万華鏡シリーズの完結編。この値段で遊べていい作品なのか。
売れない小説家をしております。
八宝備仁先生のファンであり、かつ伝奇ものが好きということもあって美少女万華鏡シリーズを全てプレイしてきました。様々なジャンルの純愛が散りばめられてきたシリーズも、一応の完結を迎えます。
本作の特徴はなんといっても、シリーズ初の「あなたの名前を入力して下さい」でしょう。
美少女ゲームではよくあるシステムですが、本作の主人公は深見夏彦だったはず。ネタバレはしませんが、この入力した名前がどう使われるのかが最高にシビれます。予想もしたのですが微妙に外れました。夢オチとかではありません。
また、人によって好き嫌いはあるかも知れませんが、シリーズ最高にミステリ要素を含んでいます。前作「罪と罰の少女」で、すでに軽い叙述トリックの一種が採用されておりミステリ色が強いなとは感じていました。
今作は、本格ミステリではないもののかなりミステリを意識して制作されています。これは私の妄想ではなく、皇という公式の「名探偵」の登場からも伺えます。
作中、皇が自身の体験した事件について語るシーンがあります。この事件の概要はストーリーに関係ありませんが、実は近年の日本の本格ミステリ作品のあらすじを混ぜたものになっています。このことからも、それなりにミステリ志向で最終作が創られたと感じました。
本作は狭義の「セカイ系」ではないかもしれませんが類似した要素はあり、幸せのために支払われる犠牲がよく練られています。蓮華ENDに関しては幸せの具現ですが、それでも喪ったものは大きい。シリーズを通じた大きなテーマは愛ですが、私はそれに伴う犠牲の描き方が素晴らしいと思いました。
美少女ゲーム業界はなかなか厳しいといった話も聞きますが、こんな素晴らしい作品に巡り逢えたことはこの上ない幸運です。