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マルセルさんの恋剣乙女 ~再燃~の長文感想

ユーザー
マルセル
ゲーム
恋剣乙女 ~再燃~
ブランド
eufonie
得点
80
参照数
2352

一言コメント

良くも悪くも本編の内容に忠実なFDだ。悪い意味から言うと「コトナ討伐編」がわりとそのまんまの意味で本編のコトナ設定の補完シナリオでしかないところ。まぁヒロインエロ無しというのが最大の問題点なんだが、物語内容もコトナ設定と誠一の真能力開示という「燃えゲシナリオのお約束」を満たすだけに作られたような内容で、萌えやエロとちっとも関連しないあたり本編とは正反対ながらも同じ杜撰さだと言えよう。良い意味で言えば、別ライターながらも本編の細かい設定を逝かした丁寧なシナリオ作りや、最後はバトル解決するお約束ドラマツルギー展開を採用しながらも、あまり恋愛方向ではグダグダにはならずにスッキリ纏め、物語の盛り上がりを巧妙にエロまで引っ張るアナザーシナリオ群。そして本編の物語を生かしながら本編以上のイチャラブを生かした、特に透子さんシナリオの恋人以上夫婦未満描写はアフターイチャラブシナリオの傑作だからみんな買え!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

・総CG枚数(差分無し)63枚 総回想数14枠

・キャラ別CG(エロCG)&回想数

千春  8枚 (5) 2回
麻里  8枚(5) 2回 
志保  8枚(5) 2回
茜   7枚 (5) 2回 
透子  7枚(5) 2回
柚   7枚(5) 2回
イブ  7枚 (5) 2回
コトナ 10枚 

(備考:その他の内訳は「鏡水」「千恵美」「由愛」各CG3枚ずつとエチシーン1回づつ)

簡単な説明:クリック数つーのは、既読スキップオン+テキスト速度ノーウェイト環境下で計った、ゲーム開始時から作品を終えるまで各シナリオ毎のクリックの合計回数のこと。

(1)初回プレイ時の「共通」+「個別」のシナリオの総容量が分かる
(2)2周目以降の、共通シナリオを除いた個別シナリオの総容量が分かる。

(ゆえに、一周目のヒロインルートはクリ数が多く、二周目以降はたぶん半減するが、一周目の「個別ルート」が他よりも長いというわけではないので注意)

(3)エロテキストのクリ数と。それを含んだ全シナリオのクリ数を比較すれば、両者の割合もある程度はわかる。
(4)テキスト速度の環境さえ同じなら、プレイ時間と違ってユーザーによる計測誤差は少ない。

といった四点が指標として役に立つとバッチャが言っていたような気がしないでもない。

(5)BCは主人公とヒロインが恋人になる前までのクリック数で、ACは恋人になったあとのクリック数ね。
「その恋人になった「まえ/あと」ってどう定義するの?というのはなかなかにむずかしい話であるが、大抵のエロゲには告白CGなるものがありますからそこを基準にします
そういうCGがなかったり、なんかズルズルだらしない感じでずっこんばっこんなシナリオの場合は、まぁ僕がテキトーに判断しますが、その場合は「?AC6992」みたいに?をつけまつ。
そういや「誰とも付き合わないシナリオ」っていうのもあらわな。そう言う場合は特にACとかBCとかは書きません。

1周目 茜 「2442」
2周目 千春   「3577」
3周目 麻里   「4109」
4周目 柚    「3884」
5周目 志保   「5669」
6周目 コトナ  「6221」
7周目 透子   「2638」
8周目 イブ   「3058」

(備考:えーっと、今回はBCとかACがない理由は、アフター組は最初から主人公と付き合っているからで、アナザー組はわりと付き合っているんだ付き合っていないのかハッキリしないようなシナリオ展開が多いためです。
まぁ無理に分離するならば、BCが7割弱でACが3割ぐらいってところですか)



・各キャラのHシーンのクリック数

千春  1:568 2:397 
麻里  1:408 2:508 
志保  1:449 2:435 
茜   1:339 2:389 
柚   1:378 2:485 
透子  1:481 2:427 
イブ  1:396 2:515  


☆作品の大まかな評価。

簡単な説明:これはもうそのまんまですな。一応Z~SSSまでの評価基準が存在するらしいのですが、大抵はC~Aの間に収まっているようです。
「C」がだいたい「やってもやらなくても別にいいんじゃね」。「B」が「やればけっこう面白いんじゃね」。Aが「やってないヤツは人生つまないんじゃね」。
といったかんじになっております。あと「全体評価」っていうのは、その項目における「作品全体」から感じる何となく駄目だとかイイとかそういう評価です。
あと、これは当たり前すぎて却って説明しにくいものですけど、僕の定義による「シナリオ評価」ってヤツは「感動させなきゃダメ」とか「深いテーマが無きゃダメ」とか、
そういうヤツではなくて、基本的には「その作品が目指していると思われるものが、どれくらい達成されているか?」というような「完成度」評価に近いものかも知れません。
ですから、原理的には抜きゲであろうと萌えゲであろうとシナリオゲであろうとも、その作品が目指しているものが完成されていると判断すれば、シナリオ評価は高くなるって話です。

