猫撫ディストーションの世界観とは一体なんだったのか?
>そもそも、どういう世界観なのか?
量子論の思考実験にシュレーディンガーの猫というものがある。
箱の中にいる猫が死んだ状態と生きた状態が重なり合っている状態だ。
実際にはありえないが生きていているし死んでいる状態と考える。
今の人間の技術ではミクロ(小さな世界)を見るにはこういう観測しかできない。
この観測できてる、あるいは観測されてる状態を「揺らいでいる」と記す。
ゲームの世界はギズモだけでなく、すべてのキャラがこの箱の中の猫の状態にある。
つまり家族全員が揺らいでいる。
原因は流星群と地震が起きたためだが後に書く。
柚と蜜柑や家族以外の人物はこの箱に入ったりできるが、主人公の家族全員はこの中からは出ることができない。
柚と蜜柑は正確に樹の家族を正確に観測できない。
曖昧には(約50%の確率で)観測できている。
揺らいでいる世界と家族の状態が世界観だと言える。
家が箱で、さらにその中の樹が、家族を観測している世界だ。
だから不確定なことが次々と起こる。
妹が生き返ったり、猫が人間になったり。
それらはすべて樹という観測者が観測しているために起こる。
七枷家という家族と家の状態が不確定なまま揺らいでいるからだ。
>流星群と地震のあった日に、いったい何があったの?
父である電卓は実験で七枷家の建物を空間ごと揺らいでいる状態にした。
樹の父である電卓は過去、あるいは別の次元の世界で素粒子を用いて、「人の意識」の研究をしていた。
樹の世界の公園のある場所で、シンクロトロンという粒子を用いる装置を使い、人工意識を作るためだった。
電卓は娘の琴子が長く生きられないことと、意識の研究実験の際に見た家族の悲惨な未来を知り、家族の為にどうにか生きて欲しいと願い、研究を繰り返していた。
次元や世界は物理法則により作れないが、小規模なものや人の意識なら作れると考えた。
実際に実験は一定の成果をあげて成功していたようだ。
人工知能に近いものは作ることはできたが、意識を持たせることはできなかった。
できてアンドロイド以上、人間未満の能力だった。
人間らしい知能はできたようだ(チューリングテスト回避)。
だが意識というもの持たせられなかった(クオリア感覚なし)。
そこで電卓はアプローチ自体を変える。
人工知能はできても人口意識できなかったのだ。
これでは生きたゾンビに過ぎない。
だから考えた。
どうすれば琴子の意識を作るかではなく、
どうやって琴子の周りの環境を作るかに。
未来の妻の式子、長女の結衣、息子の樹を苦しませたくない。
この次元の世界(平成ではない日本)では倫理的にも問題ない。
そこで取った方法が揺らいでいる状態を故意に作り出し、琴子を観測しなおさせるというものだ。
これで琴子は生き返った状態にしようとした。
これなら今の実験環境でも可能だった。
意識を作るのは無理でも空間を揺らがせることが可能なのは実証済みだった。
そのためにシンクロトロンと電磁塔を使って、七枷家に揺らがせた空間を作り、
一定期間後に揺らがなくなる確定した空間を作ろうとした。
選ばれた観測者は主人公の樹だ。
観測者の条件を満たしているのが樹だけだった。
「彼」はうまくいくのか?
家族を再生させることができるのか?
樹はどんな行動をとるのか?
すべては樹の観測に委ねられた。
…というように前作は観測者が内容を推測するゲームだったと思う。
だから今回のFDは点数は付けることができない。
ファンディスクや続編って一体何なんだろう?
追記 : と思ったがやはり点数と理解は必要だと思い噛み砕いて再プレイ
点数なし→89
FDにしては異例の高得点。
おれつばアフター(75)やマジ恋S(72)、智代(78)、クドアフター(68)とは一線を画す。
そもそも需要が少ないんだからこれくらいでもかまわないと思う。
ギズモルートのみ。疑問を一つづつ解いていく。
どれだけのテキスト量になるかテストの意味も含めて。
>ギズモ : ギズモが猫になったあとの問題
もし、動物が人間として生きていくことになったらどうなるか。
人間以外は言葉を扱えない。扱えるとされている動物も人間のように言葉を扱うことはできない。
できても単純な記号を意思疎通の手段に用いるだけだ。
「イルカやカラスも言葉を使うと言われていますが、それはコミュニケーションであり言語ではありません」
主人公はギズモに言葉を教えようとするが限界が生じてくるのか?
