春乃伊吹・草柳順子ほかの声優、ピクセルビーの音楽、春の時期らしい演出、そして世界観が忘れられない佳作だった。決して懐古趣味ではなく、現代の作品には消失しかけている「雰囲気」や「余裕」みたいなものが存在していた作品だった。
3連チャンで萌えゲをプレイしてしまったために、11月はプレイ本数が少ないという結果に終わった。
特に本作のような2008年頃の作品はそれなりにお金をかけて作られており、各キャラに萌えながらプレイしていると時間もかかるものである。
本作にも現在の作品にはもう無くなりかけている「余裕」みたいなものが感じられた。
それは「BGM」であり「声優」であり「演出」である。「作画」や「ストーリー」や「世界観」を補う大事な部分である。
攻略する各キャラによってストーリー展開がだいぶ変わったり長い短いはあるが、なぜか攻略出来るしおり先生のようなサブキャラでさえひとひねりしてあって、そのアイディアの巧さみたいなものには感銘さえ受けた。
時代は移り変わり、流行もある。現代の今、もし本作のような作品を発表しても2008年ごろのような好意的な評価は得られないかもしれない。
しかし、作品の発売数も多い時代に、面白い作品でなければ他作品の山の中に埋もれてしまう時期に発表されてヒットした作品は、現代の作品と何が違うのかを読み取ることは大事なことなのではないかと思うのである。
本作はSAGA PLANETSの四季シリーズの「春」の作品である。
その後の「夏」である「ナツユメナギサ」へつながり、「キサラギGOLD★STAR」「はつゆきさくら」へと完結して行くとのことである。
『とのことである』というのは、「はつゆきさくら」発売当時の異様な盛り上げ方(盛り上がり方ではなく、誰かが意図的に盛り上げようとする無理やり感)がいまだに気になっており、未プレイだからである。WA2の時に良く耳にしたステマと似たものを感じた。
「はつゆきさくら」は発売後しばらくの間は品薄であり中古も高く流通する有り様であり、余計に手が伸びなくなってしまったのだった。
とは言え、「はつゆきさくら」がかなりの売り上げを記録したのは事実であり、多くの人に支持された理由は何なのか。それを自分の目で確かめなければならないとも思っている。
話を「Coming×Humming!!」に戻す。
自分が本作をプレイしたきっかけは、春乃伊吹が出演しているからであった。
今はもう居ないこの方の演じるキャラのみずみずしさ、魅力がよくわかる「美海(みう)」という金髪ツインテールの子である。
そしてこの美海に向かって『そこの変な髪形の女』とののしる「優月(ゆづき)」と「吉乃姫(よしのひめ)」のダブルキャストは草柳順子である。
ジャケ絵やOPやタイトル画面を見る限りではこの草柳順子演じるキャラがセンターヒロインと思われる。
そして、主人公が下宿する旅館の娘「鈴香(すずか)」井村屋ほのかである。この方はクーデレ役が実に良く合っている。
その他、美海の妹である「ひなた」(CV中家志穂)、年上の幼なじみである「綾音(あやね)」(CV茶谷やすら)が攻略ヒロインとして登場する。
サブキャラとして担任のしおり先生(CVこのかなみ)が登場するが、なんとルートがありエンディングが存在する。これは良くある、Hシーンだけあって5分で終わるおまけエンドではなく、短いけれどちゃんと練ってあるシナリオが用意されてのエンディングであり、このルートの作り方には感銘さえ受けた。
各キャラのストーリー展開はだいぶ違っており、共通するのは神社の春祭りというイベントがある点だけである。
ところが、特定キャラのルートに入っても、なんだかんだ理由をつけて、攻略しないヒロインたちがストーリーにからんで来るところが良かった。
こういう作りでなければ、私は「美海(みう)」と「ひなた」攻略で満足してしまって他のキャラのルートを最後までプレイせずに終えていたかもしれない。
複数シナリオライターの作品ながら、全体でのストーリー進行調整がちゃんとなされていた形跡がうかがえるのである。
私が気に入った「美海(みう)」と「ひなた」のルートの担当が新島夕というところが不思議な偶然ではある。この新島夕がひとりでシナリオを担当したのが先の「はつゆきさくら」である。
発売当時からはすでに時が流れてしまったが、面白い作品は過去作品であろうと引き続きプレイしたいと思っている。
やはり春乃伊吹が(メインキャラではないが)出演する「キサラギGOLD★STAR」を、次はプレイするつもりである。