・シナリオ評価

千春   C+
麻里   B
志保   B+
茜    C+
柚    B 
透子   B+
イブ   B+
コトナ  B
全体評価 B
   
・エロ評価

千春   B+
麻里   B
志保   B+
茜    B-
柚    B+ 
透子   B
イブ   B+
コトナ
全体評価 B+
   

・イチャラブ評価

千春   C+ 
麻里   B
志保   B+
茜    B-
柚    B
透子   A-
イブ   B+
コトナ
全体評価 B+
   
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>>ゲーム本編で、主人公とヒロインたちの前に立ちはだかった諸悪の根源「コトナ」にまつわるエピソード。本編で残されたままだったコトナに関する謎が明らかになるというファン必見の内容で、コトナ再誕から始まる主人公たちの数奇な運命が描かれていく。本作が目指す「燃え」の集大成とも言える、血沸き肉躍る熱いストーリー展開に注目だ!

http://www.game-style.jp/soft/201403/12/01kor_eu.php


もちろんこんなものは嘘んきんである。いやまぁ最近は過大解釈というか例のバカな横断幕事件のよーに「どんな明示的な文章でも暗喩的解釈を施すことによって先の明示的な意味を否定する」という屁理屈が流行っているようなので、上の文章の「ゲーム本編で、主人公とヒロインたちの前に立ちはだかった諸悪の根源「コトナ」」という部分も、物語の明示的なプロットとして「主人公たちの前にコトナを名乗る(またその関係者の)敵キャラが現れてバトル展開をする」といったものを意味するのではなく「コトナ設定に纏わる作品世界の諸問題がヒロインたちの前に立ちはだかる」みたいな解釈をすることも可能であるとかバカ屁理屈を言い立てることが出来るが(むろん、そういったところで、なんで始めからそう言わなかったんだ紛らわしい!で終了であるが)そのように解釈したところで「でも、本編シナリオの個別ルートってコトナあんま関係ないんだよねー」とオチてしまうところが、この「恋剣乙女」本編とそのFDのコトナ√の微妙な関係を良く現していると言えよう。

本編をやっていない人のために説明しておくと、恋剣本編における「コトナ」またはそれに纏わる設定というのは、基本的には「なんとか魔界大戦以後、世界は新たな能力に目覚めた人間たちによって新しく作り直され……」みたいな「ファンタジー物語の基礎的設定」であって、「コトナ」という存在がその世界設定の基礎的部分に当たるわけだが、べつだん「物語の展開そのもの」のなかには、上の引用文で語られるような「コトナ」またはそれに直接関係するようなキャラクターはいっさい出てこない。一般二次元設定で言えば「魔法を生み出したのがコトナであって、んで物語はその魔法が日常化している舞台を描く」みたいな感じだろうか。確かに上の引用文が言うように「コトナに関する謎」というのは本編の中では語られていないわけだが、しかしそのコトナに関する謎が本編の個別ルートと何らかの関わり合いがあるわけではないのだ。本編の物語には直接関わり合いがないが、ある種の設定オタの人たちには引っかかりを覚える「残された謎」といったところだろう。個人的にはそんな謎よりもヒロインたちの排便シーンがなぜ描かれないのか?を気にしないのが謎であるもののという嫌味はさておき。

まぁ僕が思うに、これは多分「萌えゲ的お約束」というものがあるように「燃えゲ的お約束」を恋剣本編が語れてなかった、という不満だとおもう。つまり、大抵の萌えゲに置いて「物語的展開とは全く関係ないレベル」で主人公に対するヒロインの好感度は100%で無ければならぬように、おそらく燃えゲにおいても物語設定において「昔きゅうきょくのアクみたいな存在がいた」という設定があったら、そのきゅうきょくの悪が最後のあたりで復活してわはは人がゴミのようだぁぁと悪魔の高笑いをしたのち、主人公が最後の最後には秘められた力を解放して俺TUEEEE!をやらなくてはいけない!と逝ったような厳粛なお約束があるのであろう多分。むろん、僕は別にこのようなお約束を批判したりバカにしているわけではなく、その手の作品をあまりやらない僕としては、単にその種の感覚がよくわからないなぁと不思議がっているだけではある。そういうジャンルお約束と本編内の物語展開をごっちゃに混同して、上のような妄想物語展開をあたかも真実のように食っちゃべる人たちに対しては本当に困ったものだとは思うものの。

それでは、この「コトナ討伐編」というシナリオが、先のような不満を解消できる類いのシナリオであったかというと……まぁ僕はその手の「燃えゲのお約束に通じた人間ではない」という留保をつけておくとしても、うーむ、本編の枠内では結構上手くやっていると思うけれども、その手の「燃えゲ的お約束」を期待した人間にはわりと不満の残る出来だとおもう。まず先の引用文における「血沸き肉躍る熱いストーリー展開」というのは基本的に嘘である。そういう事を言うなら、まだ本編における共通√の方がよほど血湧き肉躍る要素が高いと言えるし、どちらかと言えばその「血湧き肉躍る展開」を遠回しに批判するような物語展開と言った方が正しい部分は多いだろう。物語の主軸としては「コトナ」との戦いというよりも、コトナとのコミュニケーションやコトナとは何か?みたいな世界設定に関するお話が多く、なるほどバトルそのものはそれなりに多いし、主人公の真の力もちゃんと解放されることは解放されるが、そこらへんのバトルや真の力を解放して俺TUEEEといった燃え展開を盛り上げるようなプロット方向性では全くない。そういう意味では恋剣本編(途中から分岐する物語)としてはこのコトナ編はわりと説得力がある。主人公は基本的に平和主義者であり、バトルにおいてもパワーではなく頭を使って戦うタイプなのに、茜やイブはわりと直情径行タイプで、その伝承者としての拘りやプライドが物語において悲劇をもたらすという流れは、恋剣の共通√や彼女たちの個別√の内容にも通じる展開で「本編からコトナ討伐√に入ったらこんな感じになるであろう」という本編との連続性はきちんと確保されているとおもう。まぁ批判めいたことを書くのであれば、コレは後述する茜アフターについてもそうだけど、本編同様に「結局伝承者ってトラブルの元じゃねーのw」というシニカルな感想が浮かんでしまうところがアレであるが。

