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yumenoarikaさんの光輪の町、ラベンダーの少女の長文感想

ユーザー
yumenoarika
ゲーム
光輪の町、ラベンダーの少女
ブランド
あかべぇそふとつぅ
得点
75
参照数
699

一言コメント

惜しい作品です。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

個人的な感想として、主人公がいらないと思いました。

義務を負った少年、椿宗介を主人公として物語は展開されます。剣術部の創設を通して五人の少女たちとの「絆」を手に入れ、そして義務から解放される――そんな物語展開でした。

前半が「剣術部」、後半が義務のお話なのですが、主人公が限りなく普通か多少自分勝手な人間で、なぜ少女たちに好かれるのか理解不能でした。ゲームの主人公だからという理由であればすごく納得できるのですが、本人の魅力はほとんど感じられませんでした。ダメな箇所は諦めやすく頭に血が上りやすく上から目線といったところでしょうか。よく自分のことを棚にあげます。

対照的に、栗林先生や学園長はとてもいいキャラに思えました。……というか、主人公以外はみんな魅力的なキャラに思えます。なので個人的には剣術を憎んでいる栗林先生を主人公にして剣術をメインに物語を展開したほうがよかったと思います。五人の少女たちの「絆」に触れて、かつての想いを取り戻す物語。18禁ゲームにはなりようがないですが、それでも全然問題ないくらいのポテンシャルはあると思います。

青雲学園のメンバーも魅力溢れるキャラばかりです。こことの試合はかなり熱く、普通に名作だと思いました。暁セツナさんや七星樹さん、右近シズルさんとかすごく好きです。それだけに出番が少ないのが残念。友人の水島のキャラは結構好きですが、やっぱりこの物語に「義務」のお話はいらないと思いました。それと個別シナリオも普通でした。

他のレビュアーさんも言っているとおり、「車輪の国」の続編として出す必要は全然なかったと思います。どうしても比べてしまいますから。実際、内容的にも「向日葵の少女」とはまったく別物だと思います。「向日葵の少女」は名作中の名作だと思いますし、その世界観はとても独特なものでした。その世界観をこの作品では感じることができませんでした。続編として出すならテーマを「義務」に徹底すべきだと思います。

この作品で不要だと思うのは主人公ですが、それに付随して恋愛要素もいらないと思いました。恋愛にいたる過程がほとんどなく、急にくっつきます。この物語は「仲間」や「友達」といった関係の「絆」を描いているはずなので。

愚痴のように繰り返しになってしまいますが、仲間や友情といった「絆」だけをテーマにして、主人公を剣術を嫌っても本当は好きな栗林先生か学園長にして物語を作ったほうがずっと面白くなると思います。本当にこの二人は熱いので! それと青雲学園と戦うまでもっともっと鍛錬しないと、ヒカル以外のメンバーが恐ろしい才能を持った少女たちに見えてしまいます(ヒカルは納得できるので)。それに作中でも言っていましたが地区予選一回戦の試合ではもったいなさすぎです。特に青雲学園の最強ぶりはもっともっと見たかったです。……と、個人的に熱望します。