この出来ならもっと早くプレイするべきだった。短編なので大した話ではないのだが、キャラクターの描き方にしても、物語の展開にしても、蟲愛でる少女本編の雰囲気・世界観を壊すことなく、ファンの期待に応える作品になっていた。蟲愛が好きなら、本作をプレイしない手はないでしょうね。
自分は発売前からこの作品が出ることを知っていて、発売前コメントも書いていたのに、結局買いませんでした。
その理由としては、夢美が出てこない(登場するにしても端役らしい)というのが一番大きかったのだけれども、実際プレイしてみるとそんなのは特に気になりませんでしたね。
夢美が声と絵付きで出てくるのはAnzUの1シーンだけなのに、壮絶な経験を通して精神的に強くなった夢美らしさが出ていたし、ゴア・スクリーミング・ショウの希衣佳役を演じるアゲハは合わなさ過ぎて笑ってしまいました。
バトルシーンには夢美は出てきませんが、和泉万夜の言う通り、夢美と蟲クンが組み合わさると無敵であり、チートと化してしまいますからね。その反面、レンと蟲クンのコンビという蟲愛本編では絶対にあり得ない組み合わせで敵を倒すというのは興味深かったです。
未だ獣魔蟲を完全には認めていなかったレンに対し、人間の感情に敏感な蟲クンは積極的な援護をしなかったが、レンが心から獣魔蟲という存在を受け入れることで真の力を開放し、狂を倒すというのは、この物語のクライマックスとしても、レンの成長物語としても相応しかったと思います。
その他、レンと美弥香、綾佳のおままごとみたいなやり取り(この世界の綾佳は美弥香に矯正されたために変な言葉遣いにならなかった訳か)は、それぞれの人物像がよく表れていて蟲愛らしいなと思ったし、「レンは━━激しかった━━━━。」のくだりはチベットの悲劇そのままでした。
また、名前しか出てきませんが、Dr.Westこと西正人がユーリアの改良をしていたり、バットエンドで綾佳のサポートをしていたり、というのは、マッドサイエンティストで超危険人物でありつつ、完全な狂人、極悪人という訳でもないという西先生らしいなと思いました。
全体として、蟲愛本編と比べてこれは違うだろ、とか方向性が変わったな、とか思うことがなく、至極自然に作られた作品だと感じました。別作品として作られたことで、蟲愛本編のような演出や絵の枚数の力不足感はなく、クオリティも良かったです。挿入歌でデンカレの主題歌が流れるのもMinDeaD BlooDを思い出して燃えました。蟲愛をプレイしていない人に勧められる作品ではありませんが、蟲愛本編を気に入り、かつ現役エロゲーマーなら、これをプレイしない手はないでしょう。もうこの世界の物語が描かれることはないのかもしれませんが、蟲愛最大の心残りであった神武編を作ってくれたことで、自分としてはこれで満足です。本作をプレイしたことで、また蟲愛本編をプレイしたい気持ちにもなりました。