ただ、問題としては、些か根本的な批判になってしまうのだが、この「コトナ討伐編√」の存在意義である。これは「僕が燃えゲオタではないから、別に燃えゲ的お約束を満たすシナリオなんていらなくね?」みたいな根本的不満を多かれ少なかれ含む為に、その道の人が言うところの「公平ではない批判」があろうかと思うが、ただそこらへんを考慮したとしても僕はこういう「そのヒロインにエロもないような、本編の物語設定の補完のためのトゥルーエンド的シナリオ」という存在に対し非常に疑問を覚える人間のひとりではある。一言コメに書いたように、このコトナ討伐編のヒロインであるヒビキにはエロシーンはない。因みに断っておくならば、このヒロインにエロがないこと自体は、このシナリオの完成度を下げるものではない。この物語においてヒビキは主人公の「子供」のような役割を働くのであって「そういうシナリオ」であれば「エロはなくても問題は無い」というのはその通りであるし、ヒビキの物語における扱いについてもさほど違和感はない。故に、僕の批判はこの「シナリオ自体」という部分批判というよりも、「このようなシナリオの本編の続編として書く意義」といった全体的批判を意図している。いや、もちろんそれに対する答えとしては「本編で批判された燃えゲ的お約束をFDで果たす為に」という奴であろうが、僕としてはそれに対し、だからといって、それをそのまま100%愚鈍に受け取って「本編補完のためだけのシナリオを書くのはどうなのか?」と言いたいわけだ。先の不満を満たすやり方は他にもいろいろあるわけで「誠一の能力の解放」と「コトナ設定の記述」という仮に二点を満たすのであれば、各ヒロインルートのアフターで、例えば茜√は伝承者として目覚めた茜がコトナの末裔らしきモンスターと誠一とちゅっちゅしながら戦う物語とかいろいろとやりようがあると思うし、何よりもわざわざ新しくヒロインを使って、そのヒロインのちょいエロ販促グッズを売っておきながら、そのヒロインのエロ無しシナリオを書くとか「その種のお約束エロゲとして売っておきながら、その種のお約束エロシナリオ」がないというのは、ある意味で本編以上の片手落ち感ないのは否めないのであった。


>>幼馴染みの太田と一緒にいたいがため(中略)太田のために優勝したい為に

http://game-style.jp/special/201211/02/02chr12.jpg


しかしながらこんな嘘んきん設定をわざわざフォローしているライター氏の頑張りは評価に値するだろう。本編の内容を知らない人のために説明しておくと、上の本編ではサブヒロイン、本作ではアナザシナリオのヒロインに昇格した湊たんの上の「本編設定」はその本編では全く生かされておらず、太田?だれそれ?安部首相のボディガード?といった感じにはなっており、基本的に主人公ラブモードが炸裂しまくっていたヒロインではあった。因みに、この恋剣乙女のあらすじ紹介も、まぁ某ティームさるさる作品においてはわりとあちがちな事ではあるのだが「体験版の段階であらすじ紹介と物語展開が端的に違って」おり、その間違い探しをするだけで楽しめるという二粒で二度美味しい仕様になっていたのに対し、このFD本作では「本編の美味しい設定は残しつつも、上の嘘んきん設定をなんとかフォローしよう」というライターの苦心惨憺たる労働の功績が実に美しいシナリオ展開となっている。上の湊たんの場合「主人公ツンデレラブラブ設定」は基本的にそのままで、ただし「太田と湊たんの関係」に関しては「太田の後に何となくくっついていくことが昔から習慣だった」という恋愛関係抜きの設定と、主人公の勝手に嫉妬展開を作るための動機として機能させ、最後の何だかよくわからないバトル展開で太田君は見事にピエロ役としてガムばってくれたりと「よくもまぁ本編で別ライターが好い加減に作ったようなシナリオをココまで生かそうとするもんだ」と感心させられるシナリオとなっている。

