「萌えも燃えもエロもイチャラブもシナリオもテンポも良い展開もありますよっ!」って感じの売りが数年前からの「ライト系エロゲ」のセールスポイントだが、これは典型的な「言うは易く行うは難し」である。例えば「テンポが良い」を重視すると、在り来たりなイチャラブを短く切り上げてすぐにシリアス展開に直行するブツ切り展開になりがちだし、萌えと燃えがあまりに離れていると糞シリアスだとか酷評されがちではある。この作品はそう言う意味でわりと上手くいった作品だろう。燃えバトル展開は前半の共通と一部シナリオだけに限定。ヒロイン個別ルートでは燃え設定を日常の萌え恋愛物語に転換させ、特に透子シナリオは燃え展開の伏線を最後までイチャラブを阻害しない形でうまい形で引っ張り綺麗に締め、ワンリリ好きならニヤリとできるオマケもついてくる。燃えが前面に出ている茜シナリオが一番微妙なのは不味いのだが、イブ様最高なので問題ないのだぁ!
☆基本データ
・総CG枚数(差分無し)84枚 総回想数25枠
・キャラ別CG(エロCG)&回想数
茜 20枚(13)5回
柚 20枚(13)5回
透子 21枚(13)5回
イブ 20枚(13)5回
その他 3枚
(備考:特になし)
☆クリック数
簡単な説明:クリック数つーのは、既読スキップオン+テキスト速度ノーウェイト環境下で計った、ゲーム開始時から作品を終えるまで各シナリオ毎のクリックの合計回数のこと。
(1)初回プレイ時の「共通」+「個別」のシナリオの総容量が分かる
(2)2周目以降の、共通シナリオを除いた個別シナリオの総容量が分かる。
(ゆえに、一周目のヒロインルートはクリ数が多く、二周目以降はたぶん半減するが、一周目の「個別ルート」が他よりも長いというわけではないので注意)
(3)エロテキストのクリ数と。それを含んだ全シナリオのクリ数を比較すれば、両者の割合もある程度はわかる。
(4)テキスト速度の環境さえ同じなら、プレイ時間と違ってユーザーによる計測誤差は少ない。
といった四点が指標として役に立つとバッチャが言っていたような気がしないでもない。
(5)BCは主人公とヒロインが恋人になる前までのクリック数で、ACは恋人になったあとのクリック数ね。
「その恋人になった「まえ/あと」ってどう定義するの?というのはなかなかにむずかしい話であるが、大抵のエロゲには告白CGなるものがありますからそこを基準にします
そういうCGがなかったり、なんかズルズルだらしない感じでずっこんばっこんなシナリオの場合は、まぁ僕がテキトーに判断しますが、その場合は「?AC6992」みたいに?をつけまつ。
そういや「誰とも付き合わないシナリオ」っていうのもあらわな。そう言う場合は特にACとかBCとかは書きません。
1周目 茜 「14658」 (共通ルート込み)BC8754 AC5969
2周目 柚 「7069」 BC2158 AC5011
3周目 透子 「7202」 BC1966 AC5211
4周目 イブ 「8792」 BC3514 AC5214
・各キャラのHシーンのクリック数
茜 1:569 2:471 3:296 4:401 5:256
柚 1:475 2:244 3:324 4:405 5:386
透子 1:658 2:423 3:462 4:475 5:466
イブ 1:498 2:416 3:785 4:340 5:485
☆作品の大まかな評価。
簡単な説明:これはもうそのまんまですな。一応Z~SSSまでの評価基準が存在するらしいのですが、大抵はC~Aの間に収まっているようです。
「C」がだいたい「やってもやらなくても別にいいんじゃね」。「B」が「やればけっこう面白いんじゃね」。Aが「やってないヤツは人生つまないんじゃね」。
といったかんじになっております。あと「全体評価」っていうのは、その項目における「作品全体」から感じる何となく駄目だとかイイとかそういう評価です。
あと、これは当たり前すぎて却って説明しにくいものですけど、僕の定義による「シナリオ評価」ってヤツは「感動させなきゃダメ」とか「深いテーマが無きゃダメ」とか、
そういうヤツではなくて、基本的には「その作品が目指していると思われるものが、どれくらい達成されているか?」というような「完成度」評価に近いものかも知れません。
ですから、原理的には抜きゲであろうと萌えゲであろうとシナリオゲであろうとも、その作品が目指しているものが完成されていると判断すれば、シナリオ評価は高くなるって話です。
・シナリオ評価
茜 B-
柚 B
透子 B+
イブ B+
全体評価 B+
・エロ評価
茜 B
柚 B
透子 B+
イブ B+
・イチャラブ評価
茜 B
柚 B
透子 B+
イブ B
全体評価 B
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☆シナリオについて
「セイントに同じ技は通用しないのだ!」というネタが今の若者にどこまで通用するかはわからないので、いちおう手短に説明しておくと、
これは「聖闘士(セイント)星矢」というまぁ一時期は「ドラゴンボール」並の人気を誇った少年漫画に出てくる「お約束的」な「決めぜりふ」の一つであり、
大抵は、圧倒的な実力差がある敵と戦っている主人公たちががここぞというシーンでこの台詞を発し、敵の必殺技を見事に見切って一発逆転のペガサス流星拳を食らわすのであった。
さて、当然のことながら、このような少年漫画を見ている純朴な少年達は「でも、なんで敵のセイントは星矢たちの攻撃を何発も喰らっているのに見切れねーんだよゴルぁ」だの、
「同じ技は通用しないのだ!とか言っておきながら一輝さんボロボロにやられているじゃないですかw」だの「氷河さんのダイヤモンドダストダンスは何度みても笑えるw」だの突っ込みをして楽しむものである。
普通に考えれば「セイントに同じ技は通用しないのだ」というのが、厳格な設定だとするならば、その設定の上では「力が弱くてもいろんな技を持っているセイントが最強」と言うことになるわけで、
まぁ僕は最近この手の燃え系エロゲだのラノベにはご無沙汰しており、最近のその界隈がどーなっているかはくわしくないのだけれども、だいたい6年くらい前の印象では、
燃え系バトル設定の矛盾になっていたように記憶している。ドラゴンボールみたいに超サイヤ人ヒエラルキーが確立しているのであれば何ら問題はないが、
