一言で表せない名作。テンプレと感じさせないキャラ設定と世界観。リメイク希望。
よく比較されるゲームにONEやKanon、それは舞い散る桜のようになどがあるが、SF要素を詰めたこの作品は一部の人たちには絶賛された。
まず世界設定。ファンタジーなどのチープな超能力ではなく裏打ちされた説得力のある描写に惹かれた。認識力学=超能力と言えるがそれをきちんと説明するのがなんとも元長氏らしい。認識力学…人間の内界から外界に与えるフィードバックを研究する学問なのだが、この言い回しが好きな人にはたまらない。考察も多く、どのヒロインのラストも理解できないまま置いて行かれた感じになる人も多いと思うが、隠れた設定の中にある宇宙から飛来した生命体という研究所に連れてこられた仲間の経緯を知ることで、より深みにはまった作品になっている。
当時のゲームは前述のゲームにあるとおり奇跡に頼ったシナリオでユーザーを泣きに誘うという手法が多いが、このゲームはすべてに置いて奇跡の部分を強引にでも解釈させようとしている。それが合わない人にはとことん合わないのだと思うが、私的にはとても好感が持て文学的な楽しみと理学的な楽しみを同時に味わえた。
>成瀬
テンプレートな幼馴染だが研究所でばったり会うというのだが、不思議とご都合主義に感じさせない。主人公の研究所にくる経緯が自転車のカスリ傷程度の事故で大騒ぎになっただけという為だ。成瀬は最初から最後まで各ヒロインの繋ぎ役として活躍する。
彼女の能力は予知夢。このため彼女は世界の未来を認識できてしまう。最後は世界の終わりを認識するのだがそれは彼女にとって…
>珠季
典型的ツンデレキャラ。いや、当時はツンデレという言葉は無かったと思うが…なんだかんだいいながら主人公とは喧嘩するほど仲が良い仲間。珠季ルートに入るとツンとデレの恐ろしさを知ることになった。彼女の能力は文字通り超能力の定番とも言えるサイコキネシス。物理的で見えやすく最初に主人公が体感することになる。最後は彼女の力が暴走することになり…
>椎子
個人的にはメインヒロイン。いや、普通エロゲでこんなにアカデミックなSF数学史出しちゃダメでしょ(笑)それがたまらない人にはたまらないと思うけど。個人的にはメチャメチャはまった。彼女の言動や教えを請う人格は尊敬できるもので椎子が好きな人は多い。彼女の能力はヒーリング。珠季が黒魔術だとすれば椎子は白魔術。究極の癒し能力にも反動があるが珠季ほどではないのは彼女の穏やかな性格が関係していると思う。シナリオ的にも異質の一言。思いっきりネタバレになるが宇宙生命体は輪廻転生で何度も魂が未来に引き継がれる事を示唆しているのがよくわかる。
過去のドイツで一数学者ベルトホルトとしての主人公と出会いトルーデに数学を教える場面と、現代で主人公が数学や物理を椎子に教える姿はリンクしていて最高だった。
最後でバタフライ効果による危険察知で主人公の演算者しての能力が目覚め、屋上から飛び降りたシーンと同時に流れるコズミックランは今でも頭の中に焼き付いている。数学嫌いが増えている中で数学史を教えると良いと示唆でもしてるかのような難解なシナリオ。
>美凪
終始明るくお転婆な美凪だが彼女の能力はサイコメトリーの一種で人の心を読んでしまう。それ故に彼女の孤独に気付く者は少ない。主人公に最も近い存在であることがわかるが、難解すぎてエンドでは置いてきぼりを食らう人が多いと思う。性格的にもわかりやすく取っつきやすいキャラの反面、シナリオは取っつきにくいのが面白い。ちなみに関西人。
>透子
まさに超能力ではなく認識力学の究極点という世界が彼女の意図したように動く能力。一言で説明するには難しいのだが、簡単に言えば世界を操れるなんでもありな能力と思って差し支えない。エンドではどうしても普通の能力の人間には手の届かない存在として描かれている。彼女自身が世界から喪失すればすべての人間の記憶からも消失するという課程はとても切ない。
>依子
一科学者。普通の人間。一番イレギュラーな存在であることがこのゲームの異質さを語っている。宿題を鬼のように出したり、酒でしか自分を出せないのは実に人間っぽい。どうしても主人公達には手の届かない存在のようにコンプレックスを感じているのが彼女の魅力だと思う。
>慧子
最初に本物の姿を見たときは震えた。人工生命の先駆けとも言える脳だけの人間。特殊な培養液内でほったらかしにされている。主人公は研究所内にハッキングもしてないのに(実際、バリバリの理系の主人公だからできそうなのだが…)彼女の元に辿り着けたのが奇跡に近いが、奇跡とは感じさせず必然と思わせてくれる。彼女とのやりとりはまさに多くのゲーマーが体験している2次元とのキャラのやりとりそのものであって、とても面白い。本質をついている。
面白い人には面白いが、会わない人には徹底的に合わない作品。個人的な最高だけど。