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ypwa39さんのここから夏のイノセンス!の長文感想

ユーザー
ypwa39
ゲーム
ここから夏のイノセンス!
ブランド
Clochette
得点
91
参照数
2109

一言コメント

悶え転げるほど良かったが故に

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

「純愛イチャラブゲーは、主人公がヒロインを手に入れる様を楽しむもの」

持論だが、
それ故に、ヒロイン達が抱く「誰かと子供を作りたい」という想いは、決して安易に主人公以外へ与えていいものでは無いと思っている。
例えそれが恋愛感情を含まないものであったとしてもだ。
何故なら、
子を成し、家庭を築くという事「それ自体」が、我々ユーザーの視点から見て特別な事であるからだ。


クロシェットとは「かみぱに」からの付き合いだが、巨乳ぶりが度を越し始めて前作はついに購入しなかった。
ちょっと「無理してる」感があったというか、何ていうか胸じゃなくてボール?
人体のバランスもそうだが、何より先ずその服どうなってんの? というか……。
俺は貧巨どちらもイケル派のつもりだったが、ガチの巨乳好きはああいうのでも違和感覚えないものなのだろうか?

ま、何にせよ、巨乳インフレから脱したらしいとの事で興味を引いたのが最初の購入動機。
先ずは「大正解だった」と言っておく。
ヒロインからの「好きなの台詞」に余念のない、爆ぜろ計数極高なイチャラブゲーとなっている。

ただ、このゲームには自分にとって明確な「悪い要素」が存在している。
悪い、というより正確には、「こうであってほしかった」という願望と言った方が正しいか。
一つは寿ルートにおける『交際の意識』。
もう一つは、出だしに少し書いた「子供を作りたいという想い」の扱いを主とする『特別感の減少について』。
共に後で、《悪い点》に詳しく書く。
そこに書いた事は、純愛美少女ゲームにおいて重要な要素だと思っているし、
その上で、そこさえ直せば「ここ夏」はイチャラブゲーとして満点を付けてもいい作品だったとも思っている。
だからこそ、少しキツイ書き方になっている点はご容赦願いたい。
毎度の事ながら、極、個人的な観点からの話であるため、反感を覚える方もいらっしゃるかとは思う。
その辺りはご理解頂いた上で読んで頂ければ幸いだ。

《キャラ別感想》→《悪い点》→《ゲーム全体の話》と続いて、最後はいつもの如く《処占的に気になるところ》をまとめておく。
同好の方々の一助になれれば。

そんじゃ先ずは


 《キャラ別感想》

 ==アリカ==
このルート、というより、アリカというキャラ自体が、前記した「特別感の減少」という「悪い点」によってマイナスを受けている。言ったとおり、それは後で詳しく書く。
そこを除けば、100点をあげてもいいくらいのルート。
性知識ゼロの彼女が少しずつそれを学び、しかも平行連動して主人公への好意を「無自覚に」募らせていくという、およそ無知シチュにおいてこれ以上は無いってくらいのニヤニヤ展開がお手本の如く綴られていく。
寿先生の(仕方なく)性教育も(二重に)超ニヤニヤポイント。
面白かったし嬉しかったしとっても幸せになれるお話だった。
そして最終的にはエロエロ。真っ直ぐピュアなままとんでもなくエロエロ。
彼女は性行為に対する嫌悪感を持たず、子供を産むことは素晴らしいことだと知り、そして「貴方(主人公)とだからそれをしたい」のステージまで登りつめてくれる。
そしてその後は、「意訳:貴方に犯されたい」な「好き好き淫語」のオンパレード。
特に凄いと思うのは、そうやって性欲を覚えた後でも彼女の「キャラクター性」はまったく歪んでいないということ。
真っ直ぐで綺麗な「蛍塚アリカ」そのままで、貧欲に「孕まされたい」と迫ってくるのだ。
ハッキリ言って神懸り的なキャラ付けだと思う。
エロ可愛いの極地かとすら思う。
心底「たまらん」ヒロインだった。
ああそれ故にほんと、「特別感の減少」さえ無ければ100点だったのになぁ……。