パワーよりも「相性」だの「弱点」だの「設定上のなんたら」を突けば実力差があっても相手を倒せるみたいな知的バトル設定にすると、器用貧乏みたいなヤツがその世界では最強じゃね?と思ってしまうわけだ。
もちろん、言うまでも無いが、最初のセイント星矢の例を見ればわかるように、そのフィクションに置いて重要なのは別に「細かいバトル設定がどーこー」と言う話ではなく、
「圧倒的不利な状況にいる主人公が超絶的精神論で相手をぶちかます」という物語的シチュエーションである。「セイントに同じ技は通用しないのだ」というのはそのフィクションにおけるバトル設定を記述しているわけではなく、
あくまで前述の物語的シチュエーションを盛り上げるための台詞であり、その伝で言えば、矢鱈に設定だの「知的バトル設定」を云々する作品でも「圧倒的不利な状況にいる主人公が超絶的思考回路で相手をぶちかます」という、
そうした物語的シチュエーションを盛り上げるためのいいわけでしか無いのである。そのようなフィクションにおけるバトル設定というものは、例えばまぁRPGのバトルシステムを思い浮かべるとわかりやすいとおもう。
RPGのそれのようにいっけん全てのアクションの効果(ダメージがどれくらいとかなにに強くて弱いとか)が全て表示されているように見えながらも、実は作者の物語展開の都合によってわりと好きに書き換えられる曖昧な部分が残っており、
ドラクエで「メラ」と言ったら「単体相手に10そこらのダメージを与える」と言ったことがゲームシステム上完全に明らかになっているわけだが、フィクションの場合はいっけんそのような説明を表面的には語りながらも、
しかし高魔力の持ち主のメラは一点に魔力を極限までに集中させるためその破壊力はメラゾーマ以上だからマヒャドを打ち抜いたのよねといったような「予想のつかない展開」を効果的に用いて、作者の用意する物語的展開を優位に運ぶのである。
余談で言えば、これはミステリーにみられる物語レトリックと少し似ているとおもう。両方ともまず最初に表面的にはそのゲームにおけるルールとその素材を全て提示して「これはフェアなゲームですよ?」と読者を誘うわけであるが、
しかしそのルールの「適応方法」を「物語内でのできごと」として語るのは作者であり、そのできごとにおいて常に表面的なルールは「そのような解釈も可能なのだ」といったことを事後的に説明することで破られるわけだ。
作者はそのことによって幾らでも「読者の予想を裏切る」展開を物語ることができる。もちろん、そのように読者も騙されることを望んでいるのであり、これは俗に言う知的ゲームよりも、騙されたいと願う痴的ゲームと言ったほうが正しかろう。
話を元に戻せば、いま現在放映中のセイント星矢の新シリーズ「セイント星矢オメガ」というのはそう言う意味でなかなかに興味深い作品であり、まず「セイントに同じ技は通用しないのだ!」を封印し、
序盤はやれ「属性攻撃による相性がどーこー」みたいな設定を持ち出したり、仲間同士のコンビネーションがどーこーみたいなところを狙ってて、なんとか元祖セイヤとの差別化を狙っていたフシがあるんだが、
さいきんはもはや属性攻撃などは半ば忘れており、結局は元祖セイヤの「圧倒的不利な状況にいる主人公が超絶的精神論で相手をぶちかます」に戻ってしまっている。まぁそれはそれで別にイイとしても、
このオメガには元祖セイヤの根性バトルを可能にしていた「冷血博愛沙織さーん」だの「ザコ氷河ままーん」だの「ブラコン兄弟瞬&一輝」だのといった滑稽スレスレの熱い関係にかなり欠けているので、
元祖セイヤと比べられてなんかパンチが弱いなぁと思ってしまうところは否めない。つい最近シャカ2世が出てきたけど、シャカの圧倒的な存在感は全く感じられなかったからなぁ。五感剥奪ぐらいしようよみんな。
しかもそこらへんを何とか逆転できそうなのが「でもユナたんは可愛いから、もっとユナたんを前面に押し出してアテナ以上のヒロインにすれば……」という、ある意味元祖セイヤを否定しかねない萌え恋愛プロットしか残っていなさそうなところが、
この年代における燃え作品の絶望と希望を端的に現していると言えるだろう。まぁ僕はガンダム種みたいな「元祖作品に比べると不純なw」萌え作品が結構というかかなり好きなので、
わりと楽しめているんですけどね。いいじゃん。そういう情けない燃え作品こそ僕らの時代のリアルなのだよ!
さて、本題の今作品について述べ始めるとすると、体験版が妙に評判の悪かったことはある意味でこの作品の特徴とその受容を示していると言えて、まぁこれはわざわざ「体験版の感想を丁寧に書く」連中だけに限定されることかもしれないが、
どうにもこうにも昨今のオタ業界では「熱血漢だけど無能な主人公」だとか「言葉遣いが悪かったり幼かったりする」という主人公を「冷血漢で有能で言葉使いが丁寧な大人」が糞味噌に叩くという風習が広がっている。
僕からみるとそのような「感情的な主人公」を「感情的でイクナイ!」と叫んでいるその人たちの感情というのは、自分を冷静だと感情的に叫ぶ感情ほど欺瞞的なモノはねぇよなぁと思ったりするんだけれども、
まぁ基本的に「そういう熱血漢な主人公とそれを応援する仲間たち」が「冷血漢で計算高いクラスメイト」たちと対立関係に置かれて、そういう環境のなかで主人公たちがいろいろと奮戦するお話なわけね。
だから、体験版部分即ち序盤部分は我慢もしくは伏線のためのフェーズであり、そういう熱血漢めいた信条やら感情に共感できないと基本的に気分のいいシーンはあまりなく、ここらへんが体験版の不評の大半の理由だろう。
なにせ僕らは熱血漢でもなく基本は冷血漢であるものの、他人の熱血をうぜぇだのキモイだの罵倒するぐらいには感情を抑えられない短絡的なバカであり、そういう意味では主人公サイドよりもクラスメイトサイドの人間が大半だからだ。
主人公がSSSクラスのチートスキルの持ち主であるが、中盤まで進まないと一向にそのチートスキルで主人公無双しないのも、いや、見方によって一回もそのような「主人公無双」シーンが無いのも、
その手の作品が好きな人にはマイナスだろう。前半の途中当たりで、そのSSSクラスのチートスキルの具体的な応用方法がわかり、半ば嘲笑していたクラスメイトは一気に手のひらを返し雰囲気もハーレムゲーっぽくなるが、
そうなったとしても主人公が今までの「逃げ回り要因」から「バイキルト要因」にクラスチェンジするくらいであり、あまり爽快感めいたものはない。基本的に「主人公無双燃えシナリオ」みたいなものを期待している人は回避した方が良いだろう。
