Bluestacks4から購入。PCが壊れた後も、購入したGoogleアカウントからBluestacks5に入れることができた。買い直しにならなくてよかった
多くの物語に逃げ道が用意されているのは、各々の苦しい現実に読み手の精神が舞い戻らなくていいような、作り手の様々な思慮による創作活動の結果である。
そもそも物語を好み、時に囚われる人々というのは、現実に精神が恐怖し、屈従し、後悔した当時の自分の力ではどうしようもなかった体験について、
自らが属する(精神)世界を根本から再構成し、不幸ゆえに視野を強く定め思い描いた理想を実現したいという願望が、一般的な他者より強いのではないだろうか。
本作の主人公は、端的に言うと嫌な感じのやつである。
クラスメイトに友達どころか話し相手がおらず、
日々の積もる鬱憤を深夜徘徊することで紛らわせている。
仮に高校生の私が彼のクラスメイトだったとして、彼の抱える深い事情を理解し、助けることができたとは到底思えない。
彼には自己主張と救済を求める姿勢がなく、時折見せる神経質的な怒りっぽさや、普段の無感情ばかりが目に映る。
周りの子供と事情が異なるだけで、直接の侵害行為がなくとも彼は子供たちの中で異様な存在として扱われる。
ヒトという群れの単純かつ残酷な性質を、表面化するのにうってつけの場所が学校である。
本作は、そんな彼が宇宙から来た少女・ネオンと出会うことで生きる拠り所を取り戻し、
様々な問題とも折り合いをつけ、未来へ向かって歩を進める物語だ。
ピアノがキーワードとなっており、音と触れ合う時間を少しずつ大切にしていく二人のそれぞれの感情が、だんだんと重なり合っていく調和に温かみを感じる。
その調和はどこかぎこちなく、見ていて不満も覚えるが少しずつ深まっていく恋愛模様にも似ている。
しかし、本作には多くの物語のように完全かつ恒久的なハッピーエンド(逃げ道)が用意されているわけではない。
設定的にはエロゲにした方が自然ではあるし、(肉体的に結ばれない)
キネティックノベルという低価格ジャンルが制作にどの程度影響していたかわからないが、
物語としての未来の可能性が製品仕様によって狭められたのは言うまでもない。
エロゲーブランドの大熊猫が元々抱えていた企画だったのか、キネティックノベル用に作り上げたのかは定かでないが、
コンパクトな物語に、逃げ道がない現実を想起させられつつも
前を向かせてもらえるような質の高さを味わえただけでも、評価に値すると言うべきだろうか。