本作の評価は難しい。単純に言えば「胸糞悪い系」だが、深く考えると「社会派」というエロゲとしては珍しい分類の作品と言える。過去にレイプをされた経験を持つ3人の女性主人公がセカンドレイプ(性的二次被害)を受ける、というテーマであり、R18指定のノンフィクション映画のような味わいがあった。制作側がそこまで考えて作っていたかは定かではないが、女性視点と救いの無さには不思議にひかれるものがあった。
本作に登場するHシーンはほとんどがレイプによるものである。3人の女性主人公が発するのはあえぎ声というよりも悲鳴に近い。
基本的に胸糞悪いストーリー展開であり、プレイして後悔する人は少なくないと思う。
抜きゲーとして考えた場合、まず作品全体をプレイしてみて、回想シーンで抜く作品となるだろうか。
本作は、ライドオンワークス系列にいくつか存在するブランドのひとつである「マッドレイド」の第1作目である。本作のような暗くて救いの無い作品が第1作目なのもどうなのかと思うが、数年前に話題になった「心壊少女」あたりとテーマに重なるものがあるかもしれない。
ある意味では黙殺して、無かったことにして良い作品とも言えるが、こういう異色なエロゲが存在することは実験的で面白いとも思うのである。
3人の女性主人公は、それぞれ過去にレイプの被害を受けた経験がある。
ある日突然監禁されて拘束されたまま延々と性暴力を受けた者、ストーカーにより性暴力を受けた者、大学のサークルの仲間からの告白を断った結果性暴力を受けた者。それぞれが写真や動画で脅され、インターネット上で公開されたり、堕胎をする結果になったりという目に遭っている。
転校しても新しい学校で『あなたレイプされたんでしょ?』のように興味本位で噂されたり、トラウマや記憶のフラッシュバックで3年も自室から出られなくなったりと、エロゲながら非常にリアルなストーリーとなっている。
3人はカウンセリングを受けたり精神科の医者に通った結果、性被害に遭った経験を持つ人たちだけが参加している閉鎖的な掲示板を紹介されるのである。その掲示板上にハンドルネームで書き込み続けた結果、ひとりが「一度会って話しませんか?」という提案をするのである。そして実際に会ってみると、その相手は3年くらい連絡の取れなくなっていた従姉妹なのであった。
本作に登場する男性は、父親とサークルの仲間を除けばレイプの加害者か痴漢だけであり、女性視点では存在自体が怖いのである。そして、レイプ加害者は人間的に破滅した完全な犯罪者であり、たとえば「女子校生コンクリート詰め殺人事件」などを思い起こさせるだけでも胸糞が悪いのである。
ゲームだとはわかっていても、まるでR18指定のノンフィクション映画を見ているようだった。
ひとつ残念なのは、エンディングのスタッフロールが黒い画面に文字だけの表示であり、無音なところである。BGMは7つもあるのだからどれかひとつ流すだけでラストシーンの余韻になったのではないかと思った。
最近のライドオンワークス系列作品に共通することだが、テキスト表示が遅い・テンキーのEnterキーがSkipとなっている(マウス使用が前提か)・テキストウィンドウの濃度変更不可などのシステム上の問題がある。この点はどうやら改善する気が無い様子である。
また、Hシーンの射精音が自動販売機のような音なのも共通している。
そして、かつてのスワンや黒鳥の頃から居る絵師やシナリオライターが単に名前を変えているだけで、中の人が、実は限られた人たちが持ち回りで作っているだけなのではないかと思えるところも特徴的である。
「マッドレイド」の作品は本作のような救いの無いものばかりなのかが知りたいので、現在3本発売しているうちの残りの2本も近々プレイしてみようと思う。
・立ち絵+CG 12点/20点
・設定(システム、作品世界観) 12点/20点
・シナリオ 16点/20点
・音楽 12点/20点
・声優 14点/20点
●合計66点