懐かしい夏休みを追体験させてくれる作品
夏の離島というノスタルジックな舞台で、誰しも感じてしまう過去への郷愁を批判的にとらえつつも、一方では肯定してくれるような、やさしさのある作品であった。
以下、個人的な感想ばかりの駄文です。
ヒロイン達は言うまでもなく、サブキャラクターもいい味を出していて、自身も楽しい夏休みを過ごしているようなそんな気にさせられた。今ではしがない社会人をしている私でも、こんな楽しい夏の経験があったものだと想起してしまう。仕事で疲れたとき、ふとそんな過去にもどることができればと考えてしまうことが多々ある。自分自身、そういった思いといかに向き合うべきか、答えが出せずにいたのだが、この作品はひとつの答えを示してくれたように思う。ループを続けるしろはやうみのように過去にとらわれるあまり現実から逃げてはいけない。ただ、そういった過去を否定するのではなく、ポケットにしまっておいて、ふとした瞬間に取り出しては、現在に向き合う糧とするような、そんな生き方があってもいいのではないかと思わせてくれた。
特に印象に残ったのはPocketのラストのシーン。展開は『君の名は』を彷彿とさせるものではあるが、このシーンが様々な人の思いによって実現しているという点がこの作品に独自の深みを与えているように思う。ふとした瞬間にこれを思い出しては、しろはと羽依里、そしてうみの未来が幸福なものであるとこと願わずにはいられない、そんなシーンであった。