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yosizaruさんの媚肉の香り ~ネトリネトラレヤリヤラレ~の長文感想

ユーザー
yosizaru
ゲーム
媚肉の香り ~ネトリネトラレヤリヤラレ~
ブランド
elf
得点
81
参照数
1826

一言コメント

エロゲーのお手本のような作品

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

グラ(16/20)

萌え絵が跋扈する昨今昔のエロゲー界を彷彿させる美麗さ、妖艶さを
再現しており非常に貴重です。
開発陣の職人魂が垣間見える非常に丁寧な創りをしています。
あとは癖のある画師のデザインを気に入るかどうかで評価が分かれ
るでしょう。


音楽(14/20)

曲は特筆に価しないものの良質なものが多いです。
ただその曲を挿入するタイミング等が絶妙で演出を盛り上げます。
また曲を流さない、風鈴の音だけの演出もあり雰囲気をを盛り上げ
るのが巧いです。

キャラ(16/20)

美しく優しい人妻、純真で無防備に主人公を慕う娘、性に奔放だがし
っかり主人公を愛する恋人、男を寄せ付けず天邪鬼な性格の女・・・
などヒロイン達の性格をきちんと差別化し個性を引き立てています。
またそのヒロイン達がなぜそのような性格になったのか、という面も
テキストから推測でき、キャラの存在に説得力を与えています。
このような地に根が張ったキャラを描き、魅力を引き立てる丁寧な
描写はユーザーを作品内へと誘います。

シナリオ(32/40)

嘗て業界に君臨したエルフの復古を想起させるクォリティの高い仕上が
りになっています。
派手さは無いものの構成力・展開・登場人物の台詞回し等全てが高い
レベルで纏まっており、冗長さも無くしっかり新ENDまで楽しく緊張感を
もって読むことが出来ました。
サブタイトルにある「寝取り寝取られ」のフレーズから今作に対してヌキ
ゲーのイメージを抱きましたが、いい意味で裏切られました。
「寝取り寝取られ」に違わないのですが、視点が主人公ではなく黒幕
である香織視点での「寝取り寝取られ」となっています。

序盤で由紀に関心を抱かせ、中盤で香織・乙葉の両極の2人の女を登場
させ、描写を増やすことで由紀の存在を薄めます。
特に中盤は香織を軸にした展開が多く、多くの分量を割いている為、香織
の作中における存在感はかなり大きくなっています。
しかし後半、急速に存在感を増した沙耶が主人公(ユーザー)の関心を一気
にかっさらい、香織を脳内から消去させてファイナルに持ち込みます。
結局、由紀から奪い沙耶から奪われて香織の陰謀は瓦解する訳ですが
これだけの急展開を無理なく丁寧に描き魅せてくれます。
ライターの術中にすっかり嵌ってしまった自分としては爽快さすらある
ENDでした。

中には由紀派・乙葉派の方もいるでしょう。香織が好きな方もいるでしょう。
そういう方達からすると本編の評価は落ちるかもしれません。
しかし過半数以上(推定)の方は沙耶に惹かれたのではないでしょうか。
話の構成上沙耶の支持率が低いと評価はガタ落ちするリスクがあります。
メインヒロインとして据えて置けば良い訳ですが、沙耶の存在感が増すのは
主に中盤~後半からです。

おそらくその大きな原因は沙耶の「後にも先にもあなたしかいない」とい
う「絶対に裏切らない無償の愛」ともいえる気持で主人公を包み込む母性的
な部分があると思います。
男の誰もが潜在的に持つであろう「母性への依存」に訴えかけてユーザーを
取り込むことに成功したのだと思います。
単にツンデレな天邪鬼キャラでは過半数以上(推定)の支持は得られないで
しょう。
この「絶対に裏切らない無償の愛」という母が子にもつ特権のような感情を
沙耶は主人公に抱くわけですが、やはりそこに行き着くまでに高いハードルが
自分にも相手側にもあったりします。
「私は子宮でものを考える女にはなりたくない」と思う反面、女になりきれない
自分を疎ましく思っている節もあります。その狭間でもがき苦しみながら、
「男は射精したいだけの生き物」という絶望的な男性観が追い討ちをかけます。
そもそもこの感情や思考は敬愛する母が原因であったりする為、根が深く、複雑
です。
そして沙耶は固い殻の中に自分を閉じ込め、異性から遮断することで自我を保ち
ます。
その葛藤や失望の殻を破ったのが「だらしがないが着飾らない馬鹿正直な主人公」
であり、「チンチン膨らませながら徹底して不義を嫌う主人公の間抜けな姿」だったの
でしょう。

私はこの人と一生添い遂げる

この契約が交わされたのがあのキスシーンであったのだと思います。

補正(3/5)

主人公と沙耶
高画質アニメーション