ErogameScape -エロゲー批評空間-

zentoroさんのアオイトリの長文感想

ユーザー
zentoro
ゲーム
アオイトリ
ブランド
Purple software
得点
100
参照数
727

一言コメント

前作を乗り越えようとする意志が感じられた。アマツツミを楽しんだ人ならプレイして損はないはず。

長文感想

今作アオイトリは、かつてシナリオ、キャラ、サウンド、エロ、そのすべてにおいて高く評価され
パープルの特異点とも言える名作だったアマツツミを越えようとする意志が感じられる野心作である為
そこを重点的に比べながらレビューしたいと思う。


まずHシーンは折り紙つきの克先生らしく今回も文句の付けようがない非常に濃厚なエロシーンで実用性抜群。
前作で好評だった陥没やそのほか色んなフェチ要素もたっぷりでほぼ抜きゲーのように刺激的だ。
そしてただCGだけでなくテキストで読み取れるシュチュエーションの精巧な描写もそそるものがある
前作同様、エロゲーとしては極めて良質であり、評価に値する。


キャラは見た目や性格から前作の人気ヒロインたちを思わせる所が多い。
メアリー→織部こころ
黒崎小夜→恋塚愛
海野あかり→水無月ほたる
役割やポジションもほぼ変かわらないから狙ったと考えるのが妥当だろう。
個人的には前作のヒロインたちはかなり気に入ったので、無謀な冒険をせず
あえて安定を求めたキャラを保ったまま新しいシナリオで勝負しようとするところがよかった。


CVもまた豪華キャストで安定感抜群。
前作でメインヒロイン役だった小倉結衣さんが電話の悪魔役を演じて本当によかったと思う。
もちろん、メアリー役のくすはらゆいさんや海野あかり役の秋野花さんのいつもより愛らしい演技もとてもよかった。


その中でも特に気に入ったのは、鈴谷まやさんが演じた黒崎小夜。
生まれてからずっと一人で危険な仕事をしながら暮らしてきた為
学園に閉じ込められていた主人公より物知りで警戒心の強い、まるで姉のような妹キャラであって
いつも厭世的で達観したような態度、ドS、面倒くさがり屋でありながら二人きりだと重度の兄依存症だという
いろいろ詰め込んだ難しいキャラであったが、見事に役を演じ切ったと思われる。
要するに優秀な役者たちを適材適所に配置したナイスキャスティングだと言えるだろう。


サウンドについては、パープルお馴染みの橋本みゆきのOPをはじめ、聞き心地のいいBGMを適切に駆使して
作品の雰囲気を盛り上げている。これもまた安定のクオリティ。


肝心なシナリオは前作を乗り越えようとする意志が感じられ、家族愛、死生観、自己犠牲など
大切なものについて語っていながら時々些細なギャグで物語が重くならない。
またストーリー展開が速く、行動力のある主人公にも共感でき、シナリオに没入しやすかった。


そして何より、今作のシナリオの完成度や前作との差別化された要素を語るときに絶対に欠かせないものが
電話の悪魔という声だけの存在。
主人公達と対立する存在でありながら、この作品のギャグ要素を担当しているこのお調子者によって
物語は飽きることなく常に興味津々であり、シナリオの面白さで前作を越えることが出来たと言えるのは
ひとえにこの電話の悪魔によるところが大きい。


全体的な印象は名作だった前作の良さをそのまま徹底的に保ったまま今作でしかない要素を詰め込んだ
強化版と言えるが、人の好みは様々なのだから、前作のほうがよかったと思う人もいるのかもしれない。
仮にそうだとしてもアマツツミを楽しんだ人ならきっとプレイして絶対後悔しないはずだ。