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yunoazさんの病院ソドムの長文感想

ユーザー
yunoaz
ゲーム
病院ソドム
ブランド
Liquid
得点
86
参照数
176

一言コメント

聖夜に狂気が駆け抜ける疾走感。ダダダダダダダダダダ!メリークリスマス!デスよ!

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

企画シナリオは南泌流夫こと田所広成氏。氏の作った往年の名作『学園ソドム ~教室の牝奴隷達~』(PIL/1995年)は、ゲーム史上初めて時限式選択肢を取り入れたことでも知られており、背徳の象徴である「ソドム」という同じ名を冠する今作も、選択肢を選ぶ際に5秒のカウントダウンが採用され、選択を誤ると即射殺のバッドエンドと隣り合わせな緊張感溢れるプレイが出来る。
ストーリーは派遣切りに合いネカフェ難民と化していた主人公が、ネットで報酬1億円のアルバイトを見つけ応募したところ、テロリストの仲間にさせられ、病院に立て籠もり犯罪に加担していくというもの。会話はネットスラングが多くギャグ路線ではあるものの、際どすぎる政治ネタが多分に投下され、何気ない一言に考えさせられるブラックユーモア溢れる作品になっている。また舞台が病院ということで医療プレイがあり、氏お馴染みのスカトロ要素も多々ある。
音楽BGMもレレレレコードこと田所広成氏が手掛けている。BGMは全てクリスマスソングのアレンジで、えげつないエロシーンでハレルヤ(ヘンデルのオラトリオ「メサイア」HWV.56から)を流すセンスに脱帽した。
エンディングはバッド除いて8つ。選択肢によって少しずつ秘密が明らかになっていく作りが上手く、全てが明らかになるエンド7「The truth which does not need to be known」のみスタッフロールが流れる。フルプライスのエロゲではないので短めだが、登場人物達全員にそれぞれの立場からの矜持や、ちゃんと狂う理由もあって、無駄なくコンパクトに纏まっていて完成度が高く面白かった。聖夜ならではの一夜限りのお祭り感も出ていて、一気に駆け抜けてしまった。

最後に、シナリオや音楽という枠を超え、1980年代後半から業界に入り数多くの名作エロゲをプロデュースし、エロゲの一時代を築いた人であった田所広成氏のゲームが、今作を最後に出来なくなってしまったことが残念です。お悔やみ申し上げます。