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カラスさんのRain memory -あまやどり-の長文感想

ユーザー
カラス
ゲーム
Rain memory -あまやどり-
ブランド
flap
得点
80
参照数
453

一言コメント

やや暗めの雰囲気のループもの、暗いというかじめじめしている感じ。明るい雰囲気とか軽妙な会話なんざまったく無く、ただひたすら、謎めいたヒロインとの会話と、合間合間に挟まれる妄想じみたHシーンで構成されているという、おもいきった構成。雨の降る一日をひたすら繰り返すというあんま華のないストーリーなんだけど、全体の雰囲気といい、ヒロインの謎めいたキャラクター性といい、雰囲気が非常に良くできていて、とっつきは悪いけど、途中からはぐいぐい引き込まれる。ちょっと切ないストーリーをループもので味わいたい人にはお薦め、あとヒロインがM気質でかわいい。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この作品はループものなんだけど、ループもの特有の絶望感(このゲームなかなかクリアできねぇ!的な)、
のようなものはあまり強調されない。
むしろこの作品においてクローズアップされているのは、
ループする世界で感じる「違和感」のほうだ。
それも、些細な、小さな違和感。
そういった小さなとげのようなものを、結構丁寧に扱っていて、
そこがこのゲームのループものとしての見所の一つかな。



この作品が面白いのは、あらゆる意味で「気づく」ということが鍵になっているところだ。
これはなにも作品世界に住まうキャラクター達にとってだけではなくて、
プレイヤーにとっても、「気づく」ということがとても大切なこととなっている。

この物語の最初、主人公は何も気づいていない、そしてプレイヤーも同じだ。
読み始めた当初、プレイヤーは何も気づかない、というか気づくことができない。
物語を読み進めるうち主人公は色々なことに「気づく」、
いや、正確に言えば、色々な「違和感」に心が引っかかってしまうわけだ。
そして、それがきっかけとなって、主人公は徐々に徐々に「気づき」はじめる。
プレイヤーも同じだ。
主人公とほぼシンクロしたような状態で、この作品の真相に「気づき」はじめる。
ここら辺の、プレイヤーと主人公のシンクロ率というものは見事だと思う。
無理なく読み進めることができる。



物語の最後・・・・・・・・・は、決してすっきりした終わり方ではない、
少しばかりの空白(語られない部分)を残して、幕は閉じられる。
ラストを迎えた後プレイヤーは、
どこか切なく、どこか悲しい、小さな余韻を感じるとともに、
ある種の割り切れなさ、すっきりしない感じも持つ。
そうして、プレイヤーは考え始める、ラストにおいて提示された小さな謎について、
本当はどうだったのか、この物語の始まりと終わりを、考え始める。
そして気づく、気づいてしまう、そしてそれは別に難しいことではない。
作中において主人公が真の真相に気づいたという描写はない、しかし、いづれ気づくだろう、プレイヤーのように。
気づいた時、それは別れの時だ、
きっと主人公はいつか気づくだろう、そして彼はあらゆるものから別れなければならない。
ループする世界からさようなら。
そしてプレイヤーはどうか―――、
プレイヤーは気づいたと同時に、このゲームに対して別れることになる、少なくともけりをつけることになる、
バイバイさようなら、結構面白かったけどとりあえずすっきりしたので、俺は次のゲームに行きます、と。



「気づく」ということに関して、主人公とプレイヤーをシンクロさせているというのは、非常に見事な技だと思った。
小品ながらも、見事な「技」を見せてくれる作品だ。