 ==ユノ==
初見では、つかみどころの無い不思議系ヒロインかと思われるかもしれないが、関係を進めてみるとむしろ逆。
一緒にいると楽しくて、共感できる部分が沢山あって、付き合っていて心地よいタイプのヒロインだった。
「むふ~」がとても可愛い。
唯我独尊で超然としたキャラかと思いきや、姉との事で悩んでいたり、気を使っていたり、必死になったり、そして弱い部分を見せた時はちゃんと主人公を頼ってくれたりもする。やっぱり可愛い。
Hシーンでは頑張ってリードに回ろうとするも、結局トロトロにされてラブラブHしちゃうところなんかもすんげぇ可愛い。
うん、可愛い。減点方式だと100点であるところも素晴らしい。つまり悪いところが全く無い。
ただし、加点方式だと「ラブラブ淫語」の濃さはアリカ&いろはにちょっと劣るかな?

 ==いろは==
彼女に纏わる重要なイベントからも、「特別感の減少」が認められる。
これもアリカの分と同様に《悪い点》で詳しく。
そして、それを差し引いても余裕で良作ゾーンを突破する判定。
あ~も~何だろ。画面に出てくるだけで安心するわこの娘。
天使すぎる。もうめっちゃ大切にイチャイチャしてほしい。
アリカもユノも良かったけど、俺としてはこの娘が一番かな。
俺と主人公のシンクロ率が高すぎてビビる。「「可愛い~可愛い~いろはちゃん可愛い~」」
天真爛漫な普段と、時折見せるトロけた感じの表情とのギャップもグッと来る。
一番幼いキャラなのに、とんでもない色っぽさを感じさせる表情差分なんだよな。せせなやうさん神としか言い様がない。
恋心を自覚した後の甘えてくるシーンも凄い。上手く言えないけどとにかく凄い。
感受性のヒューズが幸せに焼き切れるかと思った。
萌え豚を確実に悶え殺す決戦兵器かよといった感じ。
タイプとしてはアリカと同系統だと思う。性知識に乏しく、主人公との交流を経てそれを自覚していく流れ。
そしてごめんなさい。
この娘のHシーンが作中で最もエロイと思ってしまいました。
ロリコンでごめんなさい。
性を覚えたばかりであるが故に、純真無垢なままともすれば「淫乱」とすら言えるほどのおねだりを繰り出してくるモンスター。勝てる訳がない。
設定的に幼いキャラ(この作品の登場人物は全員18歳以上です)である事が背徳感というアビリティを発動してその威力を増幅させている。
キャラビジュアルを見てみろ。こんな娘が「孕ませて」「犯して」「いろはで気持ちよくなって」と喘ぎ声で懇願してくるんだぞ?
どこのラスボスだよ。
ちなみに、何やら将来有望な成長速度を叩き出しているらしいが、できれば色々ちっこいままのいろはがいいなぁ……。
ロリコンでごめんなさい(再)
シナリオ的にも、この娘と結ばれるのが一番自然なように思える。
物語のコンセプトに沿うならアリカルートはそのものといった感じではあるが、共通部分の流れ的にはこの娘こそがヒロインだろう。
ただ、処占的には露出NGがあるので残念。
何でよりによってこの娘だけ……。ロリだから多少見せても平気だろうとかライターが思ったのか? 遺憾である。

少し順番前後して ==サブの二人==
はまあ、流石に短すぎるのであんまり書くことは無いが、
とりあえずクラレッタさんは予想を遥かに超える可愛さだった。
あと、鴫原家の一日(主人公込み)とかあったら見てみたいかも。

 ==寿==
このルートだけ。俺の評価はかなり低い。
というより、このルート=「悪い点」の片割れと言った感じだ。
なのでこのまま行かせてもらう↓


 《悪い点》

 ==寿ルートにおける交際意識==
「すぐに別れが来るから、それまでの間だけでも男女交際しよう」
このスタンスが心底気に食わない。
つか、別れる前提で付き合っていいわけ無いだろ。

