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yosh10さんの恋ではなく -It’s not love, but so where near.の長文感想

ユーザー
yosh10
ゲーム
恋ではなく -It’s not love, but so where near.
ブランド
しゃんぐりらすまーと
得点
89
参照数
742

一言コメント

限りなく恋愛ドラマや恋愛小説に近いシナリオをゲームという媒体で表現した作品。こういうのが好きな人や許せるユーザーの点数は高く、萌えゲーや主人公に都合のいいヒロインを期待する人の点数は低い。そんなゲーム。女性がプレイしても結構評価はいいのでは?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

恋愛小説とドラマをゲームという媒体で、さらに今の技術で表現した作品。

個人的に「群青色」より良かった。軍事ネタや無理やりな、日本経済設定に頼るわけではなく、ひたすら今現在の世界観の中で、主人公たちの心情や恋愛観を書いている。
群青色のときはそれほど良いライターだとは思わなかったが、とても良いライターだと思った。
だがこの業界では、このようなシナリオは確実に万人受けしないという事情があるので、その辺りはどうなのかと思った。個人的にはこういう作品は大好きだが。

人物設定がしっかりしており、それぞれのキャラたちがそれぞれの思想と価値観、プライドを持っていてリアリティがある。しっかりと人間を書いている。
あっちゃん、ゆーちゃん、典史他、それぞれの視点が映るから、キャラの心情が小説以上にわかりやすい。ドラマでは絶対にできない表現。

カメラの事はあまりにもマニアックすぎてついていけなかった。
デジカメでいいじゃんと思ってしまう人も多いと思うが、それだけ彼ら彼女らの本気さが伝わってきて面白かった。

最後の決して恋ではなく、というタイトルが良かった。
キャラのセリフも鋭いものがある。
「先輩にふさわしい言葉を送ります。情熱とは継続する…」
この時の好佳の視点から見るとあっちゃんをどれだけ好きでどれだけ思っているかがわかってホロリと来た。

他にも朋子が良かった。ここまで幼い(ロリ)キャラの心情を書いてるシナリオは記憶にない。朋子視点からの省吾の考察などかなり大人び過ぎてるとは思うが、18禁ゲームお約束の年齢は明記しないという制約があるため、何歳かわからない。恐らく中学2,3年で恋愛小説を読んだり一人で考える時間が長すぎる子なんだと思った。
幼いながらも精一杯背伸びをしてる様子は、見ていて可愛いしカッコイイ。
恋人ごっこもすべてわかった上でやっている。

このゲームは、「自分のレベルでは届かない恋」「恋愛と恋、恋ではない恋」を扱ってる作品だが、一番このテーマを書けていたと思う。典史を泣きわめきながら突き放すシーンは普通の子供ではできない。なのに説得力があった。

グランドルートもよかったが個別ルートの方が上手くまとめられてると言った印象を受けた。

クレシェンドとかWhiteAlbum2などに近いゲームだと思った。Startrainも近いかも知れないが心理描写がほとんどないからこのゲームや上の二作品ほどではないと感じた。

だがこのライターの特性なのかギャグが少なめなのがもったいない。
日常の中に笑える部分は作れるはずなのに。
それだけどうにかしたらこのライターは今よりもっと有名になると思う。
短所はそれくらいかな。

総じて良いゲームだった。