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MGNさんのシスターまじっく!の長文感想

ユーザー
MGN
ゲーム
シスターまじっく!
ブランド
脳内彼女
得点
80
参照数
333

一言コメント

ヒロインは妹3人+悪魔っ子ひとりだが、妹・魔法・ロリ・男の娘・女体化など複数の要素が入り乱れる先の展開が見えない作品。2009年当時の上昇気流に乗ろうとしており、脳内彼女というブランドの栄枯盛衰を研究する上では重要な転換点となっている作品だった。あおぎりぺんたの絵柄の変遷を知る上でも貴重。井上みゆ歌唱の魔法少女アニメ風の電波主題歌が頭の中でしばらくループしていた。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

妹3人が全員魔法使いであり、夢魔である悪魔っ子が現実世界に登場。兄は覚醒前の魔王だった・・・。
という導入部分だが、ひとことで言えば「お兄ちゃん陵辱ゲー」であり、当時の脳内彼女の妹モノとしては平常運転の作品である。
共通部分でヒロイン全員と関係を持ってしまうのも脳内彼女のお約束だった。
とは言え、個別ルートに入ると妹が魔法で大人になってHを迫って来たり、兄を子供に変えて『私をお姉ちゃんと呼びなさい』のように迫って来るなど、題名の「シスター」が必ずしも妹を指していないところは見事だった。
また、悪魔っ子のネリスのルートではネリスがショタ化(TS化)して兄にHを迫って来るなど、魔性の男の娘の要素が2009年作品にすでに盛り込まれているなど、その後の脳内彼女の方向転換のための布石となっている部分が見える。

さらに、ヒロイン全員をクリアすると解放される「おまけシナリオ2」はまさかのお兄ちゃん女体化展開だった。
妹たちが魔法の実験に失敗しなぜか全員フタナリ化。しかもお兄ちゃんは女性化。
フタナリ展開自体は末妹の乃々美ルートで登場しているものの、お兄ちゃんが性転換して女性化する展開となるとは思わなかった。しかも、女性化するとお兄ちゃんにも声が付くところが良かった(たぶんCV神村ひなである)。
この意表を突く展開はまったくの予想外であり、短いおまけルートなのが実に惜しかった。
どおりでTS(性転換)作品で良く名前を見かけるレビュアーさんたちの名前が批評空間上で散見されたわけである。
最後まで「お兄ちゃん陵辱ゲー」であり、これこそが脳内彼女の持ち味であると思えた。

ほとんどの脳内彼女作品で原画を担当するあおぎりぺんたの絵柄の変遷を知る上でも貴重な作品と言える。
本作ではCGの出来がやや不安定な点が気になったが、いやらしさという点では十分であり、あおぎりぺんた絵が好きな人にはおすすめである。

声優としては、常連の桜川未央のほか、神村ひな・真宮ゆずは脳内彼女作品としては唯一の出演作品である。また、桃井いちごが「恋愛まで選択肢ひとつ」の前にすでに脳内彼女作品に出演していることをプレイしてみて初めて気が付いた。
声優という観点では、他作品に出演していない人たちが登場するところが興味深い。
皆、上手い人たちであり、声優への満足度は高かった。

最後に主題歌について。
井上みゆ(金松由花)歌唱の「どめすてぃっく・LOVE・まじっく」はその昔の魔法少女アニメ風であり、その電波度の高さにはしてやられた。
しかしながら、歌詞に登場する『幼なじみや巫女にメイド』が本作に登場しないのはなぜなのかが気になった。
プレイ前に本作のOP画像を何度となく見ていたが、まさか『幼なじみや巫女にメイド』が出て来ないとは思わなかった。
発売の2009年当時の背景を自分は知らないのだが、今振り返ると「シスターまじっく!」だけが当時の脳内彼女作品の批評空間のデータ数が少ないことと関係があるのかと勘ぐってしまうほどだった。実は、もともとは『幼なじみや巫女にメイド』が登場するはずだったのにそのシナリオが没になってしまった背景がある云々。
または「どめすてぃっく・LOVE・まじっく」が本作のために作られた楽曲ではないということかもしれないが、今となっては憶測も出来ない話である。