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yu_iさんの蒼色輪廻の長文感想

ユーザー
yu_i
ゲーム
蒼色輪廻
ブランド
美遊
得点
100
参照数
882

一言コメント

クールなボクっ娘ガイドさんと行く輪廻ツアー。何回死んだかわかりません。『YU-NO』がもたらしたインパクトには負けるかもしれない。でも、そのモチーフを充分に消化し発展させた、設定とシナリオの力が感じられます。ゲーム性が高いソフト。これぞエロゲー!(エロはやや薄いですが(笑))

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 僕はこういうゲームがプレイしたかった。夢に描いてたゲームそのもの。
 
 ループ&多世界解釈(多元世界)&異世界モノの中でも、『蒼色輪廻』は自分の中で名作の域です。自分はこのジャンル好きなのですが、コンセプト面で完全に自分の欲求・希望とマッチしていました。違う展開を読むごとにドキドキ、主人公や周辺キャラクター達の翻弄され具合にハラハラって感じ。雰囲気はやや暗いです。が、主人公の性格もあいまって鬱になるとかそういう感じではありません。

 ループ&多世界解釈&異世界モノのジャンルのパイオニアとしてもちろん『YU-NO』が挙げられると思う。『YU-NO』がもたらしたインパクトはすごかった。約10年前にあんなゲームが出てたこと自体驚かされる。

 それでも敢えて『蒼色輪廻』の評価すべき点を挙げるとすれば、このジャンルの面白さをスマートにコンパクトにわかりやすく整理し把握していることではないだろうか。ただ、それが劣化YU-NOと言われてしまう所以なのかもしれないけれど……。

 しかしながら、現実世界篇と異世界篇のバランスやゲーム性からしたら、確実に『蒼色輪廻』の方が上だと思う。『YU-NO』においては現実世界篇で分量的に力尽きた感があったし、異世界篇には現実世界篇ほどのゲーム性も存在しなかった。

 それに対して、『蒼色輪廻』はプレイ時間的にもバランス良く現実世界篇と異世界篇が配置されている(異世界に初めて行けるようになったのはプレイ開始後5時間くらい)。そして、異世界篇においても分岐による多元世界という考え方が維持されており、異世界においてもプレイヤーは選択の問題に悩まされることになる。

 更に現実世界と異世界を行き来する「時空跳躍システム」や、シナリオ・ビジュアル上で二世界同士の連関付けがなされているため、重層的に物語世界を楽しむことができる。

(現実世界で猫を飼ってる娘と似た子が、異世界でも虎を飼ってる娘として現れたり、異世界で蟲を使ってHをしかけてくる娘が、現実世界では蟲術でHにさせられたりとか。ここは私の理解ですが。類似を連想させるポイントは他にもあると思います)。

 システム面の配慮は『YU-NO』に劣るかもしれない。メインゲームシステムはお互い甲乙付けがたいんだけど、『蒼色輪廻』はなぜか無意味なマップ移動モードが付いている所が謎。マップ移動モードというのは名ばかりで、結局その時行けるのは一箇所だけ。それならテキストの流れで処理してくれてもいいのに……。

 エロはちょっと少な目でかつ弱いかもしれない。現実世界でも陵辱テイストがあったり、異世界でもふたなり、蟲攻めなどシチュエーションは多彩だけれど、いかんせん尺が短い。これでエロ描写も充実してたらすごかっただろうなあ……。

 攻略の難度はやや高いかも。何も見ずに20時間くらいかかりました。始めのうちは分岐の展開を自力で楽しんで、詰まってきたらどこかのサイトを参考にするというのが精神衛生上良いかもしれません。

  
 多少展開の荒さやつじつまの合わなさとか感じるかもしれないけれど、それを補うような、ゲーム性の高さとシナリオの良さがいい感じ。隠れた名作&魂の作品でした。