「イチャラブ最高神海原」レベル10と「ハーレム天使オノマトペ」レベル8と「厨二病堕天使燃えゲ」レベル6をメガテン三神合体させ、生まれたのがこの「吸血姫のリブラ外道ゲー」レベル4である。このタイトルの「リブラ」とは「ライブラ」つまり「天秤」を指し、物語としても吸血鬼と人間、またはハーレムと純愛と言ったような「価値観のバランスを探る」ような展開になるのだが、この物語と「イチャラブ」「ハレーム」「厨二病燃えゲ」の組み合わせが最低最悪。正妻と最後は悲劇だがイチャラブしつつイリスちゃん(ルート無し!)をプチレイプして責任取らずに終了とか、世界の滅亡よりも自分のアイデンティティの方が大事話が連発され、まともに主人公の葛藤に付き合う気が失せるプロットになってしまってる。唯一素晴らしいのは、主人公が意に反して発生させる魅了からの魅了Hであり、ヒロインを寵姫にしちゃうメロメロ背徳感が物語と共に伝わってくる。
・総CG枚数(差分無し)90枚 総回想数 25枠
・キャラ別CG(エロCG)&回想数
カレン 17枚(10) 5回
マリ 17枚(10) 5回
葵 18枚(9) 5回
リコリス 14枚(7) 4回
その他 24枚 (10) 3回
(備考:その他エチはサブキャラの櫻子と楓が2回ずつ。イリスが1回(本番あり)。ハーレムが1回となっております。もちろんイリスには攻略ルートがありませぬ)
・クリック数
簡単な説明:クリック数つーのは、既読スキップオン+テキスト速度ノーウェイト環境下で計った、ゲーム開始時から作品を終えるまで各シナリオ毎のクリックの合計回数のこと。以下そのメリットについて。
(1)初回プレイ時の「共通」+「個別」のシナリオの総容量が分かる
(2)2周目以降の、共通シナリオを除いた個別シナリオの総容量が分かる。
(ゆえに、一周目のヒロインルートはクリ数が多く、二周目以降はたぶん半減するが、一周目の「個別ルート」が他よりも長いというわけではないので注意)
(3)エロテキストのクリ数と。それを含んだ全シナリオのクリ数を比較すれば、両者の割合もある程度はわかる。
(4)テキスト速度の環境さえ同じなら、プレイ時間と違ってユーザーによる計測誤差は少ない。
といった四点が指標として役に立つとバッチャが言っていたような気がしないでもない。
(5)BCは主人公とヒロインが恋人になる前までのクリック数で、ACは恋人になったあとのクリック数ね。
「その恋人になった「まえ/あと」ってどう定義するの?というのはなかなかにむずかしい話であるが、大抵のエロゲには告白CGなるものがありますからそこを基準にします
そういうCGがなかったり、なんかズルズルだらしない感じでずっこんばっこんなシナリオの場合は、まぁ僕がテキトーに判断しますが、その場合は「?AC6992」みたいに?をつけまつ。
そういや「誰とも付き合わないシナリオ」っていうのもあらわな。そう言う場合は特にACとかBCとかは書きません。
1周目 カレン 「17184」 BC9341 AC7842?
2周目 マリ 「11993」 BC5490 AC6503?
3周目 葵 「10258」 BC5892 AC4366?
4周目 リコリス 「4396」
(備考:リコリスは葵ルートからの分岐で、まぁ主人公と付き合う付き合わない話は基本無いので、BCとかACとかは無しです。
残りのヒロインのACは?がついてますけど、これは「ヒロインがデレ始めた」あたりからカウントしてることが多く、正式に恋人として付き合うって話になったら(葵にはそんな話はありませんけど)たぶん2000Cくらいが妥当)
・各キャラのHシーンのクリック数
いま忙しいんで後で計測して公開する予定です。まぁカレンとマリのエッチはわりとしっかりしていて、葵とリコリスは結構テキトーって感じですかねぇ。だいたい200クリ前後。
☆作品の大まかな評価。
簡単な説明:これはもうそのまんまですな。一応Z~SSSまでの評価基準が存在するらしいのですが、大抵はC~Aの間に収まっているようです。
「C」がだいたい「やってもやらなくても別にいいんじゃね」。「B」が「やればけっこう面白いんじゃね」。Aが「やってないヤツは人生つまないんじゃね」。
といったかんじになっております。あと「全体評価」っていうのは、その項目における「作品全体」から感じる何となく駄目だとかイイとかそういう評価です。
あと、これは当たり前すぎて却って説明しにくいものですけど、僕の定義による「シナリオ評価」ってヤツは「感動させなきゃダメ」とか「深いテーマが無きゃダメ」とか、
そういうヤツではなくて、基本的には「その作品が目指していると思われるものが、どれくらい達成されているか?」というような「完成度」評価に近いものかも知れません。
ですから、原理的には抜きゲであろうと萌えゲであろうとシナリオゲであろうとも、その作品が目指しているものが完成されていると判断すれば、シナリオ評価は高くなるって話です。
・シナリオ評価
カレン B
マリ B+
葵 C+
リコリス C
全体評価 B
・エロ評価
カレン A-
マリ B+
葵 B-
リコリス C+
全体評価 B+
・イチャラブ評価
カレン B-
マリ B
葵 C
リコリス C
全体評価 C+
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☆シナリオについて
(1)織田無道こと俺MUNOOOO主人公の復活
この作品をトラベリングスターズと比べるのはわりと酷な話で、まずこっちはまぁイリスちゃん攻略不可はさておくとしても、きほん「コンセプト」詐欺はしていないし、作品完成度もこちらの方が2倍くらい高いし、
最終的には「魅了H付近は凄く良い」みたいな作品の独自性を打ち出せているわけだが「作品の基本プロットと此処の表現要素がバッティング」しており、それが周回するたびにプレイヤーのツラミが蓄積される点は共通している。
僕はそのような作品を「賽の河原ゲー」と勝手に呼んでいるわけだが、これらの作品はこの「寓話のように」そもそも「最初から全く詰まらない」わけではない。寓話の比喩で言えば「石を積めない」わけではない。
そうではなく、作品自体はそれなりに面白く「石が少しずつであれ積まれていくわけ」だけが、最後には「必ず鬼が現れてその石を蹴散らしてしまう」ということが、だんだん確定していってしまうわけだ。
最初のうちは「最後に鬼が現れる」のが解らないから、プレイヤーの石つまり期待は少しずつ積まれていき、最後に鬼が現れてその期待が蹴散らされたとしても、良くも悪くも「期待が裏切られた」ようなショックは生まれる。
しかし、周回するにつれて「最後に鬼が現れるのはデフォ仕様」だとわかってしまうと、もう最初から「どうせ裏切られるだけだから期待するのはやめよう」とわかってしまい、
最初のうちは楽しめていた「個々の要素」すらも、どうせあとで破壊されるのはわかっているんだから、どーでもいいやとスキップ気味になってしまう。別の言い方をすると「死んだ眼」でプレイすることになるわけだ。
この作品のプレイ中の僕はまさにその通りだった。いまから見ても最初と二周目にやった「カレン」と「マリ」ルートは、残りの「葵」と「リコリス」ルートに比べたら、
相対的に完成度は高いと思うので、最後に微妙なシナリオをやったと言うところもあるかもしれないが、それ以上に最初の「カレン」と「マリ」によって、この作品の出来は基本このレベルで、
「これ以上に期待出来ない」と言うことがわかってしまったからだろう。そして「それ以下」のシナリオを見せつけられてしまうと、それはもう死んだ眼でプレイし続けるしか無くなるわけですよね。
ゲスなレビュアー根性丸出しで言わせて貰えば、最後に2ルートをやったのはもう既にヒロイン愛とかエロゲ欲望とかでは全く無く、
>「自分がこの作品の弱点や欠点をクリアにしたい」
という単なる下らない整合性欲求のためでしかない。むろん、そんな気持ちでエロゲをやって詰まらないのは全くその通りであるが、この作品の美点をクリアにするために、
その傲慢が許されるかどうかは、読者の皆さまにご判断をよろしくお願いしたい。僕の勝手なご希望としては、メーカーさんが批判を受けて「この系統の次回作」を作ってくれることを願っているものの。
枕はさておき、そろそろ本題に入らせてもらおう。その前に一応断っておくが、今回の僕のレビューは作品のプロットを「ほぼ全ネタばれ」するので、そこらへんはご了承を。
さて、何から話を始めたら良いのか。この作品、作品の完成度はあまり高くは無いが、それは別にプロットが好い加減だとかそう言う話ではなく、それなりに手の込んだプロットが、
そのシナリオの個々の表現要素を有機的に統一できていないという意味で完成度が低いわけだ。逆に言うと「シナリオプロット」だけが先行しすぎている感がある作品である。
まず大まかにそのプロットの枠組みを説明しておくと「大きな一本道の基本シナリオがあって、その一本道のシナリオのなかでヒロイン毎の分岐ルートが存在する」ような作品である。
このようなシナリオは時々「一本道シナリオ」とか呼ばれるわけだが、その呼び名だと「ヒロインルートが存在しない」ように思われるので誤解が生じる恐れがあるし、。
また「共通シナリオが大半を占めている」と言うような言われ方も偶にするが、それも「シナリオが似てる」と言うことと「共通テキスト(既読スキップできるもの)が大半」がよく混同される。
「ヒロインルートが存在しない」のではなくて「ヒロインルートが存在したうえ」で「どのヒロインルートも共通した基本シナリオ」を辿るようなシナリオ構成なのであるが。
