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ysm0624さんの無限煉姦 ~恥辱にまみれし不死姫の輪舞~の長文感想

ユーザー
ysm0624
ゲーム
無限煉姦 ~恥辱にまみれし不死姫の輪舞~
ブランド
Liquid
得点
86
参照数
708

一言コメント

最初からシナリオに期待、正確にはEXTRAVAGANZA的な成長物語と、エログロを耐え続けた先の感動を求めてプレイしたが、期待通りの作品だった。終わってみれば割とオーソドックスな物語で、特に緻密な設定がある訳ではないのだが、最後までダレることなく、一気に読み進めることができた。クリア後に読めるEpic-Fineや公式サイトのショートストーリーも合わせ、読後感の良さはなかなかのもの。ただシナリオを進めたり引き延ばしたりするための駒でしかないように思われるキャラがいたり、物語が核心に迫るにつれ抜きゲー色が弱まっていき、最終章ではエロゲですらなくなるという点からして、エロとシナリオの融合は微妙な部分もある。この題材なら別ブランドからシナリオゲーとしてもっとシナリオを練り上げても良かったかもしれない。

長文感想

絶対的な階層制度の敷かれた王の世界で、最下層とされる奴隷としてこき使われ、凌辱も当たり前のようにされていた主人公が、ある出来事から不老不死となる。不老不死=死なないなら何をやってもいい、となって凌辱は激しさを増し、耐えかねた主人公は不老不死から逃れる方法と聞いた王の殺害を計画するが、気弱な主人公は失敗する。追われる身となった主人公は地球上の様々な時代を渡り歩き、その中から多くの人々との出会い、別れを繰り返し、肉体的、精神的に大きく成長していく。そして最後には自分の運命と結びついた残酷な真実と向き合うことを余儀なくされ、そこに下した決断とは…。

まずタイトル画面のBGM『無限煉姦』、これが良くできている。ただ二つの短い主題を交互に流す、それだけの曲ではあるが、王の世界での重苦しい奴隷生活から、戦いに身を置き、自ら道を切り開いていくようになる主人公の壮大な成長物語を予感させる。完全に評価を見たうえで期待して買った自分が言って説得力があるものではないが、はじめて起動してこの曲を聞いた時、この作品は良作間違いなしと確信してしまった。

シナリオに関しては、主人公が成長する姿が分かりやすく描かれているのが良い。第一章の奴隷時代は乳房丸出しのいかにも弱そうな姿だったのが、第三章までくると馬を乗りこなし、王の世界からの刺客が来ても簡単に倒すというように、かなり強い存在になる。声も弱々しい感じだったのが大分凛々しくなる。

また、関わってくるキャラたちは公式サイトの印象とは異なる活躍をするものが多い。特定の章限定のキャラもいれば多くの章に関わってくるキャラもいる。そういう意味で、各章ごとに予想に反する展開があり、なかなか面白かった。ただ、期待していた役割を果たさなかったという点で残念に思ったものもなくはない。

二章以降は、章ごとにクリアすると別キャラ視点の物語が読めるようになる。そこには自分がプレイしていて、このキャラはどのような思いでこの話に関わってきたのだろうか、と一番関心を持ったキャラがそれぞれ描かれていたので、物語に深みを持たせることとなり、非常に良かった。特に最後のEpic-Fineは、分かりきった話ではあるけれど、クリア後の余韻に浸ることのできる良いエピソードだと思う。

苦言を呈するとすれば、まず一言感想に書いたように、シナリオを進めたり引き延ばしたりするための駒でしかないようなキャラがいること。まあHシーン要員ということもあるのだろうが、終わってみればこのキャラの出演は何の意味があったのだろうとか、ただ日常をぶち壊す存在でしかなかったなあ、というように思えてしまうキャラがいたのは残念。特に第四章は終盤に重大な出来事が相次ぐのだが、その前に語られる物語はあまり面白くなく、その後への関わりも薄いため、ややテンションが下がった。このあたり、もう少しキャラを掘り下げたり、意味のあるイベントとして作りこんだりして欲しかったと思う。

このせいもあって、主人公は多くのキャラとの関わりを経て成長していくといっても、実際主人公に大きな影響を与えているのはごく一部に限られている。一応演出として、選択肢の選び方でサブキャラと深い絆を結べていないと終盤でBADENDになるというものあるけれど、もっと各章ごとの関連度を高めることで、数百年の年月をかけて主人公の受けた影響の幅広さを実感させるようにしても良かったと思う。各章でその時代特有の雰囲気を感じられる要素も少なく、特に第三章以降はほとんど主人公とその周りの一部だけの話になっていて、全体的にシナリオとしてみればボリューム不足である。

このようにシナリオが割を食う理由の一つは、やはり抜きゲーにしなければならない制約なのだろう。この作品の場合、第一章こそ王の世界でひたすら凌辱される奴隷が描かれるという点で非常に抜きゲーらしいが、第二章以降、Hシーンの大半がBADENDに押し込められ、先に進むよりもBADENDの方が長かったりする。そして、最後の第五章は一本道でHシーンも存在せず、エロゲですらなくなってしまう。

第五章にBADENDがない理由についてシナリオライターの和泉万夜は、物語を最後まで途切れなく読んでもらいたいという気持ちからだとしているが、確かに第四章までの主人公の成長具合を見たうえで、そこに壮絶な凌辱があると興ざめな気はするし、和姦シーンすらないことにもそれなりの理由付けはある(EXTRAVAGANZAのチベット(笑)とは違う)ので、この判断は正しかったと思う。ただ逆に言うと、この作品のシナリオの題材的に、しっかり描こうと思えばエロとの融合は難しいということの表れでもあるので、EXTRAVAGANZAなんかと比べると、抜きゲーにする必要性に欠けるところがある。この題材なら凌辱型シナリオゲーとして、上記の不満を解消できるような別ブランドから出した方が良かったんじゃないかと思う。

不満ばかり書いたが、総じてみれば、凌辱色の強いダークな雰囲気でありながら、長い年月をかける壮大な物語と、それを抜けた先にある感動を味わえるという、稀有な良作だと思う。自分は和泉万夜の作品はEXTRAVAGANZAぐらいしか知らないし、作品のタイプも近い、ということでどうしても比べてしまうが、EXTRAVAGANZA程の作品としての広がりはなくとも、まとまり方は非常に良く、Epic-Fineをプレイする頃には凌辱ゲーであったことを忘れるぐらいだった。EXTRAVAGANZAは蛹蟲の章から成蟲の章の間の話がなく、成蟲の章が非常に短いという、終盤のシナリオ面での不満があったが、この作品ではそのようなことはなく、ラストはとても丁寧に描かれていた。エロとの融合は微妙であっても、このシナリオの良さは大いに評価されるべきだと思う。自分のように普段抜きゲーをしない人間にはこのタイプの作品は刺激的であり、まったくダレずに楽しむことができた。

また、公式サイトから行ける特設サイトでは、和泉万夜が書いたショートストーリーを読むことができる。本編では与えられた役割もあって救うことのできなかった某キャラが、これしかない、という形で救済される道が示されている。本編で不満を持った人はこれを読んでみてはいかがだろうか。