『りんくす! ~キミと精霊と使い魔と~』の非18禁リメイク。原作がマイナーなようだし、非18禁かつDL販売のみというせいか、このサイトに登録すらされていなかったけど、気軽に良質なファンタジー世界に触れることのできる、そこそこ良い作品だと思う。(少し追記)
序盤をプレイした段階では、ゆるーいファンタジー世界に、電波っぽい妹、エセ中国人風のサブヒロイン、頭の弱すぎる声付きの悪役、とキャラにおいても、原作はエロゲのはずなのに対象年齢が低そうな印象を受けてしまい、なかなかプレイ意欲が湧かなかった。正直クリアした今になってもこの印象はほとんど変わってないのだけれど、結果として結構楽しめた作品ではある。
ストーリーは、使い魔を使役し、精霊の力を引き出すエレメンタルリンカーの候補生に選ばれた5人の中から3人が攻略ヒロインとなり、各ルートによってそれぞれのヒロインが最終的にエレメンタルリンカーに選ばれることになる。エレメンタルリンカーは魔法学院の中でも特に能力の高い女子学生しか選ばれることのできない、人々から尊敬される存在。しかし、ある事情から本来能力が低く、関わりを持てるはずもない主人公が候補生たちと深い付き合いをすることとなり、そこから物語が大きく動いていくことになる。各ヒロインは、魔法学院に来るにあたっての隠し持った事情、あるいは本人も気づいていないような問題を抱えており、ルートごとに大分異なった展開をする。ご都合主義的な部分もあるが、起伏にも富んでいる方だと思うので、一度入り込めたら途中で飽きることはあまりないんじゃないかと思う。
また、この作品は公式サイトでも書かれているように、世界観の作り込みに力が入っていることを強く感じる。王道的なものではあるのだが、直接ストーリー展開に関係しない部分でも様々な設定があることがあちこちで見て取れた。悪く言うと、世界観を生かしきれてないということにもなるのだが、ミドルプライスの原作においてここまで徹底しなくてもそれなりの作品はできたはずであり、自分は好意的に見たい。
各ルートは前述の通り飽きずに楽しめたのだが、特別に感動した、深い話だ、と思ったことはなかった。というのは、テーマ性が愛と勇気、仲間との絆、信じる心、といったありきたりなものに過ぎないからだと思う。ここにも対象年齢が低く、中高生向けのような感じを受けてしまった。エロゲらしい部分はあるにはあるのだが、最初から非18禁で出すつもりだった作品なのかもしれない。個人的には、世界観にしろストーリー展開にしろコンシューマーRPGのテイルズオブシリーズっぽいなとちょっと思ったりする。良い意味でも悪い意味でも。
そして原作からの追加シナリオ。約40%の増量らしいが、原作未プレイの自分には全部は把握できない。ただ、ヒロインルートを選ぶ以外は一本道だった原作からの追加エンドは各ヒロイン一種類ずつのみ把握できた。まあもしかしたら他にもあるのかもしれないけど。それぞれ、一発BADのようなものでは無く、別の結末を提示という形にはなっている。ただ、正直言って、真ルートを途中で見切りをつけて終わらせ、適当にまとめた、というレベルのものでしかなかった。この追加エンドはあまり評価できない。
システムその他には不満がいろいろある。一つは個人的なことなのだが、本作で800×600から1024×768に拡大されたウィンドウサイズ。解像度が上がったのは良いことなのだが、自分の使っている1366×768のノートPCだと上下がギリギリになるため、結果的にフルスクリーンでプレイすることを強いられる。正直これは800×600のままで良かった。
既読スキップ機能、これは全然駄目である。選択肢大量追加によってそれなりに既読スキップを使う機会は多いのだが、既読判定が甘く、同じ文章を何度も読まされる。特に他のエンドを見る場合、途中で既読スキップが使えなくなることからまだ見てないエンドに向かっていることは分かるのだが、どこが新しい部分なのか丁寧に見ていかなければならないのは面倒。さらに、既読スキップができる部分でも勝手に止まってしまうことも多く、何回もクリックさせられた。
原作から変わらないことのようだけど、声のあるキャラクターの少なさもやはり気になる。予算上の理由らしいが、一人二役、三役とやらせるとかパートボイスでもいいからもう少しは欲しかった。立ち絵のあるキャラはかなり多いのに…
最後は、クリアしてもCG、音楽鑑賞モードが一切無かったこと。これはどうしたんだろうか。原作ではあったらしいのに。非18禁だからいらないと思ったのか、値段が安い分カットしたのか分からないが、結構きれいなCGの作品だけに残念。
いろいろ書いてきたが、マイナーながらそこそこ良い作品だと思う。検索してもレビューや感想が全然出てこないけど、もう少しは知られてもいいんじゃないか。原作をプレイした人、一人ぐらいはこれもプレイしようとは思わないものかな。それ以前にこの長文感想自体ほとんど読まれない自己満足に終わりそうだけれども。
【追記】予想通り参照回数は最低レベルながらまさかの投票をされてしまったので、もう一度シナリオ分岐についてやり直したら、プラティーナルートはもう一つエンドを発見できた。まあこれもまた大したものではない。ただこれらの追加エンドは好感度が低いことによる派生エンドだと思われるので、これらによって普通の作品のようになったと考えればわざわざ否定するものでもないでしょう。ルチルとニナに関しては最後の選択肢でエンドが変わるように調節してみたけど他には出なかったので一種類だけ…多分。