例えて言えば、先月のエロゲ発売に同じエロゲオタクヒロインが「恋カケ」を全員買って、その反応を様々に語るような物語構成といえば良いだろうか。
「恋カケを買う」という行動と「恋カケの物語内容」は「全シナリオ共通」であるが、その「恋カケの反応」自体はそれぞれのヒロインごとに違うわけだ。
このようなシナリオを何というかは、ぶっちゃけエロゲオタの中でも基本合意は出来ていないわけだが、まぁ僕は別にその基本合意を得るつもりは無いので、
ここでは整理のために「全体物語シナリオ」という無骨な表現をさせて頂く。その全体物語が先にあって、その中で此処のヒロインルートの行動によって物語が変化するみたいな構成。
んで、この作品の「全体物語」がどういうモノかというと、基本プロットは体験版をやって……というブンなげが出来ない中途半端の体験版の為に僕が最初から説明しなくちゃ逝けない。
、
主人公は平々凡々な男子高校生であったが、母親の死を切っ掛けにして、イリスちゃんという吸血姫の始祖に攫われて、お前はアンプロシェという三代始祖の末裔だと言われ、現当主が死んだから中途半端に吸血鬼に目覚めさせられる。
なんとかイリスの元から脱出して日本に舞い戻った主人公の元に、アンプロシェの元メイドの「マリ」と三代始祖の一家オフィシナリス家の末裔で主人公の許嫁と名乗る「カレン」が現れて、
主人公に吸血鬼に目覚めて欲しいなぁーとヌルくお願いしながらも、平凡な日常と人間であることを守りたい主人公はのらりくらりと躱しながら、ヌル日常を過ごしていたところに、
吸血鬼ハンターの「葵」と、吸血鬼ハンターであったがイリスに眷属化された「リコリス」が現れて、葵は最初主人公を敵と認識するものの、
何らかの目的の為に街の人を襲い性気を集めてるリコリスを止めて元に戻すために、主人公と協力関係を結びリコリスとの戦いが始まるわけだが……
っていうのが、だいたい体験版辺り、共通ルートで言えばその中盤あたりまで。んでこっから個別ルートに分岐していくんだけど、まずは個別ルートの内容を語る前に、
その全個別ルートでだいたい明かされる「全体物語」についてここでネタばれしちゃおう。
まず、主人公とイリスとカレンの「三代始祖」の吸血鬼一族って言うのは、元は別世界からやってきたエウリマンで中国の南シナ海での暴走を止めるためにラッセンを……
っていう冗談はさておき、別世界からやってきたエイリアンで、この世界が居心地が良くて住み着いたのね。だけどそのままじゃ死んじゃうので生命維持の為に人間の吸血が必要だった。
でも、単なる自分たちのためだけに生きていたわけでは無くて、吸血鬼がいた元の世界とのワープホールに見たいのが出来ちゃったから、そのホールから地球を侵略しようとする悪い吸血鬼をを封じるために三大始祖がいなきゃいけなかった。
このことを知っているのはイリスちゃんだけで、他のヒロインは知らなかったんだけど、イリスちゃんやカレンちゃんの父親が「主人公を始祖に目覚めさせよう」としたのは、
「半分くらい」はそこらへんが原因で、主人公が始祖に目覚めなきゃホールが開いて悪い吸血鬼が世界に溢れちゃうよーっていうのが、この「全体物語」の基本設定にあるわけだ。
んでルートによっては「もう半分くらい」のイリスちゃんやカレンちゃんの父親の行動理由が明らかにされたり、その「異世界の悪い吸血鬼」と葵やリコリスとの関係性が語られちゃったりして……
まぁこの時点で「この手の作品の失敗作」をやったユーザーの皆さんは、僕が言わんとすることはだいたいわかると思うんですけど、それ以外のユーザーの皆さんのために説明しておこう。
この作品の第一の欠陥は、上の「全体物語のシナリオ」と「この作品が書こうとしている人間と吸血鬼の葛藤といったテーマ性プロット」が基本的に齟齬を起こしていることである。その本質ポイントを一言で言えば、
>「全世界を守るという大義名分があれば、主人公はとっとと吸血鬼に成れば良かったんじゃね?で葛藤テーマが殆ど無効化されてしまう」
と言うことである。もちろん、このシナリオは「それなりに手は込んでいる」のは事実。確かに主人公が葛藤してる「大半のシーン」において、上の「全体物語設定」を主人公やイリスヒロイン以外の基本知らないし、
またその「全体物語設定」を知ってるイリスやカレンの父親は「主人公にその事実を知らせないもう半分の理由」があるので「主人公が全体物語設定を知らずに悩む」シナリオ展開自体は「矛盾はない」と言える。
但し「シナリオ上の矛盾は無い」という話と「そのシナリオが個々の要素を上手く有機的に結びつけている」という話は「似ているようで全く違う」わけだ。
それが先の本質ポイントの話であり、これを別の言い方ですれば「今までアレコレ悩んでいた話が、後になって知った事実によって悩む必要なんて無い」とわかったときの馬鹿らしさである。
なるほど、世の中にはそういうことは間々あるし、さらに言えば「後になって見たら下らないことだけど、その悩みによってヒロインとの仲が進んだ」という話は当然あり得るし、それはそれで良いと思う。
だけどそれは「あくまで一周目」しか通じない話だ。
その全体物語設定を「ユーザー」が知らない上で、吸血鬼と人間との葛藤に悩む主人公にユーザーもそれなりに親近感や共感は沸くだろう。だけどその全体設定を知った二周目以降に先の葛藤を見たら?
さらに言うと、この葛藤プロットは主人公が「全体物語設定」を知ったあとにも、まったく説得力が無い形で(マリシナリオを除く)どのシナリオでも「ラストの悲劇のために」利用されるので
主人公やヒロイン達の「吸血鬼(または人外)と人間の葛藤」という基本テーマプロットが「全体物語設定」や「全シナリオ共通のラストシリアス展開」のためにスポイルされている感はある。
最初にバッドエンド系の物語を見たら衝撃を受けるかもしれないが、どのシナリオもそう言うバットエンドがデフォだとわかったら、それに至るまでの「葛藤」も悲劇のために用意された茶番劇にしか見えないわけですね。
これはある意味エロゲならではの物語構成の問題である。一周目なら上のような物語も「ネタばれ反復」が起きないから成立するが、エロゲだと上のような「全体物語ネタばれ反復」というのが生まれてしまう。
そこらへんを上手く処理するのが、この手の「全体物語シナリオ」の腕の見せ所なのだけど、この作品は「シナリオ上の展開に矛盾は生じさせず」にまた「個々のルート上で部分的な伏線の回収を分散させている」という点では、
まま上手く仕組んでいるのものの「一周目の全体物語のネタバレによって、作品上の一番重要なテーマ性プロットを二周目以降茶番劇にしか感じさせなくなってしまう」という意味ではかなり失敗してる。
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(2)やるだけやって責任取りませんハーレムとエフェクトみてるだけぇバトルの華麗な饗宴
二番目の欠点は、まぁ以下の欠点は全て一番目の欠点とリンクしているわけだけど、先ずは普通の言い方をすれば「バトルシーンがクソ詰まらない」というところ。
これはバトルシーン「そのものの演出」が駄目って話とバトルシーンが「絡む物語のシチュエーションも駄目」って話の二つの問題があるんだけども、まずは前者から。
これねー。確か僕は最初に「戦闘ムービー」を見た時には「そんなに悪くはないのかも」とは思ったんだけども、実際に本編をやってしかも「長い間それを見続けている」とこれはかなりキツイなぁと。
いろいろと細かい問題はあるんですけど、まず一番デカイのは「10~20秒くらい」のバトルエフェクト「だけ」を「画面上で見せ続けられるだけ」仕様っていうのが一番駄目なところだと思う。
昔のプレステあたりの「3D演出が沢山出来るようになりました」時代で、RPGだのSLGだので超魔法を唱えるためにまいかいクソ長いムービーを見せつけられイライラって言うのを久しぶりに思いだしましたのぅ。
まぁこの演出は別に豪華じゃなくて「剣と剣がぶつかって熱いバトルをしています」ってだけのエフェクトで「カチーンカチーン」の効果音と武器がぶつかり合ってるミニアニメが表示されるだけなんですけどね。
これ、別に僕は燃えゲオタクじゃないから、詳しい批判はできないけど、普通のよくできた燃えゲは2~3秒の演出に留めるか、それともユーザーのクリックを阻害しないかたちで、
むしろクリックのレスポンスに反応するようにバトルエフェクトが「同期で動いていく」ように思わせる演出を心掛けるんだけど、この作品は完全にユーザーのクリックテンポを殺しているんだよね。図で表せば、
>「クリック→テキスト表示→クリック→エフェクト表示10秒くらい(その間クリックは無効化されみてるだけぇ)→クリック抑制解除→クリック→テキスト表示→エフェクト表示→以下ループ」
みたいにやっているから、このテンポ勘の悪さは最悪。もちろん何でもサクサク進めば良いって話ではないし、後で説明するように、この作品はワザとそういう「テンポの悪いグダグダな戦闘シーン」を書いてるところはある。
だからこの演出方法もある程度は、わざと「サクサク進まない戦闘」を感じさせる為にやっているとは言えるんだけども、そこらへん作り手の意図以上にユーザーには負担掛けているからなぁ。
別に僕はバトルシーンそのものは嫌いじゃ無いんだけど、この作品は「バトルシーン」に入った時点で、本当に眠くなってくるもの。あーあ、また毎度お馴染みのクソエフェクト鑑賞バトルが始まったって感じで萎えるだけやねん。
んで次にそれを「物語のバトル文脈」で説明すると、これはほぼ全シナリオに共通すると思うんだけど「まいかい準備不足なのを自覚して勝てないかもしれない状態でバトルに臨み最初は必ずフルボッコ」される展開の何が楽しいんだゴルぁ。