じゃあそういうお前はどうなのかと言えば、まぁ長谷川氏のシナリオってことで「前半に無理難題を押しつけられたり不条理な環境に投げ込まれながらも、仲間たちの助けを得て少しずつ課題をクリアしていく」
というAXL展開になるのはわかっていたので、基本的にはまぁ予想通りの範疇だなぁぐらいの印象しかなかったんだけど、確かに不評を言われてみれば何個か疑問点みたいなものは見つかった。
僕はメインプロットと関係ない設定を云々する趣味は無いので、そこらへんは別にドーでもよかったんだけど、基本は三人チームが勝ち進んでいくようなお話で、その三人が「主人公&茜&透子」というのがちょいバランスが悪いなぁと思ったのだ。
主人公と茜の組み合わせはまぁ「単体では能力を発揮できない主人公」と「最強能力の一族なのに何故かへっぽこ能力しかないヒロイン」だからお話的には相性抜群だとしても、
最後の透子というキャラがなかなか曲者だ。「基本的に最強能力」の持ち主だというのはイイとしても、自ら積極的に能力を使おうとせず、今回の大会にしても茜との何らかの因縁で半ば義務的に出場しているという設定も、、
物語の伏線としてはイイとしても、バトル描写の上ではなかなかに問題だ。だって残り二人が嗚呼な能力である以上、この透子の存在によって試合の流れが大きく変わるんであり、それがいつも「本気を出していないかも」設定では、
主人公たちのチームになにかキメ手となるような安心感がいつも欠けているように思えてしまう。メインヒロインである「イブ」が敵役なのはイイとしても、
もう一人のメインヒロインである「柚」が、その他サブキャラと同等のセコンド役でしか無いって言うのもどうかと思ったし、やっぱり今回もバトル関係はオマケ的なものなのかなぁと思ったのは事実である。
しかしフタを開けてみれば、これが……まぁ「60点ぐらい」を期待したら「75点以上」のものを見せつけられて驚いたというのもあるが、とはいえ、水準以上の燃えバトル展開だったと言えるとおもう。
基本の流れは予想通りだ。主人公たちは最初からかなり問題を抱えているチームで、それを仲間たちの協力や特訓によって少しずつ問題を解決していくという展開であるが、これが実に丁寧で、そしてじつに長い過程なのである。
最初は未だ自分の増幅能力の使い道すら知らない主人公が対抗試合に出て能力に目覚めるわけだが、僕はこのあたりで「ああ、後はもう多少の困難はあっても、主人公の能力の応用でこの試練展開も終わりだろう」と思ったけれども、
この後も「でも、主人公が増幅系ってことは、単体では何もできないから試合だとまっ先に狙われね?」という実にまっとうなツッコミによって、主人公たちのティームは依然としてボロボロ状態。そんで地獄の合宿生活へと至るのである。
ここで我らがイブ様が例によって例の如く「実は友達思いのイイキャラ」だったという設定が明らかになり、主人公たちをシゴイてくれるのであるが、ここで徹底的にイビられるのが透子というのが実におもしろい。
しかもその「本気を出さない透子」をどうやって開眼させるのかなーここでもうトラウマネタバレをしちゃうのかなーといろいろ思わせて置いて、その結末がたんに透子をキレさせて本気にさせるというその無理矢理っぷりこそ燃え展開の鏡である。
それに、ここでは前述の「不安定なティーム構成」という設定が、「いかにこの不安定なティーム構成のうえで工夫をして戦うのか?」といったティーム内での結束を高めるための練習描写としてプラスに作用しており、
個々の能力値がどーこーという話に終始しがちなこの手の燃えシナリオのなかでは「仲間と仲間の関係」にスポットが当たるような描写がメインとなっていて萌えオタである僕としては、こういうシナリオの方が楽しめるである。
その肝心(ではない)バトル描写に関して言えば、こういうのは基本的に演出に左右されるところが多いので、テキストだけでどーこーいうのは難しく体験版をやれと言ったほうがいいのであるが、
基本的にはエフェクトと必殺技の掛け声を中心にしつつ、地の文の説明は最低限にしてキャラクターの掛け声やら実況やらで繋いでいく類の、まぁパワーバトルタイプの戦闘描写と言えば良いだろう。
この手のやり方のメリットとしては、エフェクトと効果音によってそのバトルの雰囲気を半分ぐらい描写しているので、地の文による細かい説明を省くことができ、取りあえずはテンポは良いということ。
デメリットとしては、その戦闘描写の細かいところは前述のようにエフェクトと効果音とキャラの台詞によって「何となく語られている」ところにユーザーが想像で補っているところがつよく、
細かいところを本当に気にしだしたら「えー、でもここってどうやって技を避けたの?」と疑問に思ってしまうところか。今作の場合はおおむねうまくまわっていると思うが、
多数キャラを相手にする透子のバトル描写では、ちょい説明不足だと思われるところが多少はあった。ただ、ミクロな戦闘描写は多少は問題があるとしても、今作の場合マクロな戦闘の流れはそれなりにおもしろかった。
主人公が増幅系ってことで、始めからある程度戦闘の流れが固定されそうなところを、試合ごとに「今回は主人公が一回だけ動力を無効化できるようになりました」だの「今回はキスでヒロインの動力を高めたので手を繋がなくてもOKです」だの、
主人公のバトル設定を毎回微妙に変えているし、主人公は単体で動力を発揮できなくても、単体で敵を攻撃をする戦闘能力もそれなりにあるのでバイキルト君だけに終わらず、意外なところでちゃんと一撃を与えられるのもいい。
この手のパワーバトル系では一種のお約束である「ダサカッコ悪い無理矢理な必殺技」も用意されており「超怪力能力+ワープ能力」という組み合わせで人間魚雷技をぶちかまされたときには思わず胸が熱くなった。やっぱお約束は最高だわ。
まぁ「バトル描写」だけでお奨めできるかと言えばイエスとは言い難いが、そのバトル描写までに至るまでの特訓やら仲間とのティームワーク構築と言った下支えはきちんと書いているし、その過程を生かした戦闘描写であることは確かだから、
マニアックな戦闘描写よりも主人公たちが一緒に頑張って敵を倒すようなライトな燃え展開が太好きですと言う人にはわりと楽しめる内容になっているとおもう。少なくともクロシエット作品やドラクリよりもバトル展開を生かしているとは言えよう。
さて、ここまでのバトル云々のお話は、主に……というかほぼ100%「共通ルート」の話になる。共通ルート内にも当然のことながら選択肢はあるが、そこで分岐するのは一つのミニイベントぐらいの話であって、