例えばこれが、
「ヒロインが絶対に救い様の無い不治の病に侵され、手を尽くしたが届かず、せめて残りの時間を恋人として――」
とか、
「明日、世界が終わる事が決まっていて、自分達に成す術などない。だから最後の時間まで二人で――」
とかなら分かる。
イチャラブゲーじゃ無くなっちゃうけどシナリオゲーとしてならアリだ。
でも、今回のはそうじゃないだろ。
帰らなきゃいけないのはただの「決まり」。人為的な制約であり、現にいろはルートでは最初から最後まで抗おうとしていた。
それに対し、寿ルートの二人は
「抗う意思を示しもせずに、別れる事を受け入れた状態で付き合い始める」のだ。
この括弧内の日本語が持つ意味に、気持ち悪さを覚えはしないだろうか?
二人にとって、恋愛とか男女交際とかってのはそんなに軽いものなのか?
何だよ「帰るまでの間だけ付き合おう」って。
合コン常連のチャラい男女かっての。
正確に言うなれば、諦めているというよりは状況を見ない様にしていたらしいが、
どちらにしろおかしな話だ。
そのまま行けば確実な別れがあると理解しているだろうに。

交際する事を心から幸せと思う→その幸せは、そのままではすぐに無くなる事を理解している→なのに、別れない為に何かしようとはしない→そのくせ、その交際を心から幸せと思う→
以下ループ。

この矛盾。
こんなスタンスの交際を、とても仲睦まじくて幸せな恋人同士であるかのように綴っていくシナリオ。
価値観が理解できない文章ほど読んでて気持ちの悪いものはない。
「危機感を感じない」のか
「幸せな恋すらどうでもいいくらい怠慢」なのか
「薄っすい愛情を100年の恋だと盲信している」のか
どれだ?
一応、主人公も途中で思い直しはする。
「そもそも別れを受け入れられるくらいなら付き合っていなかった」と。
だが、地の文では嘘がつけない以上、それまでに「別れるけど」とか「別れるから」という意識で交際を続けてきたことは間違いない。
何より寿の方は、完全に別れる事を受け入れたまま付き合い続け、貞操まで捧げている。
二人がようやく一緒にいようと決心するのは、物語も終盤に差し掛かってから。
いや遅いよ、最低でも初Hに至る前にはそれ始めようよ。
先延ばしにしていたことに対しアリカが
「今まで二人の時間があったからこそ、その思いに至った」とかもっともらしくフォローしてたけどさ、
逆だろ、順番が。
最初にその思いに至ってから交際とかセックスとかしろよと言いたい。

以上のように、ほとんど後半までは最悪の「純愛イチャラブもの」だった。
他のルートでも見られたような「イチャラブ会話」が「別れるつもり」で語られるのだ。
なんて空々しい。
正直、何度か途中で止めようかと思ったくらい。

同じような内容のレビューを「天色アイルノーツ」の時に書いた事がある。
「別れる事前提での男女交際」
改めて自覚させられる結果となったが、こういうシナリオは心底俺の感性に合わないらしい。
「好き」の薄さというか「幸せ」の矛盾というか、とにかく読んでて気持ち悪さを感じる。
まあ、もしかしたら俺以外の誰かには需要あるのかも知れんけど……。
最初から「交際すること」の筋を通してさえいれば、他はほとんど文句無しの内容だっただけに、実にもったいない。


さて続いて、幾度と無く記述している「特別感の減少」について語る。
メインはやはり、アリカがユノに抱く「エンゲージしたい」という想い。その扱い方についてだ。


 ==特別感の減少==
純愛美少女ゲームにおける「結婚」って何だと思う?
もっと細かく言えば、「結婚し、子供を作り、夫婦になる事」だ。
俺はこう思う。
最大級の「恋愛顕現」だと。
例え作品内ではそこまで描かれなかったとしても、
最大望遠で眺めれば、それは「恋愛」という事象に置ける最後の到達地点であるはずだ。
つまり、
純愛美少女ゲームにおける嬉しさの根本である「主人公がヒロインに選ばれる喜び」の行き着く先。それが「結婚」だ。
「結婚し、子供を作り、夫婦になる事」
それは我々純愛スキーの価値観から見て、「恋愛を成し遂げることで手に入るもの」であるはず。
いわば恋愛の濃縮された結実であり、「最後のご褒美」とも言えるモノだ。それ以降は「夫婦愛」である。
アリカというヒロインが持つ問題点は、その「恋愛の最後のご褒美」を、既に他の誰か(ユノ)に明け渡してしまっているという事だ。
アリカは、純愛美少女ゲームにおける究極的な「報酬」である「結婚許可」の価値を分割させてしまっている。
恋愛とは違った過程で――もっと酷い言い方をすれば、別に恋愛なんてわざわざやらなくたって、ユノはとっくにそれを手に入れてしまえているのだ。

