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畢竟マインドぴspringさんの102年後のヒトたちの長文感想

ユーザー
畢竟マインドぴspring
ゲーム
102年後のヒトたち
ブランド
幻創映画館
得点
76
参照数
131

一言コメント

近未来の終末的な舞台の中に見えるヒトらしさが印象に残った

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

演出は良かった。背景でAI絵の素材が使われている(と思う)のだが、音や動きに合わせて表示されて違和感も無い。hシーンは絵はシンプルながら、シーン数、シチュの多さとカットインの演出でカバーされてエッチだった。

キャラはリディが好きだ。
送り出したメイツたちを思い出しながら独り酔っ払っていたり、発散のために暴れたり…。
あの低音が癖になった。
息の抜き方を忘れてしまって、遊びにあたふたしているところが特に可愛かった。



ネタバレ↓↓↓↓↓↓↓












『わたしたちはしあわせでした。』
結びのこの文に正直怖い、と思った。実際のところは抗う術が無かったから。
感染症が脳にまで到達するなんて悲惨にも感じた。しかし三人の間にはそんな雰囲気は微塵も無い。

不老を得て、命を作るという業に手を染めたヒトではあるけど、個人で見れば変わらずちっぽけでしかなくて、人間の尊厳を残した終わりにその輝きを見た。

最後の場面にすれ違ったサヤを祝福と取るか、寂しい別れと取るかプレイヤーに委ね、間を取る形で終わったことはとてもエモーショナルだ。レイトにとっては最期の時を決める決定的な出来事だったのだと思う。

純粋な人間であるリディとレイトの二人は80歳、普通の基準で言えばもう終わろうとする中でようやく安らぎを見つけている。愛しい人と共に逝くこと、見た目の差別なく一人として愛されること、と老いを意識しない、若い時間に置き去りにされた幸せに二人が気づけて良かった。


しかし、当人たちが幸せに終わったとしても私は全員が生きたまま終わって欲しかったので、少し不満があり、助かった可能性を考えてしまう。

幸も不幸も多くの出来事にヒトらしさを感じるが、組織はこれに倣うべきではなかった。
少なくとも致死性のウイルスに罹った場合の治療、隔離等見殺しにする意外の方法は行政サービスとして用意、研究するべきだったように思う。

欲望の捌け口としての一面を持つメイツを普及させてしまった責任もあり、その流れに介入できたのは政府くらいなものだったはずだ。

「常に利便性は追求されそれは満たされていく」
「それが進化であり、社会であり、ヒトなのよ」
「後に戻った試しは一度もないわ」
大統領府のこの諦めたような台詞に、102年の内に何が起こっていたのか覗きたくなった。