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yukime430さんのSummer Pockets REFLECTION BLUEの長文感想

ユーザー
yukime430
ゲーム
Summer Pockets REFLECTION BLUE
ブランド
Key
得点
97
参照数
89

一言コメント

【心温まるひと夏の奇跡と思い出をコンセプトにしたKeyらしさ全開の作品】

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【総合評価】97点
【シナリオ】40/40点【原画】20/20点【音楽】20/20点【キャラ】9/10点【声優】8/10点

★合計クリア時間
約50時間

〇プロローグまで
約3時間

〇共通ルート
13時間(個別ルートに入るまでの選択ルートも含む)

〇個別ルート合計
34時間

全体
★良かった点
共通ルートまでが短めで、個別ルートに入るまでの1日1日のテンポもいいので読んでいて飽きない。
1人1人の個別ルートが一切の妥協なく丁寧に描かれていた。
卓球やレコード、島モンバトルなど多くのお楽しみ要素があり、ただのビジュアルノベルゲームではない。どの要素もほかの会社に開発を委託しており、作り込みが半端ないので一つの要素で一日中遊べるレベル。
ルートをクリアする毎にタイトル画面からヒロインたちが消えていくのが、すごくKey味を感じる。
OPとED、挿入歌グランドエンディング神曲しかない。
全てのBGMが耳に残る名曲ばかり。また、メインヒロインにはルートごとにキャラソンや挿入歌が用意されておりどの曲も素晴らしい。
特に、Luna歌唱の「夏の砂時計」の流れるタイミングがいつも絶妙で最強。イントロを聞くだけで自然と涙が溢れてくる。
8人の個別ルートを読み切っても謎が残るシナリオで、ALKAルートとPocketルートまで全て読み切る必要がある。
ただの恋愛ゲームにとどまらず、人生の選択や成長、そして大切な人との関係を深く考えさせてくれる心に残る作品だった。何度も繰り返しプレイしたくなるような、深い余韻を残す夏休みの思い出になった。

★悪かった点
全体を通して悪い点一切なし。

【攻略ルート順】
鴎→紬→静久→美希→蒼→識→しろは→ALKA→Pocket→うみ

◎鴎ルート
約3.5時間
評価:A
【小さな冒険から始まり大きな絆を繋ぐ夏】
★総括
徐々に鴎と主人公の秘密が明らかになっていくのが面白かった。結末や展開が全く予想と反していたのでさすがって感じのシナリオだったが、明確な伏線が張られていないのでやや急展開に感じる部分もあった。特にツッコミどころのある結末がやや。大半の人が数日前に送った謎の手紙に対して信じ込んで、そのまま島まで来る流れはだいぶ話に無理を感じてしまった。


◎紬ルート
約4時間
評価:S
【限られた時間を眩しい思い出に変える夏】

★総括
敬語キャラしか勝たん。「そですね」と「むぎゅ」が可愛い。一週間で一年間のイベントを全てやりきるという話でテンポも良く話がわかりやすかった。特によかったのは、やはり最後のお別れのシーン。見るからにこの状態で主人公だけにしますよ感のスチルの構図で結末はわかりきっていたが、それでも消えたあとはやはり心にくるものがあった。エピローグ後のシーンまで素晴らしいという一言。悪かった点としては、単に紬推しだからかもしれないが最後の1週間をもう少し深堀って欲しかった感。ポンポン進んでいってしまったので、物足りなさを感じた。

◎静久ルート
約3.5時間
評価:S+
【最上の優しさで包み込むような夏】

★総括
紬がいい子過ぎて辛かった。紬ルートを終えてからこそ味わえる焦燥感。2つでセットと思った方がいい。3人の関係性がエモすぎるので、紬とのお別れのシーンは号泣せずにはいられなかった。
何でもかんでもおっぱいという口癖に、地味に深い意味があるのが良かった。
かなり冒頭の時点で展開が読めてしまったが、伏線の散りばめ方や違和感を出すのは上手い。
お悩み相談で母娘の関係を解消させようとする流れ、泣いた。
結局神様の不思議な力で嫌な記憶を消されていた訳ではなく、自分で嫌な記憶を閉ざしていたという結末が一捻りを感じられてよかった。親友と恋人との別れという人生で1番辛い思い出を体験して未来を乗り越えていくという分かりやすいシナリオなのもGood。
1番メッセージ性があるシナリオで心に残るセリフが多く、ギャルゲでここまで印象に残るセリフがあるのは珍しい。悪かった点としては、過去の掘り下げに具体性がないところ。母娘の過去のDVのシーンや、静久にあったもっとも悲惨な過去を描き足すなど、もっと具体性を持たせて欲しかった。

