いつのまにか長文になってしまった
複数ライターの弊害云々のことはとても的確に指摘しているレビューが多々あるので割愛。おもにロミオ氏担当部分のシナリオについて触れようと思います。
ネタバレ注意。また、感想か考察かなんかもうよくわかんなくなるくらいごちゃごちゃな上、妄想も入ってます。
(どこか高圧的な文章になっていると感じるかもしれませんが、それは私の癖ですゆるしてください)
○構造とか
この作品は、各ヒロイン√(以下共通√)、Moon、Terraという三つの大きな章でできている。
最初に共通√。共通√では5人のヒロインとの日常、その崩壊、そして人類滅亡の危機における主人公の選択といった展開になっていて、主人公の守りたいもの、大切にしたいと思ったものが描かれるのだ。
まず、序盤にでてくる「自分を変えるか、世界を変えるか」という問いに対する主人公の答えは非常に不安定なものになっている。ある世界Aでは世界を変え、また別の世界Bでは自分を変える、というのだ。
ご存じのとおり、この問いに対する答えによって、攻略可能となるヒロインが決まる。「世界」を選べばガイア側の、「自分」を選べばガーディアン側の(、「答えられない」を選べばドルイドの)、と。(この区分は攻略上正確ではないが便宜上こう言った)
ここでこの2大勢力に属するヒロインに着目する。
まずガイアの朱音とちはや。
朱音は「人間、嫌いなの」というセリフがあるように、ガイアの根源的な思想に殉ずる表象的キャラクターだ。
が、しかし、ちはやはあまり破滅願望のようなものがあるようには思えず、人間嫌いな様子もない。静流√ではガイアとガーディアンの闘争に疑問を感じて組織を脱退する場面すらある(都乃川氏担当のシナリオゆえロミオ氏の真意があらわれてるかは疑わしいが)。
次にガーディアンの静流とルチア。
静流は戦闘能力も高く戦士として一流であり、狩人としての意思を代表するキャラクターだ。
逆にルチアは、能力の弊害ゆえ「自分なんかいないほうがいい」という自己破滅願望を持つが、これはむしろガイア的な思想と言える。
つまり、ガイア側には純ガイア的ヒロインと非ガイア的ヒロイン、ガーディアン側には純狩人のヒロインとガイア的要素を含んだヒロインが配置されているというわけだ。
みりゃ分かるじゃんと言われれば反論はできないが、このヒロインの配置が物語の構造上とてもうまく機能しているのがとても素晴らしいと思う。
ただ単にガイア側とガーディアン側の思想をくみ取るだけでなく、各々の勢力の中でも違った立場を持つ人がいて、その視点から主人公は「何か」を悟る。そして、Moonに辿り着いた時、その経験から得た思いをもって、篝に接し、可能性の糸を手繰るのだ。そこで導き出された結論の実行としてのTerra。Terraでは主人公はどちらかの選択肢を選ぶのではなく両方を遂行する。「世界を変えようとするだけではダメだ、自分を変えようとするだけでもダメだ」、と。これはRewriteの一つの主題と言えるのではないだろうか。だから、2大勢力の内部のそれぞれ異なった立場に身を置いた共通√は決して無駄にはなっていない、むしろRewriteの基盤を組むものだ。
ところで、木における基盤は根であろう(後述)。
次にMoon。
Moonは物語の構造上、結論の算出と言えると思う。アウロラが底をつき、滅亡が目前にまで迫った全生命の道、さらにいえば知的生命体としての人類の役割と可能性が示されるTerraを、共通√から計算して導くためのパート。
しかしもちろんそれだけではなく、Moonで月の篝の孤独というテーマが加えられる。「人は本質的に孤独だ」という主張はロミオ氏の他作品でも共通であるが、篝はその孤独を拡張した形になっている。
それを抱えた篝に対して主人公は接触を図る。「自分は何者にもなれなかった」という共通√での想いがここにも通じていた。生命の可能性を根絶しようと襲撃を仕掛けてきた加島から篝を守護することで、主人公は「どこかのだれかになる」のだ。この想いがなかったらTerraには辿り着けなかっただろう。
また、ヒロイン5人と吉野たちを召喚することで「部活動」をする。オカルト研究会という気の置けない日常に価値を見出そうとしたこと。これが最終的に篝を守り通して人類の可能性を見出すことに役割をはたしているのだと感じた。
このように、MoonはTerraへの連結部になっていると同時に共通√の解答にもなっているのと思う。
最後にTerra。
ここでは主人公は各ヒロインを救うことを実質的に放棄し、篝を守護しつつ人類の未来を切り拓くために奮闘する。
一本しかない細く今にも切れそうな可能性の糸を篝火に導かれながらたどっていく。
ガイアとガーディアンの両方につきながら、最終的には信頼できた人々、好ましかった人々の死に目に会う、あるいは殺す。
そうして辿り着くTerraのラストについては、PVBでロミオ氏が以下のように語っている。
「このTerra編では瑚太郎はすべてを失います。個別ルートではあれほど得たがっていた絆を、みずから振り払うことまでして、地球の未来という実感のない漠然としたもののために戦うことになります。ラストシーン直前まで、彼は自分のしてきたことを信じきれません。ただ、最後の最後で篝から認められる。それだけのものしか得ていません。厳しく虚しい結末だと思います。でも、Terra編では瑚太郎は何も得てはいけなかったのです。代価とはそういうものです。」
共通√では決して相容れなかったヒロイン5人と篝、その関係性を書き換えるための代価としての苦難。確かに重く辛いものではあるだろう。
だが、「大切のモノが一つでもあれば」と思う主人公にとって、篝という守りたい思えるものができたTerraは、必ずしも否定するものではない。むしろ、最後の篝の抱擁ですべてを肯定した。共通√から抱えてきた、何者にもなれないという主人公の悩みはここで清算されるのだ。
共通√からMoonまでの全ての想いが、Terraで一気に括られる。そして、まだ見ぬ遠い星での無限の可能性へとつながってゆくのだ。
幹から伸びる枝葉のごとく。
○構造のカタチ
リライターのなれの果てを思い出してみる。
Terraのラストでは主人公は大きな木となって成長していた。
大木。しっかりと広く根を張り、逞しい幹を据え、空を目指して伸び広がってゆくもの。
このカタチが物語全体の構造に表れている。
共通√の無数に存在する枝世界は木の根、そこから一本だけ繋がったTerraは幹、そして最後に広がってゆく可能性が枝葉。
根から吸収したこと、つまり共通√で学んだことが木の成長に繋がり、そこから幹としてのTerraが育つ。そうして光が当たるところまで伸びて初めて、無数の枝や葉、ここでは生命(アウロラ)の可能性が広がってゆく。
この、カタチの表象としてのリライターの意味に、リライターの最果てのカタチとしての意味に、心を打たれずにはいられない。
○Rewriteは冷たく笑う
この物語の結末は、希望に満ちている。だが、プレイヤーに対して希望をなげかけているのではないと思う。
現実の地球はどうなっているだろうか。環境破壊や資源の枯渇、種の絶滅などが声高に叫ばれているが、その実、なにか明確な対策を人類全体が実行するようなことはない。当たり前ではあろう。車がなきゃ出勤できないし、出勤ができなかったら今日食べるものがなくなり、いずれは飢えて死んでしまうからだ。本当に地球に負担をかけない生活は不可能と言える。そんな人類が迎える結末は滅亡だ。
Terra編は幹ではあるが、同時にすぐ切れてしまいそうな一本の細い糸でもあった。物語の中で主人公は一つの選択肢も間違えないし、もし間違えたら糸は切れてそこでおしまいになる(それを表す選択肢は作中に1つある)。まさしく上記の現実を表している。70億もの人口を抱え、更なる開発を推進する人類は、Terraのような細い糸の上の引き返すことは決してできない世界に生きているのだ。きっと、人類が滅亡を回避するには、Terraの主人公のように一つの選択肢も間違えることはできない。
Rewriteは一見希望に満ちているようで、「現実の人類は引き返せない綱渡りをしている。(あるいはすでに落下した後かもしれない)」という破滅の未来の提示をして冷笑しているのだ。
○人類の意義
ロミオ氏の作品は、CROSS†CHANNELと最果てのイマから分かるように、他者についての内容が非常に濃かった。他人との接触から自己を規定し生きていく。そんなテーマだ。
だが、Rewriteは他者性についての議論は上の二作品と比べるとかなり希薄だろう。もちろん、他人とのうまい付き合いがわからないと主人公は悩むし、生来の人間嫌いのヒロインもいる。
しかし、世界観のとおり、Rewriteでは「生命」について論じており、これが作品の論旨と言えると思う。地球を食いつぶすだけの人間には価値があるのか、いや、そもそもすべての生物は利己的でありそんな醜いものに価値はあるのか。こんな残酷な問いに対しての抵抗としてこの作品は成り立っているのかもしれない。
思えば確かにそうだ。私たちは生きていることに無条件に価値を見出すが、実際にこれと説明できるような価値はあるのかと言われると、答えにくい。
Rewriteではその命題の狭間で迷いながらも、人類の存在意義を定めた。
「たとえ母なる大地を食いつぶしてでも、外の世界へと広がり、生命の可能性を切り開いてゆく」というものだ。
実に論理的な解答ではないだろうか。人は古来から船を作り新しい大地を夢見て海を渡ってきた。しかし大陸が全て開拓された現代では、目先の利益のみを追う(仕方のないことではある)。そんな現代だからこそ、外へと広がってゆかねばならない。そしてそれが人類の存在意義だ、と。人類の開拓という本質から導き出されたという点で、非常に筋が通っている。
恥ずかしながら大いに納得してしまった。
(宇宙開発の仕事につきたい。)
話は変わるが、ロミオ氏の最近の作品は「生命」について論じるようになってきている気がする。氏のこれからの作品は、このRewriteや、人類は衰退しました9巻であったような、生命とその心にある漠然とした光を中心に語っていく方向性になっていくのかもしれない。
○点数の理由など
最初に述べたが、複数ライターについては本当に残念だった。でもまあ悔やんでもどうしようもないことではある。
ノベルゲームとしては演出やBGM、CG等は及第点といったところ。
ただマッピーは蛇足だった。ただ作業感だけが残り、いいとこなし。
○最後に
行き当たりばったりに書いたので、内容が支離滅裂なものになってしまいました。
なにしろこの作品の内容が濃いです。最果てのイマとは違って平易な文体で書かれてはいましたが、行間から読み取る内容は多かった気が。
まだまだ思うことはたくさんありますが、とてもじゃないけど私の能力ではまとめられません。それだけの内容を全年齢対象のゲームにしっかりと詰め込んで、まとめあげた氏の筆力に感服します。
色々と批判も多い作品ですが、私はとても楽しめたし、考えさせられました。
純粋に、いい作品だったと思います。
ずっと心に残るでしょう。
新たな可能性を切り開いていく田中ロミオの今後の活躍を切に願っています。