まぁ半ば嫌味や冗談はさておくとして、これらアナザーヒロインシナリオはまず上のクリック数を見ればわかるように(ってそれでわかるのは相当に業が深い人たちだとおもうが)シナリオ分量的には普通のエロゲシナリオの半分から三分の二程度という「オマケシナリオ以上本編シナリオ以下」という微妙な分量ではあるものの、基本的には本編シナリオと同じような「萌え燃え展開」となっておる。共通しているのは、まず序盤からわりとわかりやすい物語伏線を張って、その曰くありげな伏線の上で日常描写を行いながらヒロインとの仲を深めていくが、良い雰囲気になってきたところで先の複線でシリアス展開が入って、そのシリアス展開の解決とともに主人公とヒロインが結ばれて……という、まぁゼロ年代半ば辺りの萌えゲお約束プロットに各種バトル展開の燃えアレンジを加えた感じと言えようか。もうちょい具体的に言うと、本編同様先の「曰くありげな伏線」と「シリアス展開」がこの作品の場合は「軽くて早い」のが特徴だろう。悪く言えば、その伏線やシリアス展開と恋愛描写そのものに関係性が薄いのでシナリオの連続性が弱くなるとも言えるし、良く言えばシナリオに山と谷を楽に作りながらも物語はサクサク進むことが出来ると言える。重要なのはそのような基本物語構造の上でどんなヒロインとのやり取りを描くのか?という点だ。最近では「シナリオにおいてドラマツルギーやヤマ場展開は必ずしも必要ではない」が受け入れられるようになったのは良いとしても、その弊害として例えば「イチャラブにはドラマツルギーは相性が悪い」という、まぁ過去または現状分析としてはそれなりに妥当正があるかもしれないが、それを原理論として主張するような誤謬が流行っているが、これは端的に間違いである。それは基本的にはある種の「まったり系イチャラブ描写と典型的ドラマツルギー処理が相性が悪い」という今までのエロゲの結果論を意味しているに過ぎず、イチャラブ全般とドラマツルギー全般の相性が原理的に悪いということを意味しないわけだ。

この点で、たぶんサブヒロインの仲では一番人気が高かったであろう「千春」シナリオは、まぁそれほど悪く言うほどでも無いけど、この三人のシナリオのなかでは1番出来が悪いように思える。一言で言えば「そのシナリオを完成させるに必要な、美味しいいシーンや重要やシーンといったところをスキップしがちで、プロットだけを読まされているような気分になるシナリオ」の典型と言ったところか。基本的な展開としては、シナリオ紹介の通りでまぁ「とある目的で誠一と嘘の付き合いをしていた千春が、だんだん本気になってしまった……」から始まるプロットである。んでこの手のシナリオで重要なのは、その「なってしまった……」の先の部分であり、このシナリオの問題点は、先のプロットにおいて「美味しいシーンや重要なシーン」が殆どスキップ気味なところだ。まぁネタバレするとヒロインが例のお約束によって旧家の仕来りによってお屋敷に監禁されたところを主人公が武装襲撃してそこでヒロインをお嫁にもらい受けると宣言するが、しかし「主人公は千春を旧家から助けるためにお嫁に貰うとは宣言したが、まだ二人っきりで思いを告げたわけではない」ってところまでは非常に良くて、あとはこの二人の「お互いにもう好き合ってはいるんだけど、まだ前半までの「仮のお付き合い」を形式的に続けている状態で、悶々としあう」という萌えゲスキーとしては堪らない内心イチャラブ葛藤描写のてんこ盛りがやってくるぞぉぉと鼻息を荒くしていたところ、なんかそこらへんは描写は「俺と千春は屋敷内でセックスしまくった」という3クリックテキストで済まされ、あっさりと二人は学校に戻ってこれまたセックスシーンで最終的に思いを告げ合って事切れエンディングですよガッテム!

まぁ「なかなか表だって好きと言えない状態でのセックスシーン」っていうのは良かったし、そのなかでつい「好き」と言ってしまうようなエロシーンの描写は結構良かったんだけど、それだけじゃダメじゃないですか兄さん。あのね、別に武装襲撃シーンの燃えゲ展開なんてそっちこそ3クリック半のテキストとカキーンドカーンいやボーンな効果音を入れとけば済む話であって、このシナリオで重要なテキストシーンは「お互いに好き合って、今度はもう結婚の約束まで交わしてしまったし、セックスもしちゃったけどお互いに思いを伝えられにくい状態」の二人が織り成すイチャラブ寸前のこそばゆいやり取りじゃないっすか。お互いに好きとはいえないけど、そういうことを伝えたいし言いたいからつい身体に走ってしまう爛れたエロシーンのダダ漏れ日常描写じゃないっすか。せっかくプロットのドラマツルギーを用いて萌えゲ的に美味しいシーンを描けるところまで逝っているのに、みずみずその傑作シナリオの資格を自ら放棄した罪は果てしなく大きい。

千代田シナリオはもしかしたらこのアナザシナリオの書き手が同じ所為なのかも知れないが、千春シナリオと少し似ている「お互い好き合ってはいるんだけど、好きと言えない状況」から発生するイチャラブ描写を、千代田のダラダラぇぇ加減を性格を上手くシナリオのなかに盛り込みつつ描写している。此方も基本物語構造は上と同じだが、序盤の伏線の張りが少し弱めで、且つそれを中盤あたりで本格的にシリアス展開させず、最後の最後でやや意外な形で実現させるところがポイントだ。序盤では湊と千代田の惰性友情関係から千代田の横恋慕または隠れ恋の応援フラグ伏線を散りばめつつ、しかし千代田は生来の好い加減な性格のためか主人公との勉強日常シーンの中ではそんなの殆ど匂わせずに、始めて出来た異性の友だちと湊以上に面倒見の良い主人公にあっさりと惚れてしまい、勉強中にアシコキして主人公を誘惑し既成事実をつくってしまう俺得な誘惑展開に愚息も大満足ですよ! まぁ僕の性癖は兎も角として、この伏線の張りと、キャラ性格の一致するようで一致しないような日常とドラマツルギーの微妙な葛藤って言うのはなかなか上手いですね。最初に千代田に何らかの思惑があるような(でもあまりないような気もする)伏線を張っておいて、だけどキャラの性格はわりと好い加減なので、そうした思惑があったとしてもそのまま主人公に惚れてしまって、自分から押し倒すような展開になってしまってまぁ千代田だしこういう爛れた恋愛描写も良いよねと結構納得してしまうような弛緩した雰囲気がなかなかいい。

