さらに完成度が上がったD.C.Ⅱ
無印のD.C.Ⅱと比べて攻略キャラが倍以上になった本作。
トータルで見ると無印より質が上がってますが、
それでもやはり悪いところは悪いまま。
良質のキャラがずらりと揃っているので世界観が気に入れば
十分以上に楽しめると思います。
クリスマスパーティの準備とパーティ当日を描く第1部と
年末と年越しを描く第2部を経て、各キャラに焦点を当てた第3部という構成。
一部例外はありますが、大体このパターンでシナリオが進行します。
シリアスとギャグのバランスが取れててメリハリのあるシナリオ構成は○。
音姫と由夢のシナリオは、個別ルート後にda capoルートを経てから
al fineルートにてエピローグという描き方に変更されています。
義之復活の理由も明らかになってからエンディングに行くので、
個人的にはこちらのほうがより受け入れられやすい気はします。
他に、義之消滅を主軸に置くシナリオはアイシアルートがあるのですが、
こちらはちょっと異色。
da capoルート後に開放されるルートということに意味があり、
プレイヤーは全て知った上で物語の進行を見守ることになります。
単体で見るとよく出来たシナリオなのですが、音姫由夢ルートを始めとした
他のルートと比較すると、若干設定の矛盾というほどではなくとも
突っ込みどころが発生してしまうのがたまにキズ。
まあ、人形劇編の音姫が言うように、「物語はどんなものでもハッピーエンドがいい」
というライターさんのメッセージがしっかり現れている点は評価できます。
ちなみに、隠しキャラのお二方に関しては攻略サイトのお世話になりました。
あれは・・・自力で見つけるのはかなり難しいと思います。
グラフィック関係は以前と変わらず。
立ち絵のパターンを駆使した、各場面ごとのキャラの立ち位置を意識した見せ方は
素直に評価できる点でしょう。
桜の花びらや雪が落ちてくるのもうまく世界観を見せていて○。
一部バランスが取れていない立ち絵一枚絵があるのもそのままですが、許容範囲です。
BGMはさすがのサーカスというべきか。
良質のキャラテーマを始めとした、上手く場面に合わせたBGMの使い方が出来ています。
そしてこれでもかというほど盛り込んだボーカル曲はどれも優秀。
追加キャラ分のキャラテーマやスプリングセレブレイションで追加されたBGMも
収録および使用されています。この辺はうまくまとまっていました。
システム関係はあらすじモードとシーン回想が目を引きます。
が、既読スキップがないのもそのまま。
あらすじモードがある分そこまで致命的にプレイ時間に影響するわけではありませんし、
あらすじ部分を自力スキップしてしまえばほぼ問題ありませんが、
それでもいい加減既読スキップは欲しいですね。
あとは、テキストクリック後もセリフが切れないモードがあればなお良し。
個人的には既読スキップがなくともあらすじモードである程度フォローされており、
シーン回想がついているのでシステム面はむしろ優秀なほうと見ています。
無印と比べて大幅にボリュームアップしており、一部キャラにはルート開放条件があるため
新規キャラだけ読むというわけにはいきませんが、それでもD.C.の世界観が好きなら、
無印プレイ済の方でも十分楽しめる内容ではないかと思います。
既読スキップ未実装以外は目立った荒も少なく多くの人に進められる良作です。
(以後、各ルートごとの感想を踏まえた評価です)
クリア順
エリカ→月島→まゆき→茜→委員長→ななか→由夢→杏→美夏→音姫→
da capo→al fine→まひる→アイシア→莉乃→忍
○音姫ルート
D.C.Ⅱのメインルート(かな?)。
初音島で起こる不審な事件を調査し、その果てに魔法の桜を枯らして
初音島全体が夢のような世界から現実へと戻っていくシナリオです。
義之消滅と正面からぶつかる数少ないルートの1つ。
無印時代から評価の高めなルートですが、クライマックスの演出は
やはりトップクラス。他の追従を許しません。
「正義の魔法使い」であることに使命感と誇りを持つ音姉ですが、
正義の魔法使いであるがゆえにどうしても救えない存在に涙するシーンは
D.C.Ⅱ全編通して最も盛り上がるシーンだと思います。
○由夢ルート
D.C.Ⅱのもう1つのメインルート。
実は先見の力を持つ由夢。
彼女は義之の未来を既に予見しているため、義之に対してどうしても素直になれない、
でもやっぱり好きなものは好き。
というツンデレにきっちり理由をつけたシナリオです。
ルート全体を通してみると、その過程を全編通して描ききったシナリオで
完成度が非常に高いです。
○ななかルート
軽音楽部のバンドルートその1。
無印をプレイした際、このななかというキャラがどうしても好きになれなかった俺ですが、
改めてシナリオを読み返してようやく理由がわかったような気がします。
スプリングセレブレイションの悪夢再び(いや、こっちが本当は先かw)。
あの「ありえないテキスト」がここにもありました。同じ人が担当してたのね・・・。
ななかルートを最初にプレイしてしまい、そのイメージがあまりに強烈すぎたみたいです。
まあ、でもそれを差し引いても彼女は好きになれません。
(いちキャラとしての確立は十分以上に成されています)
義之とななかと付き合い出して舞い上がってしまい、周りとギクシャクし始めるという
いかにもなシナリオ。周囲はどうも義之とななかの味方っぽいですが、ここは疑問が残ります。
確かに渉や月島は、そうなってしまった以上はそういうものとして受け入れていくしかないでしょう。
ですが、だからといって彼ら2人を無視して何してもいいってことにはならない。
鈍感を通り越して人として何か大事なものを置き忘れたような行動を取り続ける義之に対し、
妙にやさしく高評価な周囲にも違和感だらけ。
ななかにしても、ああいうキャラだと異性はともかく、少なくとも同性からは
相当嫌われるタイプだと思います。(脱線しますが、白河ことりも同様)
ことりはまだ心を読んで、その上で空気の読める行動を取っていたので許容範囲ですが、
ななかは勝手に心を読んだあげく周囲を引っ掻き回し自分の都合のいいように利用するだけ。
最後はハッピーエンドで締められますが、まあなんというか・・・
周りいい人だらけでよかったね、都合のいい人ばっかりで助かったね、ってところでしょうか。
渉と月島はもっと2人に対して感情ぶつけてもいいくらいですw
○美夏ルート
美夏の人間嫌いとその理由。引いては人間とロボットの確執を描くルートです。
彼女のルートも全体よくまとまっていました。
ロボットというものに対する扱いについては、それぞれ意見があるとは思いますが、
個人的には美夏くらいに自己が確立できているならば
1人の人間として扱ってもいいと思います。
ですが、μのような扱い方をするユーザーが多いとなれば、
社会的にはロボットは弾圧されても不思議じゃないでしょう。
ロボット社会・・・もし来るとしたら、おそらく現実でもああいう時代を
一度は迎えることになるのではないでしょうか。
○杏ルート
「記憶力がいい」と「頭がいい」は全くの別物。これは俺も同意見です。
杏本来の能力は後者のみですが、魔法の力で前者の能力も得た杏はいわば最強キャラ。
彼女の性格も相まって非常においしいキャラとなってます。
良質ぞろいのキャラが揃うD.C.Ⅱの中でもトップクラスのお気に入りですが、
そのシナリオはちょっと残念な内容です。
魔法の桜が枯れて杏の記憶力が失われてからの展開はさすがに無理がありますね。
なんとかいい話に持っていこうとしたのでしょうが・・・。
○月島ルート
軽音楽部バンドルートその2。
「普通」であることを意識して作られた月島のキャラですが、
個人的にど真ん中ストライクですw
どうみても義之に気がある月島ですが、彼女本来の性格とじきに転校していくことが
わかっている現状で素直に告白できないというもどかしくもせつないシナリオ。
もう少し見せ場的な部分を作れればシナリオにも深みが増したと思いますが、
残念ながらそこまでの演出はありません。
むしろ髪を切ってイメチェンし、いい意味でストレートに感情を表すようになった
ななかのイメージのほうが強いという、なんとも不遇な子。
スプリングセレブレイションでも転校してる都合上出番が少ないというのに・・・。
その辺も含めてどこまでも「普通」っぽいのが月島の魅力なんですけどねw
○委員長ルート
ロボットルートその2。
ロボットというものに対し並々ならぬ感情を持つ委員長のシナリオです。
基本的に真面目一辺倒、でも他人に乗せられ流されやすいという・・・。
月島とは違う意味で、彼女も「普通」であることを念頭に置いたキャラ。
美夏ルートではロボット社会という大きなテーマを扱ったのですが、
こちらはあくまで委員長の個人的な確執を描いています。
そんなわけでどうしても完成度は美夏ルートのほうが上。
ロボットを作った開発者がその責を問われるのも当然の話。
彼女には同情の余地はあると思いますが、実際は完全に逆恨みなだけに
共感はできません。
委員長個人に限って言えば、さすがに美夏ルートよりは
よりうまくロボットを受け入れていく過程を描いています。
○茜ルート
雪月花の3人組で唯一攻略キャラから外されていた茜が満を持しての登場です。
彼女のようなタイプはサブキャラでこそ生きてくるキャラだと思っていましたが、
いい意味で裏切ってくれました。
普段の姿は自己暗示に近いものであり、実は・・・という、2段構えの展開です。
たとえ最初は自己暗示であったとしても、それを本物にしていくのは自分の力です。
クライマックス近くの電話のシーン、杏や杉並は果たして気付いていたのか。
渉や月島はおそらく何も気付いていないでしょうが、
そんな彼らだからこそ言える別れの言葉。
見事なルートでした。
○まゆきルート
生徒会ルート筆頭選手の登場です。
個人的に是非見てみたかった、杉並と生徒会の全面対決が見られただけでも結構満足。
それとは別に、普段の風見学園における生徒会がどういうものであるか、
という今までになかった面を描いたルートでもあります。
とはいえ後半は特に、結構ありえない演出が続くルートでもあり、評価はかなり割れそう。
熱血展開では細かいことを気にしたら負け、という典型例でもありますw
○エリカルート
某国のお姫様というエリカ様。ツンデレキャラのお手本です。
個人的にこの「ツンデレ」にはいろいろと言いたいところがありますが、
それはまた別のお話なので割愛。
いろいろとぶっ飛んだ設定が飛び交うエリカルートですが、
シナリオ展開も設定に負けずぶっ飛んでます。
まさかD.C.Ⅱでバトル展開っぽいことになるとはなぁ・・・。
妙なご都合展開で戦況をひっくり返したりしなかった点は高評価。
単純に面白いと感じるかそうでないかの勝負です。
○アイシアルート
さくらと同格の位置にあるアイシアおば(ry
ぶっちゃけ、TV版のアイシアは大ッ嫌いでしたが、このアイシアは好きです。
アイシアもああいう経験をして成長したんだなぁ・・・としみじみ。
よくよく考えてみれば、彼女ほど続編にふさわしいキャラもいないんですよね。
当初の出来事に精通しており、初代キャラと深いかかわりがありつつも
過去の攻略対象ではなく、初音島に起こっていることにも深くかかわりがあって・・・。
シナリオもその事を踏まえた内容で、ファンサービスも入れつつ、よく出来ていました。
正直なところ、追加キャラルートの中で無印時代のルートと張り合えるのは
アイシアだけでしょう。
ただ・・・やろうとしたこと、何を演出しようとしたのかはわかるつもりですが、
それでもあの場面でHシーンはないと思いました。
あとは、桜を義之自身が枯らせたこと、義之復活(存続)の理由付けがちょっとイマイチ。
うまくまとまってはいるし、物語も盛り上がったし素直によかったと感動できるのですが、
音姫ルートを始めとした他ルートと設定を並べると・・・
どうしても「弱い」と感じてしまいます。
桜を枯らせたのが義之、というのはまだ全然OKなのですが、義之存続理由は際どい。
今までに義之がかかわってきた存在みんなが、消えたはずの義之をどこかで覚えている。
その「想い」を魔法に変えて義之が再び存在を許される、というのが正史だと思います。
対してアイシアルートでは、アイシアがただひたすらに義之の存在を認め続けたことで
世界の強制力を上回り、義之は消滅せずにそのまま存続した。
どちらもとってもいいお話なんですが・・・。アイシアルートの義之だと・・・。
アイシア(とさくら)以外にちゃんと認識されるのか?と思ってしまいますw
(こういうのを邪推っていうんですけどね)
○まひるルート
幽霊ルート担当まひるちゃんです。
幽霊の癖に幽霊を怖がる、を筆頭に結構テンプレなキャラですが、
よくよく見ればその辺にはちょっといないキャラです。
もうちょっとシナリオを練りこんでいれば・・・。
クライマックスに至るまでが平坦、ややすれば退屈と取る人も少なくないでしょう。
何が何でもハッピーエンドに持っていくD.C.Ⅱにしては異色なルートでもあります。
ラストはグッドエンド、といったところですね。
でも、だからこそまひるの成仏を素直に喜べるし、
残された義之やミキの今後の幸せを願わずにはいられないシナリオです。
○da capo
D.C.Ⅱの世界を裏側から見るルートです。
D.C.初代はゲームは少しだけプレイして、アニメを見ただけなのですが、
このさくらは納得いかない、という方が多いのも頷けます。
しかし、個人的にはさくらの心情はとっても理解できるものがありますね。
自分の周りが人間としての幸せを手に入れていく中、自分だけはそこから
外れて生きている。そのことにどうしようもない孤独感を感じ、
間違いだとわかっていても再び魔法の桜にすがってしまった。
そうやって生まれた義之を自分の息子として、
どんなことを引き換えにしてでも守ろうとする。
おそらく、世間一般の評価で言えば、
さくらは決して「良い人間」「良い母親」ではなかったでしょう。
それでも、さくらは間違いなく母親だったと断言できます。
このda capoルートがあるからこそ、D.C.Ⅱの世界観がより強まったと思います。
ただ、このルート(D.C.Ⅱにおけるさくらの扱い)に拒絶感を示す人がいても
おかしくはないですね。
○忍ルート
オールクリア後に解禁される隠しキャラルートその1。
こんなの見つかるかーw
忍者というこれまた今までとは趣の違ったキャラと、それを使ったドタバタ劇。
なかなかにいいキャラをしていたと思います。
やや癖があるので好みの差は出やすいでしょう。
○莉乃ルート
オールクリア後に解禁される隠しキャラルートその2。
自力で見つけた方には素直に尊敬します。
どこまでもまったりのんびりなキャラとシナリオ。
これはこれでいいのですが・・・。
ごめんなさい。ちょっと眠かったです。
まったりのんびりだけで本当に何もないまま終わっちゃいます。
(一応Hシーンあります)
さすがに無印時代にプレイ済の部分は、気に入った部分しかフルボイスで
聞かなかったのですが、それでも相当な時間をかけてクリアしました。
このボリュームという点だけでも評価できます。
シナリオの質はどうしても無印時代のキャラのほうが光るものがありますが、
追加キャラのエピソードは委員長を除いて全て新しい視点の物語なので
比較とかあまり考えずに素直に楽しむほうがいいでしょう。
忍と莉乃はルートの1つというよりは、
クリア後のおまけ、と取ったほうがいいかもしれません。
隠しキャラ2人を除いて、ルート固定後も攻略キャラ以外ときっちり絡んでいくので
日常会話もテンポよく、しっかりと楽しむことが出来ました。