2D「対戦」型格闘「エロゲ」。フォーマットから判断できる楽しみ方は三つあります。ひとつ、エロを楽しむ。ふたつ、格ゲーを楽しむ。みっつ、対戦を楽しむ。…三番目はいったい誰と楽しめと言うのか。
・ ファミレスの格好した女の子が戦う格ゲー。
・ 全シーン「敗者へのペナルティ」であり、凌辱系。
・ この後のシリーズ展開は残念な結果。
PC9821、MS-DOS。そんな時代の懐かしい作品。1024MのHDDが一万円とかいうのも今は昔です。本体はCDではなくフロッピー。何枚もとっかえひっかえ入れながらプレイしたのを思い出します。あと、DOSシェルを立ち上げていたりすると「コンベンショナルメモリが不足しています」という文字が出て起動しない。当時PCなぞ素人だった自分は「コンベ…なんだって???」と意味が解らず目を白黒させていました。インターネットは全く普及していませんでしたし、メインメモリの別称だと気付かなかったり。気付いた後も650kのメモリ領域を確保するのに四苦八苦。エロのために必死でいろんな操作を覚えました。
「対戦に糞ゲー無し」とはよく言ったもので、対戦モードは思いの外盛り上がりました。「スト2」が爆発的なブームを巻き起こしていたこともあり、この手のはそこそこ人気があった。問題は対戦のやりづらいパソコンで、しかもエロゲで対戦する猛者がどれほどいたのかですが、少なくとも自分の周りには四人(笑)。買って来た一人の家に集まっては対戦をしたり、Hシーンを見ながらわいわい騒いだりしていました。よく考えると凄いことをしていましたね。そのうち自分でも練習したくなり、いつのまにか皆購入。自宅で練習の毎日。ひとりで遊ぶには飽きやすいゲームですが、対戦というモチベーションがあると練習にも気合いが入ります。一年くらいずっとこれをプレイしていたでしょうか。良く飽きなかったものです。
当時ですら「人形使い」くらいしか見かけなかった対戦格闘のエロゲですが、いまや完全に絶滅危惧種。売れないからなのか、開発が難しいのか、あるいはその両方なのか。いまどき、自宅に友達を呼んで皆で格ゲーするくらいならゲーセンという選択肢がありますしね。
自分の話はおいといて、そろそろ作品の話に。
当時のPCゲームとしてはそこそこ良くできていたのでしょう。なんだか奥歯にものが挟まった言い方になってしまいました。正直、「スト2」が出て既に3年が経過していたことを考えると、純粋な格ゲーとしての魅力に富んだ作品だったとは言い難い。強弱のみで中攻撃が無かったり、空中ガードが不可だったりというシステムの甘さは言うに及ばず、キャラクタごとのダメージ差、キーボードでの操作なのに妙にシビアなコマンド入力を求められることなどバランスも少し取り損ねていた感があります。
キャラクタ数は12と結構多いし、技もそれなりに豊富。ちゃんと発動時には技名を叫んでくれます。グラフィックも粗いドット絵ながら凝っていて制服のデザインがしっかりとわかるし、ダウン時にふとももがしっかり見えてえちぃ!「スト2」で春麗のダウングラにドキドキしていた自分のようなダメ人間には嬉しい演出でした。戦闘前には各キャラごとにアニメーションで名乗りあげがあり(それなりにハイクオリティでした)、雰囲気もぐっと盛り上がる。ただし、ストーリーはゲームをしているだけではほとんど理解不能。一応しっかりした設定があるだけにもうちょっとADVパートをつけるなりして魅力を伝える工夫があっても良かった。
やれ3D格闘の回り込みだ空中コンボだという今となっては時代遅れも甚だしいですが、幸か不幸か当時の「最先端」はスーファミ。自分がプレイしたのは発売後何年か経った後でしたが、それでも絶望的な質差は感じませんでした。ただ、「スト2に近づけようと頑張っているな」と思うと言うことは所詮コンシューマ格ゲーの「劣化コピー」として認識しているわけで、もとからPCゲームは軽視されがちなことを考慮しても、オリジナルの良さみたいなのはそれほど無かった。
映画などもSFXやVFXといった技術の進歩で、特にアクション映画などは最近の物のほうが圧倒的に迫力があります。しかし作品としてみたとき、過去のものが今のものに劣るかといわれると、一概にそうとは言えない。それは映画にとって映像が全てではないからです。映像はあくまで作品の要素のひとつであって、観客を楽しませる他の要素とのバランスも大切な要素となる。エロゲにしてもそれは同じ。本作であれば、大本命のHシーンも加えて考えなくてはなりません。
で、肝心のHですが、原画は木村貴宏さん。当時は竹井正樹、横田守さんらと並んでたいへんお世話になった原画家さんのひとりです。けしからんくらいえちぃ。今でも大好きです。ただし、内容はいまの環境からすると恐ろしく物足りない。各キャラCG三枚。脱がす → 嫌がるのを犯す → 絶頂する という三シーンで終了。しかも一シーンにつき数回クリックするとセリフは終わるという薄さ。CG集を見ている気分です。格闘パートでいろいろ興奮するし、自分としてはじゅうぶん抜ける絵。更に足りないところは妄想で補うので「素晴らしい素材だった」と言い切っても良いのですが、それでもHの少なさは残念。
もはや悪い意味で「古典」的な価値しか無くなってしまったように思えますが、魅力的なキャラ、奥行きのあるストーリーが用意されていたのは事実。それだけに、その後格ゲー路線を目指して進んだのは結果的に失敗だったと言えましょう。コンシューマとの差が埋めがたいものになり、時代に取り残された感があります。「BALDR」シリーズという名作を生み出した戯画さんですから技術力が低いとは思わない。ただ格ゲーを期待するユーザーの目が肥えていることもあり、独自路線でなく既存のものを色々とりこんでいく必要があったのかも知れません。え?「V.G. Adventure」?記憶にないなあ(遠い目)。