ふたなり女性主人公・声あり(CV:風華)という稀有な設定の凌辱ゲーであり、類似設定の「ないしょのティンティンたいむ」をラノベと評するなら本作は官能小説とも言える仕上がりの良作だった。本作は昼間プレイするのが恥ずかしくなるくらいのいやらしいシーン多数であり、「すべてが肯定される」珍しい凌辱作品だった。フタナリの体を隠していたカノンがそれが表面化して以降の思考が男性化して行く展開が秀逸。エロゲにカネが使えた時代の傑作と言って良いと思う。特に、カノンのCV:風華が最高。
本作のひとつ前に「ないしょのティンティンたいむ」(BLUE GALE、2005年作品)をプレイした。
・女性主人公 声あり(CV:桜川未央)
・女性主人公は後天的にふたなり
・短編ではない(ミドルプライス以上のボリュームがある)
・凌辱テイストがある
のような設定であり、さらにラノベ風のサラッとした長いテキストが印象的であり、オンリーワンの輝きを持っていた。
しかし、主人公が真面目で乙女チックだったため、突き抜けた感は無かった。
そのため、面白かったものの、物足りなかった。
そこで、似たような設定の作品はないかと探してみた。
あった! それが本作である。
ただしラノベではなく官能小説テイストであり、Hシーンは大半が凌辱シーンであった。
本作のすごいところは、ふたなりのカノンちゃんが自分が受けた(または、自分が主体的に行動した)凌辱シーン(もしくはHシーン)をすべて肯定するところである。
また、同様に、生徒会長(鷹ノ橋ユキ)に対する凌辱シーンをもカノンみずからが肯定する(もしくは正当化する)くだりには、理不尽ながらも感銘さえ受けてしまった。
怪しい保険医のマヤ先生の真意がどこにあったのかはさておき、ふたなり(の少女)という存在がもはや神々しい領域にあるのだ、という印象が複数のエンドに存在するところが素晴らしかった。
特に、マヤ先生から「ふたなりであることを恥ずかしがることはない」とアドバイスを受けた以降のカノンの思考が男性化して行くくだりは秀逸だった。
カノンちゃんはキモチィ(注:本作では「気持ちいい」ことをなぜか「キモチィ」と表現している)ことが正義だと考え、その思考を一貫して持ち続けるところがぶれておらず、Hシーン含めてとにかく良かった。
なお、題名の「ふたなりカノンちゃん」であるが、ちゃんと本編で根拠が登場しているのも見事だった。
総じて、定価¥5,800のミドルプライス作品ながら、今では考えられないほど主人公が暴走して突き抜けているところが実に痛快な作品だった。
特に、昼間にプレイするのが恥ずかしくなるようないやらしいシーンが多数であり、抜きゲーはいやらしくて何ぼ、を提示しているかのような作風は賞賛に値する。
すなわち、大震災前の、エロゲにカネが使えた時代の傑作だと評価する。
もう、こんな作品は二度と現れないだろう。
声優面では、カノン役の「風華」が最高である。恐らく現代では「篠原ゆみ(片倉ひな)」あたりが継いでいる路線となるかと思う。
生徒会長のCV:ねこまろとは倉田まりやのことだが、録音状態が悪いのかセリフが聞き取りにくい上に上手さを感じられなかったのが残念だった。
また、マトバのCV:金松由花は2008年時点でそれなりのキャリアがあったはずであるが、本作に限っては妙に素人くさいショタキャラっぽい演技を残していた。単に録音状態が悪かったのかなどの状況は不明だが、現代では「早瀬ゃょぃ」あたりが継いでいる路線に思えた。
声優の音声の録音状態がカノン(風華)以外、それほど良くなかったところが唯一の残念な点である。
・立ち絵+CG 18点/20点 ※CG:58個、Hシーン回想:32コマ
・設定(システム、作品世界観) 17点/20点
・シナリオ 17点/20点
・音楽 16点/20点
・声優 16点/20点
●合計84点