それが「特別」の減少。「彼女と結婚できるという特別」の減少だ。

当然、アリカルートで主人公が成し遂げた「結婚」と、アリカ&ユノルート以外の未来でいずれ行われるであろう「蛍塚姉妹のエンゲージ」では、そこで育まれる感情は全く違うものであるだろう。
そもそもの話、アリカルートだけを見るなら一切問題は無いのだ。
子を成す事の特別性に気付き、その相手は愛する人ただ一人でありたいと気付き、自分からユノとのエンゲージを解消するに至る。
しかも、「ユノの方は最初から解消したがっている」という情報はアリカに提示されないままだ。
アリカの中にある結婚への価値観を改めさせる事で、結婚することの「特別性」を回復させつつ、それを成した主人公が彼女にとって特別な存在になれたことをより浮き立たせる。
それに必要な要点が完璧に抑えられたシナリオだったと言えよう。
このシナリオのカタルシスを演出するのに「アリカがユノとエンゲージしたがっている事」は必要な要素だった。故に、そのこと自体に文句は無い。

だが、ここで問題になるのはアリカルート以外についてだ。
アリカルート以外においては、エンゲージという設定によって減少した「彼女と結婚することの特別性」は回復されていない。
アリカは最後まで「ユノに子作りを許したまま」だ。
アリカルートだけを見れば、あれだけ「嬉しい」特別な関係に見える二人。
だが、
アリカというキャラクターを作品全体で眺めた場合、
「主人公だけの特別」なのは「恋愛感情である事」と「セックスという手段を用いる事」のみであり、その先にある「彼女と子供を作れる事」それ自体は、それほど特別な事ではないのだ。
主人公がアリカを堕とさない限り、その状況はユノにも与えられるのだから。
(ユノルートではエンゲージの解消こそ行われるが、それは「その方がユノは幸せになれる」とアリカが思い直したからであり、彼女がユノにエンゲージを許せるキャラである点は変化していない)
その事に、どうしようもなく「落胆」を覚える。
そんな大切なものが「主人公だけの特別」ではなくなってしまっている事に。

「純愛イチャラブゲーは、主人公がヒロインを手に入れる様を楽しむもの」
そうであるのなら、
「主人公だけが手に入れられるもの」は、少しでも多いほうがいいだろう?
「恋愛を成し遂げる事でのみ手に入る特別」は、その中でも特に優先して押さえておくべきポイントではないだろうか?
それをどれだけ主人公が独占しているかに比例して、「イチャラブ嬉しさ」の最大値は上昇して行くと思うのだ。
そして、
「結婚し」「子供を作り」「夫婦になる事」
その全てが、そこに含まれるとても大きな「特別」であるはずだ。
恋愛感情を含まないとはいえ、性行為に及ばないとはいえ、エンゲージがそれらに類する行為である事は間違いない。
それらの特別性が、多少なりと分散している事は間違いないのだ。
故に、「落胆」である。

つまり、俺の願望とはこうだ。
「できる事なら共通部分で――そうでなければ最低限どのルートに進んだとしても、アリカには『ユノ相手であっても結婚はできない』と思い直させて欲しかった」と。
そうであれば、
「アリカというヒロインは必ずそういう成長を迎えるキャラ」=「ユノであっても結婚することは叶わないキャラ」として、彼女を攻略することの「特別感」は保持されていた。
(ここで言う「結婚」は「子供を作る間柄になれる」という事だ。改めて書く必要も無いだろうが)
誤解なきよう言っておくが、アリカルート自体の出来はかなり良かったと思うし、アリカからの真っ直ぐな愛情をこれでもかと感じる「嬉しい」話であった事は間違いない。
ただ、彼女と「結婚できること」の特別感も作品全体で保持されていたならもっと良かったのに、という話だ。
一応、共通部分においてエンゲージというシステムに懐疑的な反応は見せるものの、未来組ルートでのアリカを見る限り、それだけでユノとのエンゲージを解消するということは無いだろう。
ここでも誤解せぬよう付け加えるが、何も「アリカはユノのことを嫌いになるべきだった」と言っているのではない。
「全てのルートで主人公に惚れさせろ」と言っている訳でもない(それこそアリカルートの良さが減るし)。
「そのくらい好きなユノであっても、結婚したいと想う愛情とは違うんだな」という事にさえ気付かせてくれればそれで良かったのだ。

