KIDの3大名作といえば、「メモオフシリーズ」、「インフィニティーシリーズ」、そして本作。「My Merry May」で紡がれた物語が「My Merry Maybe」で一気に繋がり、真相を導き出す様は圧巻の一言。人間と人間そっくりのロボット「レプリス」はいったい何が違うのか?そんな疑問に別々の角度から探ってきた彼らに、明確な答えを教えてくれる。そう、それはきっと「自我」の違いなのだと。極めて長いが、訴えかけるメッセージ性と伏線回収する手腕は今の時代でも上位に入る。一度はプレイしてほしい、古典的傑作
だから君に与えよう、心という概念を
・ストーリー
「My Merry May」
寮制高校「津久見高校」に通う「渡良瀬 恭介」は、退屈ながらも穏やかな学生生活を過ごしていた
高校生になってから二度目のゴールデンウィークを迎えるも、特にする事もなく暇を持て余していた彼のもとに、アメリカにいる父親から大きな荷物が届く
それは父と兄がアメリカで研究開発している甲種人型人工生命体「レプリス」の女性型が収められたカプセルだった
思わぬ贈り物に、恭介はこれから始まる彼女との楽しい生活を想像しつつ、カプセルに組み込まれた起動装置を作動させる
だが起動処理の終了を目前にして起こった落雷によって、処理は中断
思いもよらぬ事態に戸惑いつつ、どうにか彼女を落ち着かせたものの、これからの事を思い、頭を抱える恭介……
こうして、人間の子供のような振る舞いを見せる、人ならざる少女をめぐる慌ただしくも楽しい五月が始まったのだった
「My Merry Maybe」
大学生の岸森浩人は中学校での教育実習に臨むべく都会から遠く離れた、漁業と農業を主な産業とする過疎の町「清天町(せいてんちょう)」を目指していた
わざわざ迎えに来てくれた校長先生の運転する軽トラに揺られ、町へと続く夜道を走っていた浩人は路上をさまよう謎の少女に遭遇
倒れ込んだ彼女を保護し、町唯一の診療所に運び込んだ
診療所の医師である玉村先生からの処置を受けた彼女は翌朝になって目を覚ましたが、「レゥ」と名乗った彼女は所有者不明のレプリスである事が判明
話し合いの末、彼女の所有者が見つかるまでの間、浩人がレゥを預かる事となったのだった
プレイ時間は45時間。攻略√はMy Merry Mayヒロインら→間→My Merry Maybeヒロインら→エピローグ
過去2作が1作に収録され、さらにエピソードが追加されたため、むちゃくちゃボリューム
My Merry Maybeのライカ→エピローグの快感を味わうゲーム……だけではないですよ?
少なくともMy Merry MayをクリアしなければMy Merry Maybeの感情移入は難しいのですが、それにしてはMy Merry Mayはメッセージ性がMy Merry Maybeに劣るため、非常に退屈するかもしれません
My Merry Mayでの見所は、何でも言うことを聞くリースの√が、まるでバッドエンドのようなEDロールで流れるところ
本作のシナリオの根幹とマッチして、凄く印象的でした
さて、本作のテーマは「自我」です
人間であれ、レプリスであれ、自分を自分と認識できるのか。我思うゆえに我あり
逆に言うと、人間とレプリスの違いというのは、体の構造とかではなく、極めて精神的な部分なのではないでしょうか?
ライカ√で「私はレゥ?それともライカ?」と、己がどちらか認識できないライカ(レゥ)の絶望は推して測るべしですね
「自分とは一体何なのか。教えてよ」と迫る場面は、インパクトありましたね。プレイしていてガッチリ心を持っていかれました
それ以外でも、自傷行為でないと自我が保てない半身人間半身レプリスの鏡
逆に、自我を保ち、己の意思でライカにデバイスを捧げるレプリスの帆乃香
この2人のシナリオの対比は、忘れられませんね。てかMy Merry Maybeはヒロイン7人のうち5人レプリスなんですね(笑)
My Merry MayとMy Merry Maybeを通して、渡良瀬家の背負った業とその後もしっかりと書かれていたのは凄いです
My Merry MayとMy Merry Maybeの恭平が同じ人と思っていたので、見事に騙されました
……いや、おかしいと思ったんですよ?だって晴天村が晴天町になってるし、ラジカセが極めて古いモノって認識になってるし
どう見ても時間軸が違うよなぁ…と思いつつ、恭平マジックに騙される事実。まさか、43年間の恭平の贖罪の物語だったとは
同じ器に同じ記憶を入れたとしても、やはりそれは「別個体」なのだ
恭介は「別個体」のレゥを拒絶してエピローグで贖罪する。浩人は「別個体」の穂乃香に新しい恋をする
しかし、レプリスに多重性人格障害が起きるという展開は、おもわずなるほど!と思っちゃいましたよ
・総評
高いメッセージ性と渡良瀬家を主体とした伏線回収が見事な作品
2011年では、こんなシナリオを書く作品はないような気がします
My Merry Maybeでカタルシスを感じるためにはやはりMy Merry Mayをしなければ……
総プレイ時間50時間をする覚悟がある方のみプレイしてください。きっとその努力は裏切らない作品です
・一言感想の羅列
①「恭平と親父さん、ずいぶんいかつい眼鏡してるんだなぁ」……はい、騙されました
②もとみ√で寝取られたり、由真が孕んだり、自我が保てなくなって崩壊したり、暗い話も多い
③選択肢が多く、スキップの質が悪いのが、なおいっそう長時間を実感させる
④結局、エピローグ後にみさおちゃんがどうなったのかが気になる。結城型レプリス研究してたりして
⑤レゥ&リースの「BuG?」が大好き。ただ、そこにライカも入ってほしかった