アインシュタインは狂気の定義を「まいかい同じ過ちを繰り返すこと」と述べたけど、そう言う意味じゃこの作品の主人公はどのルートでも狂っていて、
「吸血鬼または始祖の能力に目覚めていないオレじゃ駄目かもしれない」と言いつつ、対策にもならない対策をして、んでそれは結局役に立たず、バトル中に吸血鬼に目覚めて暴走したりしてヒロイン達に迷惑掛けるのを繰り返す……
いや、別に僕は「その展開自体が悪い」とか「そういう主人公には共感出来ない」と弾劾したいわけじゃないんだけど、どのルートでも殆ど同じことを見せられたら、そりゃもうバトル自体に期待が持てなくなるのは当たり前の話で。
本当にこの作品をやると「俺TUEEEE]作品が何で生まれたのかよくわかるね。
主人公がバトルに消極的で俺は本当は戦いたくないんだが仕方が無くやってるだけなんダー系の話って、たぶん昔からの王道の一つだったと思うんだけど、この手の話を延々とさして興味の無い人がずっと見てると、
>「戦いたくないんだったらとっとと死ねば良いじゃん」
みたいなことを死んだ眼になってつい言いたくなってしまうわけだ。まぁシナリオの機能的にこれは「主人公が最後の最後には目覚めて俺TUEEE」無双をする「身体は剣で出来ている」シナリオの伏線ではあるし、
最後の最後バトルはそれだけにそこそこ盛り上がるのは事実。でも、そこまで持っていくのが、ひたすら「主人公の無能さに堪えるだけ」っていうのは、いくらなんでも無策過ぎるとは思うんですけどー。
それにさ、これはたぶん海原さんが書いてるとは思うんだけど、この「俺は本当は戦いたくないんダー」系の主人公とさっきのスーファミエフェクト鑑賞バトルと、海原さんの「おっしゃおらー」系の、
勢いで何とかなります系のノリが、なんというか最悪の三神合体をしちゃっているところがあってのう。もう一人のライターさんの方は、良くも悪くも普通の厨二病バトルでエフェクトと無策主人公が馬鹿じゃね?で澄むけど、
海原さんのテキストだと、その無策主人公がブチ切れて、単に剣をブンブン振りまわすみたいなカッチョ悪い真似をして、さらに状況が悪化するみたいなふうにギャグっぽく書いちゃっているのよね。
いやまぁ「テキスト単体」でやるなら、そのギャグも面白かったかも知れないんだけど、そこに無様なエフェクト鑑賞ゲーが入った挙げ句、その主人公の無策っぷりって物語的には否定的に描かれてしまうので、
>単に「バカな主人公がバカなエフェクトを通じてバカなことをギャグっぽくやっているだけ」
みたいな、もうこちらとしては死んだ眼をしながら乾いた笑いをあげるほか無くなってしまうわけだ。これは後の各シナリオ評価でも指摘するんだろうと思うけど、今回の海原さんは持ち味が裏目に出ているケースが多くてファンは辛いのよ……
んで第三番目の欠点としては「全員とエッチするハーレムゲーをやるのか、それとも一人を選ぶ純愛ゲーをやりたいのか、そこらへん明確にしろよっていうか、その中途半端な融合が最悪」ってところかなぁ。
まず一言コメントで書いた話で言えば、マリルートがそこらへんとっても酷いのよね。マリルートそれ自体はこの作品の中で一番良いルートだと思うけども、それだけに駄目なところも明確になっている。
このシナリオは基本的にサブヒロインの「楓」が話の中心に絡んでくる。だからこのルートで共通ルートを含めて楓との二回目のエチがあるのはシナリオ上問題無くて、それがヒロインとのマリとも繋がってくる話なんだけど……
でも最後の「イリスちゃんH]は全く今までの話と関係ないじゃないですかぁぁぁ! いや、別に僕は「主人公の貞操を守れ」をそれほどには強く主張しない人間ではあるし、
それまでのシナリオで「俺は楓なんかを寵姫にしたくない。俺はマリだけいれば充分だぁ」とか、いやこの台詞もかなりアレだとは思いますが、純愛方向にシフトしておいて、でもイリスちゃんにはお仕置きギャグエッチはするぞ!って何やねん!
そう、この作品の主人公、本当に悪い意味で「中途半端」なのよ。基本は「Hしたヒロインに関しては責任を持つ」けれども「俺は純愛を守りたい」とか個別ルートヒロインラブの人間で、
まぁそれ自体はこのメーカーのハーレムゲー主人公と同じスタンスで問題無いんだけど、そのスタンスの現れ方がイチイチ中途半端で生温くて、しかもライターさんが「それが良い」と思ってるフシもあって本当に腹が立つ。
例えばさー。さっきの楓ちゃんが、もちろん主人公とセックスした後で、記憶も取り戻した後で、だけどお兄ちゃんは単なる近所の良いお兄ちゃんだと半分くらいは無理して関係を元に戻した後で、
マリとイチャついてる主人公を見て「あーあ、わたしも素敵なカレシほしいなぁ」みたいな台詞を言うわけ。断っておくが、別に僕が独占厨だからその台詞に苛立った話ではない(まぁ多少はモヤっとしたけれどもそれくらいは別に良い)
最悪なのはこの次の主人公の台詞ね。これがギャグなのかマジなのか判別つかないところもムカつくんだけど「お、お兄ちゃんはそんなこと許しませんからね!」とか言っちゃうのよ。
実のところ、この作品で一番ムカっと来たのはこのシーンですかねぇ。お前本当にどうしようもない主人公だなと。
楓ちゃんを手放したくないなら寵姫にすればいいだけの話し出し、マリだけでオレは良いよって話なら、さっきみたいな台詞を言わせなきゃいいだけの話じゃ無いですか。
もちろん、この中途半端さはある意味で一貫していると言える。それはこのシナリオのラストを見れば一目瞭然で、
基本的にはマリを正妻として認めながらも、主人公の家に「全てのヒロインが家族のように集まって」主人公にヌルいアプローチを仕掛けながらも、主人公はそれを軽くあしらいつつマリとイチャラブして終わりという。
これって、まぁ普通の萌えゲのシナリオとしてはそれなりに良くあるオチなのでそれだったら別に気にしないんだけど、
ヒロインの大半はセックス済みで、イリスちゃんにいたってはレイプまがいで犯し済みで、カレンとの許嫁話も解消せずに、つまりこういった諸々の責任を全くスルーしながら、そのハーレム現状について「なにも触れず」に、
ただマリとイチャラブして俺は幸せなんじゃぁぁぁ!って、ライター氏がハーレム主義者と純愛オタの両方に宣戦布告してこのシナリオを書いたと想定しない限り、全く理解不可能な誰得エンディングだとは思うんですよね。
まぁここらへんは「第一の欠点」とリンクしている。「吸血鬼と人間の倫理観の違い」みたいのがテーマになっていて、実際シナリオ上はルート以外のヒロインに手を出しちゃったりとか、
やっぱり寵姫を作っても大丈夫なんじゃね?みたいな「葛藤」がそれなりにテーマに上がったりするし、そこらへんがこの作品の面白さだと思うんだけど、
どうもそこらへんが毎回まいかい「悪い意味で中途半端に放置されてる」だけなので、段々つまらなくなったりするわけだ。上のエンディングもそういう角度から見れば、
>「最終的にはどちらの倫理観にも組みせず、主人公の中途半端な立ち位置を維持し続けている」
とかテーマ論的に解釈正当化することは出来る。でもこの「中途半端な立ち位置が正しい」っていうのが作品の既定路線だと読者がわかってしまったら、シナリオの中の「葛藤」も上手く作動しなくなるわけ。
結局主人公は、人間らしい純愛も、かといって吸血鬼らしいハーレム寵姫主義の立場に立てずに、中途半端に色んなヒロインを手の元において、中途半端に正妻だけを可愛がるだけで終わりますよーっていうのがハナからわかると、
主人公の純愛とハーレムの葛藤なんて「それって吸血鬼と人間の葛藤っていうよりも、お前が適当にヤリマクリタイのに責任取りたくないだけの話なんじゃ」としか思えず、結果的にはいつもそうなっちゃうからギャグ話にもならんのよ。
しかもこの点でも、もう一人のライターさんは、それなりに最後まで筋通してる部分はあるんだけども、海原さんシナリオだけがある意味わざとそこらへんの中途半端さを強調しているのなー。
いや、妹スパイラルや妹スタイルみたいな、いくらでもハーレムが正当化される物語でも「遇えて純愛に拘った」人ではあるから、今回のこの中途半端さの強調も海原さんの作家性だとは思うんだけど、
シナリオの完成度としては「それが悪い方向性」でしか働いていなくて、やっぱライターの作家性だけをマンセーしてればイイって話じゃ無いんだなぁとは思いましたな。
あ、言い忘れてましたけど、イリスちゃんルートはこの作品にはないのでクソッタレご了承をば。しかもこの仕様も「中途半端なハーレム仕様」と相まってクソさがさらに増しているのなー。
まぁメインヒロイン級に紹介されていたヒロインがルート無しって時点で詐欺っぽいんだけども、この作品の場合、特にカレンルートとマリルートの後半は「一部イリスルート」になっていて、
特に「カレンルート」なんてカレンちゃん死んじゃった(まぁ最後に生き返るけど)あとは主人公とイリスちゃんがイチャイチャ痴話喧嘩厨二病バトルを繰り広げる有様なんだもの。
しかもそこでのイリスちゃんが超可愛いもんだから、作り手としては「ね?イリスちゃんの物語はちゃんと描けているよね?こういうやり方もありだよね?詐欺じゃないですよね?」と思っているんだろうけど、
ユーザーとしては「イリスちゃんの可愛さを描けているのは褒めても良いが、だから余計に攻略ルートが欲しくなるんだろうがぁぁぁ!」という怒りに火を注ぐ結果になる訳でしてー。
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(3)果たして厨二病バトルとイチャラブとの融合は可能か?
