惜しすぎる。言われているほど悪くはないと思うが、名作になり損ねた一作であることは確か。
自分は田舎を舞台として民俗学的な設定をもとにした伝奇ファンタジーが大好きなので、低評価レビューを承知の上でプレイした。
全クリアした感想としては、予想よりも楽しめた。
しかしいくつか愚見を記載すると、
・起承転結の起・承は悪くない
・設定や伏線は秀逸な素材だが、説明および回収不足
・設定に比してボリュームが不足
・共通シナリオがほとんどで、個別ルートのユニークネスが低すぎる
といったところ。
序盤で紹介される舞台設定はかなり力が入っているが、細かすぎたかもしれない(少なくとも活かしきれてはいない)。終盤の尻すぼみ感が凄まじい。
ストーリーの根幹の謎を、プレイヤーが全て把握するのは困難。
故に謎が解かれるカタルシスが薄い(まぁ、何も知らずに運命にとらわれた主人公の気持ちにはなれるが)。
本作は四人のヒロイン(the four zoas)の視点から祭りの謎が解かれるという設定なはずで、それ自体は秀逸な傑作になりうるものだと思う。しかしながら共通シナリオが長すぎ、ヒロイン個別ルートが極めて少ない。大量の伏線には脳内補完が必要であり、また各陣営の関係も複雑な割に説明が省略されることが多々ある。丁寧に各陣営の思惑を描ければ良かった。また、神話的な要素を多分に入れているが明らかに盛り込み過ぎで、整合性も感じられない。単一の民間伝承に絞るべきだったか。
類作は数多いが、設定を上手く料理すればダークな『黄昏のシンセミア』たりえたかと思うと惜しい。