価値観が違う。現在に比べてハードルが低い。肉体関係には及ばない。
だからといってその「到達地点」を明け渡していいはずが無いと思う。
「子を成す相手として選ばれること」、「それ自体」のレアリティを下げてはいけないと思うのだ。


続いて、このゲームの中にもう一例存在している「特別感の減少」について語る。
こちらはいろはに関わる話。
共通部分。
「ほまとい様と若武者が出会い、恋に落ちる」という伝承を模した祭りの神事。
その若武者役を、いろはの望みで主人公が扮することになるあのイベントだ。
これは、いろはの好意を発端とし、「二人が結ばれる物語」をいろはと主人公がなぞるという、そのシーンのみを見ればまさしく二人の特別な関係を濃縮したといっていいほど重要で印象的なイベントだ。
が、その大事なイベントは、事前に与えられたある情報により大幅な「特別感」の喪失を被っている。
そう、この「結ばれるほまとい様と若武者の役」は、「これまでに何度もいろはとタカムラ(サブ男)の組み合わせで行われて来ている」という事。
そして、主人公が帰った後も延々その組み合わせで行われていくだろうという事だ。

これも理屈的には、アリカのエンゲージと同じだ。
いろはの「内面」について言えば、主人公と行うこの神事は今までに無い特別なものだっただろう。
だが、実際に行われる「行動」のみを抜き出せば、そして客観的な状況のみを見れば、コレと同じことをタカムラもやってきてるし、これからもやって行くのだ。
これ程までにいろはと主人公の「特別性」を飾り立てる重要なイベントでありながら、発生している「状況」自体はなんら特別なものでは無い。
「当事者の内面は特別だから」と、それで納得できる人もいるのかもしれないが、少なくとも俺はこれに落胆を覚えた。
そもそも「結ばれて子を成す男女の物語を模した神事」がヒロインとサブ男の間で行われているという時点で、あまり気分が良くない。
くどいようだが、たとえその二人の間に恋愛感情の類が一切無かったとしてもだ。
第三者視点から見れば、主人公もタカムラも同じ事をいろはと行っているのだから。

しかもそれだけではない。
この神事は、アリカルートのラストでも愛する二人の手によって執り行われている。
つまり、「ここ夏」という作品のメタ視点において、この神事は「恋人関係を印象付ける要素」として用いられているのだ。
だというのに、
そんなあからさまに男女関係を想起させるイベントを、
「毎年いろはとサブ男で行われている」という設定にしてしまう、その暴挙。
スタッフ的にはいろは×タカムラ推しなのか? 勘弁して欲しい。

例えば、「年齢の関係でいろはが担当するのは今年が初めて」とかでも良かったと思うのだ。
寿との絆を示す要素である「成長の確認」も、別に神事の衣装のみに因る必要は無いはず。
要は時々採寸さえしていればいいのだから。

ただし、この件での「特別感の喪失」に置いては、神事の最後になって一定の払拭が成されている。
いろはが神事の手順を放り出して主人公に抱きついた事がそれだ。
これはかなり良かったと思う。
いつも若武者役をやっているタカムラも、当然こんな「状況」は体験していないはずだし、「特別の分散」でしかなかった「毎年やっている事」が、比較材料となる事で「今回の特別性を浮き彫りにする要素」へと昇華しているのだ。
何より、「今回の神事のみが特別だということを、その内容を変更する事で第三者視点に対しても明示している」というのが重要なポイントだろう。
故に、アリカの「結婚」に比べればマイナス点は大きくない。
といってもまぁ……。
その「特別になったはずの神事」は、
アリカルートでは「不完全なものだった」みたいな扱いになっちゃってるんだけどね。
「刀を渡す事にこそ『貴方と共に生きる』という意味が込められている」ってね。
これってつまり、神事に含まれる「恋人関係を示す意味合い」に置いては、「抱き着き」よりも「刀を渡す事」の方が強い、って言っちゃってるわけなんだよね。
いろはと主人公で行った今年のものよりも、いろはとタカムラでやってる例年通りのパターンの方が、って……。
そういうトコロからも、「特別感」に対する配慮不足を感じる。
何よりやっぱり「若武者=タカムラ」は気分良くない。