共通ルート内はほぼ一本道のシナリオ進行でバトル展開が語られると言ってもいいだろう。そうなってくると、問題は如何にして今後の個別ルートを語るのかと言うことである。
僕がよく言及することなので、何度もそのお話は聞いたという方には恐縮であるが、この手の「共通ルート内である程度完結したお話を語ってしまうエロゲ」というのはその後の個別ルートの処理がなかなかに難しい。
ちょい古い作品になるけれども「恋空空模様」がライトな作風で共通ルートでバトル展開という意味で共通点がおおい。素朴に考えると、共通ルートの物語展開をそのまま個別ルートに引き継げばいいんじゃね?と思うかもしれない。
しかしこれがなかなか難しいのだ。例えはまぁ何でもいいわけだが、セイント星矢のポセイドン編やらドラゴンボールの人造人間セル編を共通ルートと考えて、そのあとに五つぐらいの個別ルートを書くと仮定してみたらいい。
つまり、五つもの「ピッコロ変身オカマ編」だの「さおーりさん淫乱ジャブ編」だのといった物語を改めて書かなきゃいけないわけである。こりゃキツイだろう。なるほど基本的にそれが「燃えゲ」というジャンルならそれもできるだろうが、
しかしこの作品や恋空はいちおう売りとしては単体攻略タイプのライトな萌えゲであり、個別ルートは基本的にヒロインとの恋愛を書かなくてはいけない。じゃあなんでライトな萌えゲなのに共通でバトル展開が語られるかという疑問もあるが、
これは基本的に複数のヒロインの魅力を描くためにそのようなバトル展開はそれなりに使えるという点もあるだろう。これはエロゲにおける共通ルートの存在意義にも関係するお話であるが、ヒロインの魅力やら特徴やら物語との関係性を描くためには、
ある程度一貫した物語的展開とはそれなりに有益であり、またユーザーがメタレベルで関与できない(つまり選択肢によって物語に影響を与えたり選んだりしない)ベタレベルの物語の構築の為にいっけん萌えと反するようなバトル展開も有益なのだ。
とはいえ、難しいのはその「共通ルート」のあとである。普通、いやまぁ7割ぐらいの萌えゲにおいて、共通ルートの物語は語りかけの状態、つまりは「あなたの選択次第で物語はこれから幾らでも変わりますよ」と言う状態で個別に分岐する。
もっと丁寧に言えば、それらの作品の共通ルートとは、その個別ルート内における幾つもの伏線を撒くために存在しており、そのうちの一つの伏線の物語が個別ルートではヒロインとの恋愛物語として語られるわけである。
しかしこの作品の場合、確かに幾らかの個別ルート内の伏線は語られているものの、しかしひとつの「対抗戦バトル展開」というのは共通ルート内で終わっており、そこから物語を続けることはできないのだ。
かといって燃えゲのように新しい物語を構築することもできない……この困難にぶつかったのが「恋空空模様」であり、まぁ共通ルートのバトル展開を名をあげた主人公がモテモテハーレム状態になるのはそれでいいとしても、
その名をあげた主人公とヒロインとの恋愛物語がどうにもこうにも難しい。共通ルートの伏線が繋がっている佳代子やら、共通ルートでの燃え設定をそのまま個別ルートでも使える聖良はまだよかったとしても、
その他のキャラは基本的に「共通ルートと個別ルートが完全に別もの」というFD作品のようにおもえ、尚かつ物語展開そのものは共通のわりと無茶な糞シリアスを基調とした茶番劇なのだからなかなかに印象が悪いのだ。
さらに言えば、共通ルートはあくまで「二周目以降はスキップされるもの」であり、ユーザーはまぁ物語の伏線ぐらいは覚えていようが、共通ルートの物語的な流れやノリはだいたい三周目以降は引き継ぐことが出来ないと言ってもよく、
単純に共通ルートからそのまま流れるような物語を描けば良いというものでは無いのである。この手のライト系燃え萌えゲーの難しさというのは、主にこういった「共通」と「個別」の非連続性と連続性をどう処理するのかという点がつよいのだ。
まぁそういう意味で言えば、北側氏と長谷川氏のAXL作品も似たような難しさがあるが、こちらは良くも悪くもヌルイ前半の試練展開とまた同様にヌルイ後半の微妙シリアス展開がちょうどええ気持ちで御茶を濁しているところもあり、
しかし今作はわりと共通ルートのバトル展開が成功してしまっているので、AXL作品のようには行かないわけだ。まぁ唯一共通していると言っていいのは、メインヒロインシナリオが一番微妙だったところか。
結論から言ってしまうと、この茜たんは共通ルートの主役級の扱いでそこでほぼヒロインとしての魅力を語りきってしまっているんだよね。僕は一周目に攻略したからまだよかったものの、二周目、三周目ぐらいで攻略した人には、
共通ルートからの盛り上がりも無く、かといって個別ルート単体の勢いがあるわけでも無く、なかなかに評価しづらいシナリオだとおもう。まず個別ルート前半の掴みが弱いのが問題だ。
共通ルートおわりの時点で茜たんが主人公激ラブなのはわかっているし、何らならあのまま主人公と結ばれてもいいくらいの勢いはあったわけで、その共通の勢いを使うというあったと思うんだけど、
いったん体勢を立て直して「恋愛に疎い茜たんがそのおもいに戸惑う」展開にしてしまうんだよね。まぁそう言う話も悪くは無いんだけど、共通の茜たんのあからさまな態度とは少し矛盾すると思うし、
何よりもそういったシナリオで茜たんの新しい魅力が描けていないのがちょい問題だ。こういう一直線キャラは多少の戸惑いは描写するとしても、最終的にはそのまま真面目に一直線で主人公にアタックした方が萌えるんじゃないかなぁ。
で、この告白イベントの後はイチャラブ描写になるんだけれども、これも途中まではわりといいかなと思いきや、最後のほうのシナリオ展開をみると「もっとやりようがあるんでは」と思ってしまった。
問題なのは最後の方のシナリオ展開とイチャラブ描写の展開が繋がっていないところだ。僕は別にここで「糞シリアス」云々を言うつもりは無く、そのシリアス描写を納得させるためのイチャラブ描写が弱いといっているのである。
最後の一歩手前、茜たんがいきなり「自分の力だけでイブを倒したい」と言いだし、そのバトルで「他人に甘えていたのが私の真の弱さだぁ!」と言いながら真の力を発揮する盛り上がりシーンで僕は非常に盛り下がってしまったのである。
いやいや、別にそう言う話の展開自体はいいんだけどさ。でも、ついさっきまで主人公とテキトーにイチャイチャしている描写を書きながらいきなりそれってアンタ「茜たんはずいぶんテキトーな人間だなぁ」としか思えないわけでして。