それともうまくいくのか?
「焦ってはダメです。長い目で見てあげればいいと思いますよ」
脳内の回路がつながる時間を待てば話せるようになるらしい。
そういえば自分はどうやって喋れるようになったんだろう。
「言葉があるからこそ、自己が生まれ、他人が生まれ、空間と時間が生まれました」
「言葉があるからこそ、人間はそれらを概念として身につけることが可能になったのです」
ただ琴子が言うように樹自身がどうやって言葉を覚えたか疑問に思ってるように、ヒトがどうやって言葉を理解する過程ははっきりとしていない。
その過程をギズモは瞬時に行わなければならなかったわけだから、簡単じゃないことも言っている。
ほぼ人間の赤ん坊が覚える過程で言葉を習得していくギズモ。
「ホスホジエステル結合だ」
*化学用語 : 地球上のすべての生命に存在し、DNAやRNAの骨格を形成している結合。
無理な言葉を教えようとする結衣。今から難しい言葉を覚えていた方が良いとのことだが無茶だろう。
「くうとねるのともんくいうのだけはいちにんまえになりやがって このまざーふぁっかーめ!」
電卓がギズモに言えと教えた言葉。そもそも暗記とは何なのか?
なぜギズモはスラスラと言えるのか。
よく生まれたての赤ん坊はすべて天才だという言葉がある。
それを枷にはめて行くのが教育だと。
この赤ん坊状態で既存の人間社会と離れた英才教育を施すとどうなるか?
知能や運動能力、技術が飛躍的にあがることはあるのだろうか。
ギズモがすらすらと言えたのは電卓が何かしたからか、赤ん坊状態であるギズモの能力なのか。
今の科学で解明できないものは答えの出しようがない。
「ギーちゃんったら、言葉が喋れるようになって、今は誰かの真似をすることが楽しいのね~」
式子が言った言葉。
すべては真似、模倣から始まる。理論も創造も例外はない。
あるときふと思いつくということはない。過去の発明発見もなにかしらの土壌があってだ。
ニュートンの万有引力しかり、アインシュタインの相対性理論しかり、ハイゼンベルクの不確定性原理しかり、すべてに因果性(原因があるから結果がある)と言うものがある(YU-NOの絵里子先生より)
母である式子が言うだけにこの言葉が深すぎた。
子供の頃から、結衣も樹も琴子も真似を楽しみながら生きてきたのだと。
結衣と琴子は電卓を手本にした。彼女らが博識なのは電卓が好きだったからだ。
ここで結衣は必死で否定している。結衣は電卓の影響で他の友だちと違う変人に見られるのが嫌だった。結衣は一般的な学生の中でも頭が良すぎて目立ってしまい嫌だったのだ。
反対に琴子は外に出られないから、そのような悩みとは無縁で本を読み続けた。
樹は結衣を真似して育ったらしい。
日本の教育問題で、よく言われるのは横並び教育だ。
飛び級や能力主義で教えるべきなのかそうでないのか。
日本人ほど他人の目を気にする国民はいない。
結衣は社会に出ても普通にやっていけると思うが、琴子はかなり苦労するに違いない。
こういう問題があるのと同時に、自分の過去を正しいと信じたいと思うから、教育は変わりにくい。
本当は時代にそって教え方をどんどん変えるべきなのだ。
そうじゃないと、いつまでも時の権力者の都合で騙される。
もう、そういう時代じゃないと思うんだが、思ったより進んでないみたいだ。
今現在も多くの国民は何も考えずに、勉強したり仕事をしたりしている。
誰も現在のシステム(主に産業革命後の)に疑問を感じない。
―でももしかしたら、俺たち家族はあの出来事を乗り越えて、もっと強く繋がりあえたのかもしれない。
琴子の死に関しての樹の考察。現実で樹は琴子の死後、3年間誰も見えていない観測者の状態だった。この状態をみた電卓は樹しか観測者になる条件を満たしていると考えた。
ただ柚だけは見えていたようだ。琴子は柚を樹の世界での「変数」と言ってる。
言葉の説明に戻る。言葉とは何なのか?