このゲームの中には、主人公とヒロイン、お互いが「特別」な存在である事を主張する台詞が数多く登場する。
それが「嬉しい恋愛」の根本を成す要素である事は、クロシェットスタッフも分かっていると思うのだ。
むしろ、これほどしっかりと「特別が嬉しい」を詰め込めるブランドは他に無いかも知れないというレベル。
そのくらい、今作の「イチャラブ」は優秀な出来だった。
だからこそ、
今後はもう一歩踏み込んで、その特別感が減少する要素はないか、減少したまま終わってしまっていないかにも目を向けられるブランドになってくれる事を期待したい。


 《ゲーム全体の話》

語り始めるとどうしても「悪い部分」の方が長くなってしまう性質なので、誤解を与えぬようハッキリと明記しておく。

このゲームは、自分の中で「傑作」に近いほどのイチャラブゲーだ。

悪い部分を要約すれば、
「特別感の減少が見られる」、「別れる気で付き合う寿ルートだけは受け付けない」、
後は、いろはの「濡れ透け」(これは後の《処占的に気になるところ》で書く)くらいのものだ。

メインヒロイン4人中3人はお世辞抜きで大満足な出来。
ルートが辛辣な評価になった寿も、キャラクター自体は文句無しに可愛いかった。
どちらかと言えば、最高クラスのイチャラブ作品だったからこそ、幾つかの悪い点をしっかり主張しておきたくなった、という形だ。

また、物語のテーマにもなっている「恋愛を経て子を成しそれを紡いでいく事の大切さ」に関しても、諸手を挙げて賛成したい。

「性知識に乏しいが故にエロエロ」という作品コンセプトも、広告に偽り無く存分に盛り込まれていた。
というか、「ピュアエロ」でこれ以上のものって正直思い浮かばない。
白状するが、ここまでエロが濃いとは思っていなかった。
今まで何も知らなかったが故、知ったばかりが故の「純心おねだり淫語」がとにかくエロイ。
嬉しエロい。
もちろん、イチャラブを壊しちゃうようなプレイは一つも無かったし、
むしろ全Hシーンイチャラブの極み(寿除く)。大変美味しゅうございました。

当初は、タイムパラドックス的な考察がごちゃごちゃ入るんではなかろうかと危惧していたが、その辺りは「程好く都合よく」処理してあった。
その上で、ちゃんとテーマを通せるくらいにはシナリオも敷いてあるし、かつ、イチャラブを阻害しない程度に抑えてあった。なかなか素晴らしいバランスだと思う。

普段はプレイ順なんて気にしないが、本作においては

いろは→寿→ユノ→アリカ という順を推したい。

共通部分でいろはとの印象的なイベントがあるので、結ばれないパターンを先に見ちゃうと攻略時の感慨が少し陰るかも。なのでいろはを最初に。
ユノルートでは、「ユノと結婚したがっているアリカ」を一番強烈に見せ付けられる事になるので、アリカルートでのベタ惚れっぷりを見た後に回すのはお勧めしない。ダメージくらうかも。

あと最後にこれだけは言っておきたい。
やっぱりクロシェットは
 貧 乳 キ ャ ラ も 可 愛 い じ ゃ な い か !
と。
いやもちろん巨乳キャラが可愛くないなんてことは無いぞ?
アリカも寿もクラレッタさんも可愛かったし。
アリカは深刻に悶え転げるくらい可愛かったし(大事なことry)。
でも多分、ユノもいろはも巨乳は似合わないキャラだと思うのよ。
貧乳だからこそ引き立つキャラ付けってのが確かにあるのよ。
今後も一人くらいはそういうキャラがいるといいなぁ……と、
身勝手ながら、期待せずにはいられない。