まぁその次の日あたりにはちゃんと千代田は髪型までキューティクル変化してデレモードに突入した挙げ句に、ここで突如として最後のバトル展開を挿入して「千代田は本当は親友の湊を大切に思っている」告白と同時に主人公にラブ告白までさせてしまう結構「勢いまかせ」な急発進をするのだけど、ここもそれなりに上手かったですね。主人公とHしてデレモードでイチャラブしながらも、そこで千代田の湊に対する泥棒猫な負い目を告白をするのは別に良いとしても、そのネタで最後まで引っ張っては「主人公と既成事実を作って恋人になった後にいきなり負い目告白で、そこから女の友情展開に突入ですか?」って感じで終始ヒロインサイドの都合に振り回されっぱなしでイクナイじゃん。そこで多少は唐突ながらも「最後のボス」を引っ張り出して「湊たんを侮辱した強敵に千代田たんは頑張って戦うので主人公も応援してね☆」とやれば「実は千代田はやるときはやる女の子なんだなぁ」+「主人公という恋人が出来た御陰で千代田も強くなったんだなぁ」という二つの良い印象が与えられるわけでして、何も最後まで悩んでウジウジするだけがドラマツルギー展開じゃないわけだ。ちゃんと主人公とセックスして最強の必殺技とか覚えたりもするしお約束ってサイコーですね。

そして千代田シナリオは当て馬役だった湊シナリオでは、今度は太田君が当て馬になると言うか、太田君本人もシナリオ方向もなにか尾籠な方向に突き進むものの、でも最終的には湊たんはいつも可愛いかったのでまぁ良いかという、萌えゲとしてはいちばん美味しいシナリオになっている。まず基本的に恋愛描写の下積みが結構上手く描けていて、とはいっても湊たんは始めから主人公ラブなのでそう言う意味での好感度描写ではなく、湊たんはシナリオ開始当時では主人公と「少し会話する程度の少し仲の良い友だち関係」でしかないのに「自分の主人公に対する思いは暴走気味」っていうヒロイン好感度と主人公との表面的関係性のギャップを上手く使うわけですなー。主人公はちょっとした用事で湊たんと昼食を取っているのに、湊たんはラブコメ脳が勝手に暴走しなんか勘違いしてしまって勝手に舞い上がるながらも、とはいえ自分の勘違いを察して反省してこれまた勝手に自己嫌悪に陥ってしまい、そんな湊たんを主人公は見てひょっとしたら俺は嫌われているんじゃね?と主人公の方も勘違いしながらも、少しずつお互いの誤解が溶けていくような逝くようなうれし恥ずかしのラブコメ展開。その展開の中で少し仲の良い友だち程度の異性と(日常的な意味で)おずおずと付き合っていく主人公サイドの表面的なドキドキ感と、勝手に脳内恋愛暴走しながらも、しかし片一方では真面目に主人公と向き合おうとする真面目純情キャラのドキドキ感が微妙にズレながらも進んでいき、少しずつ両者のズレが埋まっていくような日常描写は恋愛シナリオとして結構よく描けている。

こういうシチュなので、序盤から中盤にかけてはいろいろとギクシャクするような展開を用意しつつも、しかしそのギクシャクが解けてしまえば、湊たんは始めから主人公激ラブであり、そういうギクシャクさえ無ければ湊もたぶん恋剣ヒロインの仲ではいちばん素直な良い子なので主人公に惚れてしまうのであり、前半のギクシャク感が中盤からの急激な恋愛発展に対する説得力のある伏線になっている。でも、主人公の方は最初の太田複線の通りに「実は湊の好きな人は太田だ」とある意味で湊たんのおなじように勘違いしており、だから最後のところで湊たんに対して踏み切れず、ここで前半のギクシャク感が舞い戻るかと思いきや……いやー、なんでかはよく知りませんけど、このアナザシナリオは「ヒロインに押し倒されるような展開」が矢鱈に多くて非常に俺得で良い感じでしたわー。んで、この湊たんの強引なラブアピールに押し切られて恋人になった後は、なんの前振りもなく湊たんが「いきなり実家に拉致されて許嫁と結婚させられる」というB級極まりない燃え展開が発動してなんだなんだ?って感じだったんですけど、この唐突なB級燃え展開は内容そのものは単なる親子喧嘩以上の何ものでもないばかりか、何故かここに太田君まで登場して「ここで幼馴染みの絆とか見せて良い感じで話を纏めさせたりするのか?」とか思いきや、単に一発ギャグを披露して終了というC級展開にまで持ち込んでくれるからかなり笑えましたねー。しかしこのB級燃えゲ展開はギャグそのものなのに、その後は湊たんはちゃんと実家と縁を切って主人公と一緒に学園を退学しながらも、貧しくとも慎ましい幸せを見付けますたっと持っていく辺りはコメディとシリアスのバランスが上手くとれていて、最後の湊の台詞のオチも「普通の学園青春モノの普通の幸せとは何か?」をほんの一瞬だけ考えさせられる、普通の性格をしながらも普通ではない境遇に置かれたヒロインの恋愛物語を綺麗に締めていたとおもう。コイツは意外な拾いモンシナリオでしたなー。


