擬似インターネットブラウジングゲーム。今のVNやAVGに慣れたプレイヤーだと、多分、何をしたらよいか分からないだろう・・・そんな作品。ゲームとしては、新機軸だったし、試みとしては面白かったと思うが、その面白さを伝えるユーザーアビリティの要求度合いが高すぎて、LIBIDOのマイナー性を象徴する一作と言える。
古参エロゲーブランドの一つ「LIBIDO」解散まで、あと40日を切った。別に、このブランドに思い入れなどはないのだが、いわゆる普遍的なユーザー志向を目指したエロゲーメーカーが主流になる中、あくまで、特殊ジャンルの性描写に拘り続けたブランドの解散は、エロゲーを取り巻く状況の変化を端的に示しているような気もする。LIBIDOの問題点は幾つかあったのだが、例えば、システム的な不満点への対応(メッセージ早送りだとか回想モードの追加、何より、メッセージ表示が激遅。)が遅れた上に、シナリオ重視の潮流のさなか、まるで、ストーリーって何?・・・的な作品を多発した。結果的にはブランドへの信頼性を無くし、固定ファンの年齢層が上がるに従ってファン層が薄くなるのに対して、その補充たる新規プレーヤーの獲得に失敗したと言えるのだろう。JOY氏自身の原画は美麗とも言えるし、遂にそのクオリティは衰えることはなかったのだが、LIBIDO特有の塗りは、一時、急激に劣化したときもあったし、シナリオの向上は、とうとう達成されることがなかった。キャラクターデザインから、ヒロインの人物関係まで同じで、名前だけ変えて別作品に仕上げるとか・・・手抜きに等しいことをやりまくった1999年。多分、この時からの凋落に歯止めがかからなかったのだろうな・・・とは、容易に想像できる。何にせよ、ユーザーに“やる気がない”と称されてしまっては、幾ら老舗と言えど、ファンは離れる。ただ、LIBIDOがまったくもって物語性に重きをおかず、性描写のみに特化した姿勢は、別の見方をすれば、LeafVN以降、エロ度低下が著しくなったエロゲー業界と、それに反する嗜好を持ったユーザーの支持を受けていたのも事実ではあった。その流れで言えば、LIBIDOは、エロだけが存在意義だった時代のエロゲーを最期まで作り続けて終わろうとしている。そして、その自らの否定を最終作「花々の想ひ…。」でやろうとしているとすれば、倫理規定に逆らい続けた過去と、逆に迎合して作品クオリティを下げた過去の・・・双方を併せ持つブランドらしい“矛盾した”花道なのか?・・・・・・確かに、LIBIDOに相応しいかもしれない。
「絵柄や、システム、ストーリー等の要素の全てを一般的な美少女ゲームのスタンダードなものを踏襲し、今までのLIBIDOとは違う作風にチャレンジしてみようという試みでした。」(---「花々の想ひ…。」ゲーム内容紹介)
OHPでの「花々の想ひ…。」紹介ページには、“一般的な美少女ゲーム”“一般的なアドベンチャーゲーム”“最近の美少女ゲーム”“LIBIDOらしくない”“LIBIDOらしさ”“今までのLIBIDOのスタイル”と言った、他メーカーと自らを比較するコトバが並ぶ。LIBIDO自身も、その差を意識し、それを改善できなかったことが、自らの命運を絶った・・・とでも言うかのようだ。
以上、前置き。
さて、「Fifteen ~すくうるがあるずデジタル読本~」は、放課後シリーズ(放課後恋愛倶楽部 ~恋のエチュード~・放課後マニア倶楽部 ~濃いの欲しいの~・放課後ファンくらぶ・・・今にして思えば、恋愛倶楽部とマニア倶楽部における、同一ヒロイン・同一人物設定で、双方それなりの評価を得てしまったことが、LIBIDOのキャラクター造形劣化、キャラクター使い回しを何度も行わせる一因でもあったのだろうか?)で、評価が高まった時代のLIBODOの作品。正確に言えば、システム的な意味におけるゲームではない。
「Fifteen」は、擬似インターネットブラウジングゲーム。
今のVNやAVGに慣れたプレイヤーだと、多分、何をしたらよいか分からないだろう。そんな作品。一応、流れを言っておくと、タイトル画面後、プレイヤーは、「すくうるがあるずデジタル読本」という名前の擬似サイトに放り出される。システムはIEを模していて、ブラウジングができるように、IE同様のアドレスバーや検索、お気に入りボタンも完備している。この作品は、そのブラウジングそのものが、ゲームであって、ネットサーフィンをする感覚で、エロ画像を探しましょう・・・が、要は、ゲームの目的。この擬似サイト、「・・・とある教師が自分が担当する学生の写真を公開しているホームページ」という設定なのだが、プレイヤーは、当初、これを閲覧することしかできない。そして、このサイトは、ヒロインの画像が表示されているものの、実に健全なサイトである。これから、どういう風に先に進めるのか?・・・この作品の楽しさは、その探求心をどう捉えるか?・・・で、大分違う。極端に言えば、ネットサーフィンでサイトを検索する楽しみがあるか無いかということだ。このネットサーフィンをしているように“見せかける”というシステムは、意外に凝っていて、プラグインのダウンロード、インストール画面はキチンと存在するし、慣れてくれば、直接、アドレスバーにアドレスを入れても目的のページは閲覧できる。
まず、先に進めるには、裏「すくうるがあるずデジタル読本」を見つけることが必要。これは、そう難しくなく、検索エンジンであるコトバを検索すればいい。ヒント?・・・キチンと表のホームページに書いてあるはずだ。このように、プレイヤーは、ページのキーワードを自らピックアップして、検索エンジンにかけることを繰り返さねばならない。同じように、裏に入っても、そのままではHシーンは閲覧できない。現実のエロサイト同様、パスワードが必要なのである。よって、次は、このパスワードを求めて、キーワードを検索することを繰り返す。この作品、やることはこれだけ。正しいパスワードを入力できれば、そのテーマに沿ったヒロインとのプレイが再生されるから、これを全キャラクター15人+1人行えば、フルコンプである。よって、エンディングなどは存在しないし、シナリオは、本気でHシーンのみ。ゲーム性は、キーワード検索とピックアップの作業だけだから、これが“面倒な”人にはお勧めできないし、作業感云々を指摘する人は、そもそもしない方が良い。
Hシーンは合計16人のヒロイン分だけ存在し、全てアブノーマルのHシーンで占められている。アナルセックスから、露出プレイ、放尿から経血を舐めて恍惚とする主人公。当然、スカあり、放置あり、レイプ紛いあり、前の処女をバイブで破って、アナルセックスだとか・・・そのHシーン一つ一つの濃さは、LIBIDOのお家芸っぽい。CGも、倫理規定ギリギリで、当時のLIBIDOのチャレンジャーぶりが伺える。ただし、AVG部ウィンドウのメッセージ早送りとかはできないし、その表示スピードの遅さはいかんともしがたく、AVG部自体のプレイ感は極悪に悪い。ゲームとしては、新機軸だったし、試みとしては面白かったと思うが、結局、その面白さを伝えるユーザーアビリティの要求度合いが高すぎて、LIBIDOのマイナー性を象徴する一作にもなった。
普段、我々が感じていない“ゲームの操作性”の大切さに、気付かせてくれる作品と言える。