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yumekuiさんの犬の長文感想

ユーザー
yumekui
ゲーム
ブランド
D-XX
得点
45
参照数
268

一言コメント

存外シンプルなテーマだが、考察するにはかなり不親切。屠殺の園のように作中で設定に対する直接の言及がなく、公式サイトの情報から主題を把握する方が手っ取り早い。しかし、描写をヒトゲノムの話題として捉えすぎると踏み込み気味になるので、内容の理解はあくまで「犬」に沿った方が考察が飛躍しない

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

というかこれ、考察ゲーと呼んでいいのか微妙。
結局は舞台背景が明かされず、割合的にヒトゲノムとは別の部分が主題になっているように感じました。
ライターの心理描写をもって大部分の質をカバーしていますが、
ヒトゲノムの情報を織り交ぜずに表面的な示唆に留めるため、理解できるまでは非常に退屈です。

公式サイトを鵜呑みにして「遺伝子による支配」を当てはめると理解は捗るんですが、
18のEND全てがそれを踏まえてはおらず、単にライターがそういうプロットにしただけだったり。

自分の中にいる敵=遺伝子と一度誤読したのがいい例で、
「独りぼっちになると出口を見つけられないことで自分を責めるようになるから、女が自分を馬鹿にしていると思い込む」って心理を描いただけっぽい。
それでも意味深な描写がかなり多く、参照しないとけっこう読むのがツライです。


以下はプレイ中のメモをまとめて箇条書きにしました。

・犬というタイトルが指すもの
思考放棄→他者に従属することで自身の存在を認めてもらう

・極限環境に置かれた登場人物の行動
①他者より優位に立とうとする
②他者に従属しようとする
③本能に従う
④発狂する

・自身の存在を確かめる手立て
①異性と性交し、性を自覚する
②他者にとって何らかの役割を持つ
③生まれてから今までの記憶を持つ
④外部刺激を含めた肉体感覚

・本作で最も強調されていること
記憶がない男女3人が自身の存在に意味を見出すため取った行動が、他者との関係にどのような結果をもたらしたか
他者に見てもらわないと自身の存在が消えてしまう不安に駆られ、暴力でもいいので自身の存在を肯定してほしい
極限環境下で人間らしい思考を保つことが、自身の価値を認めてくれるものに対しての従属につながる=犬