終盤まで事件が進展しないシナリオと、延々と移動させるシステムが噛み合っていない。昔のエロゲらしく説明不足だが、設定が壮大なのは良い。
攻略→https://goo.gl/Hn7a3L
直接のワードは一切登場しないクトゥルフゲーです。
作中では「唄」、「言葉」、「御子神」というワードが使われます。
「唄に魅入られた」生徒たちと「門」に通じる学園、ある儀式とそこに絡む登場人物たちの思惑、主人公の過去とその正体など、多くの伏線が説明不足とはいえ、一作品としてなかなか面白かったです。
どのレビューサイトを見てもダメ出しされている、移動システムを除いて。
全て網羅しようとは思いませんが、一読してわかりにくい部分を中心にまとめます。
以下、ネタバレ多めです。
・主人公(蘭丸)にたびたび起こるフラッシュバック
作中に何度も起きる演出で、蘭丸が学校に来てから記憶を消された部分と、それ以前に忘れている過去の部分から成ります。
まず、蘭丸は学校に来た前日の夜に、ある人々によって記憶を消されています。
それからもたびたび記憶を消されていますが、場面転換が夢なのか何なのかわかりにくく、さほど重要でもないので無視してもいいぐらいです。
該当箇所は、一日目朝に「誰かを部屋に~」みたいなことを蘭丸が考えた時、一日目夜に風呂で遥とまぐわう夢を見た時、三日目昼に図書館でまみにフェラされる夢を見た時。
あれらは現実に起こったけど記憶を操作され、不思議な夢を見たとして処理されています。
一方、蘭丸自身の過去のフラッシュバックについては、遥が「唄」を使ってしばしば蘭丸の精神に干渉しているからだと考えられます。
しかしこれは蘭丸が学園に来てからなので、梓姉ちゃん関連のフラッシュバックは別口。
・学園に流行していた「香」、誰かが配った風邪薬
事件の黒幕にとってもイレギュラーな要因で、「唄」が学園に広まるのを結果的に食い止めていたという点を除いて、それほど重要じゃありません。
「香」とは「唄に魅入られた」ことにより死亡する生徒たちに対して、「言葉」の代わりになるものです。
「唄に魅入られる」とは魔術の力を得たのにコントロールできず、狂気に駆られて死ぬといった意味合いです。
「言葉」というのは「唄」をコントロールするための法則のようなもの。
「香」を流行させた斎乃姉妹が学園に転入した時点で、大量の生徒たちが「唄に魅入られて」危険な状態になっていたので、「唄」の進行を遅らせる「香」により対処したという経緯だったはず。
他方で、風邪薬は「唄に魅入られた」生徒を意識不明にすることで進行をストップさせるものです。
「唄」の進行がひどい生徒には効果がなく、結果的に作中の主要メンバーしか学園内をうろつけなくなります。
これを配ったのは優子と勇太。どうして彼らが配ったのか明確な説明はありません。
考えられるのは、「唄」が蔓延すると「光の柱」が現れ、妖魔である勇太は浄化されてしまいます。
優子は御子神なのでよくわかりませんけど、保身のために「唄」の蔓延を防いだのかなぁと。
犬の三郎が殺された伏線回収について。
優子が清掃員たちを虐殺する現場に勇太も参加しており、出ていこうとした蘭丸を「バカだな…死ぬよ」と言って殴ったのが勇太。
三郎を殺したのは清掃員たちで、不良を犯人に仕立て上げて勇太に殺させようとした?という説明が5日目にされます。
清掃員たちは黒幕の部下ですが、不良を殺したところで儀式に関係なく、あまり意味のない設定かなぁと思います。
・西崎と黒幕の関係
事件の全貌の半分は西崎が説明してくれます。
残り半分は西崎も知らない昔の出来事で、主人公サイドで説明されます。
西崎は黒幕の手下ですが不良を束ねている程度で、具体的に何をやってたかはわからないです。
黒幕に洗脳されても儀式の生贄にならないのは、黒幕の影武者としての立場があるからでしょう。
一日目夜、黒幕と西崎が会話しているところを誰かが盗み聞きする場面がありますが、ネズミは消去法的に真由美か…?
