青春しようぜ!
大切だった親友の死、それに捕らわれ続ける主人公。
彼と、彼を取り巻くヒロイン達が、各々に苦悩し、乗り越え、成長する物語。
いやぁ、大当たりでしたね。実に好みなお話でした。
大作! というほど壮大なストーリーがある訳ではないのですが、
笑いも、感動も、燃えも萌えも、しっかり詰め込まれた作品です。
イチャラブという点ではキッキンの方が勝っていると思いますが、
シナリオの面白さ、構成力などでは春ポコに軍配が上がると思います。
読みやすい文体、引き込みの強い展開。
驚くような伏線はないのですが、敷くべき伏線をしっかり敷き、
そして完璧なタイミングで回収する気持ちの良さ。
しこりの残らないエンディングの爽快感。やっぱりハニカム文庫は素晴しいです。
ただ、序盤だけ少し、主人公が頑な過ぎてイラついたりするかもしれません。
でも、そうでないと物語が展開されませんし、それだけ彼にとって春花の存在は大きかった
という事なんでしょうから、許せると思います。
終盤にはちゃんと成長して、頼り甲斐のあるところも見せてくれるので心配無用です。
特に、卒業式寸前の行動力は、これぞ主人公といった頼もしさに溢れています。
藍
駄妹伝説ここに。
このゲームの笑いの大半をこの娘が持っていった気がします。
ウィットの効いた兄ラブ発言と桐谷華さんの熱演のハマリ具合が主な原因です。
シナリオは他の二人と違い、春花の死に発する問題ではなく、
野々宮家の家族問題を題材としています。何気に親父がカッコイイ√。
結局最後まで、彼方の実母と父親が離婚した理由が語られなかったのはちょっと気になる。
ところで、実 妹 が め っ ち ゃ 可 愛 い んですが、
出番あれだけって勿体無くないですか? FDとかで露出プリーズ。
桜
春花がいなくなってからもバイオリンを弾き続け、第二音楽部にも所属し、
彼方に卒業式での演奏を持ちかけ、また特待生資格維持の為尽力しようとする。
いつも飄々としていて、主人公との仲も悪くは無く、踏み込み過ぎず、離れ過ぎずな
距離感を常に保っている。
一見すると、春花の死に対してそれほど重く捕らわれていないように見えるが、
その実、彼女も・・・。
いや、むしろ彼方や夏海よりも重く、「唯一の友達」に捕らわれていたかも知れない少女。
√前と後で随分印象が変わったキャラでした。
終始唯我独尊なスタンスで行くのかと思っていたら、
何なんでしょうね、このやたらと守ってあげたくなる女の子は。
シナリオは面白かったですし、√入った後はプレイ前よりも好感度が上がったキャラですが、
Hシーンへの入り方は多少強引だった気がします。それまでに、お互い好感度が高まるような
描写は殆ど無かったので。
後、彼女とのHは悲しみの最中だったり辛さを忘れる為だったりするものが殆どだったのが痛い。
純粋にイチャラブしたいが為にする恋人同士の行為も欲しかった。
後、これだけは言っておきたいのですが。
ファミレスのチェーンであの制服って 絶 対 営 業 停 止 くらいますよね?
胸から上、一切生地無しとか、どう見てもソレ系の店にしかw
夏海
今回一番お気に入りのヒロイン。素晴しきツンデレ。
冷たくて厳しい態度の奥に隠された、彼方へのベタ惚れっぷりの濃厚さがgoodでした。
特に告白時のカミングアウトが秀逸。
態度や口調はトゲトゲしいまま、台詞の内容だけが彼方大好き100%。
春花の代わりでもいいとまで言わせてしまう彼は罪なヤツですね。
もちろん、それじゃあ代わりに、なんて下衆なことはしない主人公。返答を保留してもらって
でも、きちんと自分の気持ちに整理をつけ、彼女を「夏海」として愛するようになります。
好感が持てますね。
恋人同士になってからは、彼女の性格やスタンスはそのままに、
彼方が好きだという事実だけは臆すことなく口にするようになります。
この辺りも彼女の魅力。
シナリオも、メインだけあって一番良かったと思います。
出会った頃から彼方が好きな夏海。でも、彼方は春花が好きだという事にも気付いている。
恋でも、音楽でも春花に敵わないと感じる夏海。
そのコンプレックスを晴らせぬ内に春花は逝ってしまう。
そして、彼方のピンチに、夏海は「春花」の音で彼方を救う。
結果、彼方を救えるのは「春花」であり、「夏海」ではないという現実を突き付けられ、
彼女自身、それでいいと受け入れる。
でも、恋人となった彼方はあくまで「夏海」の音を必要としてくれて・・・。
卒業式の流れもこのルートが一番好きでした。
春花の残してくれたもの。彼方の決意。卒業式。そして最後のあのシーン。
これほど気持ちの良い終わり方をした作品はなかなか無いのではないでしょうか。
「リアル妹」も素晴しいエンディングを見せてくれましたが、それに匹敵すると思います。
ミドルプライスなのでボリュームはそこそこですが、満足度は十分でしょう。
前作に比べるとイチャイチャやHの濃さは少し劣るかも知れませんので、
そういうのを期待する人は注意かな。