まぁそのあとの監視者うんぬんの話は完全にお約束バトル展開になっていてそこそこ楽しめたから、この手の話をやるんだったら、イチャラブ描写を続けながら監視者をひとりずつ倒してくみたいな「だんだん盛り上がる」展開のほうが良いのかなぁと。
茜シナリオよりも2ランクぐらいおもしろいけれども、茜シナリオと基本的な弱点は同じなのが柚シナリオか。ちょい別のアプローチから説明すると、この手のライトバトル展開モノには大抵なんらかの「世界観設定」というものがあり、
基本的にはその物語において必要な物語世界観を表す描写であるが、またはそういう世界観オタク的にはその物語のレベルから離れて自立した仮想世界観のリアリティがどーこーという話にもなりがちだ。
僕としては基本的には前者の人間で、別に架空世界観の設定と言ってもほぼ9割近くが現実の歴史の(イメージ)からのコピーに過ぎず、いやその雰囲気は別に良いとしても、
深く突っ込んだところで「現実のこれこれの部分と似ている」と言う話でおもしろくないし、そんだったら自分の知らないトルクメニスタンの歴史書でも読んでいた方がよっぽどファンタジーな気分に浸れるのではないかと思うのだ。
余談はこれぐらいにしてと、とはいえ「その物語に必要な物語世界観が弱い作品」というのもそれなりにあって、この作品の場合は特に柚シナリオにそれが顕著にみられるとおもう。この作品はいろいろと設定に凝っているように見えて、
基本的には物語に必要で登場人物と関わる設定以外は余り語られていない。それはそれでいいのだが、柚みたいな「導力者と普通の人間を繋げる」ような設定のヒロインで、
その導力者と普通の人間がこの物語世界ではどのような関係で成り立っているのか?といった描写が弱いと途端にお話そのものの印象も弱くなってしまう。いっそのこと柚を「導力の無い研究者」にしたほうがその点語りやすかったんじゃ無いのかな。
茜シナリオと同じくイチャラブ描写とシナリオ展開があまり絡んでいないのもややマイナス。こちらは完全に主人公たちの外部キャライベントで展開が進んでいくから、茜シナリオのようなヒロインの内面に変化に違和感は覚えないし、
それなりに盛り上がる展開ではあるんだけど、でもヒロインの親の敵を取る以外の関係性が無くオマケシナリオを見せつけられているような印象も否めない。まぁ告白した後は柚は完全奉仕型の幼馴染みになって主人公に尽くしまくってくれるので、
そうした犬っころ幼馴染みに萌えながら、ライト燃え展開を楽しむシナリオとしてはそこそこ成功しているとも言えるだろう。多少の不満はあっても、これくらいのシナリオが全部揃っているなら、充分合格ラインだとはおもう。
ただ、ここまでは「そこそこよくできている萌えゲー」ぐらいの印象しかなかったのだが、残りの「イブ」シナリオと「透子」シナリオのふたつをやって、これは今までの長谷川氏(というか某ティーム?)の最高傑作ではないかと思い直したのだ。
今まで書いてきたように、この手のヌルライト燃え萌えゲーにはいろいろと難しいところがあるわけだが、このふたつはその難問を相当のレベルでクリアしているのではないだろうか。
このふたつのなかで多少出来が落ちるのはイブシナリオのほうか。確かに僕にとってはいちばん重要である「イチャラブ描写」そのものの「量」が足りないと思わせるところは残念で、エンド付近のところでもう少し粘るべきだったとはおもう。
全体的にもう少しイベントとイベントの間に余裕があった方が良いと思わせるところもつよい。とはいえ、燃えバトル設定を上手く使った萌え恋愛物語としての完成度はけっこう高いシナリオだと思うのだ。
まずイブは共通ルートでは基本的には敵役であり、途中からは主人公の能力を知って精子を提供するよう強請るようになるが、しかし基本的には共通ルートではデレていない。だから個別ルートの前半はまずこの点を利用し、
お互いにまだ敵キャラ同士という関係性を残しつつ、その敵キャラ同士という関係性で燃え萌えイベントを発生させながらイブと主人公の仲を深めつつ基本的にデレさせながら、しかし最後のところでは「精子提供者」というストッパーで、
イブの好感度をある程度は有耶無耶にさせるわけだ。これは多少はあざとい手法であり、確かに「ヒロインが主人公のことを最後まで好きかどうかわからない」と言う手「だけ」で物語を進めるとなると、主人公を屁タレ化させて終わりになるが、
このシナリオはその間に間に燃えバトル的なミニイベントを入れることで、テンポよく主人公の悩みとイブのツンデレを語っているので物語展開そのものに爽快感と説得力がある。
具体的な例証をあげれば、主人公とイブがお互いに婚約者だと認め合った次の日、すっかりイブ様の下僕になった主人公はイブを昼食に誘うが、けんもほろろといった体で断られ、イブ様はやっぱオレの精子が欲しいだけでは無いかと疑い始める。
しかし、その後いろいろあって主人公が軽い怪我をした時には、イブ様はまっさきに主人公の元へと駆けつけるのであった。まぁ早い話がアメとムチを与えるのがうまいという話なのであるが、しかしそれをそのままあからさまにやると萎えるわけで、
物語上において「イブ様は自分にも他人にも厳しい(もしくは単に恥ずかしがり屋)ので、軽い理由でデレたりしないものの、いざとなったら主人公のことを真剣に思ってくれるのだ」というような伏線と状況が語られていないと駄目なのである。
このシナリオは基本的にそういう「小技」がじつに上手く使われている。例えば、イブがデレるときは彼女の導力が無意気に発動して周囲の植物を活性化させてしまうところとか、そういうさりげなさによってツンデレは語られるべきなのである。
告白後のシナリオ展開も前述のように多少の余裕のなさは感じるものの、基本的にはよく書けていると思う。これは作品全体の物語構成としては茜と対になるシナリオで「伝承者」や「監視者」といった根本的な設定を共有しつつ、
しかし別の形の答えを出すシナリオになっている。そもそも、僕が茜シナリオに感じた弱さは「今や殆ど形骸化し余り意味の無さそうな伝承者に、なんで茜は執着するのか?」という点が、主人公との恋愛物語にうまく絡んで無くて、
まぁ子供の頃を夢を叶えるという話で押しきっているのは良いとしても、それをそのままストレートに押し切る力にも欠けていたし、さらに細かく言うのであれば、いや子供の頃の夢が現実の形骸化とどう折り合いをつけるのか?って点を、