>>過去にあったトラウマを乗り越え、以前よりも感情を表に出すようになった。そのせいもあってか、より誠一に依存するような形になってしまっている。

http://www.game-style.jp/special/201403/25/02chr05.jpg


そんなイチャラブモードのアフターシナリオのなか、ひとりだけ本編シナリオと変わらないような踏んだり蹴ったりを続けていたのが我らが茜であった……って、なにもここまで本編に忠実である必要は無いと思うんですけどねえ。まぁ確かに本編シナリオでは「コトナのいない世界での伝承者の役割ってなによ?」ってところが抜け落ちていたから、そこらへんを書こうって話はよくわかるんだけど、それだと本編シナリオと葛藤のタイプが「茜がいろいろあって勝手に屁垂れる→主人公が慰める→またやる気を出して頑張る」というパターンと同じで、ちっとも成長してねぇなぁコイツはwって突っ込みは別に良いとしても、結局のところ「伝承者の役割はなによ?」に対して「頑張りますた」しか答えてないんだから、本編シナリオの「いろいろあるけど頑張ります」からなぁにも変わっていないあたりが、重要っぽいテーマを持ち出すシナリオとしては微妙だとしか思えずー。これだったら「誠一を得た茜は生来の屁タレ性格がさらに悪化して……」みたいなダダっ娘シナリオにしたほうが、へっぽこ系キャラとしての逆に魅力を増すことができたかもしれぬのう。まぁ本編もFDであってもちっとも変わらないヒロインシナリオっていうのも悪くはなかったけどね。

一方で柚ちゃんはすっかりエロヒロイン化が定着してしまった御様子でもう中の人スキーの僕としてはエロシーンは2回しか無いのに6回くらい絞り取られてしまいましたえぇ。いえ、先ほども言ったように、別にエロシーンばっかのシナリオってわけじゃないんですけど、全てがエロシーンの伏線のために作られているようなシナリオなんですね。初っ端から、なかなか仕事とかであえない状況を語って、柚ちゃんの悶々感情を徐々に高めていくこの発情をギリギリに我慢している柚ちゃんボイスがエロすぎましてねぇ。そしてついにプッツン切れてヒロインが主人公を誘惑押し倒す俺得展開(またですよっ!)に入るんですが、流石本編のエロを経たヒロインだけあって主人公に対する天然誘惑攻撃も手慣れたもんであり、全部手を出してくれない主人公が悪いんですよぉ~とMっ娘的態度で主人公を唆したと思ったら「だから、最初はわたしのあられのない姿を指をくわえて見ててくださいね?」とか突如オナニー実況を始めて主人公の性欲をますます掻きたてる小悪魔エロをぶちかます始末ですよ。いやぁライターはこの柚ってキャラと中の人のエロ特性をちゃんとわかっていて素晴らしいですな。まぁ酷い表現を敢えてすると「M寄生的S]って感じで、基本的には主人公に対して受け身で従順ではあるんだけど、その対象にぴったりとくっつき合うと、徐々にその奉仕の姿勢でその対象を縛り付けていくような性格ですよ。常に相手に主導権を渡してゲームを握らせることで、実は自分の願っているような態度を相手に取らせるような良い子ブリっ娘と共存する執念の深さが堪らないっす。このFDではそうした柚ちゃんの天然小悪魔っ娘が本編以上に遠慮無く日常描写でも発揮され、しかもそれがエロシーンにシームレスに繋がっているんですから、こりゃ度エロイシナリオになるわけですよ。

ここらへんでエロシーン全般について述べておくと、上のデーター欄にもあるようにアフター&アナザーともにエロ回数は2回しかないんだけど、その割には……というよりも、エロ回数が5回とかある作品よりもエロ満足度は高い作品であった。一つには、まぁエロ回数数が5とかいっても、そのうちの2つくらいは「フェラして終わり」みたいなエチが多くて、実質的にはエロ回数は3~4しかないので、それが2になったところでそんなに替わりはない(まぁ最低限3回は欲しいというのはある。フェラとかパイズリとかは2回のエロシーンじゃ入らないので)というのもあるんだけど、もう一つにはこの作品の「エロシーンの導入」が基本的に上手いのよね。上でいろいろ説明したとおり、この作品は物語り上のドラマツルギーの盛り上がりの途中とか、その盛り上がりがおわった後での主人公とヒロインがいろいろなレベルで結ばれたええ雰囲気のなかで、その雰囲気を壊さずにエロシーンを少しずつ入れてくるから、物語やヒロインに対する感情移入とエロに対する性的好奇心がちょうどよく繋がっている。敢えてわかりやすい、そして一般的には嫌われている表現を使えば「告白したのちにセックスするような」エロシーンの流れを非常に効果的に用いている。もちろん「告白してすぐエッチ」が嫌われる理由も、そうした批判が妥当なケースというのも批判しないが(ドラマツルギーの関与の薄いまったり系萌えゲだったり、良い話系のお話で即セックスは萎えるというのはわかる)しかし「告白してすぐH」が、あけるりの麻衣たんシナリオのエロさを支えている一つの重要な要素であることも否めないわけで、物語の盛り上がりとエロの盛り上がりを巧妙に繋げるようなシナリオ構成こそ、今後の萌え燃えエロゲの重要な課題であることは謂うまでも内。燃えゲにはエロは相性が悪いとか抜かしているヒマがあったら、SAOの完全パクリ作品でも良いからちゃんとエロイ和姦萌え燃えゲをつくってみろってこった。

