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yukime430さんの根暗なクラスメイトが俺の胃袋を掴んで放してくれないの長文感想

ユーザー
yukime430
ゲーム
根暗なクラスメイトが俺の胃袋を掴んで放してくれない
ブランド
エンターグラム
得点
74
参照数
97

一言コメント

【超絶ネガティブなのにちょろくて積極的なヒロインにじわじわ惹かれる学園ラブコメ】

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【総合評価】74点
【シナリオ】23/40点【原画】20/20点【音楽】14/20点【キャラ】8/10点【声優】9/10点

新学期早々、ラッキースケベをきっかけに根暗なクラスメイトにご飯をごちそうされるところから始まるお話。ぎこちない関係から始まる、ちょっとチョロい根暗ヒロインとの学園ラブコメ。

★良かった点
主人公や美冬との交流を通じて、木陰の根暗だった性格が少しずつ明るく変わっていく様子が丁寧に描かれていてとても良かった。
頻繁に木陰視点に切り替わることで、ヒロインの心情や変化がしっかり伝わってくるのも好印象。
金銭窃盗事件の展開や、根暗な性格・そばかすを“ゴミ付き”とする設定からいじめに発展する描写など、重めのエピソードも自然に織り込まれていて、フラグ回収まできちんとまとまっていたのが素晴らしい。
木陰役・立花日菜さんの演技も最高で、キャラとのシンクロ率が高くて聴きごたえ抜群。
筆者の性癖である敬語キャラという属性も相まって破壊力がすごい。
特に、下の名前で呼んでほしいと言ったり、パンケーキの食べさせ合いを提案するなど、超絶ネガティブなのに時々見せる積極性がたまらない。
そして、前髪を切ったあとのビジュアルは反則級の可愛さ。
CG・立ち絵も推し絵師の1人である「maruma先生」らしくどれも美麗で、ビジュアル面でも満足度が高い。SDイラストも豊富で良かった。
青木先生をはじめとしたサブキャラも魅力的で、世界観に奥行きを与えてくれていた。
さらに、UI/UX面もストレスがなく、エンターグラムの技術力の高さが光っていた。


★悪かった点
なによりも終わり方にはかなりガッカリで、シナリオに大幅な減点。
ロープライスの短編であることは理解していたが、それにしても短すぎるし、「これから!」というところで終わってしまったのが残念。てっきり星空を見に行って、あそこで告白が来るのかと勝手に期待していた分、肩透かしを食らったような気分だった。
サブキャラが魅力的なだけに、立ち絵がなかったのは本当にもったいない。特に学園のマドンナ的ポジションの委員長にすらビジュアルが用意されていないのは惜しかった。登場シーンが少ないのと、予算の都合なのかもしれないが、そこはなんとかしてほしかったところ。
ラッキースケベ展開も少々多め。さすがに家の中で何度も転ぶのはご都合感が強くて、ちょっと冷めてしまった。
物語全体としては、山場らしい山場が少なく、基本的にゆるい日常が続く印象。前半の「教室で前髪を切る」シーンがピークで、そこからはやや失速気味だった。
木陰の過去――特に、いじめや唯一心を許していた相手に裏切られた経緯などをもう少し深く描いてくれていれば、もっと彼女に感情移入できたのにな…と思ってしまった。
終わり方はまるで体験版のような区切り方で、物語としての締まりに欠けていた印象。
納得感のあるラストとは言いがたく、続編や後日談などでの補完に期待したいところ。