「それでも子供の頃の夢を信じるんだ!」と言う話だけで押し切るのはちょっとなぁと思うのだ。そういう意味でイブ様は、多少の悩みはあるものの、しかし主人公に後を押されれば、
自分のやるべきことや叶えたい欲望は最初からわかっているというまさに「様」をつけるに相応しいヒロインである。伝承者になるための目標も最初からわかっていて、そのためには伝承者の立場も能力も棄てることも厭わない。
イブ様は他ヒロイン達を「屁タレ何号」と呼んでおり、まぁイブ様にも屁タレているところが無いわけではないが、しかし他ヒロインと比べてイブ様の態度が「文句なく正しい」と思わせるような一貫性に満ちていることも事実である。
その一貫性とは、これは共通ルートからも一貫していることであり、伝承者戦のあとの最後のキメシーンでようやく要約されるところであるが、つまりは一見エゴイズムに見える行動と発言は全て他者利益の為に行われているということだ。
とはいえ、他者利益の為に行われる「気高い」行動が本当に他者利益になるかどうかはべつの問題であり、そこで基本的に凡人である主人公がこのシナリオでは丁度良いイブ様のサポート役として役立つことになる。
この手のヒロインとの恋愛物語は変にヒロインまたは主人公が自己犠牲街道を突っ張ってしまい、それによってそのヒロインや主人公の気高さ(とその裏腹の危うさ)を描いてしまうシリアス展開が多いが、
このシナリオの場合、主人公がある程度イブ様を理解した後は主人公が完全なサポート役に徹するのでふたりのパートナーっぷりが実に安定しているのである。イチャラブ描写そのものは少ないものの、
物語全体として主人公とイブ様がええ感じでいつも繋がっているなぁと思わせるのは、こうしたシナリオ上の構成において主人公とヒロインの二重奏が重要な協和音をなしているというところが大きいだろう。
これは燃え系シナリオのイチャラブ描写ならぬイチャラブストーリーのやりかたのひとつではないだろうか。
そして、イブ様と正反対であり、共通ルートのイブ様が正しく見抜いていたとおり、この作品のなかで最高の屁タレに属するのが我らが透子ちゃんである。まぁ細かいところを言っておくと、
この透子ちゃんとイブ様の関係性の設定がルート毎でちょいあやふやな感じがするのがマイナスで、確かにネタバレを言ってしまってはダメなシナリオではあるものの、もう少し丁寧にやるべきだったと思う。
そう、この透子ちゃんシナリオは共通ルートから、たった一つのネタバレを中心に展開するお話だといってもいい。それは透子ちゃんと茜たんの関係性であり、ふたりに、主に透子ちゃんのほうしか覚えていない因縁があることはわかるが、
その因縁というのがなかなかに見えてこないのだ。透子ちゃんが茜たんに何らかの「借りのようなもの」があるのはわかって、だからこそ透子ちゃんは茜たんのティームに参加したことは何となくわかるが、
しかし透子ちゃんが試合においてあんまり「本気を出さない」理由がよくわからない。それは共通ルートの透子ちゃん分岐イベントで「小さい頃から自分の最強導力を持ち上げられるのがイヤだった」みたいなことが語られ、
その点で主人公の環境とちょい似ているところから親近感を覚えるのはわかるけれども、なんでその「自分の導力そのものを嫌うのか?」といった根本的なところは明らかにされない。
それは個別ルートの前半に入っても相変わらず明かされず、主人公やヒロイン達はその謎をもう解こうとせず、それを所与の謎として透子ちゃんと付き合っているほどだ。結局、この謎は透子シナリオの最後に至るまで解決されない。
ただし、実際にこのシナリオをやっている途中は、その「謎」は確かに多少は意識するとはおもうが、しかし透子ちゃんシナリオのなかではさほど重要なこととしては語られないのだ。
実際にこの透子ちゃんシナリオでは、基本的に練習めいたイベント以外に「バトル展開」ではないのだから、その「謎」がシナリオ上において表面上て「問題」とされることは殆どなく、
主人公もその謎を多少は意識しながらも透子ちゃんと付き合うことになる。このように書くと、何か問題を中途半端にほったらかしているような印象を受けるが、これは先ほどの物語展開と透子ちゃんの設定がうまく効いている。
ひとつは先ほどにも言ったように、そもそも透子ちゃんの「謎」が問題になるような場面が物語において用意されていないので、わざわざその問題を解かなくても良いじゃんと思わせるようになっているのだ。
例えば高所恐怖症のヒロインが居たとしても、それはそれで多少問題があるとしても、しかし「高いところに逝かなければ良いじゃんw」と言えばまぁその通りだと言うしか無いわけだ。
もうひとつは、透子ちゃんとの恋愛物語とのキモの部分であり、基本的には透子ちゃんは導力使いの自分としてでは無く、あくまで自分自身を主人公に好いて貰いたいと思っているわけで、
そうやって結ばれたふたりが、いきなり主人公の方から「導力に関するトラウマを治そうぜ」と言いだすのはあまりよろしくないわけである。この手の失敗はエロゲだとありがちなお話で、
そのエロゲが語りたい「テーマ」や「お説教」のためにその作品の登場人物の心情を犠牲にしてしまうわけだ。そういうのがなにが悪いかと言うと、まぁ表面上の問題として糞シリアスうぜぇと言う話もあるわけだが、
なんで糞シリアスがウザイかというと、そのようなお説教やテーマ語りの目的そのものが達成させられていないという不満点があるからだろう。例えば、上の透子ちゃんのトラウマにしても、まぁ治った方が良いのかもしれないが、
しかし有り体にいれば大半の人はトラウマを抱えており、しかもそれは日常生活では大して影響が無いわけで、それを無理矢理治すのはどうよ?という疑問もあるわけだ(だからこそ、この手のお話が軽いエンタメとして機能するともいえるわけだが)。
そのようなフィクションは「トラウマを解決するという物語上の快楽」を提供するところに意味がある「とも」言えるわけだが、それはたんに物語の快楽のひとつに過ぎず、その快楽よりもヒロインとのイチャラブの快楽を欲されている場合には、
その「無理矢理な劇的手段」による解決は快楽にならず単なる不満としか感じないわけである。それは読者によって欲求の幅が違うとも言えるが、その作品の物語によってどのような快楽を与えようとしているのかを、ある程度は操作できるともいえる。
