シナリオにおいて,世界観の魅力を第一に考えた数少ない作品.感動や驚愕といったことがある訳ではないが,ファンタジー世界を存分に堪能することができる.
この作品は,シナリオで使われている事柄が多岐に及んでいる.設定に関しては王女,竜,幼稚園,魔法といった一見すると関連性のない使われているし,シナリオの展開では竜以外にも恋愛が主要な要素となっている.このような様々な事柄を扱うシナリオではどっちつかずとなり,何かしらの事柄に関して不十分になってしまうことが多い.しかし,この作品ではどの要素も描写不足は感じても,扱いが不十分ということはあまり感じなかった.
多くの事柄をシナリオに取り込めたことは,その世界に深さや広がりを持たせられていると言えると思う.結果として,世界に対して様々な要素からシナリオを眺められ,また,様々な要素を関連付けた見方をすることが可能となるため,(シナリオに直接関係が無くとも)様々なことを考える事ができ,プレイしていて単純に面白かった.これは,この作品がファンタジーという現実とは異なる世界を描いているのも要因の一つだと思う.
また,この作品の特徴として,おまけシナリオが本編とはかけ離れたストーリーになっていることが挙げられる.通常,このようなシナリオはあまり良くないと思うが,この作品では,元々多くの事柄を用いているため,それを新たな一面と受け取れ,それほど不自然だとは思えなかった.
描写不足が目立ち,各シナリオのパランスもあまり良くないと思う.しかし,世界に広がりを持たせられていることは,ファンタジーにとって大きな長所だと思う.