◎美希ルート
約3時間
評価:B
【仲間と家族の繋がりを見つける夏】

★総括
ここにきて初めての純度100%のハッピーエンドで誰も消えないし誰も不幸にならない。
面白くなってくるまでは長いルートだったが、メイン設定となる捨て子という話が出た時は衝撃だった。悪かった点としては、前半があまりにもギャグ寄りで退屈。エピローグの展開は正直望んでいたものではあったが、記者の2人(本当の両親)が出てくる展開はあまりにもご都合主義ではないかと思ってしまった。十数年前に捨てた子なのに、私用で放送塔を使って思いを伝えられただけであんな簡単に出てくることがあるのか。それまでの描写はなんの葛藤だったのか。エピローグに入った直後に羽依里が何か前置きをしていたがあの電話は両親に対してだったのか?だとしたらもう少し深掘って欲しかった感はどうしても否めなかった。

◎蒼ルート
約4時間
評価:B+
【大切な人との思い出を育み導く夏】

★総括
蒼がいつも眠そうにしている原因がただ夜蝶を探しているからではなく、しっかり設定としてあったのはよかった。エピローグで1年後にまた来て探すんだろうなぁと結末が目に見えていており、それ通りに終わってしまったためなんか感動できなかった。


◎識ルート
約4時間
評価:C
【150年前の村人を救うために鬼になる少女の時を超えた物語】

★総括(※批判)
識との最後の鬼ごっこのシーンは見せ方が上手いと思った。だからあれだけ鬼ごっこのシーンが多かったのかと納得。「君の手で、僕を鬼にしておくれ。」これは名言と言わざるを得ない。
ラストシーン、神山識の名前だけが刻まれた慰霊碑を見た時は結末としてわかっていても鳥肌が立った。悪かった点としては、シンプルにうるさい。ギャルゲー史上初めてヒロインのボイスボリューム下げた。最初から最後まで展開が読めてしまったので、驚きが一切なかった。日常パートが他のルートと比べて長くて退屈。毎回鬼ごっこしていて飽きる。申し訳ないがファイルーズあいさんの感情演技が心に響かなかった。特にうわぁぁぁって叫ぶシーンが多いが、ただ叫んでるだけというか心の底からの叫びに聞こえないので感動できなかった。

◎しろはルート
4時間
評価:S
【諦めないことで広がる可能性を知った夏】

★総括
少しづつ心を開いていくこのギャルゲー感がたまらない。エピローグ前のラストシーン、船が壊れて戻ってくる展開は1ミリも予想してなかったので、泣きそうからの爆笑するという記憶に残る最高の終わり方だった笑
悪かった点としては、ついに羽依里の過去が明かされるシーンがあるが、スチルが用意されておらず真っ白な空間でほとんど音声なしで語られたのは残念だった。1番気になっていたシーンだったのでスチルやボイスありなど気合を入れて欲しい場面だった。それでも感動できたけど。アニメ化で千葉翔也入りのシーンとしてどう再現されるのか非常に楽しみ。

◎ALKAルート
5時間30分
評価:SS

★総括
日常パートがシンプルに面白い。特に折り紙を折る下りは、自分の子供の頃を思い出すものばかりでだいぶ刺さった。羽依里に張り合ってくるしろはが可愛くてネーミングセンスも最高。前半では結末と展開が全く読めないのもよかった。Keyらしさ前回の徐々に記憶と存在が薄れていく悲しいお話で切ない。


◎Pocketルート
2時間30分
評価:SSS

★総括
良すぎて感想をメモる余裕がないほどのめり込んでしまった。記憶がない男の子の正体が未来のうみちゃんということはすぐにわかるが、しろはとの別れのシーンはさすがに号泣。グランドエンディングで曲が変わるのも素晴らしいし、全てがよかった(語彙力喪失&レビュー疲れ)