良く出来ている。個人的に90点付けられる内容だったものの、そうならなかった理由は長文感想で。
クロノボックスです。
猟奇的な作品やハードな世界観の作品は割と好物なので、発売以来ずっと気になっていたのですが思い出したように最近ようやく崩したので少しレビューしてみたいと思います。(エロゲ一区切りとは一体・・・)
まぁよく出来ていました。伏線に次ぐ伏線で仕掛けも面白かったし、演出もさることながらなにより主人公那由太に魅力があった。おそらくほとんどの方がその構図や仕掛け・お話の本筋を褒めるのでしょうが、私が特に良かったと感じたのはハンディを背負った各ヒロインとのラブストーリー。尺としては短いながらも良く書けていたように思います。
ただエッチシーンに卑語がガンガン出てくるのはマイナス。物語の核の部分が関わってくるので難しいところではありますが、卑語まみれのエロシーンはリアリティを欠き一歩引かされてしまった。ここが90点を割った理由。
ただ総じて面白い作品という評価で間違いはないです。あと、なんとなくプレイ前はサバイバルホラー系かと思っていたので(体験版はのちにプレイ)、本編をプレイしてみてだいぶ印象が違う出来になっていることに少し戸惑った。まぁこれは私の落ち度です、はい。
狂気、というのとも違う感じでしたね。。。それらの要素は舞台装置の一つに過ぎず、ふたを開けてみれば主人公那由太の愛と苦悩を描くなんとも切ないお話でした。
・ストーリーについて
物語の考察などは考察サイトさんにおまかせするとして、感想を中心に書きたいと思います。
冒頭述べたように、非常に良く出来ていて面白かった。ちりばめられた伏線に引っ掛かりを覚えながらも先が気になりどんどんプレイ出来たのでのめりこませる力はなかなかのものだったと思う。
作品の枠組みは良くある形で、序盤中盤に謎がちりばめられていて終盤に一気に回収するタイプ。謎を都度回収していくタイプの作品ではないので、引っ掛かりを終盤まで抱えていくことになる。
しかも各ヒロインのルートを強制的に経る一本道シナリオとなるので「あれ?このヒロインではこうなってたのに、こっちのヒロインではこうなるのか・・・どういうことだ?」という腑に落ちなさやしこりを抱いたまま各ヒロインとのイチャラブストーリーを消化していかなければならない。ここに少しもどかしさを感じた。前半はループもののような構成なのであの発言どこだったかな・・・という振り返りに優しくなかったのも気がかり。
前述しましたが、私はこの各ヒロインとのストーリーにこの作品の魅力を特に強く感じました。
ハンディキャップを背負いながら生きるヒロインを支えることを決意する那由太。それはどれほどの重みなのだろうと自分に置き換えてみたり、また、思春期の少女がハンディを背負うことの心労は想像を絶するものなんだろうとなんともやりきれない思いを抱えたり。
尺としてはどれも短いし、惚れる理由付けも別にあったりするのですが、主人公那由太の優しさやハンディを持つ人たちへの配慮や考え方に素直に感心させられた。寄り添いながら互いに支えあい生きていこうとする姿はとても胸にくるものがありました。まぁどの子とも結局うまくいかないのですが、それはそれ。物語が進むにつれ彼女たちへの印象も変わってくるのですが、これもこれ。あくまで前半のヒロインルートはという但し書きになりますが、良く出来ていたという評価を出したいと思います。
本筋の樺音ちゃんに関してはもう見てて辛かった。ただ某考察サイトさんを拝見しても思ったのですが、この子もこの子でイチモツあるというか、印象がただの『良い子』で終わらなかったことは個人的に良い引っ掛かりの残り方だったように思います。
物語の仕掛け云々について思うことはダラダラと長くなりそうなので割愛します。
・キャラについて
みんな健気でいい子たち・・・なのは前半までですかね、、、。まぁそれはおいておきまして、霍がお気に入りでした。
バカじゃんバカじゃんがかわいい。バカじゃんバカじゃん!
ただこの子にもいろいろと伏線があって。。。とかは言い出すときりがないですね。EdEnの真実に触れるとどの子もそれ相応に抱えてるものが見え隠れするので印象が変わってくるのは試みとして面白いと感じました。
特筆すべきは那由太くんでしょうか。優しさあふれる平和主義者というとエロゲでは没個性化の極みという感じですが、本作では彼の考え方や心情がしっかり描かれているので総じて印象の良い主人公でありました。
彼に施された仕掛けも面白いですし、それに伴う演出も良く出来ている。物語中盤までは彼の抱く各キャラクターの人物像とプレイヤーが抱くそれとでさほど差異はありませんし、プレイヤーの分身という意味での役割も十二分にこなせていたと思います。
彼の苦悩から選ぶ結末にも共感できましたし、読後感のなんともいえない感じは決して不快なものではなく、これもまたひとつのハッピーエンドなのだろうと切なく、けどどこか清々しくさえ感じました。
あと、私は割とツンデレ系大好物なので小鳥ちゃんもすきだったのですが、まぁうん。。。
最後に本作に関わる声優のみなさまはどなたも表現力が高く、作品の没入感に一役も二役もかっていたことを付け加えさせていただきます。
・エロについて
もうここですね、不満の最大点は。ここさえ良ければ90点台付けてました。
内容にではありません。むしろ内容は良かった。行き過ぎた卑語、この一点に尽きます。
こういう作品(狂気であったり大仕掛けであったり)に一番必須なのはプレイヤーの没入だと私は考えています。主人公を通して作品世界に入り込み疑似体験することではじめて仕掛けが活きてくる。要はプレイヤーを俯瞰視点に退かせてはダメなわけです。
その意味に於いて、今作のエロシーンは役割を果たせていなかった。純愛シーンでぶりぶり勃起ち〇ぽとか言われてもね・・・私はただただ引いてしまった。それまで良く出来ていたのに、です。一気に現実に引き戻され「うーん・・・」となってしまったのでここは完全にマイナス評価。
欲望に忠実なのはちゃんと理由付けがあるにせよ、あそこまで卑語を使うことはないと思うし、あくまで現実的な範囲に収めるべきたっだ。この構成と仕掛けならばシーンによってメリハリも付けられただろうし、前半はもっとリアル寄りのエッチシーンに舵を切るべきだったと思います。
というわけで、”非常に惜しかった”という作品でした。
お話の内容だけみれば良く出来てるし、物語の構成も謎もしっかり気を使われていて改めてプレイすると気づくことばかり。一見して抱く疑問にはちゃんと答えが用意されているし、それでも謎な部分に関しては考察サイトさんなどを巡ってみるのも面白い。
良く出来ているからこそ、ですね。小さな不満が大きな理由となるのは。その一点だけ、とても残念に思いました。
とはいえ良い作品という評価までは揺るぎませんし、素直にやって良かったと思えた作品。
こういうゲームがあるからエロゲってやめられないんだな、と再認識したゲームでした。