 《処占的に気になるところ》

はっきりと分かりやすい「露出」や「接触」に関するNGにおいてはかなり優秀。
気になるのは、いろはの「濡れ透け」と、未来サブヒロイン組の衣装関連くらいか。
妹アイドルの大胆水着やポロリを全国展開していた頃とは雲泥の差である。
男性からの接触は皆無と言っていいレベル。器具類を使用したプレイもない。
一番問題になるのはエンゲージ関連、つまり精神的な部分になるだろうか。

今回も、「気になる人がいるかもしれない」というレベルのものから抜き出している。
実際にはほとんど問題無いものも幾つかあるだろう。
俺的にはかなりの優良処占作品。
詳しくは以下。

――先ずは全体的なこと。
川遊びの時に蛍塚姉妹がかなり極端なエロ水着を用意してくる(初回のみ)。
その場に男は主人公しかいないが、そこは「絶対に人が来ない穴場」みたいな場所ではない。
一応、参加する男が、性欲を持たない(と、ユノといろは以外は思っている)主人公だけだからこそ水着になることを承諾したのであって、誰にでも見せていいと思っているわけではない。
川遊びは作中で何度か行われるが、いずれも男は主人公のみ。

ユノとアリカが混浴の銭湯に入る。
誰も来ないことを計算した上で入ってるし、アリカの時は主人公が外で見張ってもいる。

クラレッタと小萩の未来衣装がかなりえぐいハイレグで、しかもボディペイントかと突っ込みたいくらい身体のラインがくっきりわかる。アソコに目を引くようなオブジェもあったりと、ぶっちゃけエロ衣装。
その格好でサブ男達の前に普通に出てる。
多少、エロゲ的に誇張された立ち絵な部分もあると思うが、作中でも主人公が「身体のラインがはっきり出ててエロイ」という感想を漏らしている。
そもそも、「未来の世界では異性の性的な姿を目撃する機会は皆無」とか言ってなかったっけ?
この服、余裕で水着とかよりイヤラシイと思うんだけど、二人の態度からすると極普通に公用で使われてるデザインっぽいんだよなぁ……。
未来は社会全体で男女が隔離されてるって事か? でもスクールは同じ教室使ってるっぽいし……。どういうこと?

野外、及び、自分達の部屋以外でのHシーンは全員にあり。しかも結構数は多い。
というかほとんど外だったような……。
といっても、大抵は誰も来ない事を意識して場所を決めているし、H中に「誰かに見られちゃうかも」みたいなシチュも(1例を除き)無い。

後はやはり、エンゲージに関する蛍塚姉妹の感情が少し危うい。
あくまで「芳嗣に対する恋愛感情とは違う」という点はハッキリしているが、前述したとおり、アリカからユノへの感情が「結婚したいほどの愛情」である点は否定しようがない(憐憫や義務感込みではある)。
そして、それをまざまざと見せ付けるような溺愛シーンも所々描かれているし、ユノの方もその気持ち自体は満更でもなく思っている模様。
ただし、ユノの方はあくまでも「エンゲージによる子作り」はアリカとであってもしたくないと思っている。
普通の結婚ならどうなのかは語られていないが、一応、恋愛対象はノーマルに男性だと思われる。
「Hな部分は姉さんにも見せられない」とも言ってくれる。

以下、キャラ別。

 ==アリカ==
「わたしもセックスによる子作りをしてみたい」と思うようになってから、「その相手は主人公で無ければ嫌だ」に至るまで、少し間がある感じなのが人によってはちょっとモヤるかも。
一応その間も、相手としては常に主人公を意識してるっぽい。
はっきりとしたNGは皆無。故に、やはり本人のルート以外では「ユノでもエンゲージできちゃうキャラ」のまま終わっちゃうのがもったいない。

 ==ユノ==
学校の教室でHする時だけは「見られない保障」がされていない。
「誰か来た時は来た時」といって、すぐに隠れられるような用意もしていない。
「今誰か来たらユノの恥ずかしいところ丸見えだな」みたいな会話もある。
それで興奮したりとかは無い。
実際見られたりとかも当然無い。
やはりエンゲージ周りの姉妹愛をどう感じるかによると思うが、少なくともアリカよりはマイルドだろう。
個人的にはかなり優秀な処占キャラだと思う。
エンディングで産まれている子供は男の子っぽい。そこまで気になる人は注意。

