つまり最高だったわけだ
一言感想の通り“最高”だった。
主人公を取り巻く環境が。
好きだからこそ些細な事で距離を作ってしまった幼馴染が、どんな時も主人公の近くにいてくれた幼馴染が、少しお茶目で真っ直ぐな先輩が、自分勝手に見せて誰よりも主人公を好きな妹が。
ゲームでしか味わえない最強の布陣である。
知花涼香というキャラは、ヒロインとしてはただの導入役で盛り上げ役にすぎない。ノックアウト方式のこのエロゲでは彼女のシナリオは他に比べ明らかに手抜きだし、一目惚れで恋して、いちゃついて、小さなトラブルを乗り越えて、主人公との絆を育むだけである。文字にしてみたら真っ当な話に見えるが、実際にはあってはならない話でしかない。一目惚れなんかで主人公を好きになったヒロインが、昔から想い続けてきた幼馴染二人から急に主人公をかっさらうなんて話、物語であってはならないのである。そういう意味でヒロインとしてはひたすら不遇としか言いようがない。
彼女を選ばなかったら早々と幼馴染√への話に突入する。不遇な先輩は出番もめっきり減り完全にサブキャラへと降格するわけだが、本当にただのサブキャラになってしまう。見せ場が少なすぎる。ああは言ったが、キャラとしてもヒロインとしても素晴らしい素質を持っているし、だからからこそ、大筋のシナリオが決まってる、負け役が決まってるこのゲームで出会ったのが本当に遺憾である。誰もが羨む駄目男製造機万歳。
そんなわけで小松莉奈だが、彼女はオタクなら誰もが望む典型的な幼馴染だ。明るく友達みたいに気さくで異性ということを感じさせない、でもやっぱり女の子で。
加えてナイスバディな彼女はずっと、もう一人の幼馴染の星野なぎさと主人公の仲違いを気にしていて、二人の為に自分の想いを隠し続けてきたわけだ。そんな彼女が自分の想いを叶えるため、少しだけ勇気を出して、そう、これは“あったかもしれないもう一つの未来”。実際筋は通ってるし、内容はイチャコラゲーだが温かい、恋愛とは無縁な大学生活やバイトで苦しむ自分には最高の“萌え”ゲームとなった。
そして小松莉奈が自分の想いを封じ込めたとき、いよいよ星野なぎさの話となる。
彼女の話も小松莉奈のそれに似たり寄ったりではある。大切な幼馴染に関係を認めてもらって、今まで通りの仲の良い三人の関係を保って、主人公とイチャイチャして、そして昔仲違いした原因となった出来事を乗り越えたところでハッピーエンド。愛する、ずっと主人公だけを想ってきた一途な幼馴染と、信頼する、ずっと主人公を傍で支えてくれた幼馴染との関係が本当の意味で構築されるわけだ。同じ三角関係でもどこかのホワイトなんちゃら2とかいうゲームとは大違いである。
メインヒロインはグランドエンディング仕様となるので、主人公の男友達やら周りの色々な人が無条件で幸せになりその姿が軽く描かれる。他の√では描かれなかっただけでこうなっていたのかもしれないが、とにかく後味最高。メイン画面はALcotハニカムお得意のクリア後画面となり、幼い三人が。気分も最高潮。開かれるおまけシナリオ。幸せな後日談。お腹いっぱいである。
そしておまけシナリオ6つ目(?)は関谷恵、妹のシナリオ。最後の最後で開かれるのかと高いテンション。
でも、プレイを始めれば明らかに星野なぎさの後日談。もしかして彼氏でも出来るのか・・・?と嫌な予感はもちろん的中しない。
それは、幸せの真っただ中に投じられる、ほんの少し苦くて、でも甘いお話。
妹の為に走ることを諦め、でも妹に背中を押され彼女を作り、また走ることを決意した主人公に放たれた妹の台詞。「お兄ちゃんになぎささんと別れてほしい」
はあああぁぁぁ・・・最高。最高すぎる。
これ、こういうの良すぎる。主人公がそれを受け入れるわけがないんだけど、受け入れちゃいけないんだけど、妹が、主人公を大好きな妹がそれでも我儘を、叶わない我儘を隠さない姿が。はあああぁぁぁぁ・・・最高。
主人公一人の力で、だれもかれも、全ての人間を幸せに出来るわけじゃないという当たり前の現実。
クソ甘ったれな妹の我儘を、叶えるわけじゃないけど受け止めるというエロゲによくあるご都合展開で締めくくるわけですが、ほんっとうに最高。最高です。
妹√ないのは不満だった気もするけれど、ないからこそ一番輝けた、そんなキャラだと思えるんですよ、関谷恵ってキャラは(いつの間にかですます調)。
複雑なギミックも何もない一本道で王道を貫いたシナリオだけど、だからこそ久々に本当の意味でゲームを楽しめました。とな恋。さいっこうのゲームです!神ゲーなんて絶対言ってやりません。安っぽく聞こえますもん。
本当に、幸せなひとときをありがとうございました。