このシナリオがうまいところは、表面上は透子ちゃんとの濃厚イチャラブ描写を描きつつ、そこに微かな「謎への伏線」を仕掛けることによって、イチャラブ描写の果てに「最後の謎」へと自然に辿り着くようになっているところだろう。
具体的に言えば、透子ちゃんに多少依存的とも言える危うさがあるところがとてもよろしい。個別ルートの前半ではまぁ所謂クール系キャラのお約束を踏まえつつ、自分には恋愛感情なんてないと言うようなことを言いだすのであるが、
ここは声優さんの演技力も生きているところもあり、その否定の台詞そのものなかに妙に不機嫌なというか、こうなんかプリプリしているところが婀娜っぽくてドキドキさせてくれる。
基本的に付き合ったも表面的なクールな台詞はあまり変わらず、急にデレたりしないわけだが、そのクールな台詞のままド直球に主人公を求めたり、プリプリした言葉尻で嫉妬してくれたりするド安定な素直クールっぷりを発揮しながらも、
しかし例の「謎」に話題が近づくと途端に弱々しい態度を見せ拒絶するのである。この繰り返しが、最後まで「謎を残す」プロットに説得力を与えている。単純に言えば、わざわざこんな可愛くて脆い透子ちゃんに対して、
ぶしつけにトラウマを暴くような真似をするのはキツイではないかと思わせることに成功しているのだ。もう、本当に辛そうな演技をしてくれるからね。しかもその弱さが主人公に対する独占心へと繋がっているんだから、
我々としてはできることならこのか弱い素直クールのままの透子ちゃんでいて欲しいと半ば願ってしまうし、物語としても「導力を使わない自分も認められたい」というはそれはそれでアリなので、謎なんて解かなくて良いのでは?と思わせる。
逆に言うと、この透子ちゃんの謎が、このようなシナリオにおいて単に「シナリオ上の盛り上がりとオチをつける以上」の「最大限の効果」を発揮するためには、上記の快楽との整合性を保ちつつ、しかしこれを効果的に裏切らないといけないわけだ。
最後の最後のシーンで、このシナリオでは基本的に抑圧されていた燃えバトル設定が久しぶりに使われるが、この使い方が実にうまい。場面状況とキャラクターの心理を一致させるという非常にベタなやり方であるが、
しかし氷によって完璧に閉ざされた学校の地下を主人公たちが進んでいくというのは透子ちゃんの心情を描きながらも、この後の真実をも何となく匂わせるあたりの上手さは本当に長谷川氏の作品なのかと疑ったくらいだ。
それでいて、その透子ちゃんの謎とトラウマを見事に解決させながらも、いっけんどーでもいいと思われていた台詞から、意外でしかも尤もなエンディングを用意するあたりの運びには不覚にもちょい感動してしまった。
イブ様のウェンディングドレスはあくまでコスプレエッチのためだけに使われるというのもイブ様らしくて良いと思ったけれども、透子ちゃんが最初から最後まで願い続けた未来がお伽噺のように実現するこのお話はライト萌え燃え作品の希望である。
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☆エロについて
「燃えバトル展開モノ+エロ」といったら、もう10数年ぐらい前に「魔法少女アイ」を始めとする作品において「触手モノ」または「レイプNTRモノ」と言うのが一方において生み出されており、
ここ数年ぐらいの話だと、コレの逆方向のやり方として「もんむす」を始めとした作品が「もんむす娘との特殊敗北エッチ」または「逆NTRモノ」というものを生み出しているわけであるが、
そうしたまぁ陵辱方面によらない形での「燃えバトル展開モノ+エロ」の方向性を持った作品というのは、意外になかなか思い浮かばないものである。
ひとつには、こうした「燃えバトル展開」という設定が短絡的に前述の陵辱方向をイメージしてしまうと言うところに理由があり、ずいぶん前のお話なので間違っていたら申し訳ないが、
某きのこ氏がフェイトのアレなエチシーンについて効かれたときに「最初はバトルに負けたキャラが陵辱されるよう設定を思いついたけど、自分の趣味じゃ無いのでやめた」という逸話が残っていて、
でもセイバーたんを魔術でジワジワ痛めつけていたし、桜は触手の餌食になっていたじゃんというツッコミはあるにしても、しかし和姦的なやり方としては悪名高い「魔力供給」しか描けなかったのは事実である。
まぁフェイトの魔力供給のエロシーンが問題だったのは、多分に某きのこ氏の性癖が関係していると思われる「普通の和姦シーン」が普通の物語的展開のうえで書けないというところにあって、
誰かこの点を激しく突きまくった某きのこ論を書かないかなぁというのはあるにしても、魔力供給みたいなネタは「ちょいエロ」としてはいいとしても、それをそのままエロにしちゃったら多少ギャグになってしまうわけだ。
たとえばこの作品でも、共通ルートその他でヒロイン達がキスを強請るシーンがあって、こういうシーンはハーレムっぽくて良いとしても、しかしそのままセックスシーンに流れ込んでしまったら「なんか違うなぁ」と思うだろう。
あるいは、主人公が魔力を込めたスペルマを地面にオナンしながら「マホカトール」なんて唱えてしまったらバカ丸出しである。「お色気+燃えバトル展開」という図式は多少なりとも正しいとしても、
「エロ+燃えバトル展開」というのは、それをそのまま直接的にやってしまったらエロどころの話では無いのである。まぁ何らかのゲーム性を用いて、抽象的に「お色気バトル展開」みたいにやるという手法はあると思うけれども。
だからこの作品も、基本的にはエロシーンに燃えバトル要素は絡んでこない。それはそれで正しい判断だとは言っても、ほんの少しはそういう設定を用いた、コスプレエッチでも、
ヒロインの導力をちょい使ったエロシーンがあってもよかったんじゃないか。今作のエロシーンはシナリオ面ほど燃えバトル設定を生かしていないのは少々残念だ。
CG面でも多少の問題はある。貧乳または微乳系のキャラは良いと思うのだが、巨乳系の茜や柚のおっぱいとエロシーンの全体の構図が合っていないように思われて、不自然におっぱいのでかさだけが目立つような気がするのだ。
たとえばパイズリシーンだの、そういうおっぱいの大きさを不自然に強調するシーンならそれでもいいんだけど、ああ、そういや何故かこの作品は巨乳系のキャラにパイズリシーンが無いのも不自然極まりないのであるが、
あまりおっぱいが関与しないエロシーンで巨乳っぷりをアピールしすぎると、生臭い話中年の垂れまくったおっぱいをイメージしてしまいどうも印象がよろしくないのだ。
