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ysm0624さんのRe:birth colony -Lost azurite-の長文感想

ユーザー
ysm0624
ゲーム
Re:birth colony -Lost azurite-
ブランド
あっぷりけ
得点
84
参照数
296

一言コメント

前作よりも大分洗練された印象。とはいっても粗い部分がない訳ではないのだが、世界観は良く練られているし、シナリオにもなかなか引き込まれた。そのうえに、前作の特徴であった、主人公をめぐるヒロインたちのガールズトーク的な面白さも決して失われてはいないのも良かった。終盤の展開は二転三転と動かし過ぎず、もっと綺麗にまとめた方が良かったのでは?等と疑問に思う部分もあったが、この程度は十分許容範囲内。まだまだ話を作れる余地がいくらでもありそうなので、できるものならシリーズ3作目をプレイしたいと思うものだが、果たしてどうだろう…。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

この作品、世界観説明に分量を取られる序盤こそやや取っ付きにくさを感じ、前作よりも大分難解な作品なのかな?と思うこともあった。けれども、ヒロインが全員集合するあたりからは、アーコロジーという世界観や主人公とヒロインたちの関係性に前作に通じるものを感じ、やっぱり同じライター、シリーズなんだなあと楽しく読み進めていくことができた。

前作のヒロインの特徴を今作のヒロインに当てはめて考えてみると…
セルリアは転校生として突然やってきて主人公を振り回すという点ではレティを思わせるし、アーコロジーの有力者の血縁という点では輝に近い。
瑠璃の主人公に対する執着の強さやいろいろ小言を言うところは、莉音や春子を思わせる。
ノイエはキャラとして近いものはいないけど、ステルングローブからの留学生、外交官という点では、そのままレティやノエルの立ち位置である。

ただ、アズライトというシナリオの根幹に関わるメインヒロインには前作を思わせる要素が一切なく、彼女の謎を追うストーリー展開に、前作とは違った面白さを感じることができた。

個別ルートは青い少女による昏睡病からアクアリウスを救うという展開から逃れられない以上、全ルートに似たような流れになるのは避けられないとこではあるが、それでも前作よりは各ルート独自の魅力があったと思う。個人的にはセルリアへの告白シーンはなかなかの好み。ただ、そう簡単には終わらない、二転三転する物語を描き、悲しさを内包する結末を予感させておきながら、最後はご都合主義的なハッピーエンドを持ってきたことには疑問が残った。全ルートでこうしてしまうなら、あまり物語を動かし過ぎず、綺麗にまとめた方がまだ印象が良かったのではないかと思ったほど。

最終ルートであるアズライトルートにも同じ問題はあった。けれども、メインヒロインだけに分量も多く、他ルートで明かされた事実、残された伏線に、アズライトの正体、プログラム・アズライトの全容など多くの要素が絡み合い、全ヒロインに見せ場があるという最終ルートにふさわしい内容だった。細かい中身には触れないが、このアズライトルートをプレイすると、アーコロジーが開かれていく中、世界はどのように変貌していくのか、他のアーコロジーにはどんな人が住んでいて、そこにはどのような問題が起こっているのか、と様々な興味が湧いてきた。千尋や蒼司の今後の活躍も気になるところである。今作では声優の都合か、前作ヒロインはキャロル(ノエル)しか出てこなかったが、二股をかけられているレティ(しかも妊娠中!)や莉音がどうしているのか、というのも見てみたいような見たくないような…。

そんな感じで、続編をプレイしたいと強く思わせられる作品だった。自分が前作を先にプレイしていたというのもあるのだろうが、今作をプレイすることで、世界観に対する理解と興味は確実に深まった。このままで終わらせるのはもったいない!ということで何とか続編をお願いします。何かライターが今年問題を起こしたらしいけど、そんなものは知らない(笑)。