 ==いろは==
水を浴びて服が透けた状態をサブ男に見られる。
サブ男は「いろはに興味が無いから何も感じない」と言うが、だったら見せてもいいというモノじゃない。
つーか、水着は見られないように配慮されてるのに何で下着の方が配慮されてないんだよ……。

「悪い点」でも書いたが、「ほまとい様と若武者が結ばれる話を模した神事」を、毎年いろはとサブ男で行っている。
神事の内容自体には、極端な接触や露出などのNGは無い。

ユノルートで、プロムナード(未来の卒業試験)の課題としてドキュメンタリー番組っぽいのを製作する事になるんだけど、その中でいろはがまた上の濡れ透け状態を披露している。
その映像は上映祭という形で村の人たち及び未来の人間なんかにも見られている。
「透けている」とそのシーンで書かれているわけではないが、表示されるCGは濡れ透け状態のものそのまま。
ただ、問題があるようなら寿が黙っているはず無いだろうし、スタッフが差分用意するの面倒がっただけかも。
というかそうであって欲しいのだが……、でもわざわざそのCGを表示させてるワケだし……。
そのCGが濡れ透け状態であることは当然スタッフも承知の上だろうし……。
何にせよモヤる。

 ==寿==
直接的なNGではないのだが、
彼女は主人公の事を
「優しくて紳士的でいやらしくなくて『他の男性とは違う』」としきりに言う。
つまりそれは、
「下種で野蛮でいやらしい事してくる男」が彼女の周りにはそれなりの数いるという事でもある。
少なくとも、胸をいやらしい目でジロジロ見られてきたことだけは確定。
ついで主人公の「態度」にも言及しているので、いやらしげな態度で接してくる男もそれだけの数いたという事になる。
もしかしたら、一般的に見ると普通の男性なのかも知れないけど、彼女自身がそう感じてきたという事は確か。

そこ以外に問題らしい問題も無いので、彼女も良処占キャラだと思う。
兄がいるという時点でダメな人は注意。
まあ体験版どころかHPのキャラ紹介で回避できる部分だけど。

 ==紅緒==
モブの弟が二人いる。
全然気にならんレベルだと思う。

 ==クラレッタ==
未来衣装だけでなく水着のデザインもかなり際どく、その格好で家から川まで村の中を歩いてきたらしい。
ただし、彼女の水着に関して「エロイ」とか「破廉恥」などと言った感想は作中に出てこない。


それと、これは処占から少しずれる話かもしれないが、
エンゲージが「遺伝子を提供しあって母体を用いず子供を作るシステム」であることと、それに対してアリカと寿が肯定的――寿に至っては憧れを抱いている点にモヤモヤしたものを感じる。

「恋愛感情が含まれないならヒロインが他の誰かと子供を作っても寝取られじゃ無い」とは、俺にはとても思えない。
最初にも言ったとおり、ユーザーの目線から見て「子供を作ることそのものが特別たりえる」のなら、もしヒロインが他の誰かにエンゲージを許可して子供を作れば、それは間違いなく寝取られだと思う。
それも「ヒロインが他の誰かと子供を作る」という最大級の寝取られだ。
しかも、ユノの出生で語られたとおりなら、「登録された遺伝情報は盗まれて勝手に使われる事がある」らしい。
つまり、ヒロインの遺伝子が提供側に登録さてるとしたら、いつだって知らず知らずの内にどこかの誰かに寝取られる(彼女との子供を作られる)可能性があるわけだ。
未来で暮らす限り。エンゲージがある限り。
ヒロインがエンゲージを肯定するということはつまり、「どこぞの誰かに勝手に自分との子供を作られてしまう危険性を許容する」という事に他ならない。
アリカや寿がこのエンゲージをとても素晴らしいものとして肯定しているのにはかなりモヤモヤさせられた。
寿としては、そういったエンゲージの問題点に思い当たってないのかもしれないが、
そうだとしても、やはりヒロインが「他の誰かと子供を作らされる可能性があるシステム」に憧れを抱く様は、見ていて気分の良いものじゃない。

アリカの件といい、この「エンゲージ」という設定がこの作品一番のネックであるように思える。
同時に要点でもあるのでどうしようもないのだが……。
扱い方次第なんだろうなこういうのは。