やっぱりこの作品のキャラと雰囲気は好きだなあ、と再確認させられた良いFDでした。複数視点から様々なエピソードを見ることができ、本編で残された問題、フラグは大体回収され、ボリュームも値段相応だったと思います。周辺展開等全然追ってない自分としては分からない部分もいろいろとありましたが、それはそれで何かあったんだなあ程度の認識で問題なかったように思えます。あとどうでもいいけど『天使の弾丸』の映画は本気で見てみたい気が…
一週目はネオン視点ばかり選択していたので、ひたすら性欲を持てあますネオンの心理描写を見せられることになり、もうそういうのは本編で十分味わったから食傷気味だなあという感じもありました。けれど周回を重ねるごとにサブキャラも含めた複数視点で様々なエピソードを見ることができたのは、非常に面白かったです。本編で未解決のまま残った問題の解決、フラグの回収、薄かったキャラの掘り下げの充実、ED後の日常風景、新たな敵との戦闘、といったFDとして主に求められるものは基本的にすべてそろっていたと思います。追加Hシーン?ないことはないがそれはこのシリーズに期待するものではない(笑)。6日間のうちに重なる出来事としては多少ご都合主義的な感もありますが、FDなので別に問題視するものではないでしょう。
ただ個人的には、日常エピソードにしてもED後のものだけでなく、本編の隙間を埋めるようなものも欲しかった気がします。また、一つのエピソードを、関わってくる全部のキャラの視点から見ることができるというのは良いけれど、各キャラによって変わる部分がごく一部に過ぎず、面白みに欠ける部分もありました。ほとんど変わらないなら全員分の視点を用意した意義が感じられません。ベルタの某シーンはヴァルターを選択すると結構変わるのかと期待してたんですけどね…
音楽に関して、BGM一曲のみの追加だったのはちょっと残念。その追加された曲というのもOPムービーにも使われた完全なバトルBGMですしね。FDとして本編の後学園都市は変わったんだということを印象づける意味でも、2,3曲新たな日常BGMがあれば良かったと思います。EDのボーカル曲も本編と同じquaerereの転用。まあquaerere自体良い曲だし、EDは良い演出でしたが、新曲も聞きたかったです。
演出に関して、『シャイニングナイト』篇に入ると全編オートプレイ推奨という注意書きが出てきますが、確かに戦闘描写に関しては本編以上にいろいろ演出していて迫力がありました。ただその注意書きを出すタイミングが早すぎます。実際注意書きの後すぐに戦闘描写に入る訳ではないし、それまでは特別な演出もないので、なぜ全編オートプレイ推奨とまでしたのかは疑問。
いずれにせよ、良いFDでした。ガクトゥーンが好きな人、あるいはこのシリーズをずっと追って行こうと思っている人は購入必須でしょう。値段の違いもありますが、セレナリアFDよりは明らかに気合が入った作品です。