「言語、言葉、それらに共通する規範。そうしたものを操ることで、人は人とそれ以外を明確に分けることが出来るのだ」
電卓と琴子の会話。ようは人間は言葉の組み合わせが凄まじいから、他とは違うということ。
「彼らはしゃべらない。それは言葉ではなく、合図(シグナル)だ」
動物が使うのは言葉ではないと明確に線引きをしている。
言葉を「理解」して「使用」するということが人間以外にはできない。
それにしてもこのゲーム。本編でも言えることだが、一番簡単に理解しようとするには電卓と琴子の会話を拾って調べるのが早いかも知れない。
「握手が親愛の証であり、キスが愛情の証ということを認識していなければ、それはただの奇妙な行動に過ぎない」
我々は知らず知らずのうちに、行動に意味づけを行なっている。なぜイケメンや美人と他をわけるのか? それは我々が全員で定めたからだ。時代や国によっても大幅にそれは変わる。
こういうのは集団で無意識に行なっているところもあるし人によっても千差万別だ。
人間はルール作り(規範の定め方)が上手いのだ。それが正しいか間違っているかはともかく。
リンゴを例えに出しているが、人や地域によって解釈は全然違う。
知っているのと食べたことがあるのでは大きな差が出る。
これが俗にいう、知識と経験の差というものだ。
「常識的に考えなさいよ。やっぱりあんた、騙されてるんだって」
ギズモが喋り出してから、柚が樹に言った言葉。
柚はギズモのことを初めから認めてないので、ギズモが演技していたと思っている。
猫が人間になったなど現実世界ではありえないが、今現在起きていることが理解出来ない。
それが「常識」だからだ。
柚はきちんと樹の家族を見ていたが、樹は見ていなかった。
樹は最近になってきちんと観たが、柚は常識が邪魔して事実を受け入れることができない。
(ただ本編で柚が式子ときちんと話して本物だと確信する場面がある)
「だから、その…戸籍とか、利用しようと思ったら利用できるものがいろいろとあるじゃない」
樹に何のために騙すのかと訊かれて柚が答える場面。
常識の範囲で考えたら、こういう意見になる。柚もかなり頭がいい。
なんせ外交官と警察との娘だから。
それでも常識という固定概念は、すぐにはひっくり返らない。
我々も今ある常識から、物事を考える。
最近では歴史問題がそうだった。
誰もがある国は間違っていて、ある国が正しいと思っていた。
だが国によって歴史は違うことがわかってきた。
昔と違い多くの人が考え始めた今では、嘘を百回言っても本当にはならない。
それでも柚はかなり良い子だと思う。幼馴染で柚みたいなヒロインをみたことがない。
ある意味、自分の価値観の押し付けだが、それは樹だけではなく樹の家族のことを思ってのことだ。
>まとめ
やり直すと食わず嫌いしてたところがあった。とりあえず、このゲームヤバすぎ。引用や記述や説明を入れたら、テキストが膨大な量になると書いたが、下手すれば年単位で書かないといけないハメになるのでこれまでにしとく。用語や説明がわかってる人でも面白くなるには一周以上は必要とかありえない。
ただきちんと考えるとこうなるだけで、ゲーム自体の雰囲気を楽しむには問題ないと思う。
なんとなく考えるだけでもわかると思う。すべてを理解しようとするとダメだと思う。
きちんとした萌えゲーだし、起承転結もはっきりしてるし、キャラは魅力的だし、声優陣も豪華で上手い。音楽も絵もいい。と揃ってるのにここまで人を選ぶゲームは凄い。
元長氏と藤木氏の続編を期待してるけど難しいんだろうな。
エロゲでも売れるSF、売れる哲学、売れる学術は超難易度なのかも知れない。