
MGN
ゲーム
恋愛×ロワイアル
ブランド
ASa Project
得点
87
参照数
462

一言コメント

盛り沢山の内容で、ASa projectが一気に勝負に出た作品に思えた。魅力的過ぎてメインを食ってしまうサブキャラ勢、多数の笑えるシーンとメタネタ、予想外にいやらしいHシーンの応酬。暗い世相の2020年に一番笑わせてくれた本作をプレイ出来て本当に良かった。恐らく出るであろうFDにも期待したい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

今年2020年は70本くらいエロゲをプレイ出来たが、点数で見返すと本作「恋愛×ロワイアル」が最高点だった。
「プラマイウォーズ」から始めて本作が6本目だが、ASa project作品としては一番面白かった。
今後「恋愛0キロメートル」や「アッチ向いて恋」や「ひとつ飛ばし恋愛」をプレイして順位が変わる可能性はあるけど、今は暫定1位である。

本作は自分がプレイしたASa project作品としては、ちょっとだけ方向性を変えた作品に思えた。
と言うのも、キャラごとにストーリー展開が全然違う(しかしすべてのキャラが話には加わってくる)ため、攻略順によってはプレイヤーの感想が違うのではないかと思えたからである。
これは、今までのASa project作品とは主人公が違うからではないかと思っている。(自分がプレイしている)今までのASa project作品の主人公は、新たに引っ越してきたりなど、ゼロからのスタートで物語が始まっている。せいぜい『昔住んでた土地に戻って来た』のような幼なじみ展開がある程度である。

それが、本作の主人公には「過去がある」という点で立ち位置が異なっている。すなわち、ゼロからのスタートではなく、4くらいからのスタートとなっているのである。
これは、幼なじみのピンク頭・まり(初恋の相手)と幼少の頃に別れたことを引きずったままでいたり、さらに2番目の彼女・アイドルの由奈とも別れていたり、無気力で無責任なヤケクソ男になっていたところを生徒会への加入で精神的に救われていたりしたからである。
そして、その生徒会にいる最中に間違って生徒会長にナンパをしてしまったり、また本作の導入部分で一番インパクトがあった『転校生・まりによる主人公への一大告白』から本編がスタートするのである。
この「主人公に過去がある」状態がはっきりとわからないままに物語は始まってしまい、新しい展開と古い展開が並行してしまうのである。
さらに、初恋の相手と2番目の彼女とふたり連続で別れて傷つく主人公を見ていられなかったブラコンメンヘラ妹の存在、そして最も新しいフラグが立った生徒会長と、この過去と現在の怒涛の展開には驚かされた。
これ、良くシナリオライターはストーリー展開を維持出来たものだと感心してしまった。
この、主人公の過去は本編では断片的に語られるものの、本作を全クリアしてもその全容はつかめないのである。この主人公の過去編は「まりと出会ってから別れるまで」をまりのFDで補完してくれたら、本作では回収されたとは言えない伏線が理解出来るのではないかと思えた。
それは、主人公が生徒会に入るまでのストーリーしかり、ブラコン妹がメンヘラ妹になるまでのストーリーしかりである。
アイドル勢との過去話は本作である程度語られてしまっているのでFDの対象にはしにくいかと思える(このあたりがアイドル勢が本作で優遇されている理由ではないかと思えた)。

こういう作品展開となってしまうと今までのASa project作品ではなく、むしろ姉妹ブランドの作品群との類似性を考えたほうが面白いかもしれない。私はその作品群を1本しかプレイしていないのでこの辺はまともに語れないが、本作「恋愛×ロワイアル」がちゃんと作品として成立している理由がその「類似性」にあるのではないかと読んでいる。いずれ自分でプレイしてみて、いつか振り返って考察してみたいが、誰か先達に指摘していただきたいものである。


以下、雑感。
育代や愛ともHシーンがあるとは思わなかった。また、生徒会長のおまけとは言え蒼も巻き込むのは見事だった。
そして、千弥の双子の妹というのはしてやられた感が大きい。幼なじみなのになぜ妹がいるのを主人公は知らないのかという突っ込みや、千弥が実は女だったという展開にならなかったのはおまけシナリオ的に許せてしまうのである。
そして、一番の「ネタ」は良徳とのバッドエンドの存在だろうか。現代の『雅史エンディング』とも言える。
余談だが「良徳」のモデルは、若い頃の電気グルーヴの砂原良徳(まりん)ではないか?と思っている。やたら「陰キャ」呼ばわりされたり鬱陶しい長い髪だったり。誰かスタッフに電気グルーヴのファンが居たり、誰も気付かないところで電気グルーヴのネタが仕込まれていたりするのかもしれない。
こういうのを改めて解析してみるのも面白いかもしれない。

暗い世相の今年2020年に一番笑わせてくれた作品でもある。
ASa projectが一気に勝負に出たと思える本作をプレイ出来て本当に良かった。