イブ様のエロCGは全体的によろしいので、もしかしたらゲンガー氏の趣味なのかもしれないが。
とはいえ、エロシーンが五回も用意されていることもあり、全体的にはエロ評価は悪くない。個人的な評価はイブ様=透子ちゃん>>柚>>>>茜ぐらいになるが、茜も別に悪いわけでは無く、
特に特徴が無いということが不満点に上がるくらいである。エロ過ぎると動力が発動して爆発っていうのはおもしろかったけれども、最初の二回ぐらいしか意味なかったしなぁ。この辺をもっとうまく使えていればね。
逆に言えば、他のキャラは燃えバトル要素が生かされていなかったとは言え、イチャラブ描写の中にエロシーンが生かされており、、
ちゃんとキャラの特徴が描かれていたとはいえる。柚は積極的なエロ奉仕系の態度が前面に押し出されていて、基本的には受け身のエッチで主人公に押し倒されながらも、
主人公のアレを中に入れたらその後は積極的にガシリと掴みかかるような誘い受け系である。先ほども言ったようにおっぱいの書き方には多少問題はあっても、そういう蕩けたような表情はエロイのでさほど問題は無い。
特によかったのが、アレな媚薬を飲んでしまって柚の隠された性癖が露わになって、主人公を拘束して柚先生が優しく主人公を責め立てるシーン。丁寧口調で基本的に主人公を立てながらも、
しかしいつの間にか年下の幼馴染みに主導権を握られてような背徳感と、白雪嬢の決してガなり立てないやわらかな喘ぎ声が嵌まっていたといえる。まったりとしたイチャラブ描写のなかでこういうちょい頽廃的なエロシーンは実に良い。
透子のエロシーンは逆に日常シーンとは少しまた違った姿を見せてくれるタイプだ。こういう素直クール系タイプのヒロインのなにが一番エロいといったら、それはこういうキャラがエロシーンでは、
いったいどういうボイスを聴かせてくれるのだろうか?という期待と妄想であるが、透子ちゃんの中の人は(たぶん)エロゲ初出演なのに初っ端からちゃんとその期待に答えているのが凄いとおもう。
まず一回目のエチシーンでは、基本的に日常シーンと地続きで最初は感情を抑えながらも、それが少しずつ乱れていくところが実にエロイし、二回目、三回目、そしてワンちゃんエッチに至っては、
これも前のワンちゃんシーンとの地続きで、子供らしい感情が完璧に解放された透子わんちゃんのままエロシーンに突入し、そのあまりにも無防備なエロボイスにこちらはワンチャンの如くブルドックじゃなかったフル勃起してしまうのであった。
こういう普段は感情を抑えているキャラのエチシーンで重要なのは、それがエロシーンになると「急に感情が解放される」のではなくて、その台詞やらエロシチュやらによって、この場合は必死に感情を抑えていたり、
でもこのシチュでコロっとデレたりするようなギャップがエロいのであって、透子ちゃんの場合はエロシーン付近になるとだんだん声の調子が柔らかくなっていくような甘い雰囲気がそのままエロに繋がっているところが良いなぁと思いました。
まぁあとは、ワンリリのオマージュが感じられるところも素晴らしい。ワンリリの透子さんを誰にやらせるかというネタはトノ信者にとってかなりの問題であるのだが、この透子ちゃんの中の人なら意外にイイ線いくのではないか。
あと余談を言えば、最近のエロゲ新人声優さんのレベルはホント高いですよね。茜たんも悪くは無かったし、一昔前は新人声優さんというと期待と不安が半分ぐらいだったけれども、いまは期待のほうがかなりつよいもの。
まぁそんなことを言っても、既存の声優さんの力は依然としてつよいのであり、現に僕がこの作品を買った40%の理由はイブ様と中の人の組み合わせに痺れたからであるが。
イブ様のエッチシーンの良さは、基本的にわりと物語展開で引っ張るタイプのシナリオとうまく繋がっているところだ。たとえば、最初のエチシーンにしても、イブ様が最後まで主人公を本当に愛しているかを有耶無耶二しつつ、
実はイブ様は精子が欲しくて主人公を誘っているだけでは無いか?という誘惑疑惑を抱かせながら、イブ様のほうから「今夜うちには誰もいませんですのよ?」とエロ誘惑を持ちかけさせて、
プレイヤーはその純愛疑惑とエロ誘惑の疑惑と期待が入り混じった気持ちで最初のエチシーンを迎える。または最初のエチシーンで、多少アレなプレイをしてしまったので、今度のエッチは正統的な純愛プレイをしたいとか、
イブ様に言わせたりと、次のエチシーンへのモチベーションがシナリオのなかで少しずつ上がっていったりと、エロシーンのドキドキ感がシナリオ展開共に自然に高まるような構成になっているわけだ。
最近の萌えゲにおいて、エロシーンが多いのは多少当たり前の雰囲気になっているが、しかし次に問題になってきたのは、単にエロシーンを増やすだけでは「エロシーンが単に反復されるだけ」の「エロばっか」状態になると言うことであるが、
このイブ様シナリオはその点をうまくクリアしている。CG共にエロテキストも音声も良い。他キャラのエロCGと比べて3ランクぐらい気合いが入っているように思えるのは、僕の贔屓目かもしれないけれども、
特にキスシーンやフェラシーンと言ったCGのイブ様の子リスのような可愛いらしい表情や悪戯っ子のような表情がエロ萌え過ぎて何回抜いたことか。萌えゲにおいて、こういうキャラの特定の表情やシチュがエロいとツボにはまってしまったら、
何度同じようなシチュを見せつけられても、否、何度も同じようなそれを反復されることでますます没入が高まると言うことがあり、2回目、3回目、4回目、5回目とエロシーンにおいてキスやフェラやパイズリのCGが続くのであるが、
ぜんぜん飽きること無くむしろ「イブ様のフェラはやっぱり最高だぁ」と下僕モードが益々強まるわけで「エチシーンのシチュは毎回変えなくてはならない」というのは、少なくとも萌えゲにおいては成立しないのである。
最後に音声について。もう中の人とツインテと「~ですわっ」の三位一体だけで大食い選手権に出られる自信があるワタシクであるが、その僕の妄想通りのキャラが基本的に誘惑しまくってくれるという時点でもうこの世に思い残すものはなにも無い。
もうね。ウェンディングドレスを着てパンツをチラ見せして誘惑とか、主人公下僕のアレをからかいながら優しくフェラとか、そういうちょい上から目線のエロ台詞が最高すぎますよ。
今年のラブクエ以降、中の人のエロ演技はだんだんよくなってきているけれども、今作はキャラを生かしたエロテキストということもあって、中の人の今まではみられなかったエロ演技を充分に味わえた傑作でありました。