先の特徴つまりドラマツルギーの盛り上がりをエロシーンに繋げるって辺りと関係するところだけど、愛撫シーンから挿入シーンへの繋がりがこれまた上手いのも評価できる。例えば、シナリオ的にはわりとイマイチな千春シナリオでも、この特徴の御陰で、愛撫シーンのまだ余裕のある段階で2人ともなんとか「好き」を我慢できていたのに、ぶち込んでしまったらつい千春たんが「好き」を言ってしまった!みたいなエロさをよく描けている。ここで重要なのはヒロインと主人公の愛撫から挿入シーンのやりとりであって、たいてい愛撫シーンが下手なライターの場合挿入シーンもわりと一辺倒な台詞回しが多いような感じなるんだが、愛撫シーンでの主人公とヒロインのやり取りがちゃんと描けていると、基本的にはわりと一辺倒にならざるを得ない(そりゃ基本的にアレとアレを動かすしかないんだから仕方がねぇ)挿入シーンでもちゃんと主人公とヒロインがHしているような感じなるのだ。特殊変態シチュとか特殊性癖エロゲなら兎も角として、基本的にはエロのバリュエーションが限られる(むろん、それは全く問題ではない)純愛エロゲのエロさとは、そういうエロシーンまでの雰囲気作りと挿入シーンまでの愛撫シーンにおける主人公とヒロインの睦み合いが何よりも大事であるということを教えてくれる、模範的なエロシーンだったとおもう。


まぁそうはいったところで、なんで透子さんの最後のエロシーンにわざわざ「ファッション眼鏡」をつけ足す必要があったのか?は永遠の謎であるが、その点を除けば透子シナリオはアフターシナリオのイチャラブ描写としてほぼパーフェクトである。もう開始直後の透子さんの柔らかすぎるボイスに一発でやられますからね。もう、凄いよコレは。たぶん本編をやっていない人でも、他シナリオでの透子さんボイスと明らかに感情の質が異なることはすぐにわかる。別に「別人格」ってほどの変化があるわけでも、またはある種の芸達者ボイスのような超絶技巧を感じるわけでもないんだが、この「声質そのものは変えずにその感情だけが明らかに別人のように変わっているような」自然の感情の転調はとてもすげぇ。もうこういう演技をされると耳が貪欲になるというか、全ボイスを耳の穴をかっぽじって聞きまくりそこからキャラクターの何気ない感情の変化を全て聴き取らずにはいられなくなるんだからやっぱエロゲって最高ですわ。

ああ、世の中には「エロゲのボイスなんてどーせスキップされるんだからアニメに比べるとボイスは重要ではない」と平気で自分が音痴だと公言している人間がたまにいたりするが、こういう人は同時に自分は自発性とか自立的意思なんてありませーんとも白状してるに等しき立派なブラック企業奴隷に違いあるまい。なるほど、僕も全ボイスを聴いているわけではないのは事実だ。まぁ最近はボイスノンスキップ機能がほぼ全てのエロゲに搭載されているので、特に全ボイスを聞こうとしていなくとも5~7割くらいのボイスは「聴いてしまっている」状態にあるとは言えるわけだが、エロゲのボイスにおいて重要なのは、その「ユーザーの自発的意思によってボイスを聴こうとする能動的態度」が促される可能性である。ここで僕は別に「エロゲのボイスを全部聴け」と逝っているわけではなく、寧ろいいたことはその逆の方向性であり、やや極論めいた言い方をするのであれば「聴いても聴かなくても良いように思えるボイスを、自分から能動的に聴こうという欲望が喚起されることで、そのボイスに対する感受性が他メディアと比べていちだんと高まる」ということ。多少礼儀知らずな言い方をすれば、わりとどうでも良いキャラのボイスはスキップして、自分の好きなヒロインボイスだけを集中的に能動的に聴くことによって、そのヒロインボイスに対する自分の感情移入が、まるで自分の好きな女の子の声だけ聞いているような妄想効果によって飛躍的に高まるってわけだ。もちろん、それは単に「自分の思い入れ」だけで成立しているわけではなく、その思い入れつまりユーザーのヒロインとそのヒロインボイスに対するイメージと、実際のエロゲの上のボイスが上手く重ならないと駄目なわけだが、この透子さんボイスはまさに「透子さんって主人公と付き合って明るくなったら、冷たい声質を維持しながらもソフトクリームのように暖かい柔らかさで話してくれそうだなぁ」という無意識の期待を見事に叶えてくれた名演技であった。

