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ysm0624さんのるいは智を呼ぶ -フルボイスエディション-の長文感想

ユーザー
ysm0624
ゲーム
るいは智を呼ぶ -フルボイスエディション-
ブランド
暁WORKS
得点
88
参照数
398

一言コメント

個性的なキャラが揃っていてなかなか楽しかった。るい、花鶏、こより、とクリアした段階では所詮はキャラゲーなのかと思いかけたが、最後までプレイする価値のある作品だった。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

序盤の文章のくどさは特に問題だとは思わないどころか割と好きな方だったし、共通ルートでもそれなりのドラマがあって面白かった。ただ個別ルートでは結局呪いについては分かることは大してないし、終わり方もこんなので終わってもいいのか、まだいろいろ問題があるんじゃないのか、と最後までプレイしなくても感じてしまうような話が続いたのにはテンションを下げられた。るいの父親の話やこよりの姉の話、こよりとの幼馴染設定も、よくあるギャルゲー的な設定以上のものはなかったと思う。まあるいの父親は智の父親と対比するという意図もあったのかもしれないが、ストレート過ぎだった。呪いに本格的に向き合わないルートならそれ以外に魅力がもっと欲しかったところ。あとOPの集合写真からして三宅にはすっかり騙された。これだけはまったくの予想外で良かった。

また、選択肢を選んだことによる共通ルートの変化がほとんどないのも気になった。多くの他作品のように、共通ルートの中、選択肢の選び方によってヒロインとの個別イベントを経つつ、その流れで個別ルートに進むというパターンだと自然に受け止めやすいが、この作品だとなぜこの個別ルートになるのかという必然性がほとんど感じられない。選択肢の少なさは別にどうでもいいけど、選択肢が実質進むルートを選ぶだけのものになってしまっているのはどうにかしてもらいたかった。

シナリオの話に戻すと、伊代ルート以降は非常に良かったと思う。解けていく謎、新たに出てくる謎に夢中になってプレイしてしまった。これまでのルートを経験してきたプレイヤーとしては分かりきった展開を見せられる部分が結構あったのが少し気になったけど、まあ仕方ないかな。いっそのこと全員とのフラグを立てられるわけだから、車輪みたいに基本一本道でも良かったんじゃないかと思わなくもないが、そうなると特定ヒロインと結ばれる必然性が薄くなりそうだからこれでもいいかとも思う。

いろいろ不満ばかりを書いてきたが、総合的にはかなり気に入った作品だった。主人公も女にしか見えない容姿でありながら男としての自意識が決して弱くないところが良かったし、声も少年ボイスよりも女寄りな非現実的なところが逆に良かった。同盟メンバーとの日常の掛け合いもかなり面白い部類に入ると思う。特別感動する、泣ける、心理描写が巧み、テーマが深い、とかいうわけではないけど、全体としてとても良く、長くこの世界観に浸っていたいと思えた作品だった。