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カラスさんのリーナのアトリエ ~シュトラールの錬金術士~の長文感想

ユーザー
カラス
ゲーム
リーナのアトリエ ~シュトラールの錬金術士~
ブランド
ガスト
得点
63
参照数
214

一言コメント

あれっ、そこそこ良かった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

アトリエシリーズをプレイするのは二作目になる。
今回は金髪ロングの可愛らしい女の子が主人公。
錬金術士の免許は取りたてで、まだまだひよっこ。
そんな彼女が、とあるきっかけから、
火事によって失われた妖精の森の復興に協力することになる・・・、
というのが、あらすじ。



ゲームの流れは基本的に、

妖精の森復興のための課題を与えられる
   ↓
アイテムを集めたり、金を稼いだり
   ↓
課題を達成すると、また課題を与えられる
   ↓
アイテムを集めたり、金を稼いだり
   ↓
課題を達成すると、また(以下略)

ま、まあこんな感じで、正直ちょっと単調かなと思う部分はある。
ただ、妖精さんの課題というものが、百万コール持ってこいや!、とか、
くず木を695個集めろ!、とかなので、
なんというか、課題の達成そのものがかなり遠いというか大味なのだ。
なので、課題を達成しようとしつつ、他のキャラから頼まれた「お使い」をこなしたり、
ショップのレベルを上げるために仕事を請け負ったりという感じで、
自然な形で、他のことをするようになる・・・、と思う。





前作「アニーのアトリエ」との最大の違いは、資金の一本化だろう。
前作においては、リゾート開発のための資金と、自分のお金というのが別会計で、
どこかちぐはぐな感じを与えてしまったものだ。
しかし、今作においては、自分のお金も、妖精の森復興のための資金も、分けられていない。
従って、汗水たらしてお金を貯めて、莫大な額を妖精の森の長老に納めなければならないわけだ。

資金が一本化したことによって、ちぐはぐ感というのは拭い去ることが出来た、しかし、
その一方で、ゲーム全体がとても大味になってしまったという印象は否めない。
何しろこのゲーム、武器や防具と言った、単価の高いアイテムを町から町へ転売するだけで、
数万コールは余裕で稼げてしまうからだ。
おかげで、「うわさ」という要素が完全に無意味になってしまっている。

「うわさ」というのは、ショップではした金(10コール~100コール)を払えば得ることの出来る情報で、
聞いた瞬間から、ゲームの全世界に影響を及ぼす。
内容はというと、あのアイテムの値段が上がっただとか下がっただとか、
商売に有利になる情報ばかりだ。
製作者側としては恐らく、このシステムを存分に使って、
お金を稼いで楽しんでほしいという思惑があったのだろう。
しかし、その思惑は完全に外れた。

先に書いたとおり、町から町へ、単価の高いアイテムを転売するだけでぼろもうけすることが出来るので、
いちいち「うわさ」なんぞを利用する事なく、大もうけできてしまうのだ。
とりあえず一週目は、この方法でお金を稼ぎに稼いで、二週目以降に備えるのがいいと思う。





このゲームは「大味」な作品だ。
何よりも、お金を万単位で稼いで万単位で消費する、そんな印象が否めない。
しかし、「大味」であると同時に、シビアな作品でもある、少なくとも前作に比べれば。

「シビア」な部分、それはお金が関わらない部分においては、だ。
お金ではどうしようもないような部分、具体的に言えば、錬金に関すること。
錬金をしてアイテムを作り出すための「時間」というもの、これが前作に比べるとシビアになっている。
何でもかんでもホイホイ作るわけにはいかないのだ。
特に、真エンディングを見るために必要なアイテムというのが、かな~りシビアだ。
作り出すための材料を集めるのは、さして苦労はしない、しかし、
錬金にかかる日数が・・・、すごい。
もし、油断していたならば、日数不足で真エンディングを見れなくなっていたかもしれない。
なので、序盤から地道に錬金と機材のレベルをこつこつ上げておかないと、終盤で泣きを見ることになるかも?



と、まあこんな感じで、「大味」だけど「シビア」な作品というのが、この作品に対する印象だ。
つくりこみの甘さによる「大味」さ加減と、
難易度上昇による「シビア」さ加減というものが、
奇妙な形で同居している作品。





システム面に関しては以上なんだけど、それ以外にキャラクターとシナリオに対する印象も述べておきたい。
いわば、この作品に対する「読後感」というものだ、読み物じゃないけど。


何よりも、主人公のリーナが可愛い。
時たま、脳内お花畑などと揶揄されるようなキャラクターだが、
まっすぐで素直で、前向きな萌えキャラなので、見ていて癒される。
声もピッタリ合っていていい感じだ。
このゲームに対してそこそこいい印象を持ったのは、
この「リーナ」というキャラクターによるところが大きいと思う。

なんだかんだ言って、作品に対する印象というものは、
そのキャラクターに対して好感を抱いたか否か、というものに左右されるところが大きい。
個人的には、この「リーナ」というキャラクターにそこそこ萌えることが出来たので、
まあまあ良かったかなあ、という感じ。

それに、真エンディングを始めて見た時は、少しばかりじーんと来るものがあった。
シナリオが優れているとか、そのエンディングが素晴らしかったと言うほどのものでは無かった。
普通というか、たぶんありがちな終わり方なのだろう、特記するようなものでもないのかもしれない、しかしながら、
あのエンディングを見たときに、しみじみとした気持ちになったのは事実だ。
「感動」というほどのものではないのだけれど。

やはり、キャラクターというものに対する「愛着」というものが、しみじみとした気持ちを起こさせたのだろう。
リーナそのものに対する好感と、何週もしてエンディングを拾い集めたことによる「愛着」。
RPG特有の、キャラクターに対する「思いいれ」というものが、
エンディングにおける「しみじみとした感じ」を起こさせたのだろう。
無論それは、数十時間もの間キャラクターに付き合うことによって発生するものなのであって、
力技といえば力技なのだけれど。

ただしかし力技とはいえ、RPGにおけるこういった「感じ」というのは、
やはりいいものだなあと、あらためて思った。
こういった「感じ」というものは、他のジャンルではなかなか出すことの出来ないものだし、
おそらくはRPGに特有のものなのだから。