もちろん、シナリオ内容も本編後のアフターイチャラブシナリオとしては完璧に近い。これも基本的にはアナザシナリオと物語構造は同じなんだけど、今回のシナリオ上の問題は「贅沢な悩み」というか、悩みそのものが既にイチャラブ化しているというか、出来ればそのまま一生透子さんの悩みを解決しないで、もうずっとそのまま透子さんのイチャラブもてあまし状態を続けても良いんじゃ無いかと思えるようなドラマツルギーですからね。そういう主人公に終始引っ付いているような状態でも、特に意識的に透子さんがデレたり甘い言葉を囁き合うような馬鹿カップル化しないで、もうごく自然にそのまま主人公の側に引っ付いて普通に勉強を教えたり弁当を食ったりしてる、デレなんぞを遙かに通り越して主人公とイチャイチャつーかさわさわやってる感じが非常に素晴らしいし、主人公がアクシデントで水に濡れたりするとごく当たり前のように水着姿でシャワールームに入ってきてしまう天然夫婦状態もサイコーなのですが、このシナリオの白眉はそんな透子さんがもの凄い勢いで恥ずかしがってしまう、主人公の告白シーンですよ。いやぁこればかりは、流石にネタバレなのでここでは明らかにしませんけど、この手の告白シーンでは僕の中で10本の指には少なくとも入る傑作シナリオですよ。ほら、こういう告白って基本的に感動展開になってしまうじゃないですか。むろん内容が内容だけにそれで感動方向に持っていくのはまぁ自然だとおもうんですけど、見方によってあの告白はたぶん人生の中でいちばん恥ずかしいし、萌えオタたる僕としてもそう迂闊に口に出せない台詞なわけで、その例の台詞の「恥ずかしさ」と「嬉しさ」をここまで可愛く素敵に語ってくれた透子さんは本当に幸せ者だと思いますた。

ただ、シナリオ単体の評価としては透子さん√のほうが高いんだけど、恋剣乙女っていう作品全体を象徴する√としては、やっぱイブ√だと思うんですよね。いや、このイブ√は本編もその続きであるアフター√でもイブの導力は消滅してしまうし、アフターでは殆どその存在すらあまり関わってこないのだが「主人公とヒロインが各種問題にいろいろありながらも前向きに協力し合いながら解決していく」という基本プロットから、自然にイチャラブ描写が導き出されるような雰囲気が、何よりもこの作品の良いところかなーと思うんですよね。特にこのイブというヒロインの場合、多少誇張した言い方をすれば「主人公がいなくてもわりと1人でやっていけるヒロイン」であって、基本的に主人公に対しても上から目線なんですけど、そういうヒロインが主人公の存在によって「助かる」とか「救われる」とかではなしに、主人公と一緒にいることによって「優しくなったり嬉しくなる」って言うようなシナリオ展開が良いと思うんですよ。主人公はあくまでサポート役に徹するというと、なにか主人公の存在が役立たずに思える人もいるかもしれず、まぁそこらへんの「主人公は必ず物語の中で具体的に役立たなくてはならない」という強迫観念そのものが問題じゃね?って突っ込みは兎も角として、その表面上のいろいろなプロットの問題の解決のなかでイブ本人が「優しくなったり嬉しくなる」ことが、どれだけ本人とって「問題の解決」とは別のレベルで大切なことか?っていうのが伝わってくるのが本編シナリオだったと思うのですよ。

アフターシナリオもその発展版みたいなものですね。ここでもイブの悩みは、透子さんシナリオとはまた違った意味の贅沢な悩みというか、ある意味で純粋な現実逃避なわけですよ。別にたった一ヶ月のあいだに、主人公と一緒の学園に通ったことで何が起こるわけでも解決するわけでもなく、ああもちろん別に一ヶ月後には主人公と離ればなれになるわけでもないからそういう不幸から逃げているわけでもなく、その一ヶ月は本当にイブにとって「ただ一ヶ月の間ふつうの学生として主人公とイチャイチャするため」だけに与えられた時間なわけです。もちろん、その一ヶ月後にはまた主人公と一緒に戦うことになるし、それはそれで主人公もイブもお互い納得しているし基本的には信頼している。でも、その一ヶ月後のことはイブにとってやっぱり少し不安でもあるし、出来ればしばらくのあいだは忘れたいことで……だから、この一ヶ月間のイチャラブシナリオはどんな問題を解決するわけでも何かを成長させるわけでは全くないけれども、そーいう、純粋な現実逃避が自分から求めることが出来て、そしてそれにうってつけの相手がいるっていうのは、イブと主人公にとってもの凄い幸せなことだと思うんですよね。もちろん、イブもイブでときには茜くらいヘタレなヒロインだからときどき弱音を吐くし、前日にいざ主人公の前に見得を切ったとしても、真夜中には主人公のベットのなかにエロイ下着でもぐり込んで最後の現実逃避を求めてしまうわけだけど、その「燃え」的なシチュエーションに前向きに対処しながらも、どこかで人間には「萌え」的な安らぎやエロを見出さなきゃエロゲのヒロインみたいには幸せになれないよね!特に今回のイブの最後のエロシーンの連続絶頂ボイスの中の人の乱れっぷりはかなりのものであったし、この恋剣乙女の微妙な成功を糧としてメーカーさんやライターさんも「あまり立派ではないけど可愛い萌え燃えエロゲ」を作り続けて欲しいものです。いろいろと細かい傷はあったけれど、全体をとおして最後まで楽しめた作品でありました。