そろそろフルボッコ口調はやめにして、この作品の良いところ探しでもしたいところなのだが、ただこの作品の「葵」シナリオと「リコリス」シナリオには殆ど良いところが無いのよねー。
その本題に入る前に「リコリス」ルートの特殊なフラグ構造を説明しておくと、リコリスルートは「葵」ルートの、だいたい後半あたりから分岐するシナリオになっていて、
分量としても普通のエロゲシナリオの半分くらいの長さになっている。この時点でちょい萎えはするんだけど、それ以前に「葵」ルートの方が未完成の庭でお馴染みの言葉で言えば「かき氷」シナリオ、
つまり、ライターがあからさまに後半あたりで変わっているシナリオで、しかもその変更がユーザーにとってはクリティカル死亡すぎる内容になっちゃっているのよー。
早い話を謂えば序盤から後半までは「脳筋で猪突猛進だけど本当は心優しい葵と一緒に頑張る」お話なんだけど、ライターが変わって後半になると「そんな葵が一方的に犠牲になって何もできない主人公と世界を助ける話」に
なっているとゆー、ドンだけ今までのシナリオを破壊すれば気が済むんだおしゃおらーと死んだ眼で呟くしかないシナリオに変わっちゃっているのよね。
しかも、このシナリオは「わざと主人公の無力感だの無能感」を引き立てようとするタイプなのは言うまでもない。この時点で主人公は先の「全体物語設定」を殆ど知っている状態で、
尚かつ「今すぐ始祖として目覚めないと世界が崩壊しますよ」っていうのが確実視されている状態なのに、この期に及んで「始祖になりたくないよぉ」を連発したのち、
んでその結果「葵」が死んじゃって「全ては俺のせいだー」とか号泣するタイプの、良いからお前今すぐ死ねよタイプのシナリオを、わざと書いているんだから。
これなまじ前半から中盤に掛けての「吸血鬼ハンター葵と吸血鬼主人公の、お互いの立場の相違を踏まえながらの恋愛描写」がかなり良かっただけに、この最後の展開は悪い意味でキレちゃうのよねぇ。
途中まではそのお互いの相違点を踏まえながらなんとか協力して理解し合おうとしていた二人が、結局は最後は主人公のワガママによって葵を犠牲にして、主人公号泣して愛の力で世界を救う?巫山戯るのも大概にしなさいYO!。
良いシナリオであるどうかは全く別問題として、これがお互いシャイなふたりでお互いに気持ちを打ち明けることが出来ずに、最後の最後になってああいう形で結ばれる、って話なら「お話の筋は通っている」わけだけど、
このシナリオの前半から中盤にかけては「そのお互いの気持ちを打ち明けるのが難しい状況下で、何とかお互いに解り合おうとする」ヒロインと主人公のコミュニケーションをまさに描いてるところが素晴らしいわけで、
それをライターが後半から変わった挙げ句、その前半から中盤までのシナリオを完全否定するようなシナリオを書くとは、これ本当にディレクターとかプロデューサーとかチェックしたんですかレベルの整合性の無さ。
ええ、もちろん、その前半から中盤にかけて問題であった「吸血鬼ハンターと吸血鬼の立場の違い」っていうのは、後半のネタばれによって一気に解決しちゃうんですけどね。
まぁネタ晴らししちゃえば、葵の吸血鬼ハンターのお仕事とか使命っていうのが、実は他の悪い吸血鬼に操られていました話なんだけど、この時点で主人公と葵の「吸血鬼に対する抵抗や葛藤」っていうのは、
名目的にはなくなるはずなのに、このシナリオの後半は何故か主人公が「最後まで始祖になりたくなーい」ってゴネるんですよ。これ、凄く好意的に見ようとすれば、
前半からの「吸血鬼に対する何らかの葛藤」っていうのが、主人公や葵にもまだ続いてるとかそう言う話は出来るんですけど、それよりも単なる描写不足+最後の悲劇展開に無理に繋げたいんだろw
が先に立っちゃうわけで、どう見ても説得力のあるシナリオじゃないわけですよ。「カレン」や「マリ」ルートはそこらへんのところをそれなりに書いているんで、悲劇展開であっても多少の説得力はあるんだけども。
そう言う意味じゃ「リコリス」ルートは、別に良いとか悪いを言えるレベルの話ではなく「単なる描写不足+説得力不足」のシナリオでしかないと思いますガー。
先に説明した通り、リコリスルートは葵ルートの後半から分岐するお話で、んでお話の内容的には「最後の大ボスとのバトルの前」に突然リコリスルートに分岐する感じにはなる。
だからリコリスとのマトモな恋愛描写なんて無いし、物語内容的にも「バトルの中でリコリスにいろいろ助けて貰ってリコリスちゃんって良い娘だなぁと思っていたら、いきなり大ボスが現れて」話ではある。
まぁこの「いきなり大ボスが現れて」の唐突感だけは面白かったですよ。
普通に雑魚敵と戦っていて、ヒロインがピンチになって、主人公が助けに入ったと思ったら突然大ボスが目覚めちゃいましたぁ!展開は新鮮だw
そこからリコリスエンドへの引っ張りに関しても「予想も付かない展開の連続」という意味「だけ」で言えばそれなりに面白いんだけど、
これって基本「設定面での解決」を「リコリスヒロインエンドの説得力」に無理に結びつけてるだけ話なのよね。
確かにリコリスの能力と主人公の能力があれば、悪い吸血鬼の性気を浄化出来る話には出来るんだけど、そこで主人公とリコリスが本当にお互いを愛し合っていたのか話になると設定の後付けじゃん説得力しか無い。
しかもその説得力を「他ヒロインを踏み台」にして書こうって辺りもタチが悪いっすよねこれ。
このリコリスエンドの後、カレンちゃんは「自分はリコリスみたいに自分を犠牲にする勇気は無かった」とか言わせちゃうんだけど、これ、後で説明するけどカレンちゃんに絶対言わせちゃイケナイ台詞でしょ?
んで、さらにとどめの一撃を加えさせて貰えば、
>「うっさいよ萌え豚野郎。このシナリオは最初から悲劇とか非恋を書きたかったんだろうが。自分の気にいらないシナリオだからって文句言うなアホがぁ!」
まぁこう言う人が「どうやって点数評価をつけているのか?気に入らないシナリオに文句を言えないなら全部100点ですよね?」って話はあるにしても、
実のところ「悲劇シナリオとしても成立していない」っていう大問題もあるんだよなぁ。
マリルートを除く全てのシナリオは後半だいたいそういう悲劇展開なんだけども、もちろんこの手の駄目作品に共通する傾向として「最後のプロローグだけはハッピーエンド」なんだよね♪
葵ルートのラストは、まぁこのクソ屁タレ主人公が「落とし前をつける」話としては悪くはないと思うんだけど、それもラストの実は帰って来ちゃいました♪話で噴飯モノに変わってしまうわけでして-。
なんでこういう作品が生まれてしまうのかというと「ハーレムもの」と「イチャラブもの」と「厨二病吸血姫もの」を「上手く合体させよう」という企画自体は僕としても「肯定しても良い」んだけど、
この発想のなかで「部分」と「全体」を峻別せずに、上の三つのジャンルを「部分」と捉えて、これらを適当に配合すれば良い作品が出来上がるんじゃないか?っていうようなところが悪いんじゃないかと思う。
この「部分」と「全体」っていうのを、今まで説明したシナリオで捉え直すと、例えば「イチャラブもの」を単に「イチャラブする描写があれば良い」と「捉えた」としても、
それは「厨二病吸血姫もの」の「全体」の「傾向の一つ」である「最後は悲劇展開」とあまり上手く融合はしないわけ。最後は必ず悲劇展開になるシナリオとイチャラブシーンだけあれば良い話は「それだけじゃ」上手く融合しない。
さらに「ハーレムもの」と「イチャラブもの」も、単に「全ヒロインとHする」と「ひとりのヒロインとだけイチャラブする」を「部分的に合わせただけ」じゃ単なる最低クズ野郎主人公にしかならないでしょ。
もちろん、僕はなにも「ハーレムもの」と「イチャラブもの」と「吸血姫もの」の融合が「不可能である」という話をしているわけではない。単純に言ってそのまま「部分融合」だけじゃなく難しく難易度が高い話であり、
今年で言えば「ハーレムもの」と「イチャラブもの」と「RPG世界観」を上手く組み合わせた「イブニクル」という立派な作品があるわけだ。この作品は単にそこらへんが上手く逝っていないだけである。
あとこの手の失敗作のもう一つの理由として「部分融合の辻褄を合わせる」という話と「作品全体として説得力を産み出す」って話を混同してるところも大きいかなーとは思う。
この作品「部分融合の辻褄を合わせる」という点ではそれなりに完成度は高いわけ。そこらへんを「ハーレム」と「イチャラブ」の関係で言えば、
どのルートもそれなりに「正妻ヒロイン」のポジションを確保しつつ、その他のヒロインも「まだチャンスは残っていて諦めない」程度のハーレム関係を維持しているわけだから。
これを「イチャラブもの」と「吸血姫もの」との観点で言えば、まぁルートによってちょい異なるところはあるけれども、最終的に主人公は吸血鬼の能力を引き継ぎつつ他ヒロインとエッチしながらも、
ちゃんと人間らしく正妻ヒロインとだけイチャラブするんじゃーってことになってるから、この点でも「部分融合の辻褄」は合わせているわけ。この作品がちゃんとした整合性を目指して作られたと仮定するならば、
以上のように「客観的に静的に見れば全ての要素が部分的には融合されている」ような、作品タイトルで言えば最終的に「吸血鬼の天秤」がイーブンになるような均衡点エンディングを目指していたとも言えるだろう。
まぁ「なんで主人公の父親が消滅したのか?」とかそこらへんの伏線はスルーされていたような気がしますけど、それ以外を除けば「部分部分の辻褄」はそれなりについてるシナリオではある。
でもさ……これってまずぶっちゃけた言い方をすれば「バランスは取れているけど、それがどうしたの? それの何が面白いの?」って話であり、
サラにエロゲ的に言えば「処女厨とNTR厨の両方を満足させようとして作った、ヒロインは他男性にレイプされるけど、心だけは主人公のモノですシナリオ」詰まり一言で言えば「誰得エンド」なのよ?って話になるのね。
もちろん「誰得話」に対しては「既存の誰得ではなく、新しい誰得を目指すことだって出来る」という反論は成り立つわけなんだけど、だけどそれが成り立つのは少数でしかなく、大半はそのまま「誰も得をしない中途半端話」でしかない。
んで、なんでそういう「中途半端な誰得話」になるかというと、それは先にも逝ったように「部分融合して辻褄を合わせることが、全ての要素を融合させること」だと思い込んでいるからであり、
この要素とこの要素が美味く融合するような「作品全体の構造」を作って、そこから新しい誰得プレイヤーや、既存の誰得プレイヤーを満足させようという視点が弱いカラなんだと思う。
言い方を変えると、この前のトラベリングスターズもそうだったんだけど、悪い意味で作り手が分裂しているように思えるんだよなぁ。
一方の面としては「なるべく色んな要素を受けて幅広い客層に受けるよう」にという配慮で、作品に色んな要素をぶち込んだりする。これは「お客様目線」である。
だけどこの「お客様目線で色んなモノをぶち込んだ結果、出来上がったグロテスクなもの」に対しては、妙に「作り手目線」で、これが新しい表現なんだーみたいに開き直ってるところはある。
そりゃ確かに「お客様目線でお客様が要望する色んなモノをぶち込めば」まぁ普通じゃ考えにくいような「グロテスクなヘンテコなシナリオ」は生まれるだろうし、そこらへんの辻褄を合わせるのに作り手の「創意」は必要になるだろう。
でも、その出来上がったものが「本当に面白いかどうか」がそこでスキップされているようなところがあるんだよなぁ。単にお客様の広い要望に答えて新しいヘンテコなモノが生まれたからそれで良いだろで開き直ってる感がねぇ。
とはいえ、まぁ「カレン」シナリオと「マリ」シナリオにいたっては、もちろん満点いや80点を付けられるか怪しい出来ではあるけれども、このラインで今回の反省を生かしつつ次回作を作れば意外に期待出来るんじゃね?程度の完成度はある。
まず一番「問題が少なく」てどの要素もスムーズに繋がっているのは「カレン」シナリオだとは思う。いや、これも「なんでラストはイリスちゃんとの愛の痴話喧嘩になっているんだよw」という大きな欠点はあるにしても、
それ以外のところでは概ねプロポーションの取れたシナリオにはなっている。「吸血姫のリブラ」というタイトルやコンセプトはこのカレンシナリオを元に生まれた言われたら、まぁそうだろうなと思うくらいの内容にはなっていて、
「吸血鬼と人間の葛藤」がいちばん説得力のある形で書かれてはいるんだよな。序盤のシナリオはこれはもう見事の一言で、カレンちゃんは主人公をありとあらゆる手練手管を用いて、主人公を吸血鬼にしようと画策するわけだ。
この「ブリっ娘腹グロヒロインカレンちゃん」を演じる「雪村とあ」さんボイスも嵌まり過ぎていてエロ素晴らしいのだが、この「暴力的な手口ではなく手練手管を用いて主人公を籠絡する」という、
強いて言えば吸血姫の「魅了」の側面をこの手の物語に「エロシーンを含めて」ちゃんとぶち込んだのは評価できるとおもう。
大抵の作品はこの「魅了」を「暴力的な支配」と置き換えて「力で相手を屈服させるのがイクナイ」というようにお話を繋げる。もちろん「力で屈服させるのはイクナイ」は正論で良いんだけども、
魅了とか手練手管を用いる籠絡といったものは、確かにある種の「力」であることは否めないとしても、強引に力尽くで屈服させているわけではなく「上手く騙したり」または「誘惑」しているのに近い。
そして、こういった行為の何が「イケないのか?」というのは、実のところ結構難しい問題だ。世間話的に言うと「あなたはもっと表現をマイルドにしたほうが良いんでは?」忠告と似ている問題で、
これに対して「じゃあ言葉を上手くオブラートに包んで本当のことを言わずその人を騙すのが良いことなのか?」問題ではある。まぁ大半の人は「柔らかく転がされたいだけ」っていうのはあるとは思うけれども。
だがしかーし!ヒロインに誘惑されたり上手く転がされたい自分としては、このカレンちゃんが物語的にもキャラクター的にも最大にツボだったことは言うまでもない!
このまま主人公がカレンちゃんに上手く誘惑されてカレンちゃんの眷属になって幸せに暮らしましたエンディングだったら、それだけで僕はこの作品に90点はつけていたね!(大興奮)
まぁ流石にそんな「作品コンセプト」が外れたシナリオを求めるほど僕は傲慢じゃないので、このカレンちゃんシナリオが主人公籠絡シナリオじゃなくて普通にらぶらぶシナリオでも文句は無いし、
最後のイリスちゃんバトル展開を除けば、このカレンちゃんの上述テーマの解決の仕方もまぁ上手い方ではある。これは物語的にカレンちゃんを「実は○○(人間ではない)でした」展開に持ち込むことで、
カレンちゃんをアイデンティティクライシス状態に持っていく。んでそのアイデンティティクライシス状態の自分と主人公を重ね合わせることで「自分が変わってしまうことの恐ろしさ」の共感を生み出すわけだ。
つまり「人間であるとか吸血鬼であることが良いか悪いか」話を「自己存在が変わることの恐ろしさ」へと変換させて、そこから「魅了や策略によって相手の意思を変えることは悪いことだ」話にもっていき、
そういう狡い手段を用いないで相手に誠実に向き合っている主人公はカッコイイですわぁ!というカレンちゃんの主人公ラブが開花するというわけ。これはロジックとしてもシナリオの描写バランスとしても優れていて、
このシナリオで主人公の良いところっていうのは、屁タレだけど相手を騙さないで誠実に向き合おうとしていたり、基本優しかったりするだけなのだから、
その「純粋な優しさ」にそんなもの相手を籠絡するための機械的手段でしかないと思ってるカレンちゃんが、逆に魅了されていくというのは「吸血姫の魅了」と「人間の魅了」を上手く描き分けられている。
あとカレンちゃんの「基本的に吸血姫のように手段主義者ではあるけど、自分の快楽には正直なので、吸血姫にならない主人公に多少辟易しながらも、どのルートでも付き合ってあげる」っていうキャラ造形も、
上のようなシナリオと上手く融合している。ここでのポイントは「カレンちゃんの本心が基本的に読めない腹黒キャラ」であるところと「でも基本的には主人公に付き合ってくれる奥さんポジションキャラ」の融合で、
カレンちゃんルートだと前半に「腹黒キャラ」であるところが強調されるんだけど、基本的に「なんだかんだいって主人公に付き合ってあげるくらいには主人公が好き」ってところが後半のシナリオで甦ってくる。
だから他シナリオでも、カレンちゃんは最後まで主人公の面倒を見てくれてもあまり違和感がなくて、カレンちゃん個別ルートと同じように「良い奥さんキャラやなぁ」と自然に受け止めることが出来る。
これを「リコリスルート」では台無しにしたという意味で、リコリスルートを描いたライター氏には謝罪を要求したいわけだが、そこらへんを除けば個別&他ルート共に上手く生きたヒロインだったと思う。
んでマリルートは、これ基本海原さんがぜんぶ描いていると思うんだけど、こっちは「ハーレムつまりイリスちゃんと楓ちゃん関係」の話を抜かせば良シナリオだと思う。
まぁこっちは先にも言ったとおり「バトルシーン」も結構悪かったりするし、「ハーレム」云々のところはウェイトが結構でかいんで「それを抜かせば」が難しいところがあり、
総合点で見ればカレンルートよりも完成度は低いんだけど、しかしそこで「海原さんらしさが出ているから良いじゃん」でわりと評価しちゃうくらいにはライター信者の自分ではある。
ここらへんは「葵」ルートもそうなんだけど「戦闘シーン」を除けば「吸血鬼を拒む主人公が、周りのヒロインと妥協点を見出しながらも、地道に自分なりに頑張っていこう」とする、
主人公の姿と、そんな主人公を身も蓋もない正論で軽くボコりながらも、なんだかんだいって付き合ってくれるヒロイン達の描写の、何といったらいいのか「和やかさ」はまさしく海原シナリオの真骨頂だ。
葵ルートの場合だと主人公は憎むべき吸血鬼で、マリルートの場合はマリは別に主人公に恨みなんてないけれども、人間は自分の両親を殺した敵というか「吸血鬼に食べられてしまえばいいんだ。みんな」対象であり、
両方とも主人公に対してわりと遠慮抜きにキツいことを言ってくるし、主人公もそれには上手く応えられずに、自分の今後の行動もキッパリと決めることが出来ない。そうしてマリとかにそのまま屁タレとか言われちゃうわけだ。
でも、そんなヒロインたちとのやり取りが、海原テキストだと「どこか暖かい」わけだ。これは一般的な意味で「ヒロインや主人公がお互いを気遣っているから」と言うわけでは断じてない。
先にも言った通り、ヒロイン達はわりと遠慮抜きに主人公に対して正論に近い批判をそのまま言ってしまうし、主人公もそのことを受けてギャグ混じりだとは言え随分な無理な返しをしちゃったりするので、
一般的な意味で「心の籠もった言葉のやり取り」をしているわけでは全く無い。にもかかわらず、これらの言葉の「やりとり」から僕らは「人間らしい」という言葉で一般的に表現されているものの、
別に「人間だけ」ではなく「吸血鬼」でも「ワーウルフ」にも通じてしまう「相手を理解出来ないし理解出来ないと言うけれども、それでも相手に向かって言葉を吐いてしまう」ようなコミュニケーションの希望のようなものを感じる。
これを別の言い方で言えば、まぁこれはきほん海原シナリオの特徴ではあるものの、ヒロインまたは主人公も含めて「ゆっていることとやっていることがちがう。
もちろん、そんなのは大抵の人間またはエロゲ登場人物の特徴であるし、そこらへんの葛藤を含めて物語は動いてるわけだが、このマリルートや葵ルートの場合、
主人公も含めて「お互いにゆっていることとやっている事がちがう」と言うことを「言っていること」のなかでお互いに認識しながら、とはいえそこで良い子ちゃんぶって「お互いに尊重し合う」わけでもなくて、
相手の言うことは変だ屁タレだそんなに厳しいこと言うんじぇねぇとか悪態またはブチ喧嘩のようなことをしながらも「相手が自分に取って嫌な部分があることを充分認めながらも、それでも惹かれてしまう自分」を意識するようになる。
これは別に一般的な意味で「ツンデレ」というわけではない。
つまり「本当は好きなのに好きと言えないから嫌いな態度を取っている」わけではない。
主人公に対するヒロインの批判を嫌いというのであれば、ヒロインは主人公に対して部分的にではあれちゃんと嫌いと言ってるのだ。だけど完全には嫌いになりきれないし、
その主人公の屁タレだという中途半端な部分についても、どこか惹かれてしまうところが合って、その割り切れない部分がヒロイン自身の割り切れない心の問題にも何処かで繋がってしまっている。
だから、そこで語られる会話のコミュニケーションは、基本的にお互いにわりと正直に好き勝手言いながらも、その好き勝手に言い合えることを許してる相手に対する関心やちょっとした近親憎悪を、
会話のなかで自覚してしまって、そこでいきなりちょい照れてみたり、唐突に可愛いことを言い出しちゃったり、まぁ基本はテレ隠しにバカなことをゆってみたりして、それがいっときの和やかな空間を作り出すわけだ。
マリルートで何度も繰り返されるのが「みみっちぃ」という言葉だ。それは主人公が自分に対して「みみっちぃ何かを守りたい」と言ったような弱めの宣言であり、
マリが主人公に対して「わたしのご主人様はみみっちぃんですから」と、弱めの非難と弱めのはにかみを込めた言葉であるし、このシナリオで行われる主人公の行動の全てを評する言葉でもある。
前にも基本フルボッコ口調で述べたように、このルートのバトルシーンはわざと「よわっちぃ主人公が何の対策もしないで敵に突っ込んだりした挙げ句、冷静さを失って無謀な特攻をする」ような、
主人公のみみっちさをこれでもか!って感じで書くし、さらに言えば僕はそのバトルシーン展開が「みみっちぃ」という言葉で肯定される作品の良さだとは思わないけれども、
こんなバカな主人公がバカな行動に及んだなかで「結局、自分は人間とか吸血鬼とか関係なくて、ただ好きな女の子を守りたかったんだ」と情けなさい告白をマリにしちゃうシーンは凄く良いと思うし、
結局は始祖だのアンプロシェ家一族の再興が必要だぁと言いながらも「たったひとりのワーウルフを守るためだけに馬鹿なことをしちゃう」みみっちぃご主人様にキュンときちゃうマリもすごく可愛いと思ったりする。
そういう意味で言えば、僕が批判してるこのシナリオの楓ちゃんとかハーレム関係のシナリオについても、主人公は、それこそ「妹シリーズ」がそうであったように「みんなが仲良くしているところを見たいだけ」なのであって、
それは吸血鬼の始祖としての本能とか「Hしたヒロインにはちゃんと責任取れよ」を超えて、自分のみみっちぃ欲望をそのまま実現しようとしているだけなのだ。もちろん、僕には「そのみみっちさ」は全く肯定出来ないし、
作品評価としても「そういう全ヒロインが仲良く同じ家に暮らしているみみっちぃ世界」をラストに読者に放り投げて納得しろっていうのは、少なくとも「ハーレムスキー」には無理な話だとは思うし、
シナリオの一貫性は良くも悪くも繋がっているとは言えるわけだ。これを認めちゃうと、このマリルートの主人公は初代始祖以上に傲慢で自分勝手な野郎だってことにはなるんだけども、それでも良いじゃんと思わせる勢いはある。
最後の妄想バトル展開も、正直この作品のバトルシーンはこのレベルのおちゃらけバトルで良かったんじゃ無いのと思わせてくれるし、このマリルートのテーマ主題と結びついて「イリスちゃんレイプ」以外は良いシナリオだと思う。
で、最後の何となく作品とメーカーフォローのちょいよさげな話で纏めてしまうと、この「カレンちゃん」ルートまたは「マリ」ルートあたりを基本の主軸にして、
あとは「ラストの悲劇展開」ではなくて、基本的にヒロインと主人公が頑張って敵だの目標を解決しますストーリーに切り替えて、バトルシーンをもうちょっと洗煉させて、
その「ヒロインと主人公が頑張って」の話の中にちゃんとイチャラブ描写やルート外ヒロインも面倒見ますハーレム描写を入れれば……ってあとはもちろん「イリスちゃん」もちゃんと攻略出来るようにしたら、
この作品はそれなりに高評価を受けていたとは思うんだよね。この点で「何もかもが間違っているぅ」レベルのトラベリングスターズとは違って、この作品は「あと半年くらい煮詰めれば良い作品になっていた」惜しい作品だとは思うのだ。
上の話でこの話を分析してみるならば、まず最初に「厨二病バトルモノは悲劇展開がデフォ」っていうのが「シナリオの骨格」としてあって、
その骨格の上に「イチャラブとかハーレムとかを乗っければ燃えに萌えが融合するんじゃね」みたいな勘違いで、この作品が生まれてしまったんだと思う。
だから逆に言えば、そこらへんを修正して「厨二病バトルモノでも、イチャラブゲーまたはオノマトペゲーみたいなハーレムハッピーエンドがあってもよくね?」っていうふうにやれば、
この作品はもっと良い作品になっていたとは思うのだ。まぁ製作者の狙いが始めから「厨二病バトルモノで悲劇展開がやりたい」と思っていたら話は別だし、葵とかリコリスのシナリオを見る限りそうっぽい感じはするんだけども。
まぁ製作者の狙いはさておき、この作品はたぶんあまり評価はされないと思うし「これにめげずに厨二病バトルモノを出してくれ」なーんて言う人も少ないとは思うんだけども、
もしも製作者にまだそういう思いがあるとするならば、そこはそれで上の僕の指摘やらユーザーやらの意見を参考にしながら「厨二病バトルモノ」と「イチャラブ」または「ハーレム」をちゃんと融合させる作品を出して欲しいとは思う。
オノマトペというか、MOKAさんプロデュースの作品って、基本は和姦抜きゲーを出しつつも、時々こういう「変に尖った」企画を出すのは良いんだけども、
今回で言えば、その「厨二病バトルモノ」と「ハーレムモノやイチャラブモノ」を上手く融合させるみたいなことは正直苦手なんだよね。ここをもっと上手くやれるようになれば良い作品が出来るのにと何時も思ってるから。
いやまぁ僕としては「しとろんソフト」の新作はまだデスカーと声を大にして言いたいんですけどね本当は!せっかく優秀なクリエイターを抱えているんだから、これに懲りずに今回の反省を生かしてMOKA氏ブランド超がんがれ!
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☆エロについて
先にもゆったように、MOKA氏ブランドは「今さら昔の泣きゲ風味純愛ゲ」とか「今さら厨二病バトルもの」と言ったように、時勢から少し外れたという意味で少し尖った作品を出すほかは、
「兎に角エロシーンシチュだけいっぱい集めれば良いだろ和姦抜きゲ」を基本作っているメーカーであり、もちろん和姦抜きゲは和姦抜きゲでそれはそれで良いわけだが、
この「少し尖った作品」と「和姦抜きゲ」をあまりにも分け過ぎるために、この「吸血姫のリブラ」のように色んな要素を合体させようとすると、途端に失敗するというところがある。
しかし、この作品は、先に少し褒めた「カレンルート」と「マリルート」以外にも、奇跡的にその融合が成功しているところがある。それがこの「魅了H」だ。とはいえ、本題に入る前にここでいきなりツイッター投票の出番だ。
>「魅了H(ヒロインが主人公の魅了魔法でメロメロになった状態でエッチするの。まぁ逆でも良いけどこの作品には残念ながら無い)のエロさは、ストーリーとエロが融合したものだと見て良いのか?
それとも、ストーリーから逸脱したシチェーションだからエロいと言えるのか?」
もちろん、これに対する真の答えは「そんなんストーリーと魅了Hの内容によるだろw」話なわけだが、とはいえ、ここで逢えてその杜撰な二分法問題に引っ掛かってみよう。
実のところ、コレに対する答えは「同じ論理の流れを違う答え(言葉)」によって説明しているのに過ぎないのである。
例えば「ストーリーとエロが融合したもの」と答える人間(僕もたぶんこっちだ)にとって、魅了Hがエロいのはそのシチュエーション自体がもの凄くイイからとか「そういう属性を持っている」からではなくて、
それまでのストーリーにおいて、それなりに一貫した人格を持っているヒロインが、主人公の魅了によって突然エロエロになるからエロいのだ。つまり魅了Hを成立させるためにストーリーが必要だという論法。
一方で「ストーリーから逸脱しているからエロい」派というのは、その「それなりに一貫した人格を持っているヒロインが、魅了によって突然エロエロのがエロイ」と言うことそれ自体は認めながら、
そのような展開を「ストーリーからの逸脱」と呼んでいるような傾向がある。これは抜きゲ派と言われている人たちに多い論法であり、彼らが妙にその点で物語に対し倫理的なところをよく示しているわけだが、
その物語に対する倫理的な態度をどのように表明するかと言うことをスルーすれば、基本的に両者の論理と嗜好は同じである。魅了Hを成り立たせるためには、ヒロインの人格の一貫性が必要であり、その為にはストーリーが必要だと。
とは言っても、ここで注意して欲しいのは、以上の論理はあくまで「必要最低限の説明」であると言うことだ。この「必要最低限の説明」つまり「最低それがあれば良いか悪いかは別として魅了Hになりうる」というお話を、
それが「魅了Hの本質である」と混同するのは間違いである。確かに「必要最低限の説明」は何処かで本質に関わっているとは言えるが、それは「血の繋がった実妹キャラ」ならば「どの実妹キャラも同じである」と言うことを意味しない。
そして、この作品の魅了Hが優れているのは、上の「必要最低限の魅了H定義」を充分満たしながらも、尚かつその「魅了H」をよりエロくするような物語と「魅了H]を利用しながららぶらぶHのエロさも効果的に描けている点なのだ。
実のところ「世界が崩壊するから始祖として目覚めろ」話よりも、この「魅了Hのエロさはどこから来ているのか問題」を作品テーマに据えたほうが、いや冗談抜きで哲学的に「深い」作品にはなっていたと思うし、
先の魅了Hの説明である、
>それまでのストーリーにおいて、それなりに一貫した人格を持っているヒロインが、主人公の魅了によって突然エロエロになるからエロいのだ。」
というのは、ぶっちゃけ吸血鬼がその人間の生き血を(まぁデフォ設定)では「いっかい吸えずに吸われた側は吸血鬼になって再度吸えない」設定と似ているところがある。
つまり、上の説明を裏を返せば「魅了Hの快楽を引き出されたヒロイン」はその時点で「一貫した人格」というのが「汚される」ので、もう魅了Hの快楽を引き出すことが出来ない対象になる。
それと同じように「吸血鬼」も「人間という一貫した人格性」を「吸血」という行為によって「強制的に自分の支配下」に置くような暴力行為によって「生=性」のエネルギーを引き出しているってわけだ。
さて、そうなると、吸血鬼が1回しか同じ人間の生き血を吸えないように、魅了Hも基本的には1回しか「相手を強制的にエロエロにする」快楽を味わえないか、あとはその快楽が減退するばかりということになり、
オタ生活で言えば、エロ同人のズリネタにされるヒロインが3ヶ月毎に変わっていくようなものである。なるほど、エロ同人なら対象となるヒロインは沢山いるが、エロゲの場合ヒロインは限定されてしまっている。
もちろん「シチュエーション的抜きゲ」の全てがそうだという話はしないが、とはいえシチュエーションエロゲが「企画が多いわりには名作と言われる作品が少ない」のもここらへんの理由がある。
大半のシチュエーションエロは「そのシチュエロを成り立たせている文脈を消費すること」によってエロを産み出していく反面、作品内での「その文脈の再生産」が弱いために、エロの生産も滞る事になるってわけ。
それではこの「吸血姫のリブラ」の「魅了H」はどのような「文脈から魅了H」の快楽を引き出し、どのような文脈の再生を行っているのだろうか?
この作品の「魅了H]の物語的設定から述べておくと、単に製作者がヒロイン全員におしっこをさせたかっただけ……っていうのはあまりにも真理過ぎるので横に置くとしても、
基本的に主人公は未熟な吸血鬼なので、自分の能力をコントロール出来ずに暴走気味に魅了を発動させちゃうと言うのが一つ。もう一つは先と同じ未熟設定によって、
魅了してヒロインの血を吸ったとしてもヒロインは主人公の眷属にはならない。あと隠し設定として「寵姫」っていうのがあるんだけど、ここらへんは作品内でも結構曖昧なのでスルー。
あとは「魅了」は元からその能力者に対して好意を持っているほどその効果が高まるってあたりかな。
要するに「物語設定」としては「主人公が同じヒロインに何度もチャームエッチ」をしても、少なくともヒロインを吸血鬼にさせないという問題「だけ」はここでクリアされている。
とはいっても、これはあくまで「物語設定」であり、それで何度もチャームHを単に繰り返しているだけだと飽きが来るだろう。それはどのようにクリアされているのか。
ここでこの作品のテーマプロットである「人間と吸血鬼の天秤の葛藤」問題というのが絡んでくるというか、まずは直裁的に言えば「屁タレで吸血鬼なんてなりたくないよぉ」とゆってる主人公に対する、
「いやだって吸血鬼になってヒロインをメロメロにしてエッチした方がエロくね」という「エロゲで最も強力な説得力エロ」を持ったカウンターパートとして立ち上がってくる。
しかも、これ主人公が暴走してヒロインを犯す(のはイリスちゃんだけだが)のではなくて、大抵ヒロインの方から「魅了状態に掛かっていない」状態でも「血を吸って魅了Hしちゃいましょう」って誘惑してくるのね。
前のシナリオ評価のところでも説明したかもしれないが、この作品のヒロインの大半は「主人公を吸血鬼にしたい」ので、自分が主人公に襲われて主人公が魅了H快感を覚え込ませたいとしているわけだ。
この作品の魅了Hは、もちろん「ヒロインの人格の一貫性を壊してメロメロにさせたい」欲望はあるとしても、それと同じくらい「主人公の倫理観」をヒロインの魅了H誘惑によって侵略される快感もあり、
ヒロインが主人公の魅了Hによってメロメロになって、普段は言わない好き好きな台詞をゆったりしてトロトロになるエロ快感は、それと同じくらい主人公のこのまま吸血鬼になってもいいかなぁというエロ誘惑の快感にもなる。
だから、この作品の魅了Hはヒロインが1回それに掛かったところでエロ文脈は破壊されない。この作品の魅了Hのエロは「主人公=ユーザーの倫理観」をヒロインが「自ら魅了Hに掛かることで誘惑する」ことで生まれているのだから。
葵ルートとかリコリスとか、あまりにも主人公がクソ過ぎる場合には「魅了Hの誘惑」なんていうエロ文脈は発動しなく嫌いはあるものの。
そして、このような魅了Hはメインシナリオのヒロインとの恋愛にも矛盾しないのが素晴らしい。まずはわかりやすいところから説明すると、
「魅了Hの後にちゃんとした恋人同士の魅了なしHがあるから、魅了H状態のチャームらぶらぶエッチと魅了無し状態の恥ずかしらぶらぶえっちのギャップで御飯が一杯食べられる」話である。
まぁこの変化球ネタとして「恋人同士になって、魅了状態無しでエッチしていたんだけど、エッチが進むにつれて魅了が発動してしまう」っていう、らぶらぶエッチがさらにトロ目エッチ化するっていうのもあるんだけど、
ただ「説明しにくい」ところも言わなきゃこれは片手落ちで、この「恋人状態になっていない魅了H」でも「元から好意を持っていた人間にはチャームが効きやすい」っていう設定があるために、
このエッチシーンでヒロインの主人公に対する好意が見え隠れしちゃうようなところも「ストーリーと相まってエロイ」のである。先に説明したようにこの作品のヒロインの大半は「本音が見えない」ところが多いから、
その「本音が魅了状態で明かされる」ような感じがエロいというのと、しかしその本音によって主人公=プレイヤー側が吸血鬼側に侵食されているような誘惑感も同時に味わえるのが最高なんですよ!
ここからヒロイン毎のエロシーン評価に移れば、とはいえ、ここまで褒めておいてなんだけど、リコリスと葵のエロの大半は「上の文脈」が中々当て嵌まらないために、
まぁ「一回目の魅了H]くらいで「ヒロインの人格が壊れてメロメロになる」くらいのエロさくらいしか描かれていない。葵とか途中から「主人公さま」と呼んじゃうようなM奴隷伏線があって、
僕としてはかなり期待していたんだけど、ラストの悲劇展開と自己犠牲展開の前の思い出作りセックスで興ざめだったからなぁ。まぁ「悪くはない」程度ではあるんだけども……
矢張り群を抜いてエロかったのは「カレン」と「マリ」の二人でしょう。この二人、先にも言ったような「魅了H」と「シナリオ」のハマリ具合が本当に最高で、
カレンは序盤から主人公を完璧に騙してまで陥落させようとしながら、自分はへりくだって主人公に血を吸わせて「魅了Hしてくださいませ……」と誘惑してきて、
魅了H状態になると主人公もその誘惑に乗ってそのまま吸血鬼になっちゃおうかなぁっていう、カレンも魅了されているけど主人公も誘惑されているような背徳エッチが最高にエロかったんですよ!
恋人状態になったあとも、もちろんその状態では主人公を騙そうとしてはいないし、吸血鬼になりたくない主人公を気遣いながら、らぶらぶエッチしてくれるカレンちゃんのイイ奥さんっぷりも良かったんですけど、
カレンちゃんは「マゾの振りをして主人公を誘惑しようとしていた」ヒロインから「本当に心の底から主人公を尊敬する」ちょいマゾなカレンちゃんに変わってしまうので、
エッチが興に乗ってしまうと魅了能力が発動してしまい、最初の魅了H状態よりもさらにメロメロになってしまうカレンちゃんもシナリオが進む毎にエロさが増して行く感じで、もうホントに良いセックスを満喫してご馳走様でした。
マリについては、こっちは正統派魅了H?なんてものがあるかは知りませんけど「小生意気な犬っころメイドをチャームでメロメロにしてエッチして黙らせようと思ったらすっかりケモノナーになってしまった」ですね。正統やないやん!
カレンはわりと精神的な搦め手を使って、主人公を吸血鬼へと巧みに誘惑するタイプですけど、こっちのマリはもっと直接的に「へぇ、ご主人様。そんなエラソーなことを言うんだったら、わたしの血を吸って黙らせたらどうですか?」とゆったり、
物語設定的にも「ワーウルフの血を吸っても、人間よりは吸血鬼化が進行しない」為に、主人公が頻繁に血を吸っちゃうヒロインではあるんだよね。そうやってお互いに軽い悪態をつきながらも、
最初のうちは「ご主人様チンポー」とか野獣状態での発情エチをやりながらも、物語が進んで吸血とエッチを繰り返す度に、恋人らしいまったりエッチもできるようになっていく……ってこれまんま「妹スパイラル」シリーズと同じじゃないですかぁ!
まぁとはいえ、今作の最大の功労者は何といってもゲンガーのミヤス氏だろう。実のところ氏が手掛けたエロゲはこの作品の他に同日「アンラッキーリバース」もあるので、
そちらについてもやった上で語らないという気もあるし、ミヤス氏は好きなゲンガーの一人なんだけども、いろいろあって(別に元長氏が嫌いなわけではない)氏の作品は最近あまりやっていないので、
あまり偉そうなことは言えない立場ではあるのだが、とはいえ、今回のマリとカレン……いや、僕自身の好みを優先させて貰えばカレンちゃんのCGは立ち絵からエロCGに至るまでパーフェクトでしたとは告白出来る。
ミヤス氏と言えば、それこそ「シリウス」時代から「柔かそうなおっぱい」が必殺技として畏れられていたゲンガーであり、乳袋全盛期の今のエロゲ自体で巨乳自体がやや食傷気味の昨今であったとしても、このエロCGの、
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まさしくミルクのような極上の質感を前にしてはフルボッキするしかないし、ちゃんと極上のパイズリCGが二枚用意されて、パイズリも2回してくれるわけだが、今作はそれと同等……
いや、それ以上に「キャラの表情」が神懸かっていたと思う。あまり他を下げて之を持ち上げるようなお話はしたくないのだけど、比較として実にわかりやすいサンプルをあげれば、これだ。
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別に僕は「クロエ」さんの絵が悪いと言うつもりは全く無いし、逆に評価してる方だとは言っておくものの、この立ち絵の表情の「圧倒的な表情の豊かさ、絶妙さ」を見てしまうと、比べられるクロエさんが気の毒ではある。
もちろん、これはミヤスさんの才能ガーとか、クロエさんの才能ガーっていう問題では無くて、単なる経験の違いである。そういう意味で言えば初期のミヤスさん絵は結構以下略なところがあるわけで、
まぁこの際だから言ってしまえば、ときどき枝豆をデフォルメした擬人化キャラじゃねーの?と思ってしまうような、妙にちんちくりんな癖に指に出来たタコのような頑固さがあって、素直に萌えられないところがあったわけだ。
だけど、ミヤスさんの凄いところは、その己の弱点を克服したというか、そのちんちくりんフェイスを今の今までこういう感じに維持しながらも、
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同時にそのちんちくりんフェイス「だからこそ」輝く、この素晴らしい笑顔の表情を先のちんちくりんフェイスを通じて描けるようになったところだ。
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もちろん、ここに置いて重要なのは先のちんちくりんフェイスが「一枚の絵として駄目」でこの笑顔の表情は「一枚の絵として完成度が高い」という意味では全く無い。そう言う人はエロゲの立ち絵を評価するセンスはない。
ここで重要なのは、さきのちんちくりんフェイスと先の笑顔、もちろんその他いろいろな立ち絵表情を通じて、その「複数の立ち絵の表情を通してそのキャラ独自の感情表現が伝わってくる」と言うところだ。
「一枚の綺麗で整った表情絵」だけではなくて、まぁこれは完成度の低さとギリギリなところはあるんだけど「整っていないへなちょこな絵」も通じて、そのキャラクターのいろいろな表情がユーザーに伝わってくるからこそ、
そして描き手もそのいろいろな表情をそのキャラクターにあたえるからこそ、神秘的な言い方をすれば「キャラクターに生命が宿る」と言うことも出来るし、記号論的に言えば「より複雑な記号操作が可能になる」とも言えるわけだ。
だからクロエさんの立ち絵は、一枚一枚の表情絵は綺麗で端正だし、これはこれで全く問題無いのだが、上のような熟練技が出来るミヤスさんのキャラが横にいると「ただ綺麗なだけなぁ」と思ってしまう。
もちろん、クロエさんがミヤスさんのようにやる必要性は全くないので、別にクロエさんの絵を批判しているわけではないのだが、とはいえ「立ち絵芸」の経験の差を、ここまで露骨に表現しちゃっているのは恐ろしいものだと思いましたとさ。
エロCGにおいても、この「表情差分の上手さ」については、ミヤスさんというか「カレンちゃん」の破壊力は抜群で、まぁメーカーがエロCGを公開していないものだから、
ここで僕が引用できないのは誠に残念ではあるけれども、普通のちょい感じてるトロ顔状態から、魅了状態へのメロメロ顔のこの絶妙な表情変化を見てフルボッキしないヤツが果たしてこの世界にいるだろうか?
これも所謂「アヘ顔」みたいに下品丸出しになるんじゃなくって、端整な顔立ちを残したまま、目と表情が少しとろーんってなって、自分の意思とはあまり関係なく自然と口がキスを強請るようにはぁっと開いているような、
「発情してるだけ」ではなくて「その発情の意思すらも主人公に全て委ねているような」まさに魅了されてる表情が素晴らしくエロい。僕はこの手の表情に関しては「ハート目」スキーだったし、
この作品に「ハート目」CGが全く無いことを多少は残念だとは思うものの、「ハート目」だけの記号表現で魅了を表現するよりも、このカレンちゃんのように全身全霊を賭けたトロ顔こそがエロゲ業界の明日を切り開くのだろう。