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yomizi_さんの冥契のルペルカリアの長文感想

ユーザー
yomizi_
ゲーム
冥契のルペルカリア
ブランド
ウグイスカグラ
得点
87
参照数
298

一言コメント

「疑似的な、永久に続く愛情よ」

長文感想

40:シナリオ 8/10 (×5)
12:グラフィック 4/5 (×3)
06:音楽 3/5 (×2)
05:キャラ 5/5 (×1)
19:その他 19/20 (×1)
82:得点

・シナリオ
『紙の上の魔法使い』を彷彿とさせるような入れ子構造の物語が特徴的な物語。この物語構造は読書体験が独特なものになりやすいので前々から好みでしたが、今回も楽しめました。
さて、ルートごとの話をしましょう。
共通:この時点では悲劇とか不条理とか、そういったウグイスカグラの過去作、もといルクル作品らしい要素の欠片を散りばめながら、演劇という異なる物語媒体を上手くノベルゲームに落とし込んでいたなーと言う印象です。演劇の描写も見事ですが、普通に話として面白く読めたのも良かったところ。個人的に「虚構」というワードに興味があったりと諸々含めて読んでいて楽しい共通でしたね。
奈々菜:一番好き。ネタバレ避けるために濁しますが物語に祝福された少女のお話。そして肯定されて然るべき物語。肯定されて欲しいが故にTRUEがあまり合わなかったりするのですが......。「無能な奈々菜」はちょっと好き。
理世:物語としては好みでは無いですが、言ってることは面白いと思います。実際に結構楽しく読めたルート。安易なハッピーエンド物語に対して懐疑的、みたいな印象です。
めぐり:終盤のとあるシーンが好きという一点で高評価。停滞の物語。「永遠」に対するひとつの回答として個人的にめっちゃ好みです。
琥珀:なんというか味を感じられなかった......。
TURE:らしい終わり方、というイメージが強いです。そしてあまり合わない。構造的に個別が好きだとTRUEが合わないようになっている気がするのでしょうがないのかも。
とは言え全体通してみるとかなり満足度の高い物語でした。
書ききれなかった奈々菜ルートとめぐりルートの感想は(https://note.com/yomizi/n/nd509b961cb29?sub_rt=share_b)で

・グラフィック
先述した「演劇という異なる物語媒体を上手くノベルゲームに落とし込んでいた」理由のひとつがこれ、な気がします。「すごい演劇」を描く必要があるのにも関わらず視覚的に動的な表現がほとんど使えないノベルゲームという媒体で演劇を表現するイラストと演出の力ってすげーなーと。CGも好みです。特に白髪美少女+月+夜空のCGがあって大喜び。

・音楽
前作『水葬銀貨のイストリア』同様にこちらも可もなく不可もなく。文章を読むのに丁度良い強さのBGMです。ようやくEDが付いたのは〇

・キャラ
今回もキャラクターが楽しい作品でした。物語で動くキャラクター、ではなくキャラクターで動く物語。個別ルートの評価と丸被りしますがめぐりと奈々菜が好きです。あと双葉。

・その他
先述したように演出が効果的で良かったです。特に演劇の描写。これもさっき言いましたが「虚構」とか「永遠」とかの興味あるワードをそれなり以上に深く扱ってくれたのは個人的に大好きな部分ですね。