普通に楽しめた。が、これまでの竜騎士作品を知っていると若干物足りなさを感じました。
商業作品故か毒が抜けた感は否めなかったけれど、シナリオの端々に既視感を覚え、またそれが二番煎じには感じられず逆に登場人物たちがどんな目に遭うのだろうかという期待が高まった。
そういった意味では祝姫は竜騎士の集大成のようにも思えました。
祝姫には4人のヒロインが登場しますが、それぞれに魅力があって正直甲乙つけがたかったです。
彼女たちには全員が全員なんらかの問題を抱えており苦しんできて、それらを乗り越えるだけの強さも同時に持っていて涼はそのきっかけを与えた、あるいは背中を押したにすぎない。
私はそんな彼女たちの心の強さがとても好きだし、可愛いともカッコいいとも思いました。
しかし、彼女たち全員を受けとめられるくらいの器を持った涼が一番カッコいいのだが……。
涼は主人公としてはあまりに出来過ぎた主人公でした。
成長という要素は確かに存在しますがそれは煤払流神前武術という部分であって、人間的には最初から完成されていたと言っても過言ではありません。
立ち位置的にどうしても浮世離れした要素が必要だったのかもしれないです。なんせ神を相手にするのですから。
ですが、涼を見ていてもそれほど人から乖離しているとは感じることがなかったのは夏也の存在があったからこそでしょう。
夏也がマジカルリリーの熱狂的ファンだったりデュエリストだったりと俗っぽいのは涼とのバランスを取るためだったのやも。
正直なところ涼と夏也の楽しげな様子にBL止む無しと思ったこともしばしばでした。目の色が変わった女性陣は非常に恐ろしかった……。
まぁ最終的には正ヒロイン強しと言いますか、千年間奇跡を待ち望んで頑張ってきた十重が報われないなんてそちらの方が許せないので落ち着くべきところに落ち着いて良かった。
涼の「君は、誰?」という問いのシーンは祝姫で一番好きなシーンです。
千年身体を入れ替えて生きてきた鈴女こと十重と、睦の記憶を持っているだけの涼との想いの違いを明確にし、その上で選択させる。
最後の最後、あの場の雰囲気そのままの勢いで行ってしまってもよさそうな状況でその葛藤を入れてきたことに感嘆しました。
この作品内でできること、出し尽くせるものは全部やってしまおう、そんな竜騎士の意思が垣間見えました。
だからこそ、声優さん方の演技も相まってこのシーンで私は泣いてしまったのですが。
祝姫は本当に声優さん付いて大正解だったと思います。
と言いますか、声優さんって凄い……めちゃくちゃ凄いです。
あの声として表現しずらそうなテキストを演じてくださったこともですが、演じ分けも素晴らしくて、特に十重役の赤崎さんは実質1人で3役くらいやっているようなものだと感じましたし。
今後、アニメやゲームのスタッフロールで赤崎さんの名前を探すことになるでしょう。
ラストのオチはご都合主義と言ってしまえばそうとしか言いようがないです。
が、彼女たち4人にとって涼は自分を救ってくれた王子様であり、現状欠いてはならない存在だと感じもします。
もしも涼を諦めるようなことがあるかもしれないけど、それは今の彼女たちではなく未来のことで祝姫で語られる部分ではこのラストが1番大団円だった。これが私なりの理由付けで、落としどころ。
そしてなによりも、彼女らが泣いて終わるよりも笑って終わる方がいいに決まっていると心底思うのです。