ErogameScape -エロゲー批評空間-

z_ng_さんのMissing-X-Link ~天のゆりかご、伽の花~の長文感想

ユーザー
z_ng_
ゲーム
Missing-X-Link ~天のゆりかご、伽の花~
ブランド
Fluorite
得点
94
参照数
282

一言コメント

オートマタと人間の違いとはいったいどこにあるのだろうか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 作中の第二世代オートマタたちは、みな絶対的な命令たる「レイヤー0」を人間によって刻みこまれている。つまり、人間によって意図的にその存在意義を定義されている。その呼称の示す通りあくまで人間の「自動人形」なのだ。
 しかし、その第二世代の一種たるエリーゼたちは神を崇拝するという宗教的な行動を取った。八郷藍視によって手が加わえられていたとは言え、彼女たちは与えられた知性を用いて自発的に人間じみた動きをみせたのだ。

 また、第三世代オートマタでありヒロインの姫風露には「レイヤー0」が表記されていなかったことが物語の最後に分かる。つまり姫風露の作中における行動は、大偽典図書館を用いた学習と優灯や正伍たちの在り方から自発的に生み出されていたものだったのだ。正伍への無償で無制限の愛も、姫風露自らが育て上げていたのだ。

 これらを踏まえた上で、人間とオートマタの違いはどこにあると言えるのだろうか。必ずしも人間はオートマタとは違って自動人形ではないと言い切れるのだろうか。遺伝子を操作され、外見と才能の二つを決定されて産まれたエディテッドたちはオートマタとどう違うのだろうか。

 私は、プレイ後に浮かんだこの疑問に対する明確な答えを出せなかった。ただ一つはっきりと言えることがあるとすれば、場面に合わせてくるくると表情を変えて多彩にその感情を示す姫風露が、作中において誰よりも眩しく、そして人間らしく見えた。












 ここまで拙い文章でごめんなさい。ここからはざっくりとその他の感想を。
 まず、伏線の回収の仕方が上手かったように思う。読み終えてからモヤモヤすることがほとんどなかった。
 また、UIはお金がかかっていることが分かるくらい良かった。専門用語についての解説も丁寧で、ゲームを進める上でつまずくようなことはなかった。それだけにセーブ画面だけが少し分かりづらかったのはちょっと残念。
 絵もエフェクトもよく動いて視覚的に楽しめたのも◎。演出も非常に凝っており、プレイしてて飽きが来なかった。特に最後のチェス戦での演出には驚かされた。
 あとは、チェスについて解説が少しほしかった。私は全くチェスの知識がなかったので、正直よくわからなかったところが多い。興味は湧いたので勉強してから、もう一度見返すと面白いのかなとは思う。