黒幕に奉仕してる女はおそらく遥。
・遥の目的
遥は黒幕の指示に従い、生贄を直接集めていたと西崎から説明されます。
しかし、彼女は「唄」を溢れさせて「門」を開くことではなく、「門」の解放を経て遥の主人にあたる人物を復活させることが目的でした。
黒幕に従う必要は別にないですが、学園に「香」が流行ったことで「唄」の力が弱まり、「門」を開ける力を持つ黒幕を利用する他なかったんでしょう。
遥が昔から蘭丸を知っているという伏線は、主従関係そのままです。
また、遥は黒幕が行った儀式で死亡したまみの姉(霊体)をそそのかし、黒幕に復讐するためと騙して「門」を開く手伝いをさせていました。
まみの姉は霊能力者なので死んでからも霊力が強く、まみの体に憑りついて悪事の片棒を担ぎます。
しかし、まんまと敵に騙されたばかりかあっさり退場するチョイ役であり、これまたさして重要でない伏線です。
・石島学長と学園設立の経緯、18年前の顛末
蘭丸の叔父にあたる石島は、蘭丸に学園内の調査を命じるとともに彼を学園に転入させます。
しかし、石島自身は生徒間で起きた暴行事件を揉み消したり、あろうことか儀式の存在まで知っていました。
蘭丸には自身の悪事を明るみにし、事件の全容を知ってもらいたかったようなニュアンスがあります。
石島は梓の組織に情報提供を持ちかけますが、黒幕に奇襲されてそのまま命を落とします。
学園が設立されたのは、姉小路という混沌の神の血を取り入れた魔術師の一族が、「御子神」を生み出す儀式をやり直すため。
初めから生徒たちは生贄として、「唄に魅入られやすい」者が選別されていました。
神の子を生む儀式は、「門」が開いて「唄」が溢れた状況下で生贄の男女がまぐわい、孕むまで種付けをするというもの。
姉小路家は200年前の儀式に失敗して滅んでいますが、その末裔が182年後(18年前)にも儀式を執り行います。
18年前の儀式では、「門」が開きすぎて「唄に魅入られた」近隣の村が全滅し、主導した姉小路耕三も巻き込まれて死亡します。
生きて当時の事を知るのは石島だけになり、石島は儀式の生贄だった姉小路家の養女と結婚します。
・蘭丸の暴走と5年前の真相
蘭丸は18年前に失敗した儀式から生まれた「御子神」ですが、「唄」の力に肉体がついていけず生まれながらにして半死半生でした。
いつもお見舞いに来てくれる梓が現れなかった日、蘭丸は彼女に会いたくて病院を飛び出します。
そして、彼女が通う学校に偶然たどりつき、彼女に襲いかかろうとした暴漢を「唄」で殺してしまいます。
その後、蘭丸は秀一という魔術師に喉を掻き切られて殺されてしまいます。
これは蘭丸の魂を秀一の肉体に入れ、蘭丸が「言葉」を持つようになるまで生き永らえさせるための手段でした。
しかし蘭丸の精神は、秀一の精神から肉体の支配を奪ってしまいます。
概要はこんな感じ。
[時系列の整理]
・(200年前)姉小路家が滅ぶ
・( ~ )学園の設立
・(18年前)儀式が失敗→生贄だった秀一は遥に助け出される
・(5年前)優子が秀一に犯される⇒優子は蘭丸の妹なので、見た目はもっと幼いはずなのに矛盾
・(5年前)蘭丸の暴走
・(5年前)秀一が蘭丸を殺害するが、蘭丸に肉体を奪われる
・(1年前)「御子神」の儀式に興味を持ち、黒幕が学園を訪れる
・(1日前)蘭丸が石島の指示で学園に来る
[各エンドの解説]
バッドエンドと梓エンドは上記で事足りるので割愛。
結末までは書きませんがかなりネタバレです。
蘭丸の精神は消え去り、魔術師の秀一は5年ぶりに肉体を取り戻すことができた。
200年前に姉小路家を滅ぼした「御子神」との契約は、「唄に魅入られた」秀一を生き永らえさせる代わりに、「唄に魅入られた」蘭丸を殺してその精神を自身の肉体に取り込むことだった。
しかし、蘭丸に肉体を支配されたことで秀一の精神が表に出ることは叶わなかった。
遥は主人である秀一の復活を喜ぶ。
18年前に儀式の生贄にされた秀一は、姉小路家との因縁を終わらせるため学園地下の斎場へと向かう。
そして、姉小路耕三のミイラに剣を突き刺したのだが……。その後の展開は説明不足です。
遥の健気さと、秀一の後悔のセリフが胸に刺さります。
蘭丸は秀一の肉体から出たが、今度は亜紀の肉体に入り込んでしまう。
亜紀は200年前の「御子神」で、真由美は亜紀を生贄に「門」を開こうとしていた。
真由美の正体は明記されていないが、18年前の儀式で死んだ魔術師の少女が作り出した怨念のような存在。
しかし、亜紀の中には蘭丸が入っており、亜紀は正太郎の中に入っていたため儀式は失敗。
真由美は無念のまま消えていく。
「門」が開いたことで蘭丸は亜紀に「門」の内側に連れて行かれ、神としての修練を積んでいずれ神になるらしい。
「門」が完全に開き切らないまま、「光の柱」を落とした佐知子も門の内側へ。
「光の柱」とは「唄」が溢れすぎたときに現れるこの世界の安全装置のことで、「唄」を一瞬で消滅させる。
佐知子と主人公の接点は夢の中?で、幼少から夢で逢っていたがお互い気づくまで時間がかかった。
と、こんな感じの顛末が描かれます。
3つのエンドで登場人物それぞれの伏線が回収されるため、できるだけ全部見るべきかなーと思います。
バッドエンドはただ蘭丸が消えるだけなので見なくてもよく、1周目で遥・梓エンド、2周目で佐知子エンドと見れば楽でいいかも。
